猛禽類調査における安全対策について 発注者:新庄河川事務所 受注者:東北緑化環境保全株式会社 業務名:新庄河川事務所管内鳥類調査 発表者:管理技術者 木村 啓 1.平素における安全管理 弊社では、労働安全衛生マネジメントシステムの考えを導入し、年間を通して実効性のある「安全 衛生管理計画」を策定し、自主的な安全衛生活動の推進により、労働災害の潜在的危険性の低減等を 通じて労働安全衛生水準の向上に取り組んでいる。 <安全管理への取り組みの一例> クマ対策:クマの生態や対応等に関する社内教育を実施している。 ハチ対策:ビデオ等によるハチの生態や対応等に関する社内教育を実施すると共に、刺された場 合のアナフィラキシーショックによる事故を防ぐため、社内技術者を対象にハチ抗体検査を実施し ている。検査の結果、陽性反応が出た者には、エピペン1を携帯させている。 熱中症対策:熱中症に対する社内教育を実施している。また、現地においては、帽子の着用やこ まめな給水、塩分を多く含む塩飴や冷却材の利用、必要に応じて一時的に日陰への逃避等を行うも のとしている。また、携帯型熱中症計を携帯し、適宜機器による危険度を確認することとしている。 雪崩対策:雪崩の基礎知識やビーコンの使い方に関する社内教育を実施している。 ゼロ災ミーティングの実施:月 1 回の頻度で開催し、日常的に災害防止に努めている。 交通安全:安全運転を徹底するため、以下の事項を実施している。 マークシートによる「安全運転適性テスト」の実施 危険予測能力自己診断テストの実施 自動車教習所にて、宮城県公安委員会認定「習熟ドライバーコース」の受講(数名/年) 自動車教習所にて、宮城県公安委員会認定「冬道安全運転講習」の受講(数名/年) 自然災害対策:震度 6 相当の地震が発生した場合には、調査責任者は無線機等により調査員の安 否を確認するとともに、現地における調査員の安否や調査地の状況等について弊社安全管理責任者 へ連絡をする。その際は、携帯メールを活用する。また、携帯ラジオを携行し、情報収集に努める。 社員が経験したヒヤリハットの収集:社員へのアンケートにより、実際に経験したヒヤリハット の事例を収集し、安全意識の向上を図っている。また、結果から現状での安全管理に関する課題を 整理し、今後取り組むべき対策を検討している。 1 急なアレルギー反応を緩和する薬剤の入った自己注射。 クマ、ハチ、ヘビに対する対策(調査員に配布) 種 類 区分 内容及び対応策 東北地方にはツキノワグマが生息する。 オスは体長 80~150cm、体重 130~150kg に達する。メスはそれより小型。 人がいるとわかれば、普通はクマの方が身を隠すか逃げ去る。人の存在を早くクマに察知させる ため、鳴り物(鈴等)を携行する。クマは聴覚、嗅覚が優れているが、視覚はそれほどでもない。 出会わない クマの新しい足跡、糞、食痕等に注意し、見つけたらその場から静かに、すばやく立ち去る。 ために 子グマを見たら、近くに母グマがいるので、すばやく立ち去る。 ヤマブドウ、クリ等が実っている場所は、クマがいる可能性があるので注意する。 あわてない 距離があるときはクマから目を離さず、静かに後退し距離をとる。 ク 接近しているときは、クマを刺激しないよう、静かに動かないでいる。 マ さわがない 刺激する行動(大声、物を投げる、急に体を動かす等)をとらない。 敵意がないと知ればクマの方から去ることが多い。 出会って 非常に危険。クマは反射的に追いかけてくる。もし、走ってしまって追い 走って逃げない しまったら かけられたら、持ち物等を投げ捨てて、クマの気をそらすのも手である。 万一襲ってきたら、抵抗するとクマはさらに逆上するので、地面にうつぶ 抵抗しない せになり両手で首の後ろをガードする。 死んだふりは クマは好奇心が強く、死んだふりをした人を咬んだり引っ掻いたりする。 効かない 被害のある種類 スズメバチ類 10 種(オオスズメバチ、キイロスズメバチ他) 概要 アシナガバチ類 10 種(キアシナガバチ、セグロアシナガバチ他) ミツバチ類 2 種(ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ) 巣に近づかない スズメバチの巣では周囲数~数十 m の範囲で偵察バチが飛んでいる。 巣に振動を与えない 巣の付いた木や枝にふれない。 急に体を動かさない 頭や手を振ったりするとハチは興奮する。 襲われない 黒い服装は危険 スズメバチは黒い物に敵意を見せ攻撃する。 ために 肌を露出しない 髪の毛は露出させない。露出部は攻撃されやすい。 におい ヘアスプレー、香水、汗のにおいはハチを刺激する。 ハ 殺虫剤 ハチ撃退スプレーが市販されている。 チ 危険箇所の保護 最も危険とされる頸部、喉をタオル等で保護。 襲われて しまったら 逃げる 一旦攻撃を受けると、攻撃バチは増える一方なので、早く現場から離れる。 毒針を抜く ミツバチ類は針を残すので見つけて抜く。 刺されて 毒を絞り出す 吸引器(インセクトポイズンリムーバー)があると効果大。 しまったら 薬を塗る 刺された部位に抗ヒスタミン/ステロイド軟膏を塗る。 (応急処置) 冷やす 刺された部位を冷やす(冷水、タオル)。 人が初めてハチに刺されると抗ハチ毒抗体ができる。 ハチ毒 一部の特異体質(アレルギー体質)の人は 2 回目以降ハチに刺されるとこの抗体とハチ毒による アレルギー アレルギー反応(抗原抗体反応)が起こり、ショック症状、血圧低下、呼吸困難等の症状がおこ について り、死亡することがある。 東北地方に生息する毒ヘビは、ニホンマムシとヤマカガシである。 概要 ニホンマムシは平地から高地、ヤマカガシは平地や低山帯に多い。 裸足、サンダル等では歩かないこと。 丈夫な靴やゴム長靴が安全。素肌を露出しない長袖、長ズボンを着用すること。 襲われない 穴の中、大きな石や倒木等の陰を好んで潜む。確認しないでこれらの所に手を突っ込んだりしな ために いこと。 ヘ 崖を登るときは、手を置く場所を必ず見ること。 ビ 繁みの中を避けて道を歩くこと。 毒を絞り出す 吸引器(インセクトポイズンリムーバー)があると効果大。 咬まれて 緊縛 受傷局所より心臓に近い方を軽く縛り、毒の吸収拡散を遅らせる。 しまったら 患者を安静にし 吸引・緊縛等の応急処置後、安静を保ち、病院に急行し手当てをする。た 安心させる とえ数時間たっても抗毒血清は有効に使える。 概要 2.本業務における安全管理 【業務(猛禽類調査)の特徴】 調査手法は定点調査が基本である。同時に複数の調査地点より調査を実施するが、1 地点あ たりの調査員数は 1 人である。 調査定点は道路沿い等にも設定しており、地域住民や道路通行者の目にとまりやすい。 繁殖状況等の確認のため、営巣地踏査を実施するが、この際、林道からはずれて道のない山 中を長時間歩くこともある。 【安全管理に関する留意事項】 現地調査に際しては、事前に事務所へ調査予定表を送付して調査内容や日程等を連絡する。 また、調査当日は調査前、調査終了時に連絡をし、担当者と密に連絡をとる。 調査実施前に安全チェックシートを用いて KY 活動をする。主な事項は以下のとおりである。 当日の作業内容、調査地点、安全装備(無線機、クマ鈴・スプレー、ポイズンリムーバ ー、ハチ撃退スプレー、携帯型熱中症計、GPS、ビーコン等)、緊急時対応手順 等 無線機や携帯電話、必要に応じて衛星携帯電話を携帯し、連絡を密にする。 ラジオや携帯電話等により天候状況の最新情報を収集するとともに、悪天候により危険が予 想される場合には、調査責任者の判断により作業を中止し、車内に避難する等の対策をとる。 調査の際は、緊急連絡先を示した書類を調査員全員に配付する。 各定点間での連絡手段を確保するため、専用周波数の業務無線機を携帯させるとともに、各 個人も携帯電話を携行させる。定点配置の際は、常に他の定点と無線連絡がとれるようにし、 周囲と連絡が取れない孤立した定点が発生しないようにする。 営巣地踏査では、万が一に備え、2 人 1 組で行動する。また、GPS を携行し、遭難等には十 分注意する。可能な限り崖地や急斜面等の危険な箇所は避け、安全なルートを選択する。 以下の事項を徹底し、地元住民との協調に努める。 身分証明書及び腕章を携帯し身分を明らかにする。 駐車時は、不審車両の誤解を防ぐために、調査中である旨を示したプレートを提示する。 車両の駐車の際には、地元住民等の通行の邪魔にならないように注意する。 調査員 1 人 1 人に、調査目的や内容等の周知を徹底する。 地元住民との対応が発生した場合には、調査責任者への連絡を徹底する。 ゴミは持ち帰ると共に、定点周辺に落ちていたゴミを見つけた際には拾って持ち帰る。 3.最後に 山間部での作業では、上記に示した他にも様々な危険要因が存在する。今後も災害を未然に防止す るために、個々人の危険に対する感知能力の向上に努めるとともに、確認した危険要因を水平展開す ることにより常に安全意識の向上に努め、笑顔で業務が終了できるよう努力を続けていく所存である。 以上 腕章 無線機 調査開始前の KY 活動の実施状況 無線機や腕章を携行 塩飴 携帯型熱中症計 クマ鈴 坑ヒスタミン ステロイド軟膏 冷却材 ポイズン リムーバー 冷 却 材 クマ スプレー 冷却材 ハチ避けスプレー 熱中症対策用品 クマスプレー等の安全対策用品 エピペン ビーコン
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