会 計 の ポ イ ン ト

平成 年の会社法施行により、対価の交付を行わない組
織再編成
(合併・分割・株式交換)が可能であることが明
確化され、さらに平成 年度税制改正により無対価組織再
編成に係る税務上の取扱いが整備された。
このことから、昨
今、特に100%グループ内での無対価組織再編成が広範
を行うに際しての留意点につき、特に100%グループ内の
に行われるようになっている。
本稿では、無対価組織再編成
無対価組織再編成に焦点を当てて解説を行う 。
無対価組織再編成を実施するシチュエーションとしては、主に、①
100%グループ内での組織再編成、②法人/事業の価値がゼロである
ケース、の2つが想定される。
本稿では、このうち相対的に利用頻度が高い
と思われる①に焦点を当てて、
解説を行う。
(参考) 無対価組織再編成の種類
「無対価組織再編成」
と称される組織再編成の種類としては、「合
一般に
併」
、「分割
(分社型分割・分割型分割)
」
、「株式交換」
が挙げられる。「現物出
資」
、「株式移転」
、「現物分配」
はこれに含まれない。
これは、「現物出資」
、「株式移転」
については、被現物出資法人の株式を交
付しない現物出資や、株式移転完全親法人株式を交付しない株式移転は、会
社法上想定されないことによる。
また、現物分配については、もともと対価
の交付は想定されない取引であるため、一般に
「無対価組織再編成」
と称さ
れることは少ないようである。
株式を交付するケースとの比較で整理
無対価の組織再編に関する
波多野 伸治
引」に該当するため、対価の有無にか
有限責任監査法人トーマツ
公認会計士
社との合併)」、「②親会社の事業を無
負債については、原則として、移転直
かわらずグループ内を移転する資産・
「③子会社の事業を無対価で他の子
対価で子会社に移転する会社分割」、
会計のポイント
はじめに
基づいた会計処理が行われる。
前に付されていた適正な帳簿価額 ⑴に
子会社の事業を無対価で親会社に移
会社に移転する会社分割」および「④
結合会計基準及び事業分離等会計基
転 す る 会 社 分 割 」に つ い て 定 め て い
号
「企業
準に関する適用指針」(以下、「結合分
る
(図表1)。本稿では、これらのケー
企業会計基準適用指針
離適用指針」
という)
では、 ―2項
再編において対価が支払われない場
にて、完全親子会社関係にある組織
会 計 処 理 の 相 違 を 中 心 に 解 説 す る。
交 付 さ れ る ケ ー ス 」と 比 較 し な が ら
スを
「対価として結合企業の株式が
なお、文中意見にわたる部分は私見
合の会計処理を定めている。
具体的には、同項では、無対価の
であることを申し添える。
基準」
注9)(図表1の④)
。
③ 子会社が親会社の事業を承継する会社分
割等の
「下位者が上位者を吸収する垂直系」
の企業結合では、原則として親会社の
「適正
な帳簿価額」
であるが、企業結合前に子会社
が親会社に資産等を売却しており、当該取引
から生じた未実現損益を連結財務諸表上消
去しているときは、子会社の個別財務諸表
上、連結財務諸表上の金額である修正後の帳
簿価額により親会社の資産および負債を受
け入れる
(結合分離適用指針 項等)(図表1
の②)
。
子会社
子会社B
子会社A
子会社
100%
100%
100%
100%
(注)
⑴ 共通支配下の取引において、結合企業が受け
入れる資産および負債には、適正な帳簿価額が
付されるが、この
「適正な帳簿価額」
の意味は、企
業結合のタイプによって、次のようになると考
えられる。
① 子会社同士の合併や子会社から他の子会
社への会社分割等の
「水平系」
の企業結合で
は、適正な帳簿価額は、被結合企業の
「適正な
帳簿価額」
となる
(図表1の①・③)
。
② 親会社が子会社の事業を承継する会社分
割等の
「上位者が下位者を吸収する垂直系」
の企業結合では、親会社が作成する個別財務
諸表においては、連結財務諸表上の金額であ
る修正後の帳簿価額
(のれんを含む)
となる
(企業会計基準 号
「企業結合に関する会計
組織再編のうち、「①無対価の完全子
211
子会社B
子会社A
100%
100%
親会社
(注)
前記はいずれも、「共通支配下の取
21
親会社
親会社
親会社
18
会社同士の合併
(子会社と他の子会
(図表1) 結合分離適用指針203-2項が会計処理を定める無対価組織再編
22
10
203
② 分割
(親⇒子) ③ 分割
(100%子同士) ④ 分割
(子⇒親)
① 合併
(100%子同士)
第1章
8
経理情報●2015.2.20(No.1405)