Ⅳ.スイスの森林吸収量の算定・報告の情報について I.条約の下での

Ⅳ.スイスの森林吸収量の算定・報告の情報について
I.条約の下での森林吸収量の算定・報告の情報
1
基本事項
1.1 土地利用変化(1990 年・2008 年)
表 SWI.1 1990 年・2008 年の土地利用変化
※コード番号の分類
11-13:A 森林、21:農耕地、31-37:草地、41-42:湿地、51-54:入植地、61:他の土地
1.2
土地利用区分森林の定義と森林面積の把握方法
最小面積
0.0625ha
最小樹冠被覆率
20%
最小樹高
3m
― 90 ―
表 SWI.2 国の森林調査Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの特徴
※蓄積量、合計成長量、伐採・枯死量はスイス連邦森林調査(NFI)(1 次、2 次、3 次)
のデータに基づき算定している。
2
吸収量
表 SWI.3 森林における炭素ストック変化量に起因する排出・吸収
※ スイス連邦の LULCF(カテゴリ 5)における 1990 年-2008 年までの CO2 排出・吸収量
(Gg)正数は排出量、負数は吸収量。CH4 と N2O は含まない。
“森林およびその他の木質バイオマス蓄積”の炭素変化を報告するために、1996 年の IPCC
のガイドラインでは 3 年の平均値の使用を推奨している。
さらに 2003 年 IPCC GPG では、
年変動をどのように処理するか、そして、“整合性の取れた排出量の報告を行うには、自
然環境条件の長期的な平均値や実際の年排出推定量を用いるのが良い方法だ”と記載して
いる。スイスの森林分野で報告された炭素プールは、管理、気候状態、自然攪乱を反映し
た年毎の数値である。
― 91 ―
2.1 転用のない森林(5A1)
2.1.1 カテゴリの説明
表 SWI.4 森林のカテゴリ(Table 7-2,土地利用カテゴリより森林部分を抜粋)
新規植林地(Afforestations):植林など活動により転用された土地
生産林(Productive Forest):「森林」の基準に合致した任意の成立本数を含む森林
非生産林(Unproductive Forest):「森林」の基準に合致した低木林や生産性の低い森林
2008 年: level と trend; Tier 1 と Tier 2 を組み合わせて使用
1990 年: level; Tier 1 と Tier 2 を組み合わせて使用
2.1.2 方法論
2.1.2.1 生体バイオマスの炭素ストック変化量
2.1.2.2 枯死木・リター・土壌炭素ストック変化量
➢生産林(CC12)(新規植林を除く)
成長量、伐採量、枯死量は、NFI1 と NFI2 で計測された 5,425 か所、NFI2 と NFI3 での
5,581 か所のサンプル区画データから求めた。国の調査から得られた全ての数値は、地上部
の樹皮を含む幹の蓄積と関係があり、各階層の単面積あたりの材積を求めた(Table 7-17 and
Table 7-18)
。
➢非生産林(CC13)
低木林については、蓄積量を NFI データから得ることができないため、蓄積量は 4000
本/ha、平均樹高 2.5m、平均胸高直径 10cm と仮定して算定し、平均成長蓄積は 40 m3 ha-1
と推定した。
非生産地の森林についても、蓄積量を NFI データから得ることができないため、平均炭
素蓄積(>直径 7 cm)を 150 m3 ha-1 と推定した。針葉樹の平均 BCEF の 0.64 を乗じて 96.4 t
ha-1、炭素換算で(IPCC デフォルトの炭素含量率 50%を使用)で 48.2 t C ha-1 である。
スイスにおける非生産林は、主に非生産地の低木林と森林であるため、非生産林の炭素量
は、標高階層ごとに非生産地の低木林と森林の加重平均で算定した。
[炭素重量]i = RSi * CS + (1- RSi) * CI
RSi :階層 i における低木の占有率
CS:低木林の炭素含有量 (12.9 t C ha-1)
CI :非生産林における炭素含有率 (48.2 t C ha-1)
非生産林において、伐採は起きておらず、非生産林の合計成長量と枯死量は均衡状態であ
ると推定される
2.2 転用された森林(5A2)
2.2.1 カテゴリの説明
カテゴリの説明参照
― 92 ―
2.2.2 方法論
2.2.2.1 生体バイオマスの炭素ストック変化量
2.2.2.2 枯死木・リター・土壌炭素ストック変化量
➢ 新規植林地(CC11)
まだ NFI3 のデータが分析されていないため、新規植林地の平均炭素蓄積および成長量を 1
回目の NFI 時点で約 10 年生の林分、2 回目の NFI 時点で約 20 年生の林分データより算定
した。
・蓄積量(m3 ha-1) と成長量[m3 ha-1 year-1]の変換式
生体バイオマスの炭素蓄積=平均蓄積量 * BCEF *炭素含有率
生体バイオマスの増加量=平均成長量* BCEF *炭素含有率
2.3 不確実性と時系列の一貫性
不確実性
森林分野において、生体・枯死バイオマスの排出係数の不確実性は 61%と算出された。
➢生体バイオマスの不確実性
・成長量、伐採、枯死量:気候変数適用なしの NFI データ
・土壌中木材の炭素含有率:Lamlom and Savidge 2003,assessment of carbon content
in wood; Monni et al. 2007, 2%
・容積密度:Monni et al. 2007, Appendix 1, 2.7-21.3%; Vanninen and
Mäkelä 1999; Cronan 2003; Helmisaari and Hallbäcken 1998).
➢枯死木中の年変化についての全体の不確実性
・Sanasilva observations の精度:枯死木の胸高断面積の占有率の推定は、37.7% の誤
差という比較的大きな信頼区間を生じている(Dobbertin 2009)。
・Sanasilva プロットの空間標本:Sanasilva プロットはスイスの森林に対する標本と
なっている。48 か所の Sanasilva プロットは、10’000 ha におよび 12%の誤差に相当
する (Brassel and Brändli 1999)。
時系列の一貫性
一貫した年毎の時系列成長蓄積は、NFI 3 のデータを用いて、2005 年を基準としたそれ以
前/それ以後の算定をした (see Chapter 7.3.4.8)。枯死木の時系列データについては、二回
の国家森林調査の枯死木プールにおける差を重みづけして、1995 年-2005 年の中間調査期
間について算定した。1990 年-1995 年そして 2005 年以降については、1995 年-2005 年の
相対胸高断面積と枯死木量の関係を外挿し、年毎の枯死木の数値を算定した。最終的に、
枯死木の数値は、NFI 2 と NFI 3 データによる分布パターンを使用し、15 以上の空間配置
区分に層化した ( Chapter 7.3.4.8 参照)。
2.4 QA/QC
森林減少(AREA 調査、スイスの森林減少調査(Swiss Statistics of Deforestation) (FOEN
2009i)、 NFI (EAFV/BFL 1988; Brassel and Brändli 1999; Brändli 2010))
に関する異なるデータソースの解釈と比較に焦点を充てて、QA 活動を開始した。
2.5 再計算
CC12 から CC13 への転用に際する炭素排出の可能性については無視できないため
(UNFCCC 2010)、それぞれの重み係数(W)は 0 ではなく 1 にセットしている。山火事によ
る燃焼バイオマスの量は BEF でなく BCEF を用いて再計算しており、それにより N2O 排
出量に影響している (Chapter 7.3.4.13 参照)。
― 93 ―
3
排出カテゴリーの情報
3.1 施肥に伴う N2O 排出(5Ⅰ)
スイス森林法により、森林への施肥は禁止されている。CRF Table 5(I)において、施肥によ
る排出は報告されていない。
3.2 土壌排水に伴う N2O 排出(5Ⅱ)
森林の土壌排水は許可されていない。調査データはない。
3.3 農地の転用に伴う N2O 排出(5Ⅲ)
記載なし
3.4 バイオマスの燃焼(5V)
スイスの森林における山火事もデータは州から得られたものであり、FOEN (FOEN 2009i)
に従っている。野焼き(controlled burning)を森林火災としていないため、全ての火事が
森林火災とされる。CH4 の排出係数は、EEA (2006)で提案された 0.354 Mg CH4 ha-1 に
設定している。N2O のデフォルト排出係数は、0.11 g (燃焼バイオマス kg )-1 を適用して
いる。燃焼量は ha-1 あたり 252,624 バイオマス kg と算定されている。この数値は、NFI 2
and NFI 3 (360.05 m3/ha;Brassel and Brändli 1999, Brändli 2010)の平均蓄積と BCEF
(0.7146)の平均値を用いて算定した。
これらの数値を IPCC (2003)の式 3.2.20 に挿入した。
山火事による CH4 排出量と N2O 排出量は、 CRF Table 5(V)に報告し、CO2 排出量は
CRF Table 5A に含まれている。
表 SWI.5 1990 年-2007 年に山火事(FOEN 2009i)と GHG 排出に影響を受けた生産林
― 94 ―
Ⅱ.京都議定書第 3 条 3 項及び第 3 条 4 項に関する情報
1
京都議定書 3 条 3 及び 4 の下での排出・吸収の推計の概要
3 条 3 項および 4 項の活動の報告情報
カーボンプール
GHG発生源
リ
枯
土
施
土
土
地上
地下
吸収源活動
タ
死
壌
肥
壌
地
バイ
バイ
ー
木
排
転
オマ
オマ
水
用
ス
ス
3
条
3
項
石
灰
施
用
バイオマス燃焼
N2
N2
N2
CO
CO
CH
N2O
O
O
O
2
2
4
NO
NO
NO
NO
NO
NO
NO
NO
NO
IE
R
R
NA
NA
NA
NA
新規植林・再
植林
R
IE
NR
森林減
少
IE
R
R
森林経
3
条
営
IE
NR
R
4
農地管
項
理
NA NA NA
放牧地
管理
NA NA NA
植生回
復
NA NA NA
引用:KP-LULUCF Table NR1
NR
R
NO
R
R
R
NR
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NO
NO
― 95 ―
NO
NA
3 条 3 項および 4 項の活動による排出・吸収量
GREENHOUSE GAS BY(5) Net
emissions/removals(1)
SOURCE AND SINK
ACTIVITIES
2008
Total
(Gg CO2 equivalent)
A. Article 3.3
activities
A.1. Afforestation and
Reforestation
A.1.1. Units of land
not harvested since
the beginning of the
-35.24
-35.24
commitment period
A.1.2. Units of land
harvested since the
beginning of the
commitment period
CC11
NA,NO
NA,NO
CC11 Z1-Z3/L1-L5
NO
NO
A.2. Deforestation
172.59
172.59
B. Article 3.4
activities
B.1. Forest
Management (if
-854.11
-854.11
elected)
3.3 offset
FM cap
B.2. Cropland
Management (if
NA
NA
elected)
0.00
B.3. Grazing Land
Management (if
NA
NA
elected)
0.00
B.4. Revegetation (if
NA
NA
elected)
0.00
引用:KP-LULUCF Table Accounting
Accounting
Parameters
Accounting
Quantity
-35.24
-35.24
NA,NO
NA,NO
NO
172.59
137.34
9,166.67
-854.11
0.00
-854.11
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
2
一般的情報
2.1 森林の定義
最小面積: 0.0625ha
最小樹冠被覆率:20%
最小樹高:25m
※優勢木の最少樹高は、3mに達しているか、あるいは成熟時に 3m に達する可能性がなけ
ればならない。
― 96 ―
京都議定書における森林定義は、Switzerland's Initial Report(FOEN 2006h, Sect. E and
Chapter 7.3.1 in this submission)と同様の定義を適用している。
いくつかのサブカテゴリは、“林地”から除外されているが、京都議定書におけるスイス
の森林定義の要件を満たしている。( Chapter7.2.4 Table 7-10 参照)。
主要なものは以下のとおり:
-ブドウ園、低幹果樹園、苗畑、雑木林、果樹は“草地”のカテゴリに入る。
-共同墓地および公共公園(public parks)は、“Settlements”のカテゴリに入る。
2.2 選択した 3 条 4 の活動
森林経営を報告することに決定している(FOEN 2006h, Sect. F)。Annex to Decision
16/CMP.1 に従って、森林経営におけるクレジットは第1約束期間にキャップされている。
スイスのキャップは、年間 1.83 Mt CO2 (0.5Mt C)、第1約束期間全体で 9.15 Mt CO2 に
達となる。
3
土地に関する情報
2008 年の KP- LULUCF の報告はスイス全土を含んでいる。森林減少を除いて、京都議定
書活動の報告のための活動データは、スイス土地利用統計(Swiss Land Use Statistics) か
ら得られる(SFSO 2009; ee also Chapter 7.2.2.1)。AREA はスイス全土に張り巡らせてあ
る 100m 間隔のグリッド上に規則的にサンプルプロットを提供する、各サンプルプロット
の基準面積は、50 x 50 m である。
― 97 ―
表 SWI.8
京都議定書 3 条 3 項および 4 項の活動データ。森林減少データは、Swiss Statistics of
Deforestation (FOEN 2009i, and former editions 1985-2008)による。 新規植林データお
よび森林管理を表す数値は、Swiss Federal Statistical Office の Swiss Land Use
Statistics (AREA) から得られる。
― 98 ―
土地転用マトリクス
3 条 3 項の活動
新規
植林
およ
び再
植林
森林
減少
3 条 4 項の活動
森林経
営
(選択
してい
る場合)
農地管
理(選
択して
いる場
合)
放牧
地管
理(選
択し
てい
る場
合)
植生
回復
(選
択し
てい
る場
合)
その他
今年度
の始ま
りにお
ける面
積合計
農地経
営
(kha)
新規植
林およ
び再植
林
NO
2.25
森林減
少
4.46
森林経
営
(選択
してい
る場合)
0.20
1,212.03
農地管
理
(選択
3条
してい
4項
る場合) NA
NA
の
放牧地
活
管理(選
動
択して
いる場
合)
NA
NA
植生回
復
(選択
してい
る場合) NA
その他
0.82
0.06
NA
今年度の終わ
りにおける面
積合計
4.65
1,212.86
2.31
引用:KP-LULUCF Table Accounting
3条
3項
の
活
動
2.25
4.46
1,212.23
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
2,908.61
NA
2,909.49
NA
NA
NA
2,908.61
4,128.42
― 99 ―
4
活動別の情報
新規植林・再植林、森林減少、森林経営による吸収・排出量算定結果総括表
新規植林・再植林による吸収・排出量算定結果総括表
2008
Gg-CO2
Gg-C
-35.24
9.61
地上バイオマス
-34.15
9.31
地下バイオマス
IE
IE
枯死木
NO
NO
リター
NO
NO
土壌
-1.09
0.30
AR
その他のガス
CO2
+:排出、-:吸収
C
+:吸収、-:排出
KP-LULUCF Table 5(KP-1)A.1.1.より作表
森林減少による吸収・排出量算定結果総括表
2008
Gg-CO2
Gg-C
172.59
-47.07
地上バイオマス
92.75
-25.30
地下バイオマス
IE
IE
枯死木
5.87
-1.60
リター
11.25
-3.07
土壌
62.72
-17.10
D
その他のガス
CO2
+:排出、-:吸収
C
+:吸収、-:排出
KP-LULUCF Table 5(KP-1)A.2.より作表
― 100 ―
森林経営による吸収・排出量算定結果総括表
2008
Gg-CO2
Gg-C
-854.55
233.06
地上バイオマス
-36.86
10.05
地下バイオマス
IE
IE
枯死木
-817.69
223.01
リター
NO
NO
土壌
NO
NO
FM
その他のガス
CO2
+:排出、-:吸収
C
+:吸収、-:排出
KP-LULUCF Table 5(KP-1)B.1.より作表
4.1 新規植林・再植林
4.1.1 地上バイオマス、地下バイオマス
新規植林の大部分は、草地で起きている(CC31-34 in Table 7-9)。土壌炭素の年変化は、永
久草地 CC 31 と生産林 CC 12 の炭素蓄積の差を基に算出している。UNFCCC における土
地利用変化の報告同様、20 年間の土地利用転換期間(Chapter 7.1.3.4 参照)は、土壌炭素
蓄積が草地レベルから生産林レベルへ土壌炭素蓄積を移行させるために選択された。
新規植林の生体バイオマスの合計成長量は、成長指数関数に従っている。数値は、3 段階の
標高別成長量によって得られる(Table 7-26)。累積新規植林面積の総合計成長量は、類似の
成長量がみられる特定の年の植林面積を乗じて決定した。再植林は、スイスでは行われて
いない(FOEN 2006h, Sect. E)。
4.2 森林減少
4.2.1 地上バイオマス、地下バイオマス
生体バイオマス、枯死木、リターの合計炭素蓄積は、森林減少の後すぐに削除される。そ
の一方、森林減少に起因する土壌攪乱による土壌炭素の消失は、20 年間の転換期間に土壌
炭素プールが 50%(Covington 1981, Rusch et al 2009)まで減少する。
4.3 森林経営
4.3.1 地上バイオマス、地下バイオマス
・生体バイオマスの Gain
生産林の合計成長量は“CC 12 remaining” および“CC 13 から CC 12”のカテゴリを
適用している。非生産林の合計成長量は、ゼロにセットされている ( chapter 7.3.4.7 およ
び Table 7-5 参照)。
・生体バイオマスの消失
非生産林(“CC 12 remaining”)における伐採と枯死は、生体バイオマスの消失に影響を及
― 101 ―
ぼす。“CC 12toCC 13”から転用した森林については、生体バイオマスの炭素蓄積の変化
を報告している( Chapter 7.1.3.2 参照)。非生産林は意図的に伐採されていないため、森林
統計(SFSO 2009i)による年間伐採量は生産林(“CC 12 remaining”)と区分されている。
我が国は、保守的なアプローチを選択し、非生産林(“CC 13 remaining” および“CC 12
to CC13”)においては、非吸収・非消失と報告する。
4.4 自然攪乱による影響への対処方法
記述なし
― 102 ―