佐賀メソッド - 佐賀県教育センター

平成26年度
1
指導法改善部会活動報告
佐賀県中学校教育研究会英語部会
平成 26 年度の「佐賀メソッド」の進化・深化に向けての活動について
(1)平成 27 年度県大会での分科会発表を一つのゴールとして,各地区で研究を推進する。
①
地区ごとに研究テーマを見直し,ワーキングチームを中心に研究の推進体制を整える。
②
地区ごとの研究テーマに沿って,具体の成果物を共有しながら実践を積み重ねる。
(2)backward design によるプロジェクト型学習指導実践の feedback,sharing を確実に行う。
2
指導過程「佐賀メソッド」の具体
(1)「佐賀メソッド」とは
「自ら発信する力・人と関わり合う力」を培うために,学期毎のプロジェクトゴールや,そのゴー
ルを達成するための単元ゴールを設定し,活動への意欲を高める手立てを取り入れながら Small
Output 活動や Output 活動といった4技能を統合した言語活動に繰り返し取り組ませる指導方法で
ある。特に,以下の点が大きな特徴である。
① 目標達成までの系統性を保った指導を実現するため,「佐賀メソッド」で身に付けさせた
い力を明らかにし,その指導を「プロジェクト活動→単元ゴールの Output 活動→単元中の Small
Output 活動」の流れによる Backward Design で行う。
② 「佐賀メソッドで身に付けさせたい力」である「自ら発信する力・人と関わり合う力」
の要素を「質問・応答する力」
「説明する力」「要約する力」
「コメントする力」とする。
③ それらの力を身に付けるためのプロジェクト活動を設定し,学期毎のゴールの姿とする。
④ プロジェクト活動のゴールを達成するために,そのプロジェクトで取り扱う単元のゴー
ルに系統性をもたせ,各単元の学習を通して身に付けさせたい力を明らかにした上で,それを達
成するための Output 活動に取り組ませる。
⑤ 各単元においては,教科書の本文理解と表現活動を関連付けて指導する Small Output
活動に取り組ませ,単元ゴールの活動やプロジェクトゴールにおける活動を円滑に行うための力
を身に付けさせる。活動の際は「Modeling-Small Output 活動-Feedback-Sharing」の過程で行う。
⑥ 活動は,基本的に Oral→Writing の順番で行う。
(2) Backward Design による「佐賀メソッド」指導構想図
「相手の意図や考えを理解し,
それに対して自分の意見や考えを伝える力」を身に付けた生徒
「佐賀メソッド」で身に付けさせたい力の4つの要素
質問・応答する力 / 説明する力 / 要約する力 / コメントする力
「佐賀メソッド」で身に付けさせたい力を
身に付けるための学期毎のプロジェクト活動
単元ゴールの
Output 活動
単元ゴールの
Output 活動
単元ゴールの
Output 活動
単元中の
Small Output 活動
単元中の
Small Output 活動
単元中の
Small Output 活動
「佐賀メソッド」指導構想図
伸長感
Sharing
Sharing
自分の習熟度
自己肯定感
伸びの
見取り
feedback
伸びの
見取り
feedback
Input活動
音読等
Small
Intake活動
output
Output活動
修正
feedback
モデル
修正
feedback
モデル
どのように表現すれば
よいかが分かる
意欲の
向上
学力の
向上
間違いの修正
⇒自分で再input
⇒正しい表現の習得
(3)「佐賀メソッド」のプロジェクト活動とそれを支える「Small Output 活動」
① 各学年で取り組むプロジェクト活動(案)
「佐賀メソッド」で身に付けさせたい力を育むためのプロジェクト活動(案)として,以下のよう
な活動に取り組ませることとした。教師は,生徒の学習状況によって,これらの活動に取り組ま
せる時期や具体的な活動内容を決定し,導入することとする。
3年間で取り組む「相手の意図や考えを理解し,
それに対して自分の意見や考えを伝える力」を育てるプロジェクト活動(案)
1年時
2年時
3年時
自ら発信 ・自己紹介をしよう
・自文化を発信しよう
・将来の夢を語ろう
す る 力
・人を紹介しよう
・自分を語ろう
関 わ り
・賛成や反対など,自分の意見
・どんどん質問しよう
・インタビューをしよう
合 う 力
や考えと理由を述べよう
スピーチ
手紙
メール
レポート
新聞記事
HP 作成
方
法
スキット
ダイアログ
チャット
ドラマ
ディベート ディスカッション
形
態
HP 等への意見投稿
QUIZ SHOW
テレビ会議など
② 単元中の教科書本文音読終了後取り組ませる Small Output 活動
教科書本文の音読後には,Small Output 活動に取り組ませる。単元内で取り組ませる
Small Output 活動の種類,組み合わせ及び頻度は,生徒の学習状況や到達目標等を考慮しつつ,
教師が設定する。本研究で取り組む Small Output 活動は以下の4つである。
● Picture Describing
(本文の内容に関する絵や写真等を用いての production 活動)
● True or False Questions making / Questions & Answers making & Solving
(本文内容に関する内容理解活動と本文内容から類推した内容を表現する production 活動)
● Read Between the Lines & Write
(本文の行間を読み取る内容理解活動とその内容を創造する production 活動)
● Reproduction and Comment Writing
(本文の内容を整理した mapping 等を用いて自分の言葉で行う活動 reproduction 活動と,
その内容に関する一言コメントを述べる production 活動)
3
研究の方法
(1)佐賀メソッド進化・深化のための実践及び研究の推進
今年度は,昨年度から始まった 3 年計画の実践の 2 年目にあたる。昨年度の研究の成果として,地区
ごとに活動計画や Can –Do List を作成したり,単元構成や授業実践に積極的に取り組んだりというこ
とがあげられている。しかしながら,地区によっては佐賀メソッドの骨格である Backward Design に
ついての認識が不十分であったり,個人レベルでの実践においては,まだまだこれからであったりとい
う実情も見られた。そこで今年度は,全地区で研修会や授業研究会等を計画し,佐賀メソッドについて
より深く理解すると共に,各地区がメソッドを実践していくために必要な研修を,より積極的に行った。
(2)ワーキングチームを中心とした地区ごとの研究の推進
昨年度同様,地区ごとにワーキングチームを編成し,県大会をゴールとして研究の計画を立て,実践
をすすめた。今年度の研究は,地区ごとに決定したテーマや研究方法が妥当であるかどうかを再び見直
すことからスタートした。各地区で,改善されたテーマに沿った授業研究会が実施された。年度末には
テーマのキーワードに沿ったアンケートの実施を予定している。県大会分科会発表を一つのゴールとみ
なして,現在も研究は進行中である。
(3)各地区の研究テーマ一覧
地区名
研究テーマ
鳥栖
プロジェクトゴールを達成するための帯活動の研究
三養基
バックワードデザインに基づいた単元計画・振り返り表を活用した授業実践
技能別到達目標を明示した「生徒向け Can-Do List」の作成と,それを活用した佐賀メソ
神埼
ッド授業実践
Backward Design によるプロジェクト型年間および単元計画の作成と活用
佐賀
Backward Design によるプロジェクト型学習を通して表現力を高めるための指導法の工
小城多久
夫~発信力を育む、地区独自の Can-Do List の研究~
4
唐津
Backward Design による CAN-DO リストの作成と、それに基づいた指導法の改善
杵武
マッピングを取り入れた Small Output 活動の研究~Input for Output の指導の工夫~
伊西
Backward Design に基づいて作成した単元計画の実践~Output モデルの準備と提示~
藤鹿
表現力の育成を見据えた目標設定の研究~Backward Design の視点から~
平成26年度の成果と課題
(1)成果
①
地区別にニーズに応じた研修の機会をもち,共通理解を図りながら共通の取組を行うことで,
佐賀メソッドについての理解がより深まり,一人一人の充実した実践につながったと考える。
授業報告を通して,従来の生徒作品と共に,地区のテーマに特化した内容について言及しても
らい,テーマ解決に向けての意識を高めることもできた。
➁
各地区のテーマや研究方法の妥当性を見直したことにより,
「何をしたいのか」がよりはっき
りし,「どんな成果物を出すか」を意識して研究をすすめることができた。ゴールを意識するこ
とで,研究方法や手立てについて,より具体的に考えられるようになり,テーマに沿った授業研
究会が実施され,提案や実践を共有する機会をもつことができた。
(2)今後の課題
① 佐賀メソッドを実施するうえで大切なのは,一人の実践で終結するのではなく協働性の下で
実践に取り組むということである。同一校内の英語教師が同じゴールを共有して研究にあたるこ
と,また,同地区内での研究が共通認識のもとに行われるということが非常に大切だと考える。
一実践の報告書を地区ごとにまとめ,それをどのように共有化していくか,また,県全体の研究
が深まるために,どのように有効活用していくかを検討する必要がある。
➁ 地区ごとにすすめている研究は,現在進行中のものであり,現時点での報告書は「中間発表」
的な位置づけのものである。地区の研究の方向性がはっきりした今,成果物を生み出すこと,そ
して,それを実践の中で検証していくことが今後の大きな課題となる。