第4章 埼玉県中小企業知的財産行動指針 1 行動方針 「経営の視点に立った知的財産支援の促進」 県内には、様々な産業分野に生かすことができる高い技術を有しているもの づくり企業が多くあります。つまり、素晴らしい知的財産を持つ企業が多いと 言えます。この知的財産を、企業自らが把握し、整理し、自社の強みとして経 営に生かせることが、企業の発展につながっていくと考えます。 しかし、企業の中には、知的財産の重要性に気づいていない企業や保有する 知的財産を十分に生かせていない企業、知的財産と経営とのつながりを十分に 理解していない企業が数多くあります。 そこで、個々の企業の経営の中身まで踏み込んで経営課題や強みを把握し、 知的財産を企業の経営の向上につなげていけるよう、常に経営の視点に立った 知的財産支援を行ってまいります。 2 行動の主な取組 (1)知的財産支援の土台となる取組 個々の企業の経営課題への対処や強みを生かした知的財産支援を行います。 ア 経営課題への対処や強みを生かした支援 企業からの知的財産相談への単なる対応に留まらず、相談の中から 企業の抱えている経営課題や企業の強みを発掘し、そこから知的財産を どのように経営に生かせるかという視点でアドバイスしていきます。ま た、発展可能性の高い企業や成長可能性の高い分野など、有望な相談案 件に対しては、 「産学連携支援センター埼玉」やその他の支援機関と連携 し、更なる発展につながるよう攻めの支援を行います。 イ 企業が保有する知的財産を整理した上での知的財産活用支援 企業の中には、多数の知的財産を保有しているにも関わらず、それを 経営に生かせず、埋もれさせてしまっている例が多く見られます。保有 する知的財産を整理し、自社での活用や他社へのライセンシングなど、 企業の事業展開等に応じて活用方法を整理し、知的財産を最大に活用で きるようアドバイスしていきます。 ウ 他の支援機関との連携による支援 「知的財産総合支援センター埼玉」を中核として、同じく公社の「産 学連携支援センター埼玉」、 「創業・ベンチャー支援センター埼玉」、およ び埼玉県産業技術総合センター、各大学、日本弁理士会など、必要に応 じてその他の支援機関と連携した支援を行います。 【知的財産を経営に生かす企業へとステップアップさせる事業】 (1)企業の知的財産体質強化のための専門家派遣事業 ・弁理士などの専門家を企業に派遣し、専門相談を通じ企業の個々の経 営課題に応じた支援を行う。 (2) 企業の実態に合わせた知財人材育成支援事業 ・知財アドバイザーが企業を訪問し、経営者に対して、知的財産と経営 のつながりや知的財産の有用性など、知的財産を生かした企業経営に ついてアドバイス等を行い、企業内の知財人材の育成を図る。 (3) 知財制度の普及・活用促進事業 ・セミナー等を開催し、知的財産の重要性、経営への活用ノウハウ等の 普及促進を図る。 (4) 企業が効果的に知的財産を活用するための事業連携マッチング事業 ・自社が保有する知財の他社へのライセンシングや、大学・研究機関所 有、他社所有の知財を活用するためのマッチング支援を行う。 (5) 企業の知的財産戦略策定支援事業 ・企業が保有する技術や知的財産の有効活用を企業と知的財産アドバイ ザーが一緒に検討し、自社の知財戦略を策定する。 (2)知的財産支援の土台をもとに、さらなる段階へとつなぐための取組 ①海外進出を図ろうとする企業への充実した知的財産支援を行います。 ア 海外進出を図ろうとする企業への知的財産の総合的支援 グローバル化の進んだ現在の経済状況において、国内に留まらず海外に 活路を見出そうとする企業は今後も増えていくと思われます。 そこで、自社の技術や製品等の売り込み、海外展示会への出展、新興国 の現地企業への技術移転等を進めようとしている企業に対し、進出国への 知的財産権の出願支援、秘匿すべき事項に対するアドバイス等、知的財産 全般についての支援を行います。 また、自社の技術や製品等の盗用、模倣等を防ぐための防御対策にかか る支援も行ってまいります。 さらに、国によって異なる海外の知的財産制度に関するセミナーの開催 など、企業への情報提供を積極的に行ってまいります。 イ 他機関との連携支援 公社の海外支援グループや、国、JETROなど、企業の海外展開に係 る支援を行っている機関と情報交換を行いながら、連携して支援を行って いきます。 ウ 知的財産アドバイザーのスキルアップ 今後増えていくと思われる海外展開を図る企業への支援を強化するた め、知的財産アドバイザーの海外知的財産制度の知識、ノウハウの習得な どのスキルアップを図ります。 【1 海外展開を図る企業に対する主な事業】 (1) 外国出願費用補助事業 ・(継続)外国出願費用補助(国補助) ・ (新規)県の医療機器開発事業と連携した外国出願費用補助(県補助) (2) 海外展開を図る企業に対する海外知的財産相談事業 ・知的財産総合支援センター 知財アドバイザーによる海外知的財産 相談 ・国(独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT))と連携し、海外 知的財産プロデューサーを活用した海外展開全般に係る相談支援 (3) 海外展示会出展企業に対する知財アドバイス支援事業 ・公社の海外ビジネス支援グループと連携し、海外展示会出展企業に対 し、知財に関するアドバイスを行う。 (4)海外模倣対策支援事業 ・JETRO と連携し、自社の技術や製品等の盗用、模倣を防ぐための防御 対策支援に関するセミナー共同開催、海外侵害調査支援事業等、各種 JETRO 事業の情報提供等を行う。 (5)海外知財制度等情報提供事業 ・JETRO と連携し、海外各国(おもに中国、アセアン地域など)の知財 制度等に関するセミナー開催 ・弁理士会と連携し、弁理士を講師とした海外展開セミナーの開催 【2 知財センターの相談スキルを向上させる事業】 (1)知財アドバイザースキルアップ事業 ・海外出願や海外の知財事業に詳しい JETRO の知財アドバイザーや弁理 士等を講師にした、知財を活用した海外展開支援のための研修を実施 ②次世代産業分野への参入促進のための知的財産支援を強化します。 ア 次世代産業分野の研究開発に対する支援 現在、県の5か年計画では次世代産業分野への参入促進を重点施策と して掲げています。特に目指すべき次世代産業分野として、今後の成長 が期待される医療・福祉分野、新エネルギー分野、次世代自動車分野を あげています。この分野に県内中小企業が参入していくことは、県内中 小企業が将来にわたって発展していくために必要不可欠です。そこで、 次世代産業分野に参入しようとしている企業に対し、知的財産の側面か ら研究開発促進を図ります。 また、県が平成 26 年度から取り組む先端産業創造プロジェクトに対し ても知財の面からプロジェクトの推進を図ります。 イ 他機関との連携支援 次世代産業分野の研究開発への知的財産面での支援にあたっては、同 じく公社の産学連携支援センター埼玉や次世代自動車支援センター埼玉 などと情報交換を密にし、連携して支援していきます。 【県の次世代産業分野の各事業に対する支援】 (1)県が平成26年度に取り組む次世代産業分野の研究開発支援事業につ いて以下の支援を行う。 ・開発製品・技術に係る先行特許調査、特許出願等の支援 ・研究開発推進のための大学・研究機関や他社所有特許の活用支援 ・開発製品・技術の特許取得後の事業展開を支援 (県が取り組む次世代産業の分野) ア 航空・宇宙分野 航空宇宙産業の参入や事業拡大に取り組む県内中小企業の技術 開発支援等 イ 次世代自動車分野 次世代自動車支援センター埼玉による技術開発から販路開拓ま での一貫支援 ウ 医療機器分野 さいたま市の医療ものづくり構想との連携による医療機器開発 プロジェクトの展開(平成25年度~) エ 次世代住宅分野 太陽光パネルや地中熱、HEMSなどを県内中小企業とハウスメ ーカーとが共同開発(平成26年度~) オ 新エネルギー分野 本庄早稲田をフィールドとした先端蓄電池及びスマートグリッド システムの開発(平成25年度~平成27年度) (2)県が平成26年度に取り組む先端産業創造プロジェクトについて以下 の支援を行う。 ・先端産業実用化開発に係る先行特許調査、特許出願等の支援 ・研究開発推進のための大学・研究機関や他社所有特許の活用支援 (先端産業実用化開発分野の例) ア ナノカーボン イ 蓄電池 ウ ロボット など 3 知的財産行動体系 知的財産支援のための行動体系を示すと次のようになります。 「経営の視点に立った知的財産支援の促進」という行動方針のもと、「知的 財産総合支援センター埼玉」を中核として各支援機関が連携して「世界水準の 中小企業の育成」を目標に知的財産支援を進めていきます。 【目標】世界水準の中小企業育成 【次世代産業分野への 参入促進】 【国際化への対応】 26 年度の主な取組 企業の 海外進出支援 次世代産業分野の 研究開発促進 個々の企業の経営課題への対処や強み を生かした知財支援 【知財支援の中身の充実】 行動方針 経営の視点に立った知的財産支援の促進 主な中小企業支援機関 弁理 士会 その他 支援機関 公社(知財 センター) 大学 サイテ ック 4 指標 「知的財産総合支援センター埼玉」が中小企業への知的財産支援を展開して いくにあたり、長期(埼玉県5カ年計画ごと)の数値目標として「成果指標」、 短期(1年ごと)の数値目標として「行動指標」を設定します。 ○成果指標 指標項目 県内の 産業財産権 出願件数 現状値 6,916 件(H24 年) ※(内訳) 特許権 3,991 件 実用新案権 292 件 意匠権 756 件 商標権 1,877 件 県内の 国際出願件数 (PCT 出願) 目標値 定義 8,300 件 (H28 年) 埼玉県内から出願された 産業財産権(特許権・実用 新案権・意匠権・商標権) の出願件数の合計 372 件 430 件 (H24 年) (H28 年) ○行動指標 指標項目 目標値 定義 知財センターの 窓口・出張 相談件数 2,500 件 (平成 26 年度) 公社「知財センター」におい て実施する窓口・出張相談件 数の合計 200 件 (平成 26 年度) 公社「知財センター」におい て実施する窓口・出張相談か ら出願に至った件数 30 件 (平成 26 年度) 公社「知財センター」の支援 から外国出願に至った件数 10 件 (平成 26 年度) 公社「知財センター」におい て実施する知財マッチング成 立件数 知財センターの 窓口・出張 相談から出願に 至った件数 知財センターの 支援から 外国出願に つながった件数 知財マッチング 成立件数 埼玉県内から出願された 国際出願(PCT出願)の 件数
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