植物抽出液に含まれる糖類と フェノール類の新規分離方法 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 林産試験場 利用部 バイオマスグループ (研究主任 檜山 亮) 1 技術開発の背景1 ★北海道ではカラマツが最も伐採・加工されている →樹皮が約10万トン(乾燥)/年 発生 ★製材所でまとまって発生 →収集・運搬費用が安い。供給安定性が高い。 有望なバイオマス資源 ■現状では堆肥化資材・ 燃料等として利用 より高付加価値な用途を 2 技術開発の背景2 ★カラマツ樹皮には容易に抽出できる少糖類と フェノール類が各1割程度含まれている 熱水可溶物 熱水不溶物 ・少糖類:単糖~オリゴ糖(Glucose、 Fructose、Sucrose、Raffinose) ・フェノール類:99%フラバノール類 (他針葉樹に比べ高い) フラバノール骨格の例((+)-カテキン) 3 従来技術とその問題点 植物由来のフェノール類を分離回収する従来技術 ■樹脂カラムに吸着させ有機溶媒で洗い出す方法 ・精密な分離が可能 ・有機溶媒の使用量が多い ■限外濾過膜を用い、分子量で分離する方法 (柿渋タンニン) ・低分子のフェノール類の分離が不可能 4 開発した新技術について1 疎水性イオン液体(以下、疎水IL)を用いて、 液-液抽出を行い、 疎水IL相にフェノール類を移行させ、 水相に糖類を残存させることで分離する方法 <語句説明> イオン液体(Ionic Liquid): 陽イオンと陰イオンから成る塩(えん)だが、 水に溶解しなくても常温付近で液体状態である物質 疎水IL: ILの中で水と混合しないもの 主に用いた1-メチル-3-オクチル イミダゾリウム テトラフルオロほう酸塩 5 開発した新技術について2 樹皮 抽出液 疎水 IL 撹拌 遠沈 水相 糖類 疎水IL相 フェノール類 液液抽出 約96%の分離率 6 開発した新技術について3 樹皮 抽出液 疎水 IL 糖類 撹拌 遠沈 液液抽出 貧溶媒 フェノール類 7割程度 を回収可 7 開発した新技術について4 ほぼ全量を回収 樹皮 抽出液 疎水 IL 糖類 架橋剤 HCHO 疎水IL 撹拌 貧溶媒 遠沈 加熱 液液抽出 固液 分離 高分子化 フェノー ル類 ほぼ全量を回収 8 開発した新技術について5 触媒添加なし →疎水IL回収性UP 樹皮 抽出液 疎水 IL 糖類 架橋剤 HCHO 疎水IL 撹拌 貧溶媒 遠沈 加熱 液液抽出 約96%の分離率 ほぼ全量を回収 貧溶媒 フェノール類 7割程度 を回収可 固液 分離 高分子化 フェノー ル類 ほぼ全量を回収 ★簡便なシステム(同じ疎水ILで抽出~高分子化) ★他の植物への応用可能性(ヤナギ樹皮、ブドウ種子で試験済み) ★疎水ILの繰り返し利用が可能であることを確認済み ★高分子化フェノール類:アルカリで再溶解可能、HCHO吸着性残存 9 実験データ1 分析 樹皮 抽出液 撹拌 水相への残存率(%) 疎水 IL 樹皮抽出液 水相 水相への残存率(%) カラマツ樹皮抽出液および、試薬の(+)-カテキンとグルコース の水溶液(CG液)について液液抽出を行った。 液-液抽出前後の水相に含まれるグルコースをHPLCで、 フェノール類をFolin-Ciocalteu法で測定した。 樹皮抽出液 CG液 遠沈 図1 液液抽出後の水相への残存率 液液抽出 CG液 図1 液液抽出後の水相への残存率 10 実験データ2 疎水ILにフェノール類が溶解し、 回収される様子を吸光光度計を 用いて観察した。 →溶解すると波長280nm付近に ピークが見られ、回収後にピーク がほとんど無くなる様子が観察さ れた。 図3 疎水IL相の各工程での 吸光度 11 実験データ3 主な試験は105℃6時間の条件 で行ったが、高温では短時間で 高分子化できた。 架橋剤 HCHO 貧溶媒 加熱 表1 高分子化に要する温度と時間の条件 加熱温度(℃) 105 120 140 加熱時間(分) 0 3 10 30 120 180 240 300 360 × - - × × ○ × - × △ ○ ○ ○ × △ △ ○ ○ ○ 12 新技術の特徴・従来技術との比較 ★従来技術(限外ろ過膜使用)では不可能であった、 低分子のフェノール類と糖類を分離することに成功 ★従来技術(樹脂カラムに吸脱着)に比べて、 使用する有機溶媒量を大幅に削減 13 想定される用途 カラマツ樹皮 抽出 糖類・フェノール類:化学原料、接着剤、吸着剤 機能性材料などに 残渣:燃料、堆肥化資材(従来用途) 新たな利用も? ★カラマツ樹皮以外の植物にも適用可能性 14 実用化に向けた課題 • フェノール類と糖を分離する疎水ILは、ある程度親水性を持った疎水IL であり、液-液抽出後の水相に疎水ILが混入する →水と性質が大きく異なるので回収は可能と考えている • 高分子化したフェノール類の回収率が100%を超えており、高分子化 フェノール類にわずかに疎水ILが混入している可能性 →効率的な洗浄方法を検討する • 高分子化せずに回収したフェノール類および高分子化フェノール類の 化学構造や性質を把握する必要がある 15 企業への期待 • 未解決の課題については研究を進めれば克 服可能と考えている。 • 糖類の発酵技術を持つ企業との共同研究を 希望。 • 化学原料等の開発技術のある企業と植物由 来フェノール類の用途の共同開発を希望。 16 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :フェノール類の分離回収方法及び 疎水性イオン液体の使用 • 出願番号 :特願2014-177485 • 出願人 :地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 • 発明者 :檜山 亮、折橋 健 17 本技術に関する問合せ先 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 林産試験場 利用部 バイオマスグループ (発表者名 研究主任・檜山 亮) TEL:0166-75-4233(内516) FAX:0166-75-3621 e-mail:hiyama-ryo@hro.or.jp 18 知的財産権に関する問合せ先 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 研究企画部知的財産グループ 鈴木、西山 TEL:011-747-2806 FAX:011-747-0211 e-mail:hq-rps@hro.or.jp 19
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