イネミズゾウムシの薬剤防除 1．試験のねらい 栃木県においては水稲の害虫イネミズゾウムシの発生が昭和57年に初確認さ肌、年々、雑 地域が拡大、多発生地においては越冬後成虫による葉の食害も間題となった。そこで、昭和60 年厚ぴ61年に多発地の芳賀郡益子町塙において薬剤による防除を検討したので栂要を報告する。 2．試験芳法 111昭和60年 試験は5月5日、稚茜機械移植のアキニシキ栽培ほ場において、1区2．9∼3，9a，1蓮制 により実施した。薬剤の処理は表一1に示すとおり育苗箱施用は粒植直前に所定量を育苗箱上 より、水面施用は5月21目及ぴ6月4則こ10a当たり4kgを施用した。 蹄効黙越冬後碑虫の甲及ぴ葉の錨状況を1区1・50株（50株x3か所）について 見取法により調べた。食害状況は食害程度別基準〔食害葉率がA：91％以上、B：61∼90 ％、C：31∼60％、D：1∼30％、E：0％〕により調ぺ、次式により被害度を計算し たo 4A＋3B＋2C＋1．D 被害度＝ ×100 4X調査株数 幼虫及ぴ土まゆ密度は7月4目に根部の洗出法により、新成虫密度は捕虫網によるすくい取 りにより調ぺた。幼虫・土まゆ及ぴ新成虫密度は隣接の一般無防除ほ場においても調べた。 ② 昭和61年 試験は5月7目、稚苗機械移植のアキニシキ栽培ほ場においてr区1．2∼1．5a，2違制に より実施Lた。薬剤の処理は表一2に示すとおり育苗箱施用は移植直前に所定量を育苗箱上よ り、水面施用は5月26日及び6月5日に10a当たり4kgを施用した。 防除効果は1区50株（25株X2か所）X2反復の越冬後成虫密度及び食害状況を見取法 により調べた。葉の食害状況は昭和60年と同’の方法により調べた。幼虫及び土まゆ密度は 7月8日に根部の洗出法により調べた。新成虫密度は8月6目に捕虫網によるすくい取りによ り調べた。イネの生育は7月8目及ぴ9月24目に草丈・桿長及ぴ茎数・穂数を調べた。収量 は10月4目に1区、40株（20株X2か所〕X2反復を刈取り乾燥後、脱穀調製し調べた。 3 試験結果及び考察 （ユ）昭和60年 試験ほは図一工に示すように雑木林に隣接し、越冬後成虫の侵入が多く、とくに〃1∼4区で 多かった。越冬後成虫に対する効果は図一2及び図一3に示すとおり、アドバンテージ粒剤を箱 施用した各区は成虫密度が低く食害も少なかった。同剤のみで水面施用を実施しなかった〃②区 の709／箱施用は全調査期間を通じ成虫密度が低く食害も少なく高い防除効果が認められた。 〃①区の509／箱施用は着干食害がみられたが、移植30日後まで成虫を低密度に抑え、比較 一47・ 的高い防除効果が認められた。これに比ベカヤフォス粒剤5を箱施用した各区は越冬後成虫の密 度が高く防除効果が劣った。 幼虫・土まゆ及ぴ新成虫に対する効果は図一4及ぴ図一5に示すとおり、アドバンテージ粒剤 を箱施用した各区ば幼虫・土士ゆ及ぴ成虫密度が低く高い防除効果が認められた。カヤフォス粒 剤5を箱施用、その後、サンサイド粒剤5を水面施用した循3区及びバサジソト粒剤を水面施用 した〃4区は越冬後成虫密度が高く食害が多かったにもかかわらず、幼虫・土まゆ及び新成虫の 密度が低く水面施用の効果が認められた。アルフェート粒剤を水面施用した〃⑧区及びアブロ’ ドダイアジノン粒剤を水面施用したκ④区は幼虫及ぴ土まゆの密度が高く劣ったが、隣接の無防 除ほ場に比ぺると密度が低く防除効果が認められ池 121昭和61年 越冬後成虫に対する効果は図一6に示すとおりアドバンテージ粒剤を箱施用した〃1∼4区、 オンコン粒剤を箱施用した〃5区は無防除の〃6区に比べ越冬後成虫の密度が低く防除効果が 認めら肌た。越冬後成虫による食害は図一7に示すとおり各薬斉拠翠区とも被害度低く、越冬 後成虫による葉の食害防止に効果があった。幼虫・土まゆに対する効果は図一8に示すとおり 各薬剤処理区とも低密度となり高い防除効果が認められ、新成虫に対しても図一9に示すとお り各薬剤処理区の密度が低く防除効果が認められた。 イネの生育及ぴ収量に対する影響は表一3に示すとおり、無防除区に比べ各薬剤処理区とも 7月8目の調査でぽ草丈及び茎数多く生育が良好となり、9月24日調査では穂数が増加した。 収量は各薬剤処理区とも無防除区に比ぺ増収効果が認められ、精玄米重でアドバンテージ粒剤 409／箱施用のみの〃1区で2．5％、同509／箱施用のみのκ3区で8．0％、同709／ 箱施用のみの〃4区で10．8茄増収した。オンコル粒剤5の509／箱のみの〃5区は6．8％ 増収した。アドバンテージ粒剤409／箱施用とバサジット本田水面施用を組合わせた〃2区 は6．7％増収した。 以上のことから、イネミズゾウムシの多発生地においても移植直前にアドバンテージ粒剤の 50∼709／箱またはオンコル粒剤5の509／箱を箱施用すれぱ越冬後成虫の密度を低下 させ、越冬後成虫による葉の食害を防止でき、幼虫の密度も低下させイネの生育も良好となり 増収することから、これらの薬剤の育苗箱施用ばイネミズゾウムシの多発生地におげる防除と して実用性が高いと考えられる。また、サンサイド粒剤5、バサジット粒剤などの本田水面施 用は越冬後成虫に対する効果が低く葉の食害防止効果が不十㍗あったが・幼虫に対する効果 があるので、越冬後成虫の密度が低いほ場におげる防除として、また、越冬後成虫の高密度ほ 場におげる補助的な防除として実用性があると考えられる。 4 成果の要約 イネミズゾウムシの多発地において薬剤による防除を検討した結果、アドバンテージ粒剤の 50∼709／箱またはオンコル粒剤5の509／箱の育苗箱施用は成虫及ぴ幼虫に対する防除 効果が高く滅収を防止できることから多発生地における防除として実用性が高い。サンサイド粒 一48一 剤5、パサジソト粒剤などの水面施用は成虫に対する効果及ぴ食害防止効果は不十分であるが幼 虫に対する効果があるので、成虫密度の低いほ場にける防除及び成虫密度の高いほ場におげる補 助的な防除法として実用性がある。 （担当者：病理昆虫部 斉藤浩一・合因健二、協力：真岡農業改良普及所） 表一1 試験区の構成（昭和60年） 育茜箱施用 区名 本田水面施用 （施用量kg／10a） （施用量 9／箱） 1 雑 ア洲ントジ粒剤（50〕 一 ① 2 ア洲ンデージ粒剤（70） アプロード舛アジノン粒剤（4） ② ア洲ントジ粒剤（70） 3 力†7オス粒剤5（100） ③ カヤ7オス粒剤5（100〕 アルフェート粒剤 （4） 4 カヤ7オス粒剤5（100） 劣ヤ7オス粒剤5（100） バサジット粒剤 （4） ④ N ア洲ントジ粒剤（50） サンサイド粒剤5 （4） 用 土 2’1② 木 サンサイド粒剤5 （4〕 林 11⑦ 水 ．手 十 31⑧ 41④ アブウードダイアジソ幽凹（4） 5※ 注）※隣接一般無防除ほ場。本田水面施用は5月21日及び 図一1 試験地の概況（昭和60年） 一6月4目に施用。 数字は表一1の区名を示す。 ㎜ 竈6月2佃爵1鱗圏囚5月21日口5月9日 一〇n 口幼虫 口土まゆ 80、 株 株 当 た 当肌 ’I ■一 り5 5 た 1萎萎 成 虫 数 り ■ 姜、 虫仙 〃 数 20 ‘”．．・“｝削 鵠 一 鵠 0 z 一 ． 1①2δ3③4．④5 図一4 薬剤処理と幼虫・土まゆ数（昭和60年〕 1①2②3③4④ 図一2 薬剤処理と越冬後成虫数（昭和60年） 側 ㎜ 被 臼6月2佃 圃6月1佃 目6月4日 脇5月27日 図5月21日 口5月9日 15m 固 鐸拳 菱姜 ■ 鰯’．．．． ■ 鯖窒蟻像閑馨 ■ す く 姜嚢灘 い 冊 ㎜ 害㎜ 〃％ 度 韻 華妾蟻． ・…1＝蟹葦1 取 〃 一κ 1m 昌9月6日 囲8月16日 團8月8日 振 り1㎜ 口7月25日 20 ．．・：： ％ 〃 ％ り珊1 虫 数 7 ノ％ 7％ 〃 ． ・ o 1①2②3⑧4④ 図一3 薬剤処理と食害状況（昭和60年） 一49一 図一5 薬剤処理と新成虫数（昭和60年） 1①2②3③4④5 表一2 試験区の構成（昭和61年） 本田水面施用 育苗箱施用 区名 （施用量 k多／10a） （施用量 9／箱） 1 2 アドバンテージ粒剤（40） 3 4 5 アドバンテージ粒剤（50） バサジット粒剤（4） アドバンテージ粒剤（40） アドバンテージ粒剤（70） 才ンコル粒剤5（50） 6※ 注）※は無防除、本田水面施用は5月26目及び6月5日に施用。 5 繰 当 團6月28日 麗6月16日 目6月5日 囲5月29日 貿1秀鵠 株 た 当 嚢灘 り 成 虫 数 た り 虫 数 歯一6 1 2 3 4 −5 6 薬剤処理と越冬後成虫数（昭和61年）’ 圏6月28日 麗6月16日 富6月5日 欄 被 狐 害 度㎜ 図一8 犯 20 1 2 3 4 5 6 薬剤処理と坤虫i土まゆ数（昭和61年） 固 振1 り す く 囲5月29日 ” 團5月26日 口5月19日 いI 取 り 虫 数 ％ 1‘□］ I1 1 2 3 4 5 6 図一7 薬剤処理と食害状況（昭和61年）． 図一9 1 2 3 4 5 6 薬剤処理と新成虫数（昭和61年） 表一3 薬剤処理と水稲の生育及び収量（昭和61年） 生 育 区名 状 況 収 量 （20株当たり） 7月8目 9月24日 乾燥 精玄同左 籾 重」玄米重 米重増収率 ㎝ 本 ㎝ ㎝ 本 g 9 9 9 ％ 2．5 485 607 525 866 22，6 177 84，8 31，0 57，0 6．8 505 520 632 830 21，8 175 84，5 26，7 56，6 草丈茎数程長一穂長穂数わら重 1 2 3 52，5 23，6 911 637 523 511 8，0 170 24，3 961 654 539 524 10．8 16，7 22，6 707 623 517 505 6．8 18．O 18．9 691 602 489 473 31，7 83．2 17．5 32，9 872 4 5 58，0 55，6 32，5 83．1 6 48．3 21．3 8412 一50一
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