通報書(平成 23 年月日)

別紙
諮問第892号
答
1
申
審査会の結論
「通報書(平成 23 年○月○日)」ほか1件を一部開示とした決定は、妥当である。
2
異議申立ての内容
(1) 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成 11 年東京都条例第5号。以下
「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「警視庁が東京都に対して発出し
た公共事業に暴力団経営支配法人を参加させないよう求める書面(排除を求める書
面)。平成 22 年 10 月1日から平成 25 年3月 31 日までに受け取った書面に限定する。」
の開示請求に対し、東京都知事が平成 26 年4月 28 日付けで行った一部開示決定につ
いて、その取消しを求めるというものである。
(2)異議申立ての理由
異議申立書及び意見書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりであ
る。
ア
「通報書(平成 23 年○月○日)」(以下「本件対象公文書1」という。)及び「通
報書(平成 24 年○月○日)」(以下「本件対象公文書2」という。)のうち、「所在
地」、「商号又は名称」及び「代表者」欄並びに「通報及び排除要請理由」欄のうち
「商号」(以下「本件非開示情報」という。)は、開示すべきである。条例の解釈を
誤っている。
イ
本件対象公文書2の「商号又は名称」欄及び「通報及び排除要請理由」欄の「商
号」は「株式会社○○」、本件対象公文書1の同部分は「△△株式会社」と、ほぼ
断定し得る。前者は、国土交通省関東地方整備局が公表している文書から、後者は、
- 1 -
信用調査会社が公表している書面から、明らかである。
東京都中央区等は、東京都知事による本件決定処分後も、
「株式会社〇〇」及び「△
△株式会社」が過去に暴力団と関係を有していた、あるいは現在も関係を有してい
るとして、公共事業への参入を認めていない旨を公表し続けている。国土交通省も
同様である。
以上から、本件非開示情報の公開により、当該事業者の社会的地位が損なわれる
おそれがあるとか、東京都による暴力団排除が十分に達成されなくなるおそれがあ
るなどとは言えない。
ウ
国や区によって、「株式会社〇〇」及び「△△株式会社」の商号が公表されてい
るのであるから、誰でも商業登記簿を法務局で閲覧し、当該会社の代表者名と会社
所在地を合法的に知り得る。したがって、代表者名等が個人情報であるとしても、
条例7条2号ただし書イに該当する。
エ
東京都は、営業停止処分にした建設業者名を、処分期間満了後も公表し続けてい
る。そうすると、東京都によって公共事業への参入資格はく奪処分を受けた本件2
事業者に関し、期間満了後に商号等を東京都が公表し続けても、何ら矛盾はないは
ずである。もちろん、今後5年も 10 年も公表し続けるのは、過去を「忘れてもら
う権利」の侵害という問題が生じると思われるが、1、2年前の行政処分について
は、前記の事情を合わせ考えれば、非開示にする理由は無い。
オ
東京都知事の非開示理由は、現実を無視したものであり、本件非開示情報は条例
の各非開示理由には該当せず、したがって、これらは公開されるべきである。
3
異議申立書に対する実施機関の説明要旨
理由説明書及び口頭による説明における実施機関の主張を要約すると、以下のとおり
である。
本件の対象公文書は、東京都財務局と警視庁との間で取り交わされている「東京都が
締結する契約からの暴力団等排除に関する合意書」
(平成 22 年 10 月8日付け。以下「合
- 2 -
意書」という。)に基づき、警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第三課長(以下「組対三
課長」という。)から東京都契約関係暴力団等対策連絡協議会(以下「協議会」という。)
会長である東京都財務局経理部長(以下「経理部長」という。)宛てに、特定の事業者を
東京都が締結する契約から排除するよう要請した通報書である。
この通報書を受け、東京都は、「東京都契約関係暴力団等対策措置要綱」(昭和 62 年
1月 14 日付 61 財経庶第 922 号。以下「要綱」という。)に基づき、協議会で協議の上、
当該事業者を東京都の契約から排除し、東京都公式ホームページでその旨公表している。
しかし、本件対象公文書1及び2に係る案件については、排除措置後、当該事業者か
ら排除措置解除申請書が提出されたため、警視庁に照会したところ、排除措置の原因と
なった事実が解消されたことを警視庁が確認し、その旨の回答を得たことから、協議会
において審議し、排除措置を解除するとともに、東京都公式ホームページで公表してい
る「排除措置中の業者」リストから削除した。
排除措置を受けていた事業者は、社会復帰し、事業を運営しており、現段階で商号等
を開示することは、事業者の利益を損ない、将来に向かって事業運営に支障を及ぼすお
それがある。
以上のことを踏まえ、本件非開示情報について、次の理由により非開示としたもので
ある。
(1) 条例7条2号の該当について
個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるものであり、又は公にす
ることで個人の権利利益を害するおそれがあるため。
(2) 条例7条3号の該当について
公にすることにより、既に排除措置を解除したにもかかわらず、特定の事業者が過
去に暴力団と関係のあったことが明らかとなり、事業者の競争上又は事業運営上の地
位その他社会的な地位が損なわれるため。
(3) 条例7条6号の該当について
公にすることにより、事業者と暴力団のつながりについて、適切な事実関係の把握
が困難となり、東京都の契約からの暴力団の排除が十分に達成されなくなるなど、適
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切な契約事務の遂行に支障を来すおそれがあるため。
4
審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
年
月
日
審
議
経
過
平成26年
5月28日
諮問
平成26年
6月24日
新規概要説明(第123回第三部会)
平成26年11月28日
実施機関から理由説明書収受
平成26年12月10日
異議申立人から意見書収受
平成26年12月19日
実施機関から説明聴取(第128回第三部会)
平成27年
審議(第129回第三部会)
1月30日
(2)審査会の判断
審査会は、異議申立ての対象となった公文書並びに実施機関及び異議申立人の主張
を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
ア
東京都が締結する契約からの暴力団排除について
東京都では、「東京都公共工事契約関係暴力等対策措置要綱」(昭和 62 年1月
14 日付 61 財経庶第 922 号。以下「旧要綱」という。)に基づき、東京都が発注す
る公共工事契約から暴力団等の排除を行ってきたところ、暴力団等が他自治体の公
共工事以外の契約に介入し、資金獲得活動等を行っている実態が明らかになってき
たことから、公共工事以外の契約においても暴力団等が介入してくる可能性を踏ま
え、東京都の契約から暴力団等を排除する仕組みを強化し、その資金源を遮断する
ため、「東京都が締結する契約からの暴力団等排除に向けた基本方針」(平成 22
- 4 -
年7月。以下「基本方針」という。)を策定し、関係規程の整備に取り組んでいる。
基本方針の一つである「連絡協議体制の確立」においては、「財務局と警視庁は、
暴力団等を排除するため、相互の連絡協議体制について合意書を締結し、暴力団等
排除に向けて相互に協力し、積極的な対応を図る」こととされている。
また、基本方針の確実な実施のため、公共工事契約のみを対象としていた旧要綱
を改正し、対象を東京都が締結する全ての契約に拡大するとともに、排除措置の対
象者を要綱別表に掲げる1号から8号までの者(暴力団等経営支配者、暴力団等利
用者など)に拡大するなど、暴力団等排除の規定を整備したほか、経理部長と組対
三課長の間で合意書を取り交わしている。
要綱4条において、協議会は、警視庁以外の機関等から、要綱別表に掲げる排除
措置の対象者について情報提供があった場合に、合意書に定めるところにより、警
視庁に対し、情報提供又は照会等を行うものとすると定めており、合意書第1にお
いて、経理部長は、東京都の契約における競争入札に参加する資格を有する者(以
下「有資格者」という。)が、要綱別表各号に該当するか否か等について、組対三
課長に照会することができるとしている。
有資格者が排除措置の対象者であると警視庁が認定し、かつ、東京都の契約から
排除するよう要請があった場合、財務局長は、要綱5条1項に基づき、協議会の協
議を経て、排除措置を決定し、同条5項に基づき、排除措置が解除されるまでの間、
当該有資格者を東京都の契約から排除しなければならないとしている。
イ
通報書について
合意書第3では、照会がない場合であっても、有資格者が要綱別表各号に該当す
ると認める事実を組対三課長が確認したときには、経理部長に対し、書面により通
報することができるとされており、これに基づき、組対三課長が通報する際の書面
である別記様式第3号を「通報書」という。
通報書は、「受付番号」、「所在地」、「商号又は名称」、「代表者」、「役職
名・氏名等」、「通報及び排除要請理由」及び「備考」の各欄から構成されている。
なお、合意書第4において、組対三課長が通報書により通報するときは、経理部
長に対し、東京都の契約からの排除を併せて要請するものとされている。
- 5 -
ウ
本件対象公文書について
本件異議申立てに係る開示請求は、
「警視庁が東京都に対して発出した公共事業に
暴力団経営支配法人を参加させないよう求める書面(排除を求める書面)。平成 22
年 10 月1日から平成 25 年3月 31 日までに受け取った書面に限定する。」である。
実施機関は、本件開示請求について、「通報書(平成 22 年○月○日)」、本件対象
公文書1及び2の3件の通報書を特定し、「通報書(平成 22 年○月○日)」のうち
の「役職名・氏名等」欄を条例7条2号、4号及び6号に、また、本件対象公文書
1及び2のうち、「受付番号」、「所在地」、「商号又は名称」、「代表者」及び「役職
名・氏名等」欄並びに「通報及び排除要請理由」欄のうち「商号」を条例7条2号、
3号及び6号に該当するとして非開示とする一部開示決定を行った。
異議申立人は、異議申立書において、実施機関が非開示とした情報のうち、本件
対象公文書1及び2における本件非開示情報は開示すべきと述べていることから、
審査会は本件非開示情報の非開示妥当性について判断する。
エ
条例の定めについて
条例7条2号本文は、
「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情
報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合すること
により、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の
個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害
するおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書は、
「イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定され
ている情報」、「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすること
が必要であると認められる情報」、「ハ 当該個人が公務員等…である場合において、
当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員
等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、
同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規定している。
条例7条3号本文は、
「法人(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行
政法人を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を
営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は
当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわ
- 6 -
れると認められるもの」を非開示情報として規定している。また、同号ただし書に
おいて、「イ 事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命又
は健康を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ロ違法
若しくは不当な事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある支障から人の生活
を保護するために、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ 事業活動
によって生じ、又は生ずるおそれがある侵害から消費生活その他都民の生活を保護
するために、公にすることが必要であると認められる情報」のいずれかに該当する
情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨規
定している。
条例7条6号は、
「都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは
地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、
…当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそ
れがあるもの」を非開示情報として規定している。
オ
本件非開示情報の非開示妥当性について
(ア) 条例7条2号該当性について
本件対象公文書1は、有資格者である事業者が要綱別表1号「暴力団等経営支
配者」に、本件対象公文書2は、事業者が同別表4号「暴力団等利用者」にそれ
ぞれ該当すると認める事実を確認した組対三課長が、経理部長に対してその旨通
報し、東京都の契約からの排除を要請した通報書である。
要綱別表において、「暴力団等経営支配者」とは、「個人若しくは法人の役員等
が暴力団等である者又は暴力団等が実質的に経営を支配する者」と、
「暴力団等利
用者」とは、
「個人又は法人の役員等若しくは使用人が、自己、自社若しくは第三
者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもって暴力団等を利
用するなどしていると認められる者」とそれぞれ定義されている。
本件対象公文書1及び2は、特定の事業者に暴力団等である役員等や暴力団等
を利用している役員等(以下「暴力団等関係者」という。)がいるという事実に基
づき作成されたものであり、当該事実は個人に関する情報であると認められる。
審査会が見分したところ、暴力団等関係者に係る情報は、
「役職名・氏名等」欄
に記載され、当該情報は、個人に関する情報で特定の個人を識別することができ
- 7 -
る情報であり、同欄の記載がある場合には、同欄に記載された特定個人が、記載
がない場合には、事業者の代表者個人が暴力団等関係者であるという事実を表す
ことになるものと認められる。
仮に、
「役職名・氏名等」欄の記載がない場合に、本件非開示情報を明らかにす
ることとなると、事業者名及び代表者名が特定され、その結果、当該事業者の代
表者自身が暴力団等関係者であるという個人情報を明らかにすることとなるので、
本件非開示情報は、特定の個人を識別することができるものであると認められ、
条例7条2号本文に該当する。
次に、同号ただし書該当性について検討すると、要綱 10 条に基づき、同5条1
項の規定により排除措置を行った際、財務局長は、別記様式4「排除措置中の業
者」により、有資格者名、排除措置の理由、排除措置の期間等を公表しなければ
ならないとされている。
審査会が、本件一部開示決定時点(平成 26 年4月 28 日)において、東京都公
式ホームページ上で公開されていた「排除措置中の業者(平成 26 年4月3日現
在)」の提出を実施機関から受け、これを確認したところ、「通報書(平成 22 年
○月○日)」に係る事業者については、「有資格者名」欄に記載されていることが
確認できたが、本件対象公文書1及び2に係る事業者についての記載はなかった。
この点について、実施機関に確認したところ、本件対象公文書1及び2に係る
事業者については、排除措置の対象として過去にホームページで公開された事実
はあるが、いずれの事業者からも解除申請がなされ、警視庁に照会した結果、排
除措置の原因となった事実が解消されたことが確認できたため、排除措置を解除
し、「排除措置中の業者」からも削除したとのことであった。
異議申立人は、意見書において、国や区等によって、実施機関が非開示とした
事業者の商号が公表されているのであるから、事業者の代表者名等が個人情報で
あるとしても、条例7条2号ただし書イに該当する旨主張する。
審査会が見分したところ、国や複数の区において、入札参加除外等の措置を行
った対象事業者名等についての公表をしているものと認められるが、これらは、
国及び各区が独自に行う公共事業等の契約からの排除措置の対象である事業者に
ついて、国及び当該区がそれぞれの判断により公表した情報であり、東京都が要
綱に基づき公表している「排除措置中の業者」とは、その内容も公表の根拠も異
- 8 -
にするものであるので、異議申立人の主張は採用できない。
以上のことから、本件非開示情報は、法令等の規定により又は慣行として公に
されている情報であるとは認められないので、条例7条2号ただし書イに該当せ
ず、その内容及び性質から同号ただし書ロ及びハのいずれにも該当しない。
(イ) 条例7条3号該当性について
異議申立人は、国や区等によって、実施機関が非開示とした事業者の商号が公
表されているのであるから、本件非開示情報を公開することにより、当該事業者
の社会的地位が損なわれるとは言えないと主張する。
これに対し、実施機関は、非開示とした事業者名等は現在公にされているもの
ではなく、公にすることにより、既に排除措置を解除したにもかかわらず、特定
の事業者が過去に暴力団と関係のあったことが明らかとなり、事業者の競争上又
は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると説明する。
審査会が検討したところ、前記判断のとおり、国や区等によって本件非開示情
報が公にされたものとは認められず、本件非開示情報を公にすることとなると、
特定の事業者が過去に暴力団と関係があったという、現在は公とされていない事
実を明らかにすることとなると認められる。
このような情報は、排除措置の原因となった事実を解消した事業者にとっては、
通常知られたくない情報であると考えられ、現在公にしていない事実を開示請求
によって明らかにすることにより、風評等により事業活動に支障を来し、正当な
利益が損なわれるなど、今後の当該事業者の事業運営上の地位が損なわれるもの
と認められるので、本件非開示情報は条例7条3号に該当する。
(ウ) 条例7条6号該当性について
異議申立人は、国や区等によって、実施機関が非開示とした事業者の商号が公
表されているのであるから、本件非開示情報を公開することにより、東京都によ
る暴力団排除が十分に達成されなくなるおそれがあるとは言えないと主張する。
これに対し、実施機関は、非開示とした事業者名は現在公にされているもので
はなく、排除措置の原因事実が解消されているにもかかわらず公表を続けること
により、事業者と暴力団とのつながりについて適切な事実関係の把握が困難とな
- 9 -
り、結果として東京都の契約からの暴力団の排除が十分達成されなくなるなど、
適切な契約事務の遂行に支障を来すおそれがあると説明する。
要綱 10 条2項により、財務局長は、排除措置を解除した場合、公表を取りや
めなければならないこととされており、審査会が実施機関に確認したところ、東
京都では、排除措置の解除を決定すると、即日公表を取りやめているとのことで
ある。
公表が取りやめられることを前提として、解除を申請した事業者にとって、排
除措置が解除され、公表が取りやめられた後であっても、開示請求によって事業
者名等が公にされることは、当該事業者の期待に反するものであり、東京都に対
する当該事業者からの信頼を損なうこととなり、ひいては、東京都の契約からの
暴力団の排除が十分に達成されなくなるなど、契約事務の適正な遂行に支障を及
ぼすおそれがあると認められるので、本件非開示情報は条例7条6号に該当する。
したがって、本件非開示情報は、条例7条2号、3号及び6号に該当し、非開示
が妥当である。
カ
異議申立人の主張について
異議申立人は、東京都が営業停止処分にした建設業者名等を、処分期間満了後も
公表し続けている事例を挙げ、公共事業への参入資格はく奪処分を受けた事業者名
について、期間満了後も東京都が商号を公表し続けても何ら矛盾はないと主張する
ので、以下検討する。
本件主張に関し、異議申立人が意見書に添付した別紙は、建設業法(昭和 24 年
法律第 100 号)28 条3項に基づき営業停止命令の行政処分を受けた建設業者につい
て、東京都が報道発表した資料であるが、当該事業者については、営業停止の期間
が満了しているものの、意見書提出時点においても東京都公式ホームページ上にお
いて建設業者名及び処分の内容等が公表されているものと認められた。
建設業法 29 条の5第1項は、都道府県知事が同法 28 条3項の規定による処分を
したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならな
いと定めており、異議申立人が添付した報道発表資料は、これに基づいて東京都知
事が公告したものと認められる。
- 10 -
建設業法 29 条の5第3項は、都道府県知事が、その許可を受けた建設業者が同
法 28 条3項の規定による営業停止の命令を受けたときは、建設業者監督処分簿(以
下「処分簿」という。)に、当該処分の年月日及び内容その他国土交通省令で定め
る事項を登載しなければならないと定め、処分簿は、同条4項により公衆の閲覧に
供しなければならないとされている。
処分簿に登載される事項については、建設業法施行規則(昭和 24 年建設省令第 14
号)23 条の3第1項において定められており、「処分を受けた建設業者の商号又は
名称」もこれに含まれている。
処分簿の保存期間は、同規則 23 条の3第2項により、当該処分の日から5年間と
されていることから、建設業法に基づく営業停止の行政処分を受けた業者名につい
ては、処分期間が満了したとしても、処分簿が閲覧に供されている間は、公表が継
続されているものと認められる。
一方、要綱に基づき東京都の契約から排除された事業者については、前記オのと
おり、即日公表が取りやめられ、要綱に基づく公表制度以外に閲覧その他の公表制
度が存在しないことから、建設業法に基づく行政処分に係る公表制度と同視できる
ものではない。
以上のことから、異議申立人の主張は、審査会の判断を左右するものではない。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
渡辺
忠嗣、鴨木
房子、寺田
麻佑、前田
- 11 -
雅英