スライド 1 - かながわ保全医学研究会

神奈川県における
鳥インフルエンザへの取組
保全医学的視点からのアプローチ
保全医学とは
• ヒトの健康、動物の健康および生態系の
健康に関わる研究分野を統合する学問領
域
• 人と動物の健康は一つと捉え、これが地
球環境の保全に、また、安全・安心な社会
の実現につながる(One World-One
Health)という考え方
• 異なる分野、組織が連携して効率的に健
康問題の早期発見、根本原因の追究およ
び管理を目指す
One World One Health
生態系
家畜家禽
愛玩動物
人
野生動物
自然環境
人獣共通感染症の感染拡大のイメージ
環境の変化
生息環境の悪化
病原体の常在化
外来生物による影響
生物種の減少
感染率の上昇
環境
基準値?の超過
野生動物
感染の拡大
基準値?の超過
家畜
感染の拡大
人
かながわ保全医学研究会の取組
• 保全医学の概念を取り入れた神奈川県
の施策について検討を行う
• 公衆衛生、家畜衛生、野生動物等の広域
な分野に関連した問題を対象として検討
を行う
• 人獣共通感染症(zoonosis)から研究対
象を選定し、神奈川県における具体的な
対策について検討を行う
事例研究の対象とする疾病
• 人獣共通感染症であること
• 国内発生が認められること
• 事例研究するためのデータが比較的入手
しやすいこと
鳥インフルエンザを対象に事例研究
鳥インフルエンザに対する
保全医学的視点を取り入れた
アプローチとは…
• 鳥インフルエンザの発生要因をひとつの分野だ
けで捉えるのではなく、公衆衛生、家畜衛生、野
生動物、生態系などの分野も含み検討する
• 鳥インフルエンザのリスクを人に対するリスクだ
けでなく、家畜・家禽、野生動物に対するリスク
についても考慮し検討する
事例研究の目標
• 鳥インフルエンザを効率的に早期発見、あるい
は予測するための手法を検討し提案する
• 鳥インフルエンザに対する施策や啓発を行う際
に活用できるツールを作る
• 神奈川県内における鳥インフルエンザの発生を
早期発見(あるいは発生を予測)し、大規模アウ
トブレイクを未然に防ぐ
鳥インフルエンザ検討のイメージ
環境の変化
キャリアー
Bridge species?
ヒト?
生息環境の悪化
病原体の常在化?
国内事例あり
環境
シベリア等の
ガンカモ繁殖地
環境中の
ウイルス調査
Bridge speciesのウ
イルス保有調査など
国内事例あり
感染の拡大
野鳥
国内のガンカモ
越冬地等
感染の拡大
家禽等
ガンカモ飛来地の
糞便・死体等調査
養鶏場
動物園等
死体等調査
国内事例なし
?
ヒト
鳥インフルエンザのリスク評価
発生
神奈川県内に鳥インフル
エンザが発生する
リスク
鳥インフルエンザ
侵入
リスク
拡散
リスク
発生した鳥インフルエン
ザウイルスが養鶏場、野
鳥飛来地等に侵入汚染す
る
養鶏場、野鳥飛来地等が
感染源となって周辺に感
染が拡大する
発生リスクについて検討
• 発生リスクを検討することで、
県内での早期発見
シーズン前の発生予測につなげる
• 侵入、拡散リスクへの対策は、家
禽ではすでに実践されている
神奈川県内で鳥インフルエンザが
発生する可能性
何で最初に発生するか?
3つのシナリオ
シナリオ1 ヒトが最初に発症
シナリオ2 家禽が最初に発症
シナリオ3 野鳥が最初に発症
病原巣から鳥インフルエンザウイルスが運ばれる経路
(推定)
病原巣
(レゼルボア)
汚染
キャリア
養鶏場
汚染
発症・死亡
汚染
発症・死亡
ブリッジスピーシーズ
キャリア
汚染
感染
感染源
感染
感染
発症・死亡
シナリオ1の検討
ヒトが最初に発症する
人に発症する場合の経路(推定)
病原巣
(レゼルボア)
キャリア
感染
感染
発症
感染源
シナリオ1
ヒトが最初の可能性
中国等で報告されている例は、生鳥市場等
で直接感染家禽を防護措置なしで処理して
感染した事例
野鳥から直接人への感染例は報告されてい
ない
養鶏場、食鳥処理施設等で大量の感染家禽
の処理を行う人への感染リスクはある
日本においては、人が直接鳥から濃厚感
染し発症する可能性は極めて低いと考え
られる
シナリオ2の検討
家禽が最初に発症する
シナリオ2
初発が家禽の可能性
国内発生例はあるが明確な原因が不明
発生には2つのルート(推定)
野鳥等が持ち込む
• Bridge speciesの介在
人が持ち込む(環境汚染含む)
• 飲み水、餌などの汚染
• 施設の汚染
野鳥由来のシナリオ(推定)
病原巣
(レゼルボア)
汚染
キャリア
養鶏場
汚染
感染死
汚染
ブリッジスピーシーズ
キャリア
汚染
感染源
感染
人・環境由来のシナリオ(推定)
病原巣
(レゼルボア)
汚染
キャリア
養鶏場
汚染
感染死
汚染
ブリッジスピーシーズ
キャリア
汚染
感染源
感染
シナリオ3の検討
野鳥が最初に発症する
野鳥で発生する場合の経路(推定)
野鳥飛来地
病原巣
(レゼルボア)
感染
発症・死亡
汚染
汚染
キャリア
汚染
ブリッジスピーシーズ
汚染
キャリア
野鳥飛来地
感染源
感染
発症・死亡
初発が野鳥の可能性
• 国内発生例あり(国内の養鶏場発生例と
の因果関係は不明)
• ロシア北東部、中国東北部等の繁殖地、
中継地がウイルスの受け渡し場所になっ
ている(推定)
• 淡水ガモ(特にマガモ)がキャリアーになっ
ている可能性が高い
• キャリアーのカモと同じ水面を利用した感
受性の高い鳥類が感染死する
神奈川県内で発生するとしたら…
2つのシナリオ
家禽で発生(シナリオ2)
野鳥で発生(シナリオ3)
• 2つのシナリオに絞って考える
• 2つのシナリオは別々に考える
・シナリオ1は検討の対象から外す
検討手順
発生要因の検討
要因の評価
評価の見える化
特性要因の検討
要因の関与度
指標の数値化
発生リスクに係る
要因の選定
要因の評価指標
リスクの見える化
鳥インフルエンザの発生要因
鳥インフルエンザ発生に係る要因
野鳥
羽数、種類、飛来地等
養鶏場
所在地、飼育羽数、衛生管理等
感受性動物
動物園、傷病鳥獣救護施設等
人との接点(環境)
道路、公園、野鳥飛来地、観光地等
発生リスクに係る要因と関与度
• 発生リスクに係る要因の絞込み
• 野鳥
• 養鶏場
• 動物園
• 傷病鳥獣救護施設
• ガンカモ観察地点
• 関与度(AHPによる重み付け)
野鳥>養鶏場>傷病>観察地点>動物園
要因に係る指標
要因
指標
使用するデータ等
野鳥
羽数、種類(淡水、潜水)
ガンカモ科鳥類の生息調査(環境省)
養鶏場
施設数
ネット等から取得
動物園
飼育鳥羽数
ネット等から取得
傷病鳥獣救護施設
年間救護羽数
ネット等から取得
野鳥観察地(環境省調査地点)
人との接点、餌やりの有無
ガンカモ科鳥類の生息調査など
発生リスクの見える化
リスクマップがわかりやすい
3種類のリスクマップの作成
① モニタリングポイント用リスクマップ
• 神奈川県を5キロ四方のメッシュで132区に
区分しメッシュごとのリスク評価を行う
② 養鶏場指導助言用リスクマップ
• 養鶏場を中心点として半径10キロ圏内にあ
る野鳥飛来地のリスク評価を行う
③ 都市部用リスクマップ
• 野鳥飛来地を中心点として半径10キロ圏内
にある野鳥飛来地のリスク評価を行う
鳥インフルエンザ対策ツールとしての
リスクマップの活用
 神奈川県の高リスク地域を選定し効率的にモニ
タリングを行う
平時及び発生時の監視体制
モニタリングポイントの科学的根拠に基づく設定
 養鶏場が自らの周辺地域のリスク評価を行う
周辺野鳥飛来地の客観的評価
 公園管理者等が自らの施設のリスク評価を行う
公園利用者、野鳥観察者等への注意喚起
モニタリングポイント用リスクマップ
 何(野鳥、養鶏場等)から発生するかわからな
いときに使用(シナリオ2+3)
発生要因をすべて盛り込んでリスク評価を行う
国内において鳥インフルエンザの発生がない平
時に使用
 野鳥由来の発生を警戒するときに使用(シナリ
オ3)
野鳥のデータ等によりリスク評価を行う
近隣諸国、国内などで野鳥からの発生があった
ときに使用
養鶏場用リスクマップ
• 養鶏場へのウイルスの侵入経路は2ルート
ルート1 野鳥由来
Bridge speciesが介在する場合も含む
ルート2 ヒト・環境由来
養鶏場の従事者、関係者などのヒト
出入りする車両、使用水、塵埃などの物
導入鶏
• ルート1を対象に養鶏場用リスクマッ
プを作成する
養鶏場用リスクマップの目的
• 養鶏場関係者が自らの養鶏場周辺地域
の野鳥由来のリスクを把握する
• 養鶏場が発生源となった場合に周辺の野
鳥飛来地への影響を予測する
• 感受性動物の保管・飼養施設(動物園、
傷病鳥獣救護施設等)への汎用が可能
神奈川県における対策(平時)
リスクマップを活用した効果的な地域の選
定によるモニタリングの実施
野鳥からの早期発見
ハイリスク地域内の養鶏場、公園管理者
等への啓発
生態系に応じた管理の推進
• 餌やり禁止(人為的に野鳥を集めない)
神奈川県における対策(発生時)
野鳥からの発生時
• リスクマップを活用した重点監視地域の設定
• 関係者(養鶏場、公園管理者等)への啓発
• 県民等への啓発(野鳥等との適切な接し方)
家禽からの発生時
• 家伝法に基づく対応
今後の課題
モニタリング検体
• モニタリング精度を向上させるために最適な
検体を検討する(現行の糞、死体以外の検体
もあわせて検討する)
プロファイルの活用
• 野鳥飛来地や養鶏場など発生リスクの高い
場所のプロファイルを作成しデータを数値化
して評価を行う