税制改正 積み残しの課題

に上らなかった。消費税率の
回の衆院選で消費税はテーマ
不思議なことだが、直近2
き、最終的には消費者が負担
の税額は次々と転嫁されてい
する︵仕入れ税額控除︶。そ
った税額﹂を差し引いて納税
すべてが益税というわけでは
する必要があるため、控除額
おり、その分は買い手に転嫁
インボイスは申告税額の計算
しかしこれも誤解である。
導入に反対した。
イスは手間がかかる﹂とその
なく多くの事業者が﹁インボ
ングでは、免税事業者だけで
党税制協議会の事業者ヒアリ
される。軽減税率に関する与
んでもない﹂と再反論も予想
ンボイスを使った計算などと
ので免税制度があるのに、イ
﹁課税計算の手間が大変な
加しているのである。
くは課税選択をして取引に参
零細な事業者であっても、多
では、免税事業者となりうる
型インボイス︶から始めて、
い税額別記方式のC案︵日本
などを活用し、番号を付さな
ずはわが国に根付いた請求書
スを含む4案を提示した。ま
区分経理に当たり、インボイ
与党税制協議会は消費税の
って、インボイスではない。
間がかかるのは軽減税率であ
る﹂と反対が多い。しかし手
ボイス制度だが﹁手間がかか
多くのメリットがあるイン
いということになる。
者間の力関係で転嫁できにく
これがないわが国では、事業
実にさせるツールといえる。
された﹂という記載がある
効率であるということが確認
給付措置に比べると極めて非
策として、対象者を限定した
率は、低所得者を支援する方
された。報告書には﹁軽減税
バルフォーラムが東京で開催
構︵OECD︶消費税グロー
局者が集まる経済協力開発機
昨年4月、先進国の税制当
民の負担増となる。
消費者・税務当局、つまり国
る。これらはすべて事業者・
取り扱いが大きな問題にな
スかを巡って外食サービスの
食料支出かレストランサービ
税率 %では益税膨らみ税の信頼揺らぐ
インボイスは益税防ぐほか転嫁も確実に
軽減税率は欧州でも非効率性を指摘の声
引き上げは2012年の3党
する。事業者免税点制度と
ない。それでも免税事業者数
中央大学教授
合意で決まり、安倍晋三政権
は、課税売上高が1000万
森信 茂樹 の昨年 月の引き上げ延期の
選挙という意思表示の場で、
なかったためである。国民は
規模が膨らみ、消費税制度の
率が %に上がれば、益税の
が500万を超えるなかで税
用いて合計し、前者から後者
かる消費税額をインボイスを
業者は売り上げと仕入れにか
え出されたツールである。事
を確実・容易にするために考
が別記されており、追加的な
に大半の領収書には消費税額
践的である︵表参照︶。すで
︵EU︶型を目指すことが実
その後番号を付す欧州連合
をまねするな﹂と忠告した。
に、軽減税率について﹁欧州
サンタマン事務局長は筆者
会︶。OECD租税委員会の
︵
決定には他党が異論をはさま
消費税を吟味する機会を奪わ
信頼を揺るがす問題になる。
年4月の政府税制調査
れてきたといってもよい。
今や国税収入の3割を占め
費税額相当額を現金給付する
基礎的な食料支出にかかる消
では軽減税率に代わる給付
だけで納税額を計算できる。
消費増税法には、税率の
付き税額控除とはどのような
フランスの小規模農家は、
%への引き上げに伴う低所得
手間は大きくはないはずだ。
この問題はインボイス︵税
免税の特権を放棄してまで課
を差し引く、足し算と引き算
額票︶制度の導入で解決でき
税事業者としてインボイスを
わが国の基幹税である消費税
法には、様々な問題が内在し
る。インボイスは売り手が買
付措置を拡張して以下のよう
されている。現行の簡素な給
制度﹂であり、カナダで導入
ものか。それは﹁低所得者の
ている。このままで 年4月
い手に発行する、消費税額を
﹁インボイス﹂
導入急げ
な制度を考えてみた。
世帯収入が300万円以下
準から外れ、﹁ガラパゴス
ば、わが国の消費税は国際標
に
発行できなければ取引から排
これに対し﹁インボイスが
ができず、益税はなくなる。
ので買い手は仕入れ税額控除
はインボイスを発行できない
ある。納税しない免税事業者
別記した請求書などのことで
で、納税の正確性が担保され
手相互にけん制効果が働くの
な機能がある。売り手と買い
インボイスにはもっと大き
う理由からである。
ば可能になるので有利、とい
税額控除が、課税選択をすれ
を選択するとできない仕入れ
活用して納税している。免税
000円︶を配る簡素な給付
万円︵年金生活者には1万5
税非課税者2400万人に1
への引き上げに際しては住民
うことと記されている。8%
間は﹁簡素な給付措置﹂を行
を検討すること、それまでの
控除﹂か﹁軽減税率﹂の導入
者対策として﹁給付付き税額
低所得層に限定した措置な
は世帯で﹁おつり﹂がくる。
なので、1人3万円の給付で
程度、消費税額は5万円程度
の世帯の食料支出額は 万円
金給付する。収入300万円
の1万5000円︵同︶を現
00万∼400万円では半分
︵対象者1000万人︶、3
給付付き控除も検討必要
化﹂するといってもいい。以
除される﹂と免税事業者から
の世帯に1人当たり3万円
下、引き上げまでに解決すべ
の反論が予想されるが、イン
%へと引き上げられれ
き課題を整理したい。
る取引の各段階で、売り手側
消費税は、事業者間におけ
免税点制度を取り上げたい。
ることから、ここでは事業者
改正で縮小措置がとられてい
っている。前者は過去の税制
業者免税点制度﹂が原因とな
れた﹁簡易課税制度﹂と﹁事
事務負担への配慮から設けら
ることをいう。中小事業者の
額の一部が事業者の手元に残
買い手が負担した消費税相当
税﹂の拡大である。益税とは
に際しては消費税を負担して
免税事業者も自らの仕入れ
の配慮と説明されている。
から排除されかねないことへ
めないと、免税事業者が取引
業者からの仕入れも控除を認
税を生じさせている。免税事
大に控除でき、手元に残る益
免税事業者からの買い手は過
控除が認められる。このため
ても、帳簿による計算で税額
税事業者からの仕入れについ
わが国の消費税制度では免
を免除するものである。
円以下の事業者には納税義務
の税制当局から直接聞いた話
い。筆者がドイツやフランス
のような問題は生じていな
ボイスを導入する欧州でもこ
インボイスは転嫁を確
者に転嫁できるので、
ボイスにより相手事業
まり、消費税額はイン
間の価格は税抜きで決
だけ﹂である。事業者
い。いわば﹁通過する
るので、負担は生じな
仕入れ税額控除額とな
した消費税額は自らの
る︶が、買い手が負担
はそれを国に納税す
り手に支払う︵売り手
イスに記載した消費税額を売
買い手は、売り手がインボ
の転嫁が容易になる。
る。加えて事業者間の消費税
からみ、制度も複雑になる。
の議論になる。業界の利権が
税率の対象にするか百家争鳴
言い難い。第二に、何を軽減
額が多く、低所得者対策とは
支出額が多い高所得者に受益
る。軽減税率は絶対額で食料
ある。第一に、政策効果であ
源のほかに次のような問題が
しかし、軽減税率には、財
え方であったためであろう。
い。同控除が民主党政権の考
控除の方は議論されていな
まっているが、給付付き税額
税率の導入を目指す検討は始
%への引き上げ時に軽減
措置が実施されている。
国民的な議論が必要である。
パゴス化することのないよう
わが国の消費税制度をガラ
き上げには十分間に合う。
月なので、 年の消費税率引
ンバー︶制度の実施が 年1
保障と税の共通番号︵マイナ
金というべきであろう。社会
除というより消費税還付給付
より少ない。給付付き税額控
品を3%軽減した場合の財源
は4500億円で、生鮮食料
ので、政策効果は高い。財源
まず問題になるのは﹁益
の事業者が﹁売り上げにかか
もりのぶ・しげき 年生ま
れ 。京 大 法 卒 、旧 大 蔵 省 へ 。阪
大博士
︵法学︶。
専門は租税法
る税額﹂から﹁仕入れにかか