2015/3/3 東京都新宿区本塩町 22-8 TEL: 03-5919-9341 URL:http://www.tdb.co.jp/ 第 4 回 : 東北 3 県・沿岸部「被害甚大地域」5000 社の追跡調査 事業継続企業の約 6 割が震災前の売上回復 ~ 「建設業」の業績回復が顕著 ~ はじめに 3 月 11 日、2011 年に発生した東日本大震災から 4 年が経過する。被災 3 県の中でも特に多数の 犠牲者が出た「被害甚大地域(※)」においては、多くの企業が休廃業に追い込まれた。だが、そ の一方で、未曾有の災害を乗り越えて今なお事業を継続し、震災前の売上水準を大きく上回る企 業もここにきて出てきている。 帝国データバンクは、岩手、宮城、福島 3 県沿岸部の「津波被害が特に大きかった地域」と「原 発事故による警戒区域・計画的避難区域(当時)」(※ 本調査における「被害甚大地域」)に本社 を置いていた 5004 社を対象に、震災から約 4 年経過時点での活動状況について、2 年ぶりに追跡 調査した。なお、本調査の発表は 2011 年 7 月、2012 年 3 月、2013 年 3 月に続き 4 回目となる。 調査結果(要旨) 1. 今回の調査で「事業継続」を確認できた企業は 3622 社(構成比 72.4%)で全体の 7 割超。2013 年 2 月の前回調査時からこの 2 年間で大きな変化はなかった 2. 他方、「休廃業」している企業が 1382 社(同 27.6%) を数え、前回調査時(1327 社)から 55 社増加する など、4 社に 1 社が実質的な活動停止に追い込まれ 2013年度の売上状況 <震災前(2009年度)との比較> たままとなっている 3. 震災前の 2009 年度と比べて 2013 年度の売上高が 「増収」となった企業は約半数(同 51.6%)を占めた。 「横ばい」(同 5.5%)と合わせて、全体の約 6 割の企 業が震災前の売上水準を回復 減収 42.9% (1,502社) 増収+横ばい 57.1% (2,001社) 4. 業種別に見ると、震災前の売上水準を上回った増収 企業は「建設業」(同 71.6%)が突出。損益状況も、 「建設業」の黒字企業比率が 84.0%と、震災前の 2009 年度(同 62.1%)から 21.9 ポイント増加する ※ 集計対象は、2009・2013年度の売上高が判明した3,503社 など、利益を確保した企業が大きく増えている ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 2015/3/3 第 4 回 : 東北 3 県・沿岸部「被害甚大地域」5000 社の追跡調査 1. 2015 年 2 月の活動状況 東日本大震災発生時点で「被害甚大地域」に本社を置いていた 5004 社について活動状況を再確 認したところ、「事業継続」している企業は 3622 社(構成比 72.4%)で全体の 7 割を超えた。前 回調査時(2013 年 2 月、3645 社、構成比 72.8%)に比べてわずか 0.4 ポイント下回ったものの、 この 2 年間で大きな変化は見られなかった。 他方、 「休廃業」している企業が 1382 社(構成比 27.6%)を数え、前回調査時(1327 社)から 55 社増加した。全体の 4 社に 1 社が、実質的な活動停止に追い込まれたままとなっている。 過去の調査結果を見ると、2011 年 6 月から 2012 年 2 月にかけて事業を継続している企業が 20 ポイント増加したが、震災発生から約 1 年が経過して以降、この 3 年は「事業継続」企業が 7 割 強で推移していることが分かった。 東北3県・沿岸部 「被害甚大地域」 5004社の活動状況推移 2011年6月 2012年2月 社数 構成比% 社数 構成比% 事業継続 2,506 50.1 3,507 70.1 休廃業 実態判明せず 合計 2013年2月 社数 2015年2月 構成比% 社数 構成比% 3,645 72.8 3,622 72.4 563 11.3 1,268 25.3 1,327 26.5 1,382 27.6 1,935 38.7 229 4.6 32 0.6 0 0.0 5,004 100.0 5,004 100.0 5,004 100.0 5,004 100.0 2. 業種別 2015 年 2 月の活動状況を業種別に見ると、「事業継続」の比率が最も高いのが「運輸・通信業」 で 85.2%(208 社)。次いで「卸売業」の 80.2%が続き、この 2 業種が 80%を超えるなど全体平 均(72.4%)を大きく上回る比率となった。両業種ともに総じて多額の設備投資を必要とせず、 被災地以外に得意先を有するケースも多く、他業種に比べて事業継続への障壁が相対的に小さか ったためと見られる。一方、「小売業」は 63.6%と、業種別で唯一 60%台にとどまった。限られ た地域で細々と営業を続けていた零細業者が多く、顧客である地元住民の多くが長期の避難生活 を余儀なくされたことで、従前の営業基盤を喪失したことが影響していると見られる。 業種別 建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・通信業 サービス業 不動産業 その他 合計 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 事業継続 構成比 社数 (%) 1,239 71.1 456 74.3 482 80.2 490 63.6 208 85.2 584 72.4 63 74.1 100 70.9 3,622 72.4 休廃業 構成比 社数 (%) 503 28.9 158 25.7 119 19.8 280 36.4 36 14.8 223 27.6 22 25.9 41 29.1 1,382 27.6 合計 構成比 社数 (%) 1,742 100.0 614 100.0 601 100.0 770 100.0 244 100.0 807 100.0 85 100.0 141 100.0 5,004 100.0 2 2015/3/3 第 4 回 : 東北 3 県・沿岸部「被害甚大地域」5000 社の追跡調査 3. 各県別の活動状況 岩手県 岩手県内の「被害甚大地域」にあった 1224 社の活動状況を再確認したところ、 「事業継続」を 確認できた企業が 1013 社(構成比 82.8%)を数え、8 割を超えた。他方、 「休廃業」は 211 社(同 17.2%)となり、2 年前の前回調査時に比べて 15 件増加している。 岩手県 2011年6月 社数 2012年2月 事業継続 構成比% 687 56.1 休廃業 135 実態判明せず 合計 2013年2月 社数 構成比% 999 81.6 11.0 196 16.0 2015年2月 社数 構成比% 1,027 83.9 196 16.0 社数 構成比% 1,013 82.8 211 17.2 402 32.8 29 2.4 1 0.1 0 0.0 1,224 100.0 1,224 100.0 1,224 100.0 1,224 100.0 宮城県 宮城県内の「被害甚大地域」にあった 2575 社の活動状況を再確認したところ、 「事業継続」を 確認できた企業が 2158 社(構成比 83.8%)を数え、3 県の中で最も高い比率となった。他方、「休 廃業」は 417 社(同 16.2%)となり、2 年前の前回調査時に比べて 43 件増加している。 宮城県 事業継続 2011年6月 2012年2月 社数 構成比% 1,534 59.6 2013年2月 社数 構成比% 2,131 82.8 2015年2月 社数 構成比% 2,190 85.0 社数 構成比% 2,158 83.8 休廃業 263 10.2 367 14.3 374 14.5 417 16.2 実態判明せず 778 30.2 77 3.0 11 0.4 0 0.0 2,575 100.0 2,575 100.0 2,575 100.0 2,575 100.0 合計 福島県 福島県内の「被害甚大地域」にあった 1205 社の活動状況を再確認したところ、 「事業継続」を 確認できた企業が 451 社(構成比 37.4%)にとどまり、3 県の中で最も低い比率となった。他方、 「休廃業」は 754 社(同 62.6%)にのぼり、わずか 3 社ではあるが、3 県の中で唯一 2 年前(757 社、構成比 62.8%)から減少している。 福島県 2011年6月 事業継続 285 構成比% 23.7 休廃業 165 13.7 実態判明せず 合計 社数 2012年2月 2013年2月 社数 構成比% 377 31.3 705 58.5 2015年2月 社数 構成比% 428 35.5 757 62.8 社数 構成比% 451 37.4 754 62.6 755 62.7 123 10.2 20 1.7 0 0.0 1,205 100.0 1,205 100.0 1,205 100.0 1,205 100.0 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 3 2015/3/3 第 4 回 : 東北 3 県・沿岸部「被害甚大地域」5000 社の追跡調査 4. 業績動向 震災発生前の 2009 年度と比べて、2013 年度の売上高が「増収」となった企業は 1808 社(構成 比 51.6%)で約半数を占めた。「横ばい」だった企業(193 社、構成比 5.5%)と合わせて、全体 の約 6 割の企業が震災前の売上水準に回復していることが分かった。 業種別に見ると、震 災前の売上水準を上回 った増収企業は「建設 業 」( 868 社 、 構 成 比 71.6%)が突出。他業 県別 岩手県 宮城県 福島県 合計 増収 横ばい 減収 合計 構成比 構成比 構成比 構成比 社数 社数 社数 社数 (%) (%) (%) (%) 528 53.0 64 6.4 404 40.6 996 100.0 1,098 52.5 117 5.6 875 41.9 2,090 100.0 182 43.6 12 2.9 223 53.5 417 100.0 1,808 51.6 193 5.5 1,502 42.9 3,503 100.0 ※ 2009年度および2013年度の売上高比較が可能な3503社が対象 種の増収企業比率が 30 ~40%台となっている 業種別 なか、全体平均(構成 建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・通信業 サービス業 不動産業 その他 合計 比 51.6%)を大きく上 回った。震災後の復興 特需の恩恵もあり、売 り上げを回復した建設 業者が目立った。 増収 横ばい 減収 合計 構成比 構成比 構成比 構成比 社数 社数 社数 (%) (%) (%) (%) 868 71.6 36 3.0 309 25.5 1,213 100.0 165 37.5 21 4.8 254 57.7 440 100.0 197 42.5 26 5.6 240 51.8 463 100.0 183 39.2 44 9.4 240 51.4 467 100.0 79 39.7 14 7.0 106 53.3 199 100.0 262 46.4 39 6.9 264 46.7 565 100.0 21 34.4 8 13.1 32 52.5 61 100.0 33 34.7 5 5.3 57 60.0 95 100.0 1,808 51.6 193 5.5 1,502 42.9 3,503 100.0 ※ 2009年度および2013年度の売上高比較が可能な3503社が対象 社数 また、2013 年度の損益状況を見ると、 「黒字」が 1411 社(構成比 84.3%)となっており、震災 発生前の 2009 年度(同 71.0%)に比べて、黒字企業の比率が 13.3 ポイント増加していることが 分かった。業種別では、 「建設業」の黒字企業比率が 84.0%(644 社)で、震災前の 2009 年度(構 成比 62.1%)から 21.9 ポイント増加するなど、利益を確保した企業が大きく増えている。 県別 岩手県 宮城県 福島県 合計 業種別 建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・通信業 サービス業 不動産業 その他 合計 2009年度 社数 341 1,073 245 1,659 黒字 構成比 2013年度 (%) 社数 71.8 344 71.2 933 68.6 134 71.0 1,411 赤字 合計 構成比 2009年度 構成比 2013年度 構成比 2009年度 構成比 2013年度 構成比 (%) 社数 (%) 社数 (%) 社数 (%) 社数 (%) 86.2 134 28.2 55 13.8 475 100.0 399 100.0 82.7 433 28.8 195 17.3 1,506 100.0 1,128 100.0 91.8 112 31.4 12 8.2 357 100.0 146 100.0 84.3 679 29.0 262 15.7 2,338 100.0 1,673 100.0 ※ それぞれ各年度の損益が判明した企業(2009年度=2338社、2013年度=1673社)が対象 2009年度 社数 601 230 234 158 97 276 26 37 1,659 黒字 構成比 2013年度 (%) 社数 62.1 644 71.0 179 79.6 181 81.9 102 82.9 69 77.5 192 83.9 18 67.3 26 71.0 1,411 赤字 合計 構成比 2009年度 構成比 2013年度 構成比 2009年度 構成比 2013年度 構成比 (%) 社数 (%) 社数 (%) 社数 (%) 社数 (%) 84.0 367 37.9 123 16.0 968 100.0 767 100.0 79.9 94 29.0 45 20.1 324 100.0 224 100.0 90.0 60 20.4 20 10.0 294 100.0 201 100.0 87.2 35 18.1 15 12.8 193 100.0 117 100.0 85.2 20 17.1 12 14.8 117 100.0 81 100.0 82.1 80 22.5 42 17.9 356 100.0 234 100.0 94.7 5 16.1 1 5.3 31 100.0 19 100.0 86.7 18 32.7 4 13.3 55 100.0 30 100.0 84.3 679 29.0 262 15.7 2,338 100.0 1,673 100.0 ※ それぞれ各年度の損益が判明した企業(2009年度=2338社、2013年度=1673社)が対象 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4 2015/3/3 第 4 回 : 東北 3 県・沿岸部「被害甚大地域」5000 社の追跡調査 5. まとめ 復興庁が公表した「全国の避難者等の数」によれば、公営住宅や民間賃貸住宅等で避難生活を 続ける避難者は、全国 47 都道府県、1162 の市区町村に 22 万 8863 人を数えた(2015 年 2 月 12 日 現在)。震災発生から 4 年もの歳月が経過してなお、これだけ多くの被災者が不自由な生活を余儀 なくされている。企業活動に目を転じても、震災後に「事業継続を断念した」 「事業を再開したく てもできない」という休廃業企業が多数存在する事実を忘れてはならない。 他方で今回の調査結果を見ると、未曾有の災害を乗り越えて事業活動を立て直し、震災前の売 上水準を回復した企業もここにきて目立つようになってきた。しかし、今のところ復興需要の恩 恵が大きい建設業が中心で、他の業界にこうした動きがさらに広がっていくかは予断を許さない。 アベノミクス効果もあり、国内全体で景気回復期待が高まっている。こうした追い風を生かし つつ、被災地企業の経営を安定軌道にシフトさせるためには、今後も官民挙げての継続的な支援 が不可欠といえる。 参考 震災発生後の倒産件数推移 (件) <帝国データバンク調べ、2015 年 3 月 2 日公表> (%) 東日本大震災関連倒産 阪神大震災関連倒産 原発関連倒産構成比 15.5 16 14 700 11.7 650 11.3 12 600 500 7.2 10 489 8 400 354 6 300 200 233 194 4 142 100 2 58 0 0 1年目 2年目 3年目 4年目 ※阪神大震災関連倒産は3年間で集計終了 【 内容に関する問い合わせ先 】 (株)帝国データバンク 東京支社 情報部 TEL 03-5919-9341 内藤 修 FAX 03-5919-9348 e-mail [email protected] 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内で ご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 5
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