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4. 国有林 GIS の活用
4. 1 国有林 GIS
本業務において,解析に利用した国有林 GIS の諸元は表 4. 1-1のとおりである。
表 4. 1-1 国有林 GIS の諸元
国有林 GIS の諸元
バージョン
データセット
4-1
4.2
2009 年 3 月版
4. 2 国有林 GIS データを利用した解析
4. 2. 1 GIS データの処理手順
GIS データ(等高線:ラインデータ)は,そのままでは解析に利用することはできないため,ESRI
社の ArcGIS9.3.1 を使ってラスタデータ(以下 DEM。DEM:Degital Elevation Model 数値標高
モデル)を作成した。DEM にすることで,各種解析を実行することができる。データ処理のフロー
を図 4. 2-1に示す。図の「NFGIS→SHAPE」については,国有林 GIS の「シェイプファイル出力ツ
ール」を利用して,該当する平面直角座標系に変換して利用した。
NFGIS→SHAPE
(等高線)
斜面の傾斜度
トポ→ラスタ
DEMを出力
(標高)
斜面の方位
傾斜度を出
力
方位を出力
国有林GISで処理
ArcGISで処理
地上開度
地上開度を
出力
出力結果
図 4. 2-1 GIS データの処理手順
4. 2. 2 地形
国有林 GIS データを用いて解析を実施するため,電子化された等高線データから 10m メッシュ
DEM を作成した。DEM 作成の方法は,クリギングや IDW などいくつかの方法があるが,等高線の
みでは,等高線にあわせた地形を作成することが難しいため,ArcGIS9.3.1 の「トポ→ラスタ」ツー
ルを利用した。
このツールは,水文学的に正しい DEM を作成する目的で設計された内挿法で,Michael
Hutchinson(1988,1989)が開発した ANUDEM プログラムを基にした。ANUDEM については,
hutchinson と Dowling の文献(1991)を参照する。
このツールを利用して作成した図 4. 2-2のようになる。
4-2
図 4. 2-2 DEM データの例(10m メッシュ)
4. 2. 3 傾斜
4.2.2 で作成した 10m メッシュ DEM をもとに,傾斜区分を作成した。作成には ArcGIS9.3.1 の
「Slope」ツールを利用した。例を図 4. 2-3に示す。
図 4. 2-3 傾斜区分の例
4. 2. 4 方位
4.2.2 で作成した 10m メッシュ DEM をもとに,傾斜区分を作成した。作成には ArcGIS9.3.1 の
「Aspect」ツールを利用した。例を図 4. 2-4に示す。
4-3
図 4. 2-4 斜面方位の例
4. 2. 5 温量指数
温量指数は,4.2.2 で作成した 10m メッシュをもとに,各メッシュの緯度を用いてそれぞれ計算し
た。計算に利用した式を表 4. 2-1に示す。
表 4. 2-1 温量指数算出のための気温の計算式
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
t c= 9.6-1.19
t c=10.6-1.11
t c=13.0-1.06
t c=17.7-0.94
t c=22.1-0.88
t c=25.6-0.81
t c=29.4-0.65
t c=30.1-0.59
t c=26.7-0.68
t c=21.5-0.80
t c=16.6-0.90
t c=12.4-1.03
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
(f-30 ゚)
-0.0056h
-0.0060h
-0.0056h
-0.0055h
-0.0054h
-0.0060h
-0.0062h
-0.0064h
-0.0058h
-0.0056h
-0.0051h
-0.0053h
(気象技術報告第 2 号 1960)
但し,t c: 任意の地点の月平均気温(℃)
f :任意の地点の緯度(°以下の´,〃は °に換算する)
h: 任意の地点の標高(m)
上記の式より各月の平均気温を計算し,温量指数を算出した。例を図 4. 2-5に示す。
4-4
図 4. 2-5 温量指数の例(等温量指数線は 5 ごと)
4-5
4. 3 GIS データの活用
4. 3. 1 地質図
地質図は,国有林 GIS によるものを基本としたが,記載のないものも見受けられたため,国有林
GIS 情報に加え,国土交通省国土計画局より提供されている,国土数値情報を利用した。
(1)国有林 GIS 情報
国有林 GIS では,森林調査簿により林小班ごとに地質情報を持っているため,該当する施工地の地
質情報を取得した。図 4. 3-1に例を示す。
図 4. 3-1 国有林 GIS で取得した地質情報の例(岩手県:葛根田第十三)
<赤枠内が調査現場の位置>
(2)国土交通省国土計画局情報
地質メッシュデータは,国土交通省国土計画局より提供されている,国土数値情報をダウンロード
して利用した。データの詳細については,HP(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)を参照する。
ダウンロードしたデータは,メッシュ図郭情報を持ったテキストデータのため,3 次メッシュ(1km
×1km)のシェイプファイル(ESRI 社 http://www.esri.com)とリンクすることで,GIS データと
して利用した。例を図 4. 3-2に示す。
4-6
図 4. 3-2 メッシュ区分の例
<赤枠内が調査現場の位置>
4. 3. 2 土壌図
土壌図は,国有林 GIS によるものを基本としたが,記載のないものも見受けられたため,国有林
GIS 情報に加え,土交通省国土計画局より提供されている,国土数値情報を利用した。
(1)国有林 GIS 情報
地質情報と同様に,土壌に関する情報も国有林 GIS の森林調査簿より取得した。
図 4. 3-3 国有林 GIS で取得した土壌情報の例(岩手県:葛根田第十三)
<赤枠内が調査現場の位置>
(2)国土数値情報
土壌データは,国土交通省国土計画局より提供されている,国土数値情報をダウンロードして利用
した。データの詳細については,HP(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)を参照する。
4-7
ダウンロードしたデータは,メッシュ図郭情報を持ったテキストデータのため,3 次メッシュ(1km
×1km)のシェイプファイル(ESRI 社 http://www.esri.com)とリンクすることで,GIS データ
として利用した。例を図 4. 3-4に示す。
図 4. 3-4 メッシュ区分の例
<赤枠内が調査現場の位置>
4. 3. 3 植生自然度
植生自然度データは,環境省自然環境保全基礎調査のデータが公開されているため,これを利用し
た。データの詳細については,HP(http://www.biodic.go.jp/kiso/vg/vg_kiso.html)を参照のこ
と。
ダウンロードしたデータは,メッシュ図郭情報を持ったテキストデータのため,3 次メッシュ(1km
×1km)のシェイプファイル(ESRI 社 http://www.esri.com)とリンクすることで,GIS データ
として利用した。図 4. 3-5に例を示す。
図 4. 3-5 メッシュ区分の例
4-8
なお植生自然度は,図 4. 3-6のように対象とする施工地およびその外周を取り囲む周辺メッシュの
平均値を求めその値を自然度として取り扱うこととした。下記の例だと黄色の自然度 8 が 7 個,肌色
の自然度 7 が 1 個,緑色自然度 5 が 1 個で,この場所の植生自然度は 7.555・・・である。
(7×8 個+8×1 個+5×1 個)÷9=7.55555・・・・
自然度7
自然度8
調査位置
自然度5
図 4. 3-6 植生自然度の測定方法
4-9
4. 4 GIS 活用の有効性
今回の解析では,国有林 GIS を利用して地形解析などを実施し,現地調査結果と合わせて解析する
ことで,有用な知見が得られた。しかしながら,国有林 GIS で解析に利用したのは,等高線など地形
データのみであるため,林道などの位置の情報が重要となるデータを利用していない。
航空緑化工採用の場合,資材運搬方法の検討から採用に至る場合が多いと思われる。資材運搬に欠
かせないのは林道網であり,国有林 GIS には林道など路網データが整備されているため,本業務の解
析結果等とあわせて,これらの情報を利用すれば,工事予定地と運搬方法の検討が容易になる可能性
がある。また,航空緑化工については,治山台帳もデータベースとして整備した。この台帳情報と国
有林 GIS をリンクすれば周辺で実際に施工された情報が容易に取得できるようになる。さらに,デー
タベースには現地の状況等を入力できるようになっているため,周辺施工地の現状等も把握できるよ
うになる。イメージを図 4. 4-1に示す。
歩道
台帳整備済
林道
このあたりで航
空緑化をしたい
図 4. 4-1 国有林 GIS で得られる情報例
4-10