H26年度卒業式式辞 - 島根県立松江北高等学校

平成26 年度
普通科第66回・理数科科 第45回
卒業証書授与式 式辞
赤 山に 、 春が巡 っ てき まし た。 同時 に、 28 9名 の若者が 巣立ち
の時を迎えました。
本 日、 多 数の来 賓 のご 臨席 のも と、 島根 県立 松江 北高等学 校普通
科第 66 回 、理数 科 第4 5回 の卒 業証 書授 与式 を盛 大に挙行 できま
すこ とは 、 卒業生 は もと より 、私 たち 教職 員一 同、 および在 校生に
とって、大きな慶びです。
保 護者 の 皆様、 誕 生の 日か ら約 18 年の 月日 が流 れ、いよ いよ皆
様の 腕の 中 から巣 立 つ日 を迎 えた 我が 子の 姿に 、感 慨ひとし おのこ
とでしょう。心よりお祝い 申し上げます。
今 日、 2 89名 が 、晴 れや かに 、凛 とし た姿 で学 舎を巣立 ちます
こと を、 こ こまで 、 彼ら を支 え育 てて くだ さっ たす べての方 々に、
ご報 告申 し 上げま す とと もに 、お 礼申 し上 げま す、 有り難う ござい
ました。
ただ今、証書を受け取られた皆さん、ご卒業おめ でとう。静かに、
3年間を思い出すとき、ど んな光景・心象が去来しますか。
印 象深 い 場面が 、 赤山 に流 れる 季節 の風 の感 触と ともに、 甦って
くることでしょう。
Graduation from school may be compared to the launching of a ship that
starts out to meet the test of wind and wave.
学校を卒業することは、風と波の試練に立ち向か う旅へ出 発する、
船の進水にたとえることが できる。
こ の言 葉 は、今 か ら1 02 年前 の1 91 3年 、女 子英学塾 (現津
田塾 大学 ) の卒業 式 で、 塾長 津 田梅 子先 生が 語ら れた式辞 冒頭で
す。式辞では、船出する塾 生たちに、次の言葉が語られます。
One great beacon light is Truth.
Follow also the guiding lights of Love and Devotion.
大 きな 灯 台の明 か りの 一つ が、 真理 です 。ま た、 愛と献身 という
光にも従いなさい。
こ れか ら の社会 は 、真 理に 向か い、 知を 創造 する ことに価 値が見
出される知識基盤社会です。 また、他者に寄り添い、苦楽をとも
にし て歩 む 精神が 求 めら れる 共助 共生 の社 会で す。 102年 前に語
られた言葉が、今の私たちの心に響き、人生の指針となります。
今日からは、人 生の航路に独りで立ち向っていか ねばなり ません。
行く 手を 阻 む、格 差 拡大 に向 かう 冷た い風 、グ ロー バル化の 大波。
こ の時 代 に生き る がゆ えに 、上 の世 代、 親世 代が 、解決策 を経験
知で 具体 的 にアド バ イス する こと がで きな い課 題が 、皆さん を待ち
受けています。
し たが っ て、高 校 3年 間を 含む 12 年の 学校 教育 は、皆さ んが、
行く 手に 立 ちはだ か るも のを 克服 でき る具 体的 術( すべ)を 、すべ
て授けたとは言いがたいの です。
卒 業証 書 にある 「 所定 の課 程を 修了 した 」と は、 学んだこ とその
ものではありません。学ぶという姿勢を身につけた というこ とです。
頼りになるものは、この姿 勢です。
授 業後 の休 憩時 間、 放課 後 の自習 中 に、 数名 がノー トを囲 み、あ
るいは黒板に向かい、問題の解法を議論する姿がありました。特に、
セン ター 試験 後の 一月 は、 そ の姿が 顕 著で した 。また 、何度 も面接
練習 を行 う、 教科 の添 削指 導 ・小論 文 の指 導を 、しつ こく要 求する
姿がありました。そこには、取りに 行く姿勢がありました。
3つ目は、部活動に取り組む姿で す。
全 国を 経験 した 部活 動が あ りまし た 。一 方で 、一回 戦で敗 れた試
合が あり まし た。 日々 の積 み 重ねが 、 思う よう な結果 に至ら なかっ
たときこそ、真価が問われる。報告 会の各部キャプテンの言葉、
「次
の 課 題 が 見 え た 、 必 ず 克 服 し て 、 次 に 備 え た い 。」「 自 分 達 は 、 活
動に 終止 符を 打つ が、 かな わ なかっ た 夢を 、1 ・2年 生に託 す。後
輩たちは、私たち を必ず、越えてくれると、信じている。」そして、
指導者、保護者、周囲に対する感謝 の言葉がありました。
「 質を 高め るた めに 先ず は 、生活 を 整え る。 受動で はなく 、徹底
的に 主体 的に 追究 した い気 持 ちを、 実 行力 ・行 動力で 示す。 より高
くより美しくを求め、少々のことではくじ けない、タフな心 をもつ。」
校 訓 質実 剛健 、本 物の 学 習者を め ざし て、 皆さん が3年 間取り
組んだことは、そのことでした。
大丈夫です、前 を向き歩め。転び そうになっても踏ん張って歩め。
次に、期待とお願いです。
皆 さん は、 今後 、同 世代 の 平均値 と 比べ たと きに、 随分、 質の高
い教育を受けることになりましょう 。
先 日来 日し た、 著書 「2 1 世紀の 資 本」 で注 目され るフラ ンスの
経済学者トマ・ピケティ氏が、日本 の学生に語った言葉。
「 君た ちは 高い レベ ルの 教 育を受 け るこ とが できた のだか ら、そ
れを 自分 のた めに 役立 てる の ではな く 、社 会の ために 役立て ること
を考えてください。」と。これが、高等教育を授かる者がも つべき、
グローバルスタンダードな構えです 。
「 ど う 社 会 に 貢 献 す る の か 。」 常 に 、 こ の こ と を 学 び を モ チ ベ ー
トし 、継 続す ると きの キー ク エスチ ョ ンと して 、問い 続けな さい。
皆 さん が、 中学 2年 の3 月 、東日 本 大震 災が 発生し ました 。それ
から の、 過酷 な復 旧・ 復興 の 時間は 、 まる まる 皆さん の高校 3年間
に重 なり ます 。ど んな 小さ な ことで も いい 、復 興日本 の力に なって
ほしい。このことは、皆さんの世代 が背負った宿命です。
唱歌「 ふるさと」が教科書に載ったのは、101年前。この時代、
ふる さと を離 れ、 都会 で、 功 成り名 遂 げて 帰る 場所が 、ふる さとで
した。
「志を果たして
いつの日にか帰ら ん
山は青きふる さと
水は清きふるさと」
皆さんに期待したいことは、違います。多くは、ふるさとを離れ、
学び 続け ます 。少 子高 齢化 が 急速に 進 行す る島 根県、 やがて 日本全
体が 抱え る将 来的 課題 解決 の 先駆け の 地に なる べく、 ふるさ とは、
皆さ んが これ から 習得 する 、 道を切 り 拓く 知識 ・技能 ・思想 ・哲学
を必要としています。
す な わ ち 、 ふ る さ と を 「 志 を 果 た し て 」 帰 る 場 所 で は な く 、「 志
を果たしに」帰ってくるところと考 えてほしいのです。
最後に、はなむけとして
本 物の 学 習者を め ざし た、 皆さ んの 姿を 振り 返っ てみまし ょう。
1つ目は、佇まいです。
朝一番に電気がともる、放課後遅くまで灯がとも るのは、いつも、
図書 室と 3 年の教 室 でし た。 3カ 年皆 勤者 73 名に 象徴され るよう
に、 高校 生 として の 極め て真 っ当 な歩 みを 、私 たち に示して くれま
した。
旧 制中 学 70年 、 新制 高校 70 年の 歴史 を刻 み、 平成28 年度に
創立140周年を迎える次 の時代へと、転換点を迎 えた松江 北高に、
かくあれと、指針を与える ものでした。
2つ目は、学びを紡ぎ、 継続するということです。
今 日、 皆さ んは 、高 密度 な 時間を 過 ごし た高 校生活 にピリ オドを
打ち ます 。と 同時 に、 いざ 、 となっ た ら、 帰る ことの できる 場所と
時代を獲得したのです。
つまずきそうになったら、いつでも赤山に帰ってらっしゃい。
ど うか 、自 分の 命を 大切 に 、そし て 他者 の命 を大切 に。こ のこと
が、人生の根底となる大前提です。
お元気で
さようなら。
平成二十七年 三月三日
島根県立松江北高等学校
校長
泉
雄二郎