神奈川県における 野鳥由来鳥インフルエンザ対策 神奈川県内の効率的モニタリング手法 これまで 国内で発生した鳥インフルエンザ 野鳥 日本に渡ってきた冬鳥 感染鳥やその糞便と接触した鳥 餌場、捕食など 養鶏場のニワトリ 発生原因は不明 野鳥、人・環境(由来 野鳥の発生シナリオ シベリア等で鳥インフルエンザウイルスに感染 自らは発症せずキャリアーとしてウイルスを保有し たまま、日本国内に飛来(主にガンカモ類の冬鳥) 飛来ルートは千島列島経由、中国朝鮮半島経由な どあり、鳥の種類によっても異なる 国内の中継地、越冬地となった湖沼などをウイル スで汚染 同じ湖沼を利用する感受性の高い鳥類が感染して 発症 1.渡り鳥の飛来経路の解明事業 秋の渡りは、8 月下旬から10 月頃開始 秋の渡りは、9 ~10 月頃開始 オナガガモ 環境省鳥インフルエンザマニュアルより:渡り鳥飛来経路解明調査報告書(環境省 2008;2009;2010;2011)より飛翔ルートを模式化して図示。時期はおよその目安。 マガモ 4 環境省鳥インフルエンザマニュアルより:渡り鳥飛来経路解明調査報告書(環境省 2008;2009;2010)より飛翔ルートを模式化して図示。時期はおよその目安。 1.渡り鳥の飛来経路の解明事業 秋の渡りは、9 月下旬から10 月上旬頃開始 オオハクチョウ 秋の渡りは、9 ~10 月頃開始 ヒドリガモ 5 環境省鳥インフルエンザマニュアルより:渡り鳥飛来経路解明調査報告書(環境省 2010;2011)より飛翔ルートを模式化して図示。時期はおよその目安。 環境省鳥インフルエンザマニュアルより:渡り鳥飛来経路解明調査報告書(環境省 2008; 2011)より飛翔ルートを模式化して図示。時期はおよその目安。 リスクマップの作成 神奈川県を5㎞四方のメッシュで区分 リスク評価は7段階 リスク式の作成 1メッシュ=(①×AHP係数(0.33))+(②×AHP係数(0.29))+(③ ×AHP係数(0.08))+(④×AHP係数(0.13))+(⑤×AHP係数(0.17) ) ①野鳥(ガンカモ調査デ 項目 単位 ータ) ②養鶏場 ③動物園 ④公園(池等のある公園 ) 評価基準 設定の根拠 小泉さんのデータから調整して転用。メッシュ 内数値は、メッシュ中心点より10㎞圏内のガン カモ飛来数合計を7段階評価。一番多いところ で約1万4千羽。1点=1~125、2点=126~ 250、3点=251~500、4点=501~1000、5点 =1001~2000、6点=2001~4000、7点= 4001~ 野鳥の場合、発生1羽ごとの対応となるので、羽数で 評価。神奈川県に飛来するガンカモ類、その他カワ ウ、カモメ、サギ類を合わせると約10万羽飛来する。 昨シーズンの野鳥発生のデータから、10万羽に1羽 が健康な状態でウイルスを運んでくると見積?健康 な鳥での保有率は韓国や香港のデータも参照する *。 ① 野鳥 羽数 ② 養鶏場 1点=0件、2点=1件、3点=2件、4点 養鶏場の場合、羽数ではなく、養鶏場の施 養鶏場の =3~4件、5点=5~8件、6点=9~ 設単位での発生のカウントや対応が主と 数 16件、7点=17件以上。(1メッシュ15 なるため、施設数として評価。昨シーズン のデータ:9県、24農場、約185万羽で発生 件が最高値。) ③ 動物園 1点=0羽(動物園無)。一番多くて52 野毛山、ズーラシア、金沢、夢見が崎の4 飼育鳥羽 羽(野毛山)。2点=1~10羽、3点=11 園のみの飼育鳥データがあり、ここからリ 数 ~20羽、4点=21~30羽、5点=31~ スク種(近縁含む)に該当する飼育鳥の合 40羽、6点=41~50羽、7点=50以上 計数をカウント。 ④ 公園 池等のある公園のみを対象とする。人と 野鳥のインターフェイスとして考慮。昨 1点=0園、2点=1園、3点=2園、4 シーズンのデータ:3例(12月に富山県の 公園の数 点=3園、5点=4園、6点=5園、7 動物園のコブハクチョウ、2月に兵庫県 点=6園(1メッシュ3園が最高値) 公園のコブハクチョウ、山口県公園のコ クチョウで発生) 傷病鳥 ⑤ 獣救護 施設 神奈川県で年間で救護される傷病鳥の数 7 年間救護 自然環境保全センター、野毛山、ズーラ は、約600羽。そのうちリスク種は約35羽。 羽数(施設 シア、金沢、夢見が崎、1点=施設なし、 神奈川県の傷病鳥のデータ詳細を入手す 数) 2点=施設有 る。 ⑤傷病鳥獣救護施設 1メッシュ:5×5km 神奈川県内のガンカモ調査地点 毎年1月に全国一斉に行われているガンカモ調査 神奈川県内のガンカモ調査ポイント:約300地点 8 各項目の施設等の位置データ 野鳥 養鶏場 公園 動物園 傷病救護施設 リスクマップ ver.1 (リスクスコアを等間隔で分類) 1メッシュ=(①野鳥×AHP係数(0.33))+(②養鶏場×AHP係数(0.29))+(③動物園 10 ×AHP係数(0.08))+(④公園×AHP係数(0.13))+(⑤傷病施設×AHP係数(0.17)) さらに詳細なリスク分析 各項目のプロファイリングをリスク評価に 反映させる。 11 各項目(要因)のプロファイリング 養鶏場の評価項目 鶏舎の有無 AHP重み付 け 0.3394 飼養衛生管理 0.2292 マニュアル 50点以下=10 70点以下=5 90点未満=3 90点以上=1 飼育規模 0.0588 鶏由来の流通 鶏舎への出入り 0.1209 過去に野鳥を含め 10万羽以上=10 搬出・搬入業者 AIが発生した地域 5万羽以上=5 他農場と同じ=10 からの搬入の有無 1万羽以上=3 独自委託=5 あり=10 1万羽未満=1 自己処理=1 なし=1 直売店の有無 0.1929 0.0588 評価 鶏舎なし=10 開放鶏舎=5 ウインドレス=1 経緯等メモ ・養鶏場によっては 詳しい人に聞いて分類を考える。通常 飼養衛生管理基準は 開放とウインドレスが 糞便は自己処理(自分のトラックで自 バードウォッチャー チェック項目があり、 主に千葉、茨城等 混ざっているところが 分の敷地内の発酵施設に運ぶ)で業 が卵をかってウイ 表になっているが、点 同一経営母体で10 から入れている。 ある。 ・ウインドレ 者に頼んでいるところはないはず。発 ルスを運ぶリスク。 数制ではない。しかし 万羽以上のところ せこはん業者、病 スは1件以下。 ・ 酵してしまえばウイルスは死滅するが、直売所と鶏舎は切 この項目が25個ある は県内にはない 気のニワトリ入った 卵を産む場所以外は 施設周辺への野鳥、ネズミ、ハエ等の り離して解釈してい ので、1項目4点とす らリスク高い。 放し飼いのケースは 出入りがあるとここから汚染が広がる る れば点数化できる。 10件以下 リスクがある。 あり=10 なし=1 養鶏場=(鶏舎の有無×AHP係数(0.3394))+(飼養衛生管理×AHP係数( 0.2292))+(飼育規模×AHP係数(0.0588))+(鶏舎への出入り×AHP係 12 数(0.1929))+(直売店の有無×AHP係数(0.0588)) 各項目(要因)のプロファイリング 探鳥地(公園含む)の評価項目 リスク種 リスク種 (水面採餌ガモ) (潜水採餌ガモ等) AHP重み付け 0.6017 0.2084 ・直近の過去3年の内に飛来したかどうか (2011、2010、2009) 基準データ 何のデータを基にするか? →環境省ガンカモ調査データ 評価 経緯等メモ 出入りする人の数 野鳥とヒトとの接点 0.0695 探鳥会の有無(11月~3月の期間) 0.1203 現地確認+野鳥の会幹事に聞き取り(幹事 会が月一の開催なので、ここでアンケートを 取る) データ→支部報 過去3~5年くらいを 見て、割り出す。 ・ex)三溪園は多い 毎年いる=10 過去にいたことがある=5 全くいない=1 どのくらいの人がこのポイントにアクセ スするか 探鳥 会を基準に評価:冬期(11月~3月)に 開催される探鳥会の有無 11月~3月にこの場所で淡交会がある 場合=10点、 無い 場合=1点 餌やりの有無/釣り人などを含め人が水鳥の 糞を踏む機会の有無 機会がかなりある場合(餌やりなどでカモ類 が上陸しているところに人が踏み込める等) =10点、 機会がある(カモ類が上陸しているであろう 場所に人が踏み込める場合等)=5点、 機会がない場合(堤防、柵などで人とカモ類 の間に距離がある)=1点 ・どうしてこれらの種類にしたのか? →これらの種類は、virusを持ち込む可能性が 高いため ・冬鳥の飛来時期に合わせて、探鳥会 が開催されることを考慮する ・11月~翌年3月までの人の出入りを 考えて、カウントする(冬鳥をメインに考 えていあるため、上記の期間で考える) ・餌やり、糞を踏む、釣り 人 ・傍まで寄れるか、離れたところから見るか ・糞などを見物客が踏んで、広めてしまうリス ク ・現場を確認しないとわからない (リスク種(淡水ガモ)×0.6017)+(リスク種(潜水ガモ)×0.2084)+ (接触度×0.1203)+(探鳥会開催×0.0695) 13 水面採餌カモ類確認地点 マガモ、オシドリ、ヒド リガモ、コガモ、オナガ ガモ、ヨシガモ、オカヨ シガモ、ハシビロガモ 14 潜水採餌ガモ類確認地点 キンクロハジロ、スズ ガモ、ホシハジロ、ホ オジロガモ 15 野鳥と人との接点聞き取りアンケート調査 16 リスクマップ ver.2(仮定) 1メッシュのリスク値=(①野鳥×AHP係数(0.33))+(②メッシュ内の養鶏場 17 評価値合計×AHP係数(0.29))+(③動物園合計×AHP係数(0.08))+( ④探鳥地合計×AHP係数(0.13))+(⑤傷病施設合計×AHP係数(0.17)) 【以前のバージョン】 メッシュ中心点から10㎞以内のガンカモ調査ポイ ントの羽数を単純合計 問題点:メッシュ境界部に大きな飛来地があっても 反映されない。 羽数と種類によるリスク評価を行う 羽数は多いほうがリスクが高いと考える 羽数はメッシュ中心点からの距離係数を乗じて補 正する 種類は淡水ガモ、潜水ガモによるリスク評価を行う 淡水ガモは潜水ガモより10倍リスクが高いと仮定 する メッシュ№13のリスク値を計算する №1 №2 №3 №4 a c b №6 №7 №5 №8 №9 №10 d 半径10㎞ №11 №12 e №16 №17 №13 f №18 №14 №15 №19 №20 g h №21 №22 №23 №24 №25 メッシュのリスク値を求める 調査地点 淡水ガモ (羽) 潜水ガモ (羽) 距離 ㎞ a 100 100 13 b 9 c 14 d 8.5 e 5 f 0.1 g 2 h 7 • 中心点から10㎞以上離れる場所は対象外 • 距離係数 評価値 モニタリングポイント用リスクマップ最終版 モニタリングポイントの設定 リスクの高い地域を選択 ハイリスク施設のある地域を追加 調査ポイントの設定 1メッシュ内に5つの観察地点がある 観察地点の重要度の比較 調査地点のガンカモの羽数と種類 淡水ガモ 近隣のガンカモ飛来状況 カモと人との接点(餌付け、カモの糞などを踏 む可能性) 上記の項目の点数化 調査地点の優先順位 モニタリングの材料 糞便 死亡鳥 生鳥を捕獲しスワブを採取 囮 提言 神奈川県に飛来する冬鳥(ガンカモ類)の主 なルートは千島から北海道・東北地方を経て 関東平野に至るルートと考えられる 冬鳥が飛来するシーズンは10月~翌年春ま でと推定されるためモニタリングは10月~翌 年3月までとする 平時(鳥インフルエンザ非発生時)は糞便を 検査材料とする データ蓄積を積極的に行い神奈川県に飛来 する野鳥(ガンカモ類)の鳥インフルエンザ保 有状況を把握する 提言 北海道・東北地方において野鳥に鳥インフル エンザの発生があった場合は、対策を強化す る 対策の強化として、モニタリングポイントを増 やすことや検体を糞便だけでなく生鳥を捕獲 してスワブを採取するなどの対策を行う モニタリング結果については速やかに公表し 養鶏場関係者や公園管理者が適切な対応を 図るための一助とする バードウォッチャーや公園利用者等が適切に 野鳥と接するための一助とする
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