10.ようこそ先輩 人を殺してみたかった~17歳の体験殺人!~(藤井誠二)

講座番号 10 番 第 3 部(14:00~15:30)
ようこそ 先輩
「人を殺してみたかった」
~17 歳の体験殺人!~
講師:藤井 誠二さん (ノンフィクション作家)
1965(昭和 40 年)、名古屋生まれ 東海高 36 回卒。
自転車部OB。高校時代に『オイこら!学校 高校
生が書いた“愛知”の管理教育批判』を出版。そ
の後、ノンフィクション作家として少年の凶悪犯
罪を取材し、「人を殺してみたかった!衝撃のル
ポルタージュ(2001 年・双葉社)」など。少年犯罪
や、教育に関する著書を多く手掛ける。
少年少女の凶悪犯罪・・・加害者の共通項は「人間」であること
まず始めに少年の凶悪犯罪が、世間から注目されるようになったのは 1997 年 2 月、神戸児童連
続殺傷事件だ。これは、当時中3の加害者が小学生 5 人を次々と襲い、2 人を殺害した凶悪事件で
ある。
それから 15 年余り。この時期から一緒に発展してきたもの…それはインターネット(ここ数年では
LINE や Twitter、Facebook などの SNS)だ。もちろん、これが凶悪犯罪の根本的な原因だと決め付け
ることはできない。
しかし、今年 1 月 27 日の名大女子学生の事例では、加害者がTwitterで「予兆」ともみられるつぶ
やきをしている。その上そのつぶやきを煽るような返しのつぶやきもあった。
昨今起きている「人を殺してみたかった」という事件を見てみると、人を殺したいと何のためらいも
なく思っている人が世の中にいることがわかる。世間はそのような凶悪犯罪を起こすような人々は精
神異常である、と決めがちだが、最近では何人に一人という割合で何らかの先天的な「障害」を持っ
ているという専門家の指摘もあるぐらいで、かといって、その人たちが犯罪に走る訳ではない。藤井さ
んは「身近なところにそういう考え方の人がいるかもしれないし、自分自身だって、もしかしたら他者
からみたら異常だと思われるかもしれない」と藤井さんは言う。
ここで、殺人事件の裁判などで登場するフレーズは、「精神障がい」だ。精神障がいは責任能力
がないと診断されて裁判もおこなわれないまま無罪になる場合もある。
ここで世間の常識に1つの勘違いが発生している。藤井さんは、「精神鑑定は、もちろん精神科医
が行うが、結果によって起訴するか否かを決めるのは検察官だ。医者が判断するのは本来、精神病
かどうかだけだ。それなのに、加害者が精神障がいとも思われる事件が発生するとテレビに登場して
いる精神科医が加害者の内面や司法の手続き的なことまでしゃべるのが、そういった勘違いを社会
に植え込んでいる」といわれる。
人間という高等動物の精神は、複雑で分かりにくいものだ。だから少年少女の凶悪犯罪の根本的
原因は、現代の精神科学でも説明出来ない。藤井さんは、豊川事件、佐世保事件、名大生事件の
加害者に共通するのは「人間」であること以外にないと語る。実は、本当は何もわからないのだ。
ノンフィクション作家という中間の仕事
少年少女が凶悪犯罪を起こす理由はよく分からない。しかしなぜ、藤井さんは本を書き続けるの
か?それは、「ノンフィクション作家とは、この世界にある問題を提示し、またその解決法が分からな
いのならば分からないなりに、その経路を提示する。そして、読者に考えてもらう。そのために書いて
いる」ということからである。
藤井さんは高校時代からデモに参加するなど「学校外」に飛び出していた。ミニコミやビラもたくさ
んつくった。だから社会にこの世の中の現状を伝えることができる今の仕事に就いたのかもしれない。
「ノンフィクションを書くという仕事はジャーナリストと同じではないか」と考える人もいるかと思う。藤井
さんは「ノンフィクション作家という仕事は、ジャーナリストと作家の中間的な領域をカバーできる」とい
われる。「広い意味ではジャーナリズムなのだけど、新聞やテレビ、ネットニュースのようなスピードを
優先するわけではなく、一つのテーマや情報を時間をかけて深く掘っていくのがぼくは好きです。大
切なことは複眼で見ること。つまりは自分の考えと世間の実情を知って、自分を変えてゆき、変えるこ
とをやめず、恐れず、受け止め、自分を鍛え、単眼的にならないことが大切だ。」と藤井さんはいわれ
る。
東海中の授業に「情報」があるが、これも情報社会の今を生きるために、溢れる情報の1つ1つか
ら、ある答えを出すための授業といっても過言ではないだろう。広い意味ではジャーナリズムと同じ
様なことが実生活に役立つことを示しているのかもしれない。
しかしながら、世間の人々全員が情報の授業で学ぶことが出来る訳ではない。だから、事件や出
来事が起きている現場に赴き、実際に人々に会い、歴史的な史料はインターネットにはひっかから
ないまま埋もれていることが多いから、あくまでもバーチャルな情報環境に頼らず、自分の五感を大
事にする。ビッグデータとも言える膨大なインターネットの情報に依拠していてはダメだ。ビーグデー
タが導き出してくる答えに惑わされてもいけない。ノンフィクションを書くという行為はあくまで生身の
人間と向き合うことだ。
当日は…
取材を通して変わって行った藤井さんのお考えや、ノンフィクション作家とはどのような職業な
のか、このサタプロニュースでは伝えきれなかったことなど、より詳しく講義をして頂きます。藤井さ
ん流のいのちの授業です。
文責:1 年A組 玉田悠人・海老原巧哉