3. アルミ電解コンデンサの製造

3. アルミ電解コンデンサの製造
3-1 アルミ電解コンデンサの電極と誘電体
アルミニウム電極箔
表面積を拡大するために,アルミニウム電極箔の表面を電気化学的に粗面化(エッチング)します。
〔低圧用エッチド箔〕
(断 面)
(レプリカ)
(X500)
(X10,000)
低圧用は海綿状のエッチピット形状であり,交流エッチングが主として用いられています。
〔高圧用エッチド箔〕
高圧用は,トンネル型のエッチピットであり,
直流エッチングが用いられています。
(断 面)
(X500)
〔誘電体〕
アルミエッチド箔の表面に,誘電体となるアルミ酸化皮膜を電気化学的に生成します。
化成皮膜
( Aℓ2 O3 )
Aℓ
水和皮膜
(X50,000)
図の酸化皮膜は中高圧用のエッチド箔のピット内部の化成皮膜の断面図です。
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3-2 アルミ電解コンデンサの製造方法
エッチング (1) 陽極アルミ原箔
陽極原箔には通常厚み40~110 ɥm
純度99.9%以上の高純度アルミニウム箔
を使用します。
(2) エッチング
圧延されたアルミ原箔の平滑面を電気
化学的に表面を粗面化し,その実効面積
を増加させる工程です。ある化成電圧で
の平滑箔の静電容量とエッチング箔の静
電容量との比率を倍率と言いますが通常
エッチング前箔断面
数十倍~数百倍に達します。
各社共最も力を入れている技術で電解
コンデンサの小形化に大きな役割を果た
しています。
エッチング後断面
化
成
(3) 化 成
電解液(素子に含浸する電解液とは目
的,組成が異なり普通化成液と呼びます)
中でエッチング箔を陽極として電気分解
(陽極酸化という)を行ない電気化学的
にアルミ箔の表面に誘電体となる酸化ア
Aℓ
ルミの皮膜を生成するアルミ電解コンデ
ンサの性能を左右する極めて大切な工程
です。
この工程において化成電圧を任意に
調整することにより耐電圧(即ち酸化
アルミ皮膜の厚さ)と静電容量を使用
目的に合わせて変えることができるのは
他のコンデンサにみられない大きな特徴です。
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Aℓ
化成
エッチング箔
酸化アルミ(Aℓ2 O3)
誘電体皮膜
切
断
(4) 切断 (5) リード付 (6) 巻取
化成された電極箔は製品の容量に応じ
所定の寸法に切断し引出しリード線を接
続した後陰極箔と電解紙(セパレータ)
を介し重ね合わせ同芯円に巻回します。
巻
取
☆電解紙は特に電解コンデンサ専用に製造
され2つの役目をします。
イ) 陽極箔と陰極箔が直接接触して
(リード線)
(リード板)
短絡(ショート)しないように隔離
します。
ロ) 電解液を浸潤させ保持します。
この為均一な厚さ,密度,吸水性,
引張り強さ等の優れたものが要求され
ます。主な材料としてセルロースが
あります。
断 面 化 成
(7) 断面化成
(ハイブリッドコデンサのみ)
化成皮膜が形成していない,もしくは
不十分な箇所を修復する行程です。
漏れ電流を安定化します。
ポリマー形成 (8)ポリマー形成
(ハイブリッドコデンサのみ) 素子内にポリマーを形成する行程です。
ESRや容量特性を引き出します。
含
浸
(9) 含
浸
含浸は巻取った素子に電解液をしみ
こませる工程です。
(Aℓ2 O3)
電解紙(セパレータ)
製品の特性用途により含浸する電解液
陰極アル ミ
陽極アル ミ
の種類が異なっております。
☆電解液について
素子に含浸する電解液は化成用のそれ
と区別して駆動用電解液と呼ばれ次の
2つの役目をします。
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駆動用電解液(ペースト)
イ) 陽極箔・陰極箔表面に浸透密着し,
陽極箔・陰極箔の静電容量を効率よ
セパレータ
(実質的な陰極の作用)
ロ) 陰極酸化皮膜の欠陥部分を修復し
陰極アル ミ
陽極アル ミ
くとり出します。
ます。
電解液の特性は製品の温度特性、周波
誘電体
数特性、高温負荷寿命等に多大の影響を
与えますので必然的に化成液とは異なっ
た組成のものが要求され,その経済性,
安全性等をも満足させる必要があり,
ケース
電解コンデンサ研究開発上の重要な
ポイントです。
組
立
(10) 組
立
電解液を含浸した素子は既にコンデン
封口
ゴムバッキン
封口ゴムバッキン
ケース
含浸剤素子
サとしての機能を持っていますが,電解
液の蒸発又は吸湿等による特性の劣化を
防ぐため,金属ケースに封入しゴムパッ
含浸剤
キング等で密封します。
ビニールスリーブ
また,製品には極性,定格電圧,静電
容量,使用温度,その他必要な表示を行
外装スリープ
なったビニールスリーブを装着します。
.
再 化 成
(エージング)
(11) 再化成(エージング)
組立を終わった製品に規定の電圧を印加し特性を安定化させる工程です。
組立時点では電極の切断面,リードの接続部等未化成の部分や酸化皮膜の欠損部があり再度
化成をする必要があります。
また,このことにより耐電圧の確認やショート不良品の事前摘出が出来る効果もあり,機器に
組込んだ時,スタートから安定した動作が得られる等電解コンデンサの初期段階での信頼性を
高くするために大切なことです。
捺 印 加 工
(12) 捺 印 加 工
(表面実装形の場合)
アルミケースの天面に表示 ( 定格電圧, 静電容量, ロット No., 陰極表示)を捺印後, 表面
実装品については, 座板挿入した後, リード加工を実施します。
完 成 検 査
(13) 完 成 検 査
再化成の終わった製品は,所定の性能
を間違いなく発揮できるように静電容量,
tanδ,漏れ電流,外観等について検査
が行なわれた後、包装されます。
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完
成