“人と共に生きる” グループホームみのり 地域に広げ

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協会の活動・看護関連ニュース
Vo
l.
571 2015.2.15
統括保健師人材育成プログラム
健康課題に有機的に取り組む力を
日本看護協会は1月 26 日、統括
保健師人材育成プログラム(後期集
合研修)を開催した。本事業は、厚
生労働省先駆的保健活動交流推進事
業として市区町村の統括保健師を対
象に実施する、全国初の現任教育プ
ログラム。グループ演習や講義を通
して、他職種や組織に働き掛け連携
しながら活動を推進する統括保健師
としての力量形成を図る。
研修には、全国から 48 人が参加。
昨年8月に行った前期集合研修とそ
の後の自組織での実践を経て、今回
は取り組みの成果を共有し、求めら
れる役割・機能について議論した。
研修全体を振り返る講話では、長
崎県立大学の平野かよ子参与、帝京
大学福岡医療技術学部の藤丸知子教
授が、統括保健師としての活動を評
価していく枠組みや、活動する上で
重要なポイントを解説した。
午後には、グループごとに統括保
健師に必要な技術や活動のコツに関
する発表を行い「統括としての信念、
行動力を持つことが重要。そのため
に情報の分析力や全体を見渡せる目
を養う」「上司や他職種に必要な情
グループごとに統括保健師に
求められる技術について発表
報を適切に提供し、企画力、発想力
を駆使し、保健師一丸となって取り
組める体制をつくりたい」など、活
発な意見が飛び交った。
本会の中板育美常任理事は「高齢
者対策、虐待予防、災害時の公衆衛
生など、有機的な連携なしには解決
しづらい健康課題が多い」と統括保
健師の配置の必要性に触れ、「今後
は、実態を捉えて先のことを予測す
る力や保健師のキャリア形成支援、
柔軟に組織を整え、効率的に運営で
きる能力を身に付けてほしい」と
エールを送った。
最後に、中板常任理事が参加者一
人一人に修了証を授与し、7カ月に
わたる研修を締めくくった。
有限会社みのり ………………………北海道
グループホームみのり
職員数 看護職:9人(併設する訪問看護ステーショ
ンみのりの職員数)
介護職:29 人
利用者 利用者:18 人 平均年齢:約 85 歳
平均要介護度:4∼5
北海道のほぼ中央の上川盆地の中心部に位置
する旭川市。そこで利用者本人の力を引き出す
ケアを提供しているのが、有限会社みのりが運
営する「グループホームみのり」だ。利用者の
多くは、認知症や精神疾患、経済的な理由など
で病院やその他の施設では受け入れが難しい人
ばかり。併設する訪問看護事業所の職員と介護
職が連携し、目的志向型のケアを行っている。
なりたい姿をかなえるケア
「本人のなりたい姿を実現させるのが、目的
志向型のケアです」と代表の白瀬幸絵さんは話
す。例えば、足腰の悪い利用者が頻繁に立ち上
がると、転倒のリスクが高まる。だが、車いす
に座らせてリスクを回避しても、それによって
立位の保持や歩行の機会が減り、ADL が悪化し、
褥瘡(じょくそう)の発生につながってしまう。
一方、目的志向型のケアでは、まず利用者が
頻繁に立ち上がる目的を探る。それが「トイレ
に一人で行くこと」の場合には、排尿・排便コ
ントロールに重点を置くとともに、トイレまで
報告書のご案内
被災地域における
看護職員実態調査報告書
日本看護協会は「被災地域におけ
る看護職員実態調査報告書」を発行
した。調査は、東日本大震災とそれ
に伴う津波、原発事故による被災3
県(岩手、宮城、福島)沿岸部の医
療施設などを対象に、2014 年6∼
7月に実施。11 年5∼8月に実施
薬剤管理ボードの前に立
つ白瀬さん。全職員が服
薬状況を把握できる
最終回
昨年9月に、台湾と香港を訪ね
ました。台湾では、台湾看護師協
会創立 100 周年記念セレモニーへ
の参加と学会講演を行いました。
さらに、ジュディス・シャミアン
国際看護師協会(ICN)会長、王
桂芸台湾看護師協会長らと共に、
馬英九総統と会見しました。香港
では、アジア太平洋小児看護学会
に参加し講演しました。
11 月には、5月のスイス・ジュ
ネーブに続き、オーストリアのザ
ルツブルクで2回目の ICN 理事
会を開催しました。今年6月に韓
国・ソウルで行う会員協会代表者
会 議(CNR) に 向 け、 会 員 協 会
からフィードバックされた ICN
の安全な動線の確保や必要に応じて下肢のリハ
ビリを組み込んでいく。職員が利用者のなりた
い姿を知ることで、利用者と職員がゴールを共
有することができ、効果的なケアの提供につな
がる。「みのり」は利用者の9割が褥瘡のリス
クを抱えているが、発生件数は1件もない。
目的志向型のケアの実践には、利用者の状態
を正確に評価することが必要となる。そのため、
全利用者を対象に毎朝夕2回の足浴を行い、コ
ミュニケーションを取りながら状態を把握する
機会を設けている。足浴に期待するのは、リラッ
クス効果だけではない。「足を刺激し、血行を
良くすることで、転倒予防効果が期待できます。
歩行は ADL に大きく影響するので、特に気を
配っています」と白瀬さん。そのほか、皮膚や
爪の状態をこまめに確認、適宜対応することで、
歩行機能の維持・回復を促している。
台湾での会見。左より金井第一副
会長、シャミアン会長、馬総統
のガバナンスの原則や投票システ
ムに関すること、ICN の運営お
よび戦略の見直しと今後の財務状
況の見通しなどを検討しました。
第一副会長は、企画財務委員会
の委員長を兼ねており、いかに限
られた資源を有効活用するか頭を
悩ますところです。CNR は、白
熱した論議になりそうです。
(ICN 第一副会長 金井Pak雅子)
した調査の追跡調査にあたる。本報
告書では、被災から3年を経た施設
の稼働や看護職員の確保状況などを
中心にまとめている。
報告書は、本会 HP「発行物」に
掲載している。
訂正 1月号付録 12 面「6. 時間外
勤務」の「勤務時間内の院内研修」
の表記(3カ所)は「勤務時間外の
院内研修」です。
スタッフ教育の一環として、同社はハンディ
キャップを持った人の雇用も行っている。「障
害を持った人は優しさに敏感で、優しさのない
職場ではすぐに辞めてしまいます。彼らに楽し
いと感じてもらえる職場を理想としているの
で、彼らには優しい職場であることのバロメー
ターの役割を担ってもらっています」。優しさ
に敏感だからこそ、彼らが利用者と接する際の
言動はほかの職員の手本になっている。
また児童デイサービス、放課後等デイサービ
ス、超重症児の通所や生活介護サービスを提供
する事業所を併設しているため、施設内の共有
スペースを通じて自然と世代間交流が行われて
いる。グループホームの利用者の多くは複数の
疾患を抱えているため、家族との面会が困難な
人も少なくない。そういった人たちにとって、
共有スペースでの関わりは重要な意味を持つ。
「彼らは家族であり、一緒に病と闘う仲間です。
交流を通じて状態が安定した人は多く、そのた
びに私たちは利用者から可能性について教わっ
ています」と白瀬さんが話すように、表情の変
化はもちろん、病状の安定化にも効果がある。
地域に広げる目的志向型のケア
人と人との関わりを大切にするのは施設内だ
けではない。地域の人々との交流にも力を入れ
ている。毎年開催している「みのり祭」はこと
しで 12 年目を迎える。参加者には料理などが
振る舞われ、利用者・家族だけではなく、地域
モットーは“人と共に生きる”
住民にも喜ばれている。今後の展望について、
起業当初から“人と共に生きる”を大切にし 「学生を対象とした訪問看護の体験学習を広く
てきた白瀬さん。職員と利用者はもちろんのこ 行いたいです」と話す白瀬さん。本人の力を引
と、職員同士や利用者同士でも互いに支え合う き出す目的志向型のケアが地域全体に広がるこ
姿が見られる。
とを目指している。