余剰価値を作り出す

2 1 7 余剰価値を作り出す
ただ、他人の仕事を実際に経験す
ることができないので、誰もが、他
の人達も、自分と同じように働いて
いると納得して生活する。しかし、
働き方には、このような3 つの種類
があるのだ。
① 余剰価値を作り出すシステム
か、
② 搾取するシステムを作らない
と、
ビジネスモデルは成り立たないの
だと思う。
仮に、これらのシステムを利用せ
ず、自分自身の働きで今日の稼ぎを
作り出そうとしても、1 人の労働で
稼ぎ出せる金額には限度がある。仮
に、一人親方の大工の稼ぎであり、
車を持ち込んで働くトラック運転手
の稼ぎであり、町の豆腐屋の稼ぎだ。
生活するには足りる稼ぎだが、そ
れを超える余剰の稼ぎを得ることは
難しい。彼らの労働は、代替性のあ
る労働なのだから、市場は、余剰利
得を確保できるほどの対価を支払わ
ない。
それ以上の稼ぎを得ようとすれば、
余剰価値を作り出すシステムを構築
するか、搾取するシステムを構築し
なければならない。つまり、社会に
は次のような3 つの働き方が存在す
る。
①余剰価値のシステムを構築した
人達で、彼らはプレイヤーとして働
く。②搾取するシステムに組み込ま
れた人達はレイバーとして働かされ
る。③それ以外の人達は今日の稼ぎ
を作り出すワーカーとして働く。
仮に、監査法人は搾取するシステ
ムで成り立つように思う。多数の人
員をタイムチャージで働かせ、その
働きから搾取することでパートナー
の稼ぎが確保される。チェーン展開
する飲食店やコンビニも、数多くの
出店と、そこで働く多数の人達から
搾取することによって企業の利得が
確保される。多額の収益を獲得しよ
うとすれば規模の拡大が必要だ。そ
して搾取するシステムを徹底すれば
ブラック企業型のビジネスモデルが
完成する。
これが昭和の時代のビジネスモデ
ルだった。しかし、いま、余剰価値
を作り出すシステムを構築する企業
が登場し、そこではワーカーを超え
たプレイヤーとしての作業が可能に
なる。仮に、googleなど独自性を持
つビジネスモデルを作り上げた企業
の豊かさは、余剰価値にあるのだと
思う。新たな研究開発に向けて潤沢
な資金を提供し、従業員に対しても
豊かな職場環境を提供しているが、
これは余剰価値を作り出すシステム
だからこそ可能な贅沢だ。
ネットの時代では、搾取するシス
テム、つまり、大規模化だけが企業
の目標ではない。余剰価値を作り出
すシステムの構築こそが、ゆとりの
あるクリエイティブなプレイヤーを
作り出す。
この3 つの働き方に分類したのは
東京大学大学院教授の伊藤元重氏だ
が、その定義に従えば次のようにな
る。
labor = 骨の折れるつらい肉体
的労働
work = 努力して行なう肉体的、
精神的な仕事
play = 遊ぶ、競技する、演奏
する、上演する
誰でも、日々、働いている。
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規模の拡大こそが事業の成長と考
えているとしたら、それは昭和の発
想だ。
一歩、立ち止まって考えてみる必
要があると思う。
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