りん か かん た ニホンナシ新品種‘ 凜 夏 ’と‘甘 太 ’ 1 新しい品種の内容 (1)背景・目的 (独)農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所が育成した2品種‘凜夏’、 ‘甘太’ について、品種適応性試験を3か年行った結果、いずれも鳥取県で栽培が可能な有望品 種と判断したので紹介する。 (2)品種の要約 【凜夏】 1)収穫時期は8月下旬の赤ナシである。 2)平均果重は 500g程度、平均糖度は約 12%で大玉である。 3)短果枝、えき花芽の着生ともに良好で、豊産性である。 【甘太】 1)収穫時期は9月下旬から 10 月上旬の青ナシである。 2)平均果重は 500g以上、平均糖度は 13.5%で高糖度である。 3)短果枝、えき花芽の着生ともに良好で、豊産性である。 2 試験成果の概要 【凜夏】 (1)果実特性 8月下旬に収穫できる赤ナシで、 ‘幸水’と同時期に収穫できる。果重は 500g程度 と大玉になり、糖度は 12%程度である。心腐れとみつ症は年によってわずかに発生す る。日持ちは常温で 10 日程度である。 (2)樹体特性 短果枝とえき花芽の着生が多く、豊産性である。樹勢や枝の発生密度は中庸である。 開花時期は過去3年間の平均で4月 16 日であり、‘おさゴールド’より3日早い。 【甘太】 (1)果実特性 9月下旬から 10 月上旬に収穫できる青ナシで、 ‘新高’の少し前である。果形は‘王 秋’のような紡錘形である。果重は 500g以上、糖度は 13.5%以上となり高糖度で、 風味がある。心腐れとみつ症は見られていない。日持ちは常温で 10 日程度である。 (2)樹体特性 短果枝とえき花芽の着生は良好で、豊産性である。樹勢や枝の発生程度は中庸であ る。開花時期は過去3年間の平均で4月 19 日であり、‘おさゴールド’と同時期であ る。 (3)栽培上の留意点 果面はサビの発生が多く、無袋栽培では赤ナシのような見た目となり、有袋栽培で あってもサビがまだらに発生する。 3 普及の対象及び注意事項 (1)普及の対象 県下全域のナシ栽培地域 (2)注意事項 1)‘凜夏’はやや条溝果が見られるため、摘果時に注意する。 2)‘甘太’は収穫適期が外観から判断しにくいため、取り遅れに注意する。 写真1 ‘凜夏’の着果状況 写真2 ‘甘太’の着果状況 表1 ‘凜夏’および‘甘太’の樹体特性と開花期 枝の発 短果枝 えき花芽 品種名 樹勢 始 生密度 の着生 の着生 凜夏 中 中 中 中 4/12 甘太 強 中 多 中 4/15 幸水 中 中 少 中 4/16 おさゴールド 強 多 多 多 4/16 新高 弱 少 多 多 4/9 ※開花期は、‘おさゴールド’は2011、2013年の平均値、 その他は2011~2013年の平均値(鳥取園試) 表2 ‘凜夏’および‘甘太’の収穫期と果実特性 収穫期 果実 品種名 果重 糖度 始 終 (g) (%) 凜夏 8/19 8/29 519 12.0 甘太 9/24 10/1 547 13.9 幸水 8/17 8/25 398 12.7 おさゴールド 9/9 9/19 367 11.8 新高 10/2 10/10 767 12.0 ※‘おさゴールド’は2011、2013年の平均値、 その他は2011~2013年の平均値(鳥取園試) ‘おさゴールド’は有袋栽培、その他は無袋栽培 4 開花期 満開 4/16 4/19 4/20 4/19 4/12 終 4/21 4/23 4/24 4/22 4/17 果実生理障害 pH 日持ち (日) 心腐れ みつ症 4.79 4.74 5.21 4.62 4.91 14 13 8 21 19 少 なし 少 なし なし なし なし なし 少 なし 試験担当者 果樹研究室 *現 研究員 田邊未来 研究員 高濱俊一 * 室 長 池田隆政 西部農業改良普及所副主幹
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