第4章 水産分野の政府組織、関連法規、対外政策 4.1

第4章
水産分野の政府組織、関連法規、対外政策
4.1. 水産担当行政機関
(1)水産資源総局
ブルキナファソでは、2002 年 6 月の組織改正の際に新たに設置された農業水利水産資源省(以
下「農水省」
)が、水資源に関連した農村部の生産活動に関する行政全般を管轄している。農水省
の管轄下には、水産分野を担当する水産資源総局(以下「水産局」)だけでなく、飲料水提供に係
る国営上下水道公社(ONEA)も配置されている。
前述の 2002 年の組織改正時に、それまで環境省に置かれていた水産局が農水省へ移管された。
それまで、水産局は養殖開発部と漁業部の 2 部に分かれていたが、2008 年 12 月に環境省との間
で水産分野に係る法律や規制を調整するため、新たに法律・規制・技術企画部が設置され、現在
は 3 部体制となっている。
水産局は、総局長以下、総計 17 名の職員から構成されている。水産局には、後述する地方局の
水産分野に関する活動、地方局管轄の経済水域特区技術ユニット(UTP)に活動に関して直接的な
指示・監督等の権限はないが、地方で実施される水産関係プロジェクトの総合的なコーディネー
ト機能を有し、地方局や UTP とは密接な協力関係にある。
また、ブルキナファソ内の 13 州には地方分権化政策を反映し、それぞれに地方局(DRAHRH)が
置かれている。
(2)地方局・県局
ブルキナファソの 13 州すべてに設置されている農水省次官直轄の地方局の主な役割は、農水省
としての地方活動の調整・運営、州内に配置されている県局の活動調整、地方で実施される農業・
水産業に関する各種プロジェクトと NGO の調整などである。地方局は、財務・行政部、計画調整
部および技術部(ST)の 3 部と 1 秘書室で構成されている。
地方における水産分野の行政実務は ST の水産資源開発促進課(SPERH)が担当している。主な
活動は、漁業と養殖の促進、水産業に関する支援、水圏生態系の保護と維持、水産資源開発に係
る必要事項の分析や総括、水産資源管理に関する法律と漁業活動との整合性確認である。ほとん
どの地方局には 1~2 名の水産担当官が配置されているが、水産に関する知識を持っている担当官
は少ない。
各県の地方局の下には県局が設置されており、県レベルの農業と水産業に関する行政を担当し
ている。主に現場の活動を評価し、関係者への直接的な指導や支援を行っている。県局は、財務
部、計画調整部および技術部の 3 部、秘書室および技術支援ゾーン(ZAT)で構成されている。
ZAT では、地域長とその下部組織である指導ユニット(UAT)が各担当地域の農業分野にかかる
計画の策定、農民や漁業者の育成、普及および研究活動等を行っている。また、ZAT の活動には、
水資源や水利分野の開発や改善についての提言も含まれているが、これらに関する専門的知識を
有する担当者はほとんどいない。
(3)大規模水面の漁場管理組織
1)漁業管理委員会
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2004 年 1 月に発令された国内法(DECRET 2004-007/PRES/PM/MAHRH)により、ブルキナファソ
の 5,000ha 以上の面積を有する水域は経済水域特区(PAIE)に指定され、そこでの漁業および関
連活動の管理主体として漁業管理委員会が設定される。漁業管理委員会は州知事を代表とし、漁
業者代表のほか、農水省の各局関係者等約 30 名からなる大規模な組織となるが、実質的な中核と
なるのは地方局に設けられている経済水域特区技術ユニット(UTP)である。UTP は漁業管理委員
会事務局としての実務全般を一任されている。また、漁業管理委員会に付属して、漁業監視委員
会と漁業調整委員会が設置されている。
PAIE に指定されているバグレ湖とコンビエンガ湖には、すでに漁業管理委員会が設置されてい
るが、ジガ湖とスールー湖では、これから設置される予定である。
なお、漁業管理委員会の活動内容は、以下の通りである。
①毎年発行される漁業・流通販売ライセンスの管理状況の調査
②PAIE 内の改善と管理計画の調査
③プロジェクトの年間実施計画と実施体制の調査
④PAIE で漁獲される水産物の開発と商品化に係る仕様書の調査
⑤PAIE に係る開発計画案と予算案の調査
⑥UTP の活動と財務状況の調査
⑦水産資源の開発と付加価値化に係る問題点の調査
⑧PAIE に係る問題と法律による規制事項の審査
2)経済水域特区技術ユニット
UTP は 4 つの PAIE すべてに設置されている。以前は、水産局が管轄する漁業局のもとに配置さ
れていたが、政府の進める地方分権化政策により、現在では地方局直轄となっている。
各 PAIE における UTP の人員配置は、UTP 長、技術・組織担当職員、調査・統計担当職員の 3 名
とされている。しかし、実際は水産分野関連の人材が不足していることから、ジガ湖やスールー
湖では、現在 UTP 長しか配置されていない。
なお、UTP の主な活動内容は以下のとおりである。
①水産資源管理案と改善計画案の作成
②UTP の事業予算案の作成
③UTP の活動と財務の報告
④水産業関係者への技術と組織化に関する支援
⑤関係ドナーとの活動の計画や調整
⑥PAIE で実施される活動の監視
⑦UTP の活動実施に必要な予算調達への支援
⑧農村部の女性と青年の社会経済状況の改善
4.2. 水産教育・訓練・研究機関
オーバッサンにある国立ボボデュラソ大学では、ティラピア養殖を専門に研究している研究者
が 2 名在籍している。しかし、大学内には水産分野(漁業、養殖、加工、流通、資源等)を専門
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とするコースや研究室は未だ整備されていない。研究者は、若手の育成と研究のために水産分野
のコースを持ちたい意向はあるが、予算が不足しているため実現されていない。
水産局職員の多くは、国内大学を卒業後、コートジボアール、モーリタニア等の漁業学校やベ
ルギー等の仏語圏の大学に留学した経験を有している。また、水産資源総局が環境省に所属して
いた当時に採用された職員は、国内の水資源・森林学校(ENEF:Ecole Nationale des Eaux Foret)
にて、水産に関する一般的な授業を受けている。現在、農水省の職員はボボデュラッソのマトル
ク多目的農業センター(CAPM:Centre Agricole Ployvalant du Matouloukou)にて研修を受けて
いるが、同センターでは水産に関する授業は実施されていない(現在、養殖に関する授業の開設
を検討中)
。
4.3. 関連法規
ブルキナファソ内で漁業活動を行う場合、農水省が発行する漁業ライセンスを購入することが
義務づけられている。以前は、漁業および流通販売ライセンスの発行や漁民の取り締まりは環境
省が統括していたが、2008 年からは、ライセンス発行は農水省、取り締まりは環境省が担当して
いる。
漁業ライセンスは、国籍によるカテゴリー別に料金が設定されており、外国人の漁業ライセン
ス料金はブルキナファソ人の 3 倍以上である。また、漁場によっても料金が異なり、ブルキナフ
ァソ籍を有していても、住民登録地内で漁業に従事する場合の漁業ライセンス取得料は 5,000
FCFA/年だが、他の地域でも漁業を行う場合の漁業ライセンスは 8,000 FCFA/年が必要である。
流通販売ライセンスには 5 つの区分があり、各ライセンスの中で、さらに国籍別の料金が設定
されている。表 4.1 に示すとおり、大型の流通販売形態となりうる 4 輪車による流通(M1)
、輸入
販売(I)および輸出(E)ライセンスに関しては、特に高い料金が設定されている。
表 4.1 漁業ライセンス料金表
カテゴリー
国籍
料金(FCFA/年)
備考
A
自国民
8,000
住民登録地以外も漁業可
B
外国人
35,000
住民登録地以外も漁業可
C
自国民
5,000
住民登録地のみ
D
外国人
15,000
住民登録地のみ
出典 :海外漁業協力効率化促進事業報告書(2009 年)
表 4.2 流通販売ライセンス料金表
ライセンス
M1
M2
国籍
料金(FCFA/年)
備考
自国民
50,000
外国人
150,000
自国民
10,000
エンジン付2輪車
外国人
30,000
による流通
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エンジン付4輪車
による流通
R
I
E
自国民
2,500
外国人
5,000
自国民
50,000
外国人
100,000
自国民
250,000
外国人
500,000
国内水産物の販売
水産物の輸入販売
水産物の輸出
出典:海外漁業協力効率化促進事業報告書(2009 年)
4.4. 水産関連条約加盟状況
(1)国際捕鯨委員会(IWC)
IWC への加盟に関し、2000 年に大統領令が発令され議会の決議によって可決される予定であっ
た。しかし、2010 年 10 月現在の状況は、加盟手続き中で、未だに正式加盟には至っていない。
(2)ニジェール川の内陸航行と流域内での経済協力に関する国際法
ブルキナファソを流れる国際河川は、コモエ(Komoe)川、ボルタ(Volta)川、ニジェール(Niger)
川であり、ニジェール川については、1963 年 10 月にブルキナファソを含めた流域 9 カ国により、
ニジェール川の内陸航行と流域内での経済協力に関する国際法(通称ニアメー法)が制定され、
1964 年にはニジェール川委員会(NRC)の設置に関する協定が結ばれ、1980 年 11 月には NRC はニ
ジェール川流域機構に改組された。
(3)ラムサール条約
湿地 の保存に関する 国際条約 であるラムサール条約(正式名:特に水鳥の生息地として国際的
に重要な湿地に関する条約)に加盟しており、2009 年に 15 か所、652,502haが登録されている。
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