(WEEE) Management in Asia

廃家電リサイクルの持続可能性
評価:日本の事例と国際比較
ニルマラ・メニプラ
○三戸篤史
堀田康彦
公財)地球環境戦略研究機関
持続可能な消費と生産領域
はじめに

電気・電子産業は、世界的に成長している製造業である。
廃電気・電子製品の適正な管理は、現在、大きな関心を集め
ている
 途上国ではEPRに基づくリサイクル法が準備されつつある。


途上国では、廃電気・電子製品の不適正な管理・処理が広く
行われており、有害な汚染の一方で、有用資源の回収効率は
低い。

日本のような先進国では、廃電気・電子製品の適正な処理・
リサイクルを通じて、資源の回収および環境汚染の管理に向
けた包括的な政策が採用されている。アジアの途上国でも、
中国・インドをはじめとして、この問題への政策的対応が普
及しつつある。
本研究の目的
環境省の環境経済の政策研究の下で、以下の
点を目的に、実施。本年度が最終年度である。
 ライフサイクル分析の手法に基づいて、廃電気・電子製
品のリサイクル・チェーンの持続可能性を分析・評価を
行うための方法論の開発。
 日本の国内リサイクルシステムの持続可能性についての
評価の実施。
 アジアの途上国でも、中国・インドをはじめとして、
E-wasteに対する政策的対応が普及しつつあることを
念頭に、他国との比較を行い、適正な国際資源循環の
推進に向けた政策提言を行う。
方法論


リサイクルチェーンの中で、収集、1次輸送、2次輸送、前処理
(解体)、リサイクルと資源の回収の各段階全体について、持続可
能性(環境影響および、社会・経済的影響)を評価するためのライ
フサイクル分析に基づいた分析枠組みを開発
持続可能性評価のための、主要な評価指標を同定
温室効果ガスの純排出
増減
-資源の純節約
-関与物質総量(TMR)
環境影響
グリーン雇用の創出
社会経済影響
収入ベースの福祉創出
効果
 日本の家電リサイクル法の下での、異なる県(人口密度の
異なる2つのエリア)の下での、4種類の家電のリサイク
ルの持続可能性を評価
結果と議論
-環境影響の定量化(LCA)
GHGの正味排出(リサイクルプロセスで発生するGHGから、同じ量の物
質を天然資源から製造した場合発生するGHGを差し引いた場合)
 家電リサイクルプログラムは、GHGの排出抑制に貢献できる。
 通常の製造プロセスから同じ物質を製造する場合に比べて、
GHGを50%排出抑制出来ることが分かる。
環境影響の定量化(つづき)
-廃家電リサイクルの資源効率の推計
 全ての種類の家電リサイクルにおける資源回収により、天然資源から同量
の物質を製造する場合に比べて、非生物系資源(化石燃料と鉱物資源)を
55-80% 使用抑制できると推計。
 非生物資源の消費抑制の90%以上は、天然資源からの生産チェーンにおけ
る化石燃料使用の回避によりもたらせるもの。
 また、家電リサイクルにより回避できるTMRの定量化も試みた。
資源利用の正味節約の推計
廃家電リサイクルにより回避できたTMRの定量化
社会経済面での持続可能性の定量
化の試み
グリーンな雇用の創出と地域社会の福祉への貢献
 グリーンな雇用の創出と、収入に基づいた地域社会の福祉への貢献を推
計することで、廃家電リサイクルの社会経済面での持続可能性への貢献
の推計を試みた。
 例えば、70万台の廃家電を処理するごとに、年間165人の雇用を創出してい
るという推計となった。
 また、これらの雇用からの年間の収入創出効果は、6億8600万円と推計した。
異なる県同士の廃家電リサイクルの持続可
能性の比較
 地域ごとの日本の廃家電の発生密度は、人口密度によって異なると推測。
その上で、人口密度の違いがもたらす影響を検証するため、人口密度が高
いH県(約1,000人/km2)と低いL県(100人/km2以下)の事例を比較。
 持続可能性については、主に輸送が、持続可能性で大きな差をもたらす。
人口密度の高いH県に比べて、人口密度の低いL県では、その差が顕著。
 例えば、人口密度のL県の廃家電リサイクルの全体のプロセスにおいて、輸
送の差によって、洗濯機で12%、冷蔵庫で13%、エアコンで8%、テレビで
21%程度高い県よりもGHG排出量が多いと推計した。
.
H県 L県
H県 L県
H県 L県
H県 L県
海外の事例との比較
台湾
 台湾では、廃電気・電子製品の量が劇的に増加。台湾の
廃電気・電子製品のリサイクル率は50%を超している。
 関連法の適切な運用により、より高いリサイクル率の到
達を目指している。
 家庭は、電気・電子製品を捨てる際に、リサイクル費用を支払わない。こ
れらを売却するという慣習が成り立っている。
50,000,000
WEEEの量(kg)
45,000,000
住民による搬出
民間リサイクラー
メーカー基金
自治体による回収
40,000,000
35,000,000
30,000,000
25,000,000
20,000,000
15,000,000
10,000,000
5,000,000
0
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
台湾での廃電気・電子製品の収集
量(5万t/年)
参考:日本:51万t(2013)
台湾における電気・電子製品のリ
サイクルの仕組み
海外の事例(台湾)
 WEEEの輸送は大きなGHG排出となっている
輸送距離、使用車両、積載率等が要因となる
 リサイクルはTMR上有効である。
銅が大きな割合を占めている
 高度な収集解体フローが形成されている。
 16千t/年規模の解体工場において、88人の雇用が
創出されている。
WEEE輸送に関するGHG排出
回避されたTMR
雇用創出
海外の事例との比較
インド
 廃電気・電子製品に対するリサイクル法を新たに導入した
国であり、インドの廃電気・電子製品管理の持続可能性を
評価したうえで、日本と比較することは興味深い。
 廃基盤を日本に輸出処理するパイロットプロジェクトも存
在(北九州)
 インドにおけるリサイクル・処理能力(as of Feb 2014)
地域
南部(Andra Pradesh, Karnataka,
Tamil Nadu)
北部 ( Haryana, Rajasthan, Uttar
Pradesh, Uttarakhand)
東部(Chhattisgarh)
西部 (Gujarat, Maharashtra, Madhya
Pradesh)
合計
年間の解体・リサイクル能力
登録解体業者・リサイクル業
者の数
110097
64
175580
31
900
57470
1
24
344,047
120
 登録解体・リサイクル業者の総数は、2011年~2012年の35から、2013年~
2014年の120に増加。
 2012年5月のE-waste規制が導入された後に、85の業者が登録したこと。
海外の事例との比較(インド)
 主要な業者への調査を実施し、1次データを現地調査および
アンケート調査により収集した。国内リサイクル、国際資
源循環(海上輸送を含む)の社会・経済、環境影響につい
て、分析中である。
 WEEEフローにより、非鉄金属、鉄、プラスチックに分離
 WEEE修理、中古販売も行っている
 輸送におけるGHG排出はかなり大きい。
国土が広大なため移動距離が長いため
WEEE処理フロー(Earth Sense社)
WEEE輸送に関するGHG排出
海外の事例との比較(インド)
 1200t/年規模の解体工場において、23人の雇用が
創出されている。
インドでの廃家電の発生量は40万t/年と推計されて
おり、インド全体で8000人程度の雇用に匹敵する。
 リサイクルはTMR上有効である。
銅が大きな割合を占めている
雇用創出
回避されたTMR
3ヶ国の比較
 3ヶ国において家電の重さ異なる日本が一番軽い。
地域差もあり、また省資源という観点で、使用資源量に
差が出ている可能性がある。
 各国でリサイクルはTMR上有効である。
銅が大きな割合を占めている。
資源量の差の調査も必要である。
家電4品目の重量
回避されたTMRの比較
3ヶ国の比較
 3ヶ国において輸送に関わるGHG発生量は、日本が多い。
移動距離 インド>日本>台湾
積載量
インド>台湾>日本
車両の大型化、積載量の安全率など
 雇用創出においては、日本、台湾が同程度であり、インドが多い。
しかしこれは作業の効率化(自動化等)等の差もある。
逆数では 日本=台湾:180t/年のWEEEを1人で処理
インドは約50t/年/人程度である。効率化の余地あり。
雇用機会/tonne of WEEE
0.02
0.018
0.016
0.014
0.012
0.01
0.008
0.006
0.004
0.002
0
日本
WEEE輸送に関するGHG搬出
インド
雇用の創出
台湾
結論

データの入手可能性という課題はあるものの、本研究で開発した手法は、
複雑なものではなく、どのような国や経済の状況においても応用可能であ
ると考える。

本研究ではGHGの排出削減ポテンシャル、資源節約、雇用創出という観
点からの評価を行うと同時に、日本以外の他のリサイクルシステムにも応
用可能な評価手法を開発することが出来たと考える。

また、国際比較を行うことで、安価な労働力に依存した労働集約型のリサ
イクルと、比較的エネルギー消費型の労働非集約型のリサイクルが併存し
ていることを、定量的に明らかにした。このことは、先進国で収集された
使用済み製品の一部が、中古品として合法的に、もしくは一部非合法的に
途上国へと移転し、環境上不適正であると考えられながらもリサイクルが
行われている要因の一部を示している。

データ入手上の課題から、健康上もしくは環境面で、重金属などの不適切
な処理による負の影響については、定量的に示すことが出来なかった。ま
た、資源回収技術の違いによる資源回収効率の差についても今回の分析に
取り入れることが出来なかった。

今回の研究を活用して、ウエブベースの簡易的な廃電気・電子機器管理の
影響評価ツールを公開することを目指すことが、ひとつの方向性として考
えられる。
ご清聴ありがとうございました。
Institute for Global Environmental Strategies (IGES)