新年のご挨拶 - 大阪府医師会員へのお知らせ

新年のご挨拶
国民の命と健康を守るため、医療の
在るべき姿を国・行政に訴える 明けましておめでとうございます。平成27年の新年を迎えるにあたり、一言
ごあいさつを申し上げます。会員の先生方におかれましては健やかに新年を迎
えられたことと、お慶び申し上げます。
ここ数年、我が国では様々な災害が発生しています。東日本大震災に始ま
り、年々巨大化する豪雨災害、昨年は御嶽山の噴火による痛ましい災害も経験
いたしました。一方、こういった自然災害に加えて、感染症の問題も脅威にな
っております。西アフリカで感染拡大が続くエボラ出血熱は、危機的様相を深
めています。アフリカ以外での二次感染による死者も増加しており、遠からず
我が国にも感染拡大が及ぶ可能性が強いと言えます。新型インフルエンザとと
もに感染症に対する備えが問われます。自然災害も含めて、想定外だから仕方
ないで済ませるのではなく、必ず起こることを想定した対策が我々医師会にも
求められます。
医療界においては、経済最優先の政権下、今年はこれまで以上に厳しい改革
が進められようとしています。多くの改革案は、既に社会保障改革プログラム
法により筋道が示されているばかりか、プログラム法に盛り込まれた以外の内
大阪府医師会報1月号
(vol.385)
大阪府医師会長
伯 井 俊 明
容も検討されています。その中には、都道府県が定める地域医療構想を更に一
歩進めて医療ビッグデータを活用し、都道府県ごとに医療費の支出目標を設定
することで医療費を抑制するといった提案も出てきております。このようなこ
とになれば、患者さんにとって必要な医療が受けられない事態を招くことにな
りかねません。
昨年成立した医療・介護総合確保推進法では、2025年を見据えて地域での医
療介護提供体制をどのように構築するかが医療者には求められています。我々
医師会としても、病院完結型の医療から地域完結型の医療を目指すよう努力す
ることは惜しみませんが、法律の根底に潜む国の思惑を常に睨みながら、医師
会として医療現場の意見を踏まえて行政に意見具申していかなければなりませ
ん。
今年も日本医師会と連携し、医師会に与えられた使命を果たしていく所存で
ありますので、会員の先生方のご支援、ご協力をお願い申し上げます。会員な
らびにご家族、職員の皆様方が今年1年ご健勝でご活躍されることを心より祈
念申し上げます。
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新年のご挨拶
国民が真に望む医療提供体制の
構築を目指す 大阪府医師会 副会長
茂 松 茂 人
明けましておめでとうございます。会員の皆様
んじがらめの管理統制が進行されつつあります。
には、ご家族お揃いで健やかに新年を迎えられた
これらが本格的に実施されると、入院医療が必要
こととお慶び申し上げます。
な患者さんも十分な療養が受けられず、しかも生
東日本大震災からの再興、福島原発の問題が難
活支援中心の医療提供に変貌する恐れがありま
航する中、昨年は各地の風水害、御嶽山の火山災
す。これまで我々が地域の多職種とともに地道に
害で多くの人命が失われました。被害に遭われた
努力してきた在宅医療の展開とは全く異なるもの
方へのお見舞いと、一刻も早い復興をお祈りいた
で、患者さんが安心安全な医療を受けることすら
します。
難しくなります。昨今、医療が「サービス」と捉
安倍政権では経済最優先の政策が進行していま
えられ、効率化が追求されますが、本来、医療は
す。TPPや国家戦略特区など医療を経済成長の
不確実性が強く、想定どおりには進みません。現
具とし、真の国民医療・健康を求める声は蔑ろに
実と乖離しないよう、受け入れ幅のある医療提供
されています。昨年成立の「医療・介護総合確保
体制を整備する必要があります。大阪では今後、
推進法」には、厚生労働省・財務省の悲願である
地域医療提供体制を議論する「地域医療構想調整
医療を管理する施策がほぼ盛り込まれ、「持続可
会議」 で、大阪府医師会と病院団体が一致団結
能な社会保障制度の確立を図る」改革方針が示さ
し、国民の視点から地域医療構想を検討してまい
れました。このうち地域医療構想では、病床機能
ります。
報告制度で病院が自主的に報告した病棟単位の医
我々は国民とともに団結し、国民皆保険制度、
療機能に、医療資源や診療実績等の分析を加え、
国民医療を死守せねばなりません。第3期伯井執
2025年に必要とされる二次医療圏ごとの医療ニー
行部は引き続き、しっかりと医師会活動に取り組
ズを満たす取り組みが展開されます。更に、ICT
んでまいります。ご支援ご協力をお願い申し上げ
活用によるレセプト情報・特定健診等データベー
ます。
ス(ナショナルデータベース)と個人番号との関
連付け、医療機関の治療レベルの階層化など、が
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大学人、勤務医として医師会の
更なる発展に努める 大阪府医師会 副会長
澤 芳 樹
皆様、新年おめでとうございます。伯井俊明・
教育等でも貢献できればと思っております。ま
大阪府医師会長のもとで副会長と勤務医部会長を
た、昨年12月4日には、在阪5大学医師会および
務めさせていただいております、大阪大学心臓血
2行政医師会役員と府医執行部との懇談会が開催
管外科の澤芳樹でございます。伯井・府医執行部
されました。両者の間で総合診療専門医等の専門
では、地域連携や国際貢献、先進医療・高度医療
医制度、研修医に関する各大学の取り組みや課題
を推進する大学医師の立場から、少しでもお役に
など意見交換と情報共有が図られ、大変有意義で
立つようにと思っております。府医執行部に参画
した。このように、大学人として、勤務医とし
してから早いもので5年目を迎え、医師会の先生
て、大学の活動を医師会の先生方に知っていただ
方との連携や勤務医部会の発展、研修医のリクル
くことは大変重要で、今後もコミュニケーション
ート等に少しでも貢献したいと願っています。
を大切にさせていただきたいと思っております。
私自身は大学の仕事も年々多忙を極め、学内の
もとより大学の医師や研究者も医師会員の医師
心臓血管外科教授職や京都大学の特任教授職、大
も、国民により良い医療を提供し、国民のヘルス
阪大学大学院医学系研究科副研究科長、医学部附
ケアを充実させようとするミッションは同じであ
属病院未来医療開発部長、国際医療センターやハ
ります。臓器移植やiPS細胞などにより医療の新
ートセンター、医工情報融合研究教育 (MEI)
たなイノベーションが期待される中、医師会の先
センター等3つのセンター長、また国の仕事とし
生方とより連携を深めて相互理解が進むように、
まして厚生労働省の再生医療委員、13の学会理
また研修医や専門医も含めて大学所属の医師会員
事、3つの英文誌の編集委員長等の役職をこなし
が増えるように、そのつなぎ役として今年一年頑
ており、医師会ではほとんどお役に立てていない
張りますので、ご理解ご支援の程、よろしくお願
状況で、大変心苦しく思っております。
いいたします。
そういう面から、逆に私がお役に立てることは
学術的な業務や、勤務医部会の発展、研修医への
対応であると考えます。各医師会での講演や生涯
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新年のご挨拶
厳しい環境においても 医療の充実を求め会務に取り組む
大阪府医師会 副会長
中 尾 正 俊
明けましておめでとうございます。会員の皆様
に望む急性期医療から在宅医療までの切れ目のな
方には、ご家族とともにご健勝に新年を迎えられ
い医療提供体制の構築に努めてまいりたいと考え
たこととお慶び申し上げます。
ております。
「医療・介護総合確保推進法」が平成26年6月
さて、安倍晋三首相は昨年11月18日、景気低迷
に成立しました。同法は、消費増税に伴う社会保
を理由に消費税率10%への再引き上げ時期を1年
障制度改革の一環で医療法などを含んだ一括法で
半延期すると表明しました。今年度予算案のうち
あり、消費税財源を充てた「地域医療介護総合確
社会保障費 (医療 ・ 介護 ・ 年金 ・ 子育て) が
保基金」が創設されました。今年度の大阪府への
4,500億円削減されるのは必至の状況です。消費
内示額は49.5億円で、病床の機能分化 ・ 連携の積
税率8%への引き上げにより確保された「地域医
極的促進、在宅医療・介護の推進等に基金が投入
療介護総合確保基金」が、再増税を前提に昨年の
されます。大阪府医師会はこの基金を活用し、
医療関連単独から今年は介護関連も加わることに
「在宅医療推進事業」を展開しております。一部
なっています。しかし、基金に対する財源が十分
の地区医師会では地域医療連携室を設置し、在宅
確保できなければ医療も介護も不十分な状況に追
医療コーディネーターを配置しています。ひとり
い込まれます。
でも多くの会員の先生方が在宅医療に関心を持
そのような厳しい医療環境の変化が危惧されま
ち、積極的に訪問診療を行っていただける体制づ
すが、執行部一同、少しでも良い方向に向けて会
くりに努めてまいります。
務に励んでまいりますので、会員諸兄の更なるご
今年は、各医療機関から報告させた病床機能と
支援とご指導を賜りますよう心よりお願い申し上
医療ビッグデータに基づき、都道府県が「地域医
げます。
療構想」を策定します。大阪府医師会は病院団体
と協働し、医療現場の意見を発言できる「地域医
療構想調整会議」を二次医療圏ごとに設置するよ
う大阪府に求め、話し合いの場を通じて患者が真
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「社会的共通資本」の教えを胸に
皆保険制度堅持に尽力 大阪府医師会 副会長
高 井 康 之
明けましておめでとうございます。会員の皆様
路などの社会インフラに医療、農業、教育、自然
におかれましては、健やかに新年をお迎えのこと
保護など制度資本を加えたものを「社会的共通資
とお慶び申し上げます。
本」 とする概念を提唱され、「すべての人が豊か
我が国の長期債務残高は、国と地方で平成26年
な経済生活を営み、文化的で人間的に魅力ある社
度末に1,010兆円に達する見込みです。国債消化
会を維持することを可能にする社会的装置」と説
を支えてきた家計金融資産が1,600兆円超とはい
かれました。先生の教えに胸に、国民すべてが必
え、GDPの2倍以上で容易には返済できません。
要な時に最良の医療が受けることができる、実の
決して社会保障費の増加に由来するばかりではあ
ある「国民皆保険制度」の存続に努めたいと心を
りませんが、財務省や政府は財政健全化のため、
新たにしています。
一般会計予算で最大の31.8%を占める社会保障費
年末の総選挙ではアベノミクスの是非が問われ
の削減を目論み、消費増税と社会保障費の抑制を
ました。社会保障は争点にならず、医療費抑制策
図る「社会保障 ・ 税の一体改革」 を提示しまし
が一層厳しくなることが懸念されます。国民の健
た。高齢化の進展に伴う医療・介護の体制整備と
康への安心があってこそ経済活動が発展するので
持続可能な財源確保は重要ですが、医療・介護分
あり、新政権には必要な医療費財源の確保を強く
野の給付の効率化・重点化に力点を置く政府改革
望みます。辛い話題が続く中、松原謙二・日本医
案は本当に国民のための「いったい」 改革か?
師会副会長の再選は明るいニュースでした。医療
(金子勝・慶應義塾大学教授)疑問が残ります。
制度や医療保険に関する事項は府医だけでは解決
「社会保障の機能強化」を重視するよう訴え、国
が難しく、日医を支え協力してこそ、少しでも実
民医療の充実を主張してまいります。
現に近づくのではないでしょうか。その意味で松
昨秋、宇沢弘文先生が天寿を全うされました。
原・日医副会長の存在は大きいと思っております。
大阪府医師会でも「社会的共通資本」に関するご
会員の皆様、ご家族にとって良き年となるこ
講演を賜り、感銘を受けたことが思い出されま
と、また医療界、国民にとって明るい展望のある
す。市場原理主義に真っ向から反対し、交通や道
年になることを祈念申し上げます。
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新年のご挨拶
日医の組織強化を図り、公的医療
保険制度を崩壊に導く政策に対峙
日本医師会 副会長
大阪府医師会 理事
松 原 謙 二
明けましておめでとうございます。会員の皆様
資本」と位置付け、社会的共通資本を政府が安定
におかれましては、ご健勝にて新しい年をお迎え
的に供給することで人間が人間らしく生きていけ
になったこととお慶び申し上げます。
るのだと主張され、このような社会にとって必要
さて、日本医師会の副会長に再び選任・選定さ
なものを皆で支えていくことの重要性を強調され
れ、半年が経過しましたが、医療界を取り巻く状
ました。日本の国民皆保険制度はすべての国民が
況は、依然として非常に厳しいものがあります。
等しく、そのときどきに提供される最高の医療サ
いよいよ今通常国会からは医療保険制度改革に向
ービスを受けられることを保障する、まさしく社
けた国会審議が始まりますし、TPPや控除対象
会的共通資本の最たるものであります。宇沢先生
外消費税問題の動向にも目が離せません。医療・
は、新自由主義に真っ向から反対し、TPPは社
介護総合確保推進法に基づき地域医療構想の策定
会的共通資本を破壊すると唱えられました。
に向けた議論も始まりますし、10月には医療事故
私ども日医執行部が今期掲げました方針にひと
調査制度も予定されています。
つに、「組織を強くすること」 があります。医療
安倍晋三政権は、相変わらず経済最優先の政策
分野にも大胆な規制緩和を求めるなど、国民生活
を進めようとしております。「経済が強くなって
の最重要課題である社会保障を置き去りにした議
はじめて社会保障も持続可能になり得る」という
論が進められています。これらの問題に真正面か
政府の方針は、超高齢社会になり、今後医療を必
ら対峙するためにも、 強い医師会
要とする国民が増えても、経済が強くなければ、
ければなりません。宇沢先生の教えを肝に銘じ
社会保障に税金は投入しないと言わんばかりで、
て、我々医師会は日本の優れた公的医療保険制度
我々国民の医療を預かるものとして残念な思いが
を崩壊へと導こうとするいかなる政策にも厳しく
します。
対峙し、問題の一つひとつに粘り強く対応してい
ご承知の方も多いと思いますが、昨年9月に日
く所存であります。
本を代表する経済学者の宇沢弘文先生が他界され
ました。宇沢先生は、医療や教育を「社会的共通
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を目指さな
国家の在り様を見直し、
健康・幸福を尊ぶ社会を
大阪府医師会 顧問
植 松 治 雄
明けましておめでとうございます。会員の皆様
体的に提供できる非営利ホールディングカンパニ
方には、ご家族ともども、ご健勝に新しい年をお
ー型の法人として、新たな医療・福祉法人制度の
迎えになられたこととお慶び申し上げます。
創設を選挙公約に入れて総選挙に臨むなど、市場
昨年も台風、大雨、火山噴火など自然災害が多
経済の考え方が色濃く、地域包括ケアの概念と整
く、東日本大震災に引き続き大きな被害を生じま
合しません。給付と負担に関しても、自助 ・ 共
した。被災されました方々に、あらためてお見舞
助・公助の中でも自助の部分を強く求めるなど、
いを申し上げます。
ますます新自由主義的な考えが強くなってきてい
また、12月14日には、いわゆる「アベノミクス
るように思われます。
解散」による総選挙が行われ、何となくあわただ
今年10月に予定されていた消費税10%への引き
しい年末でありました。その2年前の総選挙日程
上げは、1年半先送りになるようですが、消費税
も、ほぼ同じ12月16日であったことが思い出され
の使途の割合は不透明で、過去の例から見ても社
ます。その時圧勝した安倍晋三内閣の政策運営を
会保障、特に医療・介護への配分は、多くを期待
振り返ってみますと、経済最優先で、社会保障と
できないように思われます。
りわけ医療に関しては、本格的な経済再生軌道に
超高齢化、少子化、人口減が進む今こそ、国家
向け、医療を「成長産業」と位置付けて、新たな
の在り方、予算配分の在り方などを抜本的に見直
保険外併用療養費制度の拡大となる「患者申出療
すべきであります。国民の健康と幸福を担う我々
養 (仮称)」 の創設を明記したり、医療特区にお
医師会は、会員の力を結集してその声を上げなけ
ける先進医療実施機関の要件を決定し、外国人患
ればなりません。
者の誘致を図るなど、皆保険制度を危うくする
今年が皆様方にとりまして良い年になりますよ
種々の方策が進められつつあります。一方では、
う祈念いたします。
医療費抑制と医療費財源を考えて、前期高齢者の
一部負担増、後期高齢者の保険料率の引き上げな
どが予定されております。また、医療・介護を一
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