News Release

2015 年 2 月 16 日
連絡先
デロイト トーマツ合同会社
コーポレートコミュニケーション 新井 香織
Tel: 03-6720-8090
Email: [email protected]
News Release
クライシスマネジメントに関する企業の実態調査結果を公表
経験したクライシス上位層は自然災害・製品・不正・システム関連であり、対応策は総じて最低限
有限責任監査法人トーマツ(東京港区 CEO 兼包括代表 天野太道)は、クライシスマネジメントに関する企業
の実態調査結果を本日公表する。この調査は、日本の上場企業におけるクライシスマネジメントの認知・認識と
その対応策の現状を把握することを目的に実施し、431 社から回答を得た。その内、173 社については海外に保
有する関係会社(以下、海外子会社)に関しても回答を得た。
1.
総括
クライシスマネジメントとは、組織の戦略目標、レピュテーション、その組織の存在をも著しく毀損させる可能性
のある大規模な、もしくは複合的な事象(以下、クライシス)が発現した場合、損失を最大限抑えるように管理し、
影響の低減を図る活動である。当調査において日本の上場企業におけるクライシスの経験数とその対応策につ
いて、以下のポイントが明らかとなった。
2.

近年、日本の上場企業、海外子会社ともに、企業におけるクライシスの経験数は増加傾向

多くの日本企業が、クライシスに対する対応策は総じて「最低限の対応策」にとどまっていると認識
日本の上場企業および海外子会社のクライシスの経験
過去 12 年間のクライシス経験状況について聞いたところ、日本の上場企業では 65%の企業が(図表 1)、また、
海外子会社では 36%の企業が(図表 2)、何らかのクライシスを経験したと回答した。
図表 2 海外子会社におけるクライシス
経験企業比(2003 年-2014 年)
図表 1 日本の上場企業におけるクライシス
経験企業比(2003 年-2014 年)
無回答
1%
無回答
9%
無
34%
有
36%
有
65%
無
55%
1
Member of
Deloitte Touché Tohmatsu Limited
① 日本の上場企業におけるクライシスの経験
2003 年~2014 年において、日本の上場企業が過去 3 年毎に経験したクライシスの件数を聞いた。12 年間の
累計経験数は、「自然災害関連」(地震、台風、疫病等)、「製品関連」(サプライチェーン寸断、品質不良、設備
事故等)、「不正関連」(金融犯罪、不正行為、法律違反等)が第 1 位から第 3 位の上位を占めた(図表 3)。しか
し、直近の 2012 年~2014 年においては、「システム関連」(サイバー攻撃、情報漏洩、ウイルス感染等)が初め
て単独の第 3 位となった。累計でトップとなった「自然災害関連」のクライシスは、東日本大震災の影響により急
増したが、当該事象を除いても過去 12 年間においてクライシスの経験数は増加傾向にあると言える。(図表 4)
図表 3 日本の上場企業に
おけるクライシス経験ランキング
※複数回答あり
[件数]
図表 4 日本の上場企業におけるクライシス経験数の推移 ※複数回答あり
350
333
300
2003年-2014年累計
250
第1位
自然災害関連
第2位
製品関連
200
第3位
不正関連
150
第4位
システム関連
第5位
経済・法律関連
第6位
レピュテーション関連
第7位
政治関連
第8位
環境関連
189
100
第1位 製品関連
第2位 自然災害関連
第3位 システム関連
93
79
50
0
2003年-2005年
2006年-2008年
2009年-2011年
システム関連
不正関連
自然災害関連
製品関連
政治関連
環境関連
レピュテーション関連
全体
2012年-2014年
経済・法律関連
② 海外子会社におけるクライシスの経験
2003 年~2014 年において、海外子会社が 3 年毎に経験したクライシスの件数を聞いた。「自然災害関連」、
「製品関連」、「システム関連」および「政治関連」(国際紛争、テロ等)が第 1 位から第 3 位を占めた(図表 5)。海
外子会社におけるクライシスの経験数は 2009 年以降急増しており、この 12 年間で 6 倍以上に増加している。す
べてのクライシスが増加傾向にあるが、なかでも「政治関連」を経験する企業数が 2012 年以降著しく増加し、直
近の 2012 年~2014 年においてはトップであった。(図表 6)
図表 5 海外子会社に
おけるクライシス経験ランキング
※複数回答あり
2003年-2014年累計
第1位
自然災害関連
第2位
製品関連
第3位
図表 6 海外子会社におけるクライシス経験数の推移 ※複数回答あり
[件数]
100
80
75
60
システム関連
政治関連
第5位
経済・法律関連
第6位
環境関連
第7位
レピュテーション
関連
第8位
不正関連
48
40
20
第1位 政治関連
第2位 自然災害関連
第3位 製品関連
システム関連
19
12
0
2003年-2005年
2006年-2008年
2009年-2011年
システム関連
不正関連
自然災害関連
製品関連
政治関連
環境関連
レピュテーション関連
全体
2
2012年-2014年
経済・法律関連
さらに、クライシスによって発生し
図表 7 海外子会社における想定クライシス別経験状況 ※複数回答あり
[%]
た地域に特徴が見られ、日本企業
の成長を牽引するアジア市場にお
東アジア 東南アジア
その他
アジア
オセアニア
北米
中南米
ヨーロッパ
アフリカ
無回答
システム
関連
55.6
27.8
5.6
0.0
16.7
0.0
0.0
0.0
5.6
不正関連
33.3
16.7
0.0
0.0
50.0
0.0
16.7
0.0
0.0
自然災害
関連
16.7
80.0
10.0
6.7
3.3
0.0
3.3
0.0
0.0
製品関連
29.4
58.8
0.0
5.9
29.4
0.0
5.9
0.0
0.0
経済・法律
関連
33.3
33.3
0.0
0.0
33.3
0.0
25.0
0.0
0.0
融危機、訴訟被害、財政難、労使
政治関連
47.4
52.6
0.0
0.0
5.3
0.0
5.3
5.3
5.3
問題、知的財産の侵害被害、規制
環境関連
57.1
14.3
0.0
14.3
0.0
0.0
0.0
0.0
14.3
等)(33.3%)、「環境関連」(公害等)
レピュテーション
関連
75.0
12.5
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
12.5
いては、様々なクライシスに直面し
ている結果が顕著となった。東アジ
ア(中国・韓国)では、「システム関
連」(55.6%)、「経済・法律関連」(金
(57.1%)および「レピュテーション
関連」(風評被害、不買運動、風評被害による株価の下落等)(75.0%)のクライシスを経験したという回答が多く、
東南アジアでは、「自然災害関連」(80.0%)、「製品関連」(58.8%)、「経済・法律関連」(33.3%)および「政治関
連」(52.6%)のクライシスを経験したという回答が多かった。北米では、「不正関連」(50.0%)および「経済・法律
関連」(33.3%)のクライシスが上位となった。(図表 7)
3.
日本の上場企業および海外子会社におけるクライシスに対する対応策の現状と課題
日本の上場企業および海外子会社において、クライシスの経験数が増加傾向にもかかわらず、クライシスに
対して十分な対応策を講じていると認識している企業が少ないことが分かった。
① 日本の上場企業における対応状況
日本の上場企業において、これまで経験したクライシスの上位を占める項目のうち、「システム関連」(21.6%)
を除き、「不正関連」
(18.8%)、「自然災害関
連」(19.3%)および「製品
関連」(14.6%)について
「十分な対応策を策定済
み」と回答した企業は 2
図表 8 日本の上場企業の想定クライシスに対する対応状況
[クライシスの種類]
システム
関連
21.6
不正関連
18.8
自然災害
関連
19.3
製品関連
の企業が最低限の対応
環境関連
現実が浮き彫りとなった
(図表 8)。
50.3
26.0
5.3
10.0
10%
7.9
20%
30%
十分な対応策を策定済み
対策を講じるか検討中
無回答
40%
9.3
14.6
50%
7.2
1.6
4.2 2.8 2.0
9.3
9.0
6.0
60%
70%
80%
3.8
3.4
3.5
26.9
20.0
2.1
2.7
3.5 3.5 3.5
36.2
8.1
最低限の対応策を策定済み
何ら検討していない
3.0 3.7
6.5
6.5
11.1
16.0
3.9
34.1
9.0
6.0
36.9
6.5
0%
6.5
56.1
10.2
レピュテーション
関連
6.0
62.9
8.4
政治関連 3.0
7.0
58.2
14.6
経済・法律
関連
割にも及ばなかった。多く
策にとどまっているという
59.9
4.7
13.9
3.0
90%
100%
対応策を策定中
クライシスとして想定していない
またクライシスに対する
対応策を講じている理由として、「クライシス発生時の被害を最小限に抑えるため」(85.5%)、「クライシスが事業
継続に影響する経営上の重要事項であるため」(80.4%)、「クライシス発生時の対応を迅速に行うため」(76.3%)
が挙げられる(図表 9)。
3
図表 9 日本の上場企業がクライシスへの対応策を講じている理由
クライシス発生時の被害を
最小限に抑えるため
85.5
クライシスが事業継続に影響する
経営上の重要事項であるため
80.4
クライシス発生時の対応を
迅速に行うため
76.3
危機に対しての意識醸成に
役立つため
33.9
社会的要請のため
29.3
競合他社が行っているため
6.8
その他
2.4
無回答
3.4
0
20
40
60
80
100
[%]
② 海外子会社における対応状況
海外子会社におけるク
ライシスへの対応状況は、
日本国内の上場企業と
比較しても総じて遅れて
いることがわかった。特
図表 10 海外子会社の想定クライシス対応状況
[クライシスの種類]
システム
関連
10.4
不正関連
7.5
自然災害
関連
年で経験したクライシス
のトップとなった「政治関
連」への十分な対応策の
策定は最も低い水準に
政治関連
1.7
環境関連
4.6
8.1
31.8
レピュテーション
2.9
関連
10%
20%
9.2
30%
十分な対応策を策定済み
対策を講じるか検討中
無回答
7.5
9.8
17.9
17.3
13.3
50%
60%
4.6
12.1
13.9
12.8
13.9
14.5
15.6
70%
12.0
7.5
9.8
13.2
5.8
8.1
16.2
16.2
40%
7.5
20.8
16.8
5.8
28.3
0%
ある(図表 10)。
4.
33.5
11.6
17.9
11.0
5.8
5.8
15.6
9.8
35.8
6.4
13.9
11.0
34.7
4.6
15.0
11.6
39.3
8.1
経済・法律
関連
8.7
43.4
5.8
製品関連
に直近の 2012 年~2014
40.5
80%
12.8
90%
100%
最低限の対応策を策定済み
対応策を策定中
何ら検討していない
クライシスとして想定していない
親会社の「十分な対応策を策定済み」「最低限の対応策を策定済み」の数値を合算
クライシス発生時の対応部門
クライシスが発生した際、「システム関連」の場合は「IT システム部門」、「自然災害関連」・「政治関連」・「環境
関連」および「レピュテーション関連」の場合は「人事・総務部門」、「製品関連」の場合は「品質管理部門」が主に
対応に当たるという回答
結果が得られた。クライ
シスが発生した際、クライ
シス毎に直接関連する部
署で対応し、全社的に統
括するような部署での一
元管理・対応する体制が
図表 11 クライシスが発生した際に中心となって対応する部門
[クライシスの種類]
システム
関連
4.5
6.3
不正関連
11.1
自然災害
関連
9.3
製品関連
と推察する。(図表 11)
12.5
26.0
33.2
62.8
5.5
経済・法律
関連
13.2
2.3
46.3
13.1
政治関連
十分に整備されていない
79.8
26.8
36.3
18.8
環境関連
8.6
49.1
2.6
レピュテーション
関連
36.9
23.0
0%
10%
経営企画部門
0.6
6.1
20%
30%
財務・経理部門
法務部門
4
37.1
40%
50%
人事・総務部門
60%
品質管理部門
70%
80%
ITシステム部門
90%
100%
その他の管理部門
5.
調査概要
本調査は、有限責任監査法人トーマツが 2014 年 10 月~11 月までに日本の上場企業に対して実施したアン
ケート調査結果に基づくものである。有効回答数 431 社。
業種(※)
規模(売上高)
回答企業数
農業、林業
1
鉱業、採石業、
砂利採取業
2
建設業
19
製造業
175
1兆円以上
5,000億円以上
1兆円未満
1,000億円以上
5,000億円未満
500億円以上
1,000億円未満
300億円以上
500億円未満
100億円以上
300億円未満
50億円以上
100億円未満
回答企業数
21
15
82
46
規模(人)
10,000人以上
5,000人以上
10,000人未満
3,000人以上
5,000人未満
1,000人以上
3,000人未満
500人以上
1,000人未満
300人以上
500人未満
100人以上
300人未満
回答企業数
43
31
30
86
電気・ガス・
熱供給・水道業
3
情報通信業
24
運輸業、郵便業
16
卸売業、小売業
99
50億円未満
56
100人未満
37
金融業、保険業
23
合計
431
合計
431
不動産業、
物品賃貸業
13
サービス業
56
合計
431
63
102
46
85
54
65
(※)総務省日本標準産業分類に基づく
トーマツグループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよびそれら
の関係会社(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー株式会
社および税理士法人トーマツを含む)の総称です。トーマツグループは日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各社が
それぞれの適用法令に従い、監査、税務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提供しています。また、国内約 40 都市に約 7,900
名の専門家(公認会計士、税理士、コンサルタントなど)を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はトーマツグルー
プ Web サイト(www.tohmatsu.com)をご覧ください。
Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャル アドバイザリーサービス、リスクマネジメント、税務およびこれらに関連するサービ
スを、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界 150 を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、
デロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを
提供しています。デロイトの約 210,000 名を超える人材は、“standard of excellence”となることを目指しています。
Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組
織を構成するメンバーファームおよびその関係会社のひとつまたは複数を指します。DTTL および各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した別
個の組織体です。DTTL(または“Deloitte Global”)はクライアントへのサービス提供を行いません。DTTL およびそのメンバーファームについての詳
細は www.tohmatsu.com/deloitte/ をご覧ください。
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