データロガーの基本とその活用 1.はじめに 多くの人はデータロガーとは温度や湿度など何か環境に関わるデータを収集する電子機器のことだろう、 といった漠然とした概念はあるが、それが実際にどんな機器で、どのようなアプリケーションで使用され ているのか、なぜそれが有効なのかといった具体的な知識を持つ人は限られるようだ。 ここでは、現在弊社が取り扱っているデータロガーの各種と使用例を紹介する。 2.データロガーとは? データロガーとは、ある期間、任意に設定したインターバルで計測したデータを記録保存する電子機器 のことで、ロガーの種類によって以下のようなパラメータを記録できる。 ・温度 ・空気差圧 ・光強度 ・土壌水分 ・パルス信号 ・湿度 ・使用時間(照明、モータ、etc.) ・水温 ・雨量 ・オキュパンシー(室内占有) ・AC/DC 電流値 ・DO(溶存酸素) ・風向/風速 ・その他 データロガーは一般的には小型でバッテリーのみで動作し、マイクロプロセッサー、メモリー、1個以 上のセンサーを内蔵するスタンドアローンデバイスである。ロガーは使用環境により屋内用、屋外用、水 中用等に分かれ、無人で一定期間データを記録できる。外部センサーを接続することで複数のパラメータ を同時に記録するタイプもある。 各種データロガー 3.なぜデータロガーは有効なのか? データロガーは計測現場に人が不在の状態で計測対象を連続してモニターしたい場合に非常に有効なツ ールである。ビル管理者、エネルギー管理者、研究者、環境アセスメントコンサルタント、その他多くの プロフェッショナルが以下の理由でデータロガーを使用している。 低価格 近年の電子技術の驚異的な進歩と量産技術の発展により、シングルセンサータイプのロガーであれば価 格が1万円以下のものも販売されている。価格の低下は多数のロガーを同時に運用することができ、多く の違った条件のデータを収集することで信頼性の高い分析が可能となる。場合によっては、プロジェクト の期間を短縮できることもある。また、一般的には、データロガーは消費電力が極めて少ないので1個の バッテリーで長期間連続使用が可能だ。このことは計測器を設置・回収するために現地を訪問する回数を 減らせ、直接的・間接的コストの削減につながる。 簡便性 データロガーの使用はきわめて簡単で、通常、使用開始時は単にロガーをパソコン(PC または Mac) に接続し、アプリケーションソフトで使用条件(記録間隔、開始日時など)を設定し、スタートボタンを クリックするだけ。データの回収も同様に簡単で、グラフもソフトで自動的に作成・表示される。Excel などの数表ソフトにエキスポートしてプレゼンテーションなどの資料作成や更なる詳細分析も可能だ。 信頼性 一度ロガーがスタートすれば、あとは必要とするデータはロガーが収集してくれる。筆記ミス、スケジ ュールの重複による測定漏れ、読み取り間違いなどの人為的エラーがない。また、幅広い使用環境、例え ば海水、冷凍、直射日光下で使用できるモデルもある。 時刻情報付きデータ データロガーの目的は云うまでもなく、正確な時刻と計測値データのセット情報を要求された期間、収 集することである。収集したデータはテスト理論、運用確認、状況エビデンスとしての情報提供に利用で きる。収集データはより高いレベルで状況を把握でき、判断の選択が広がる。 4.データロガーはどこで使われているのか? データロガーは室内、屋外、水中、ビル事務所から北極・南極に至るまでデータが必要とされるところ であればどこでも利用されている。 一般的なアプリケーション ビル性能 ・省エネコストの検証(新規導入機器の投資利益率の算定データ収集) ・機器の稼働時間モニター(効率的運用確認) ・室内快適性に関し、宿泊客苦情に対する原因診断 ・健全な室内空気質の確認 ・室内占有時間と照明利用時間の相関性モニター ・HVAC システムの性能最適化 環境調査 ・生態系調査(生息域環境保護) ・農業環境調査(生産性向上) ・動物学研究(気候変動が種に与える影響) ・土壌調査(気候変動が土壌に与える影響) ・水位調査(自然災害対策) ・水質調査 ・海洋調査 ・気候変動調査 ・環境アセスメント ・水資源、水力学 環境確認・保証 ・美術展示室、コンピュータルーム、倉庫 ・冷蔵庫、冷凍コンテナー、精密機器輸送 ・HACCP トレーサビリティー 5.データロガーの構成パーツ 一般的に、データロガーは演算を担当するマイクロプロセッサー、保存を担当するメモリー、計測を担 当するセンサー、それに電源のバッテリーから構成される。これら構成品が使用環境に応じてプラスチッ クや金属製ハウジングに組み込まれている。屋内用には LCD 表示部を持つタイプもある。 通常、データロガーと言えば一個のデバイスのことを意味するが、基本的にはデータロガーはこれらの 基本部品を含んでいる。 6.データアクセス 収集したデータをどのように回収するかによって、USB ケーブル接続スタンド-アローン型と無線通信 型のデータロガーがある。 シンプルなのはスタンド-アローン型である。収集データは USB インターフェースケーブルを介してパ ソコンにダウンロードする。しかし、多くの場合、データ回収するのにパソコンを現場まで持ち込んだり、 ロガーをパソコンのある場所まで持ち帰ったりするのは現実的でない。このような場合には、データシャ トルと呼ばれるポケットサイズのデータ回収器があるので、これを使えばロガーからシャトルにいったん データを回収し、シャットルだけをパソコン側に持ち帰りデータをパソコンにダウンロードできる。通常、 シャトルはロガーの何十倍もの容量があるので、数多くのロガーを使用している場合でも一台のシャット ルに多数のロガーデータをまとめて保存できるので便利だ。 無線通信型はデータロガーを携帯電話、タブレット、iPod などモバイル端末を使って条件設定、データ 回収、グラフや数字で現状確認がおこなえる。回収したデータはファイル形式で他の端末に送信できるの で、共同研究者とのデータ共有や、Excel などのソフトを使い詳細分析および報告書の作成がおこなえる。 アクセスのためロガーとパソコン・シャトルの間をケーブルで接続する必要がないので便利だ。無線は端 末に付属している Bluetooth の機能を使用する。無線通信を行うため、無線型データロガーを日本で使用 する場合には、データロガーは総務省の技術適合試験で認証されたものでなければならないので注意が必 要だ。 無線型データロガー
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