消融雪施設編(PDF形式 517 キロバイト)

新潟県道路施設維持管理計画
ガイドライン
【消融雪施設編】
平成 26 年8月
新潟県 土木部
道路管理課
目
次
【消融雪施設編】
1. 新潟県の消融雪施設管理 .................................................................................................................. 1
1.1 新潟県の消融雪施設の現状 .............................................................................................................. 2
1.2 消融雪施設の管理のポイント .......................................................................................................... 4
1.3 消融雪施設の維持管理計画策定における基本的考え方 .................................................................. 5
2. 管理区分の設定 ................................................................................................................................ 6
2.1 管理区分の設定単位 ......................................................................................................................... 7
2.2 管理区分に応じた管理目標 .............................................................................................................. 8
2.3 管理区分に応じた水準 ..................................................................................................................... 9
2.4 管理区分の設定指標 ....................................................................................................................... 10
3. 状態把握 ......................................................................................................................................... 11
3.1 消融雪施設の定期点検の方法 ........................................................................................................ 12
3.2 定期点検の実施頻度 ....................................................................................................................... 13
3.3 損傷程度の評価 .............................................................................................................................. 14
4. 対策区分の判定 .............................................................................................................................. 15
4.1 損傷程度と対策区分 ....................................................................................................................... 16
4.2 施設単位の健全性の表現について ................................................................................................. 16
5. 中長期管理計画の作成 .................................................................................................................... 17
5.1 中長期推計の実施 .......................................................................................................................... 18
5.2 劣化予測 ......................................................................................................................................... 19
5.3 事業見通し・統合マネジメント..................................................................................................... 19
6. 短期事業計画の作成 ....................................................................................................................... 20
6.1 対策内容の検討 .............................................................................................................................. 21
6.2 優先度評価 ..................................................................................................................................... 22
6.3 エンジニアリングジャッジ ............................................................................................................ 23
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
【維持管理計画策定の主な作業】
『個別施設ガイドライン』では、『道路施設維持管理計画ガイドライン(共通編)』及び
各施設の特性を踏まえ、個別施設に対して実施する業務及び検討の内容・手順、判断方法な
どの維持管理計画策定手法を示すとともに、毎年度実施する事業計画の策定手順を示す。
維持管理計画策定の主な作業は、(1)管理区分の設定~(16)対策履歴登録であり、毎
年実施する作業、点検発注時に実施する作業、おおむね5年に1回見直しを実施する作業の
3つに区分できる。
維持管理計画の策定までの業務手順、時期、役割、アウトプットの概要は、下図に示すと
おりである。
本庁 道路管理課
地域機関・道路管理者
コンサルタント等
(1)管理区分の設定
前年度
~当年度
4月
業務発注
(2)定期点検計画・準備
(3)定期点検計画・準備
・点検計画表
・点検調書/様式
5~6 月
(4)状態把握(点検)
成果納品
7月
8月
(5)対策区分判定
(8)管
理戦略
(7)中長期管理計画
策定(劣化予測)
(6)点検結果 DB 登録
・点検調書
/入力済み
(9)個別施設対策計画
(LCC 分析)
(11)予算
配分検討
(10)短期事業計画
(案)(優先度評価)
9月
国・県財政へ
の予算要望
・短期事業計画(案)
(12)事業要望
・短期事業計画(案)の修正
(13)短期事業計画作成
10 月
・短期事業計画
(14)計画実行または計
画の再調整
11~12 月
(15)事業実施
凡例
5 年に 1 回見直しを実施する作業
点検発注時に実施する作業
毎年実施する作業
図 1
(16)対策履歴登録
維持管理計画確定の手順(概要)
0
(17)劣化予測
(18)LCC 分析
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
1. 新潟県の消融雪施設管理
本ガイドラインでは、『道路施設維持管理計画ガイドライン(共通編)』における新潟県
の道路施設に対する維持管理の考え方に基づき、消融雪施設の特性を踏まえた維持管理手法
及び手順を示す。
消融雪施設は、積雪寒冷地域である新潟県において、冬期期間における安全で快適な道路
利用サービスを提供するためには重要な施設の一つである。しかしながら、約 3,000 箇所に
及ぶ施設量を管理し、年間 40 億円以上の予算を必要としている。また、約1/3の施設が設
置から 30 年以上経過し、今後は老朽化の進行も懸念される。
現状の管理方法としては、降雪期前・降雪期中・降雪期後の1年に3回の点検を実施して
おり、高い水準での管理を実施している。今後も適正なサービス水準を確保しつつ、限られ
た予算の中での効率的な管理が求められる。
以上より、積極的に予防的対策を実施することを基本とするが、当面の予算確保のために、
メリハリを付けた管理を行う。
図 2
消雪パイプの施設イメージ図
1
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
1.1 新潟県の消融雪施設の現状
1.1.1 施設の保有状況
(1)施設量
新潟県では、約 3,000 基(平成 25 年4月現在)の消雪パイプを管理しており、散水部分の
総延長は 1,000km にものぼり、膨大な施設量を管理している。消融雪施設としては、ほとん
どが消雪パイプである。
600
527
500
400
( )
施
設
量
451
298
292
300
251
266
基
172
200
107
100
90
80
148
152
90
39
0
村上 新発田 新津
津川
三条
長岡
与板 小千谷 魚沼 十日町 南魚沼 柏崎 上越東 上越 糸魚川 佐渡
(出典:平成 23 年度点検データ)
図 3
地域機関ごとの施設量
(2)施設量の推移
消融雪施設は 1970 年ごろから設置されており、その多くが 1990 年前後に設置されている。
1985 年頃までに設置された約 1,000 施設は、設置後 30 年以上を経過している。
160
140
120
施
設
設
置
数
100
80
60
40
20
0
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
(出典:施設台帳)
図 4
施設設置量の推移
2
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
1.1.2 施設状態
平成 24 年度の点検結果を対象に、消融雪施設(消雪パイプ)に対して発生している主な損
傷について整理した。
表 1
部材
井戸
取水設備
制御設備
散水設備
消融雪施設における主な損傷
発生損傷の特徴
全体的に異常が発生している施設は少ないが、揚砂の発生によりポンプの故
障や損傷等が発生している施設が見られる
1割以上の圧力計で、指針の故障やガラス破損などが発生している
約1割の設備で、外観に対する異常が発生している
散水ノズルでは、2 割以上で管の破損が生じ、約1割に砂詰まりが発生して
いる
端末ドレーンにおいても、約 1 割に管の破損や砂詰まりが発生している
1.1.3 これまでの管理方法
毎年、降雪期前、降雪期中、降雪期後の3回にわたって点検を実施しており、高いサービ
スレベルでの管理を実施している。ただし、地域によっては予算不足も見られ、山間部など
において一部対策の先送りが生じている。
現時点では高い水準での管理を実施しているが、今後の劣化進行の状況や、それを踏まえ
た財政状況の予測などを踏まえた、中長期的な視点での計画的な管理は実施できていない状
況である。
3
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
1.2 消融雪施設の管理のポイント
積極的に予防的対策を実施することを基本とするが、当面の予算確保のために、メリハリ
を付けた管理を行う
消融雪施設の管理のポイントとして、現状の管理方法に対する課題を踏まえ、それらを解
決するための対応方針を整理した。
表 2
取組み課題
今後の予算縮減(必要
予算は増大)から、現
状水準の維持は難しい
対応の方向性
○管理のメリハリ
中長期的なコスト縮減
のための予防的な対策
の実施
当面必要な予算も考慮
した対策の先送り
⇒施設重要度の設定
(管理区分、優先度評
価)
異常の有無確認が基本
であり、施設・部材の
健全性が十分に示され
ていない
○評価指標の設定
⇒対策区分評価
修繕を伴う異常に対し
て翌シーズンまでに対
策を実施
維持工事は適宜対策
全ての対策を翌シーズ
ンまでに行うことが基
本となるが、予算不足
による対策先送りが生
じる際の説明性確保が
必要
中長期的な視点での計
画となっていない
○施設優先性の設定
施設の重要性や安全性
を踏まえ、優先性を定
量的に評価する
⇒優先度評価
○中長期計画の策定
今後の劣化進行性を把
握し、中長期的な計画
を策定する
⇒中長期費用推計、劣
化予測
4
-
全施設共通の評価指標
を設定し、施設間での
優先性評価を行える
(施設間対策順位の説
明性確保)
対策の緊急性を体系的
に整理することで、計
画の説明性を確保する
(対策順位の説明性確
保)
いつどれだけの費用が
発生するかを明確にす
ることで、どのような
対策方針とすべきかが
明確になる
費用推計により、中長
期的な視点での管理方
針の適性を評価できる
事業計画・実施
補修を行う井戸・管は
対策の必要性を判断
電気設備は故障の有無
で更新の必要性を判断
○定期点検の実施
現状方法を踏襲する
⇒状態把握
優先度評価
-
項目
状態把握・
評価
降雪期前・降雪期中・
降雪期後の定期点検を
毎年実施
効果
将来にわたって適切な
サービスを提供するた
めの管理方法を設定
(適正サービスの確
保・コスト縮減)
管理目標
現状の管理方法
24 時間体制で、常時
施設機能を確保するよ
うな対応を実施
ただし、一部山間部で
は対策を先送り(住民
理解あり)
※県民からの苦情は非
常に少ない
消融雪施設における現状課題と対応方針
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
1.3 消融雪施設の維持管理計画策定における基本的考え方
維持管理計画策定までの業務手順、時期、役割の概要は、以下のとおりである。
図中の網掛け部について、次ページより舗装の維持管理計画策定における基本的な考え方
を解説する。なお、細枠(1)~(16)は、作業の手順を示すものであり、共通編「10.維
持管理計画の策定手順と解説」を参照とする。
本庁 道路管理課
地域機関・道路管理者
コンサルタント等
2
(1)管理区分の設定
前年度
~当年度
4月
業務発注
(2)定期点検計画・準備
(3)定期点検計画
3
5~6 月
(4)状態把握(点検)
成果納品
7月
(5)対策区分判定
5
(8)管理
戦略
8月
7)中長期管理計画策定
(劣化予測、優先度評価)
(6)点検結果 DB 登録
6
短期事業
計画策定
9月
(11)予
算配分
検討
(9)個別施設対策計画
(LCC 分析)
(10)短期事業計画(案)
(優先度評価)
国・県財政へ
の予算要望
(12)事業要望
(13)短期事業計画作成
10 月
11~12 月
4
凡例 維持管理手順
(14)計画実行または計画
の再調整
ガイドラインの章番号に対
応(項目に関する説明)
(15)事業実施
業務項目
(16)対策履歴登録
業務手順
図 5
維持管理計画策定フロー
5
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
2. 管理区分の設定
施設の機能確保を前提として、特性に応じた管理区分を設定した。管理区分ごとの目標を達
成できるような水準で対応する維持管理を行う。なお、管理区分は、部材単位で設定するが、
施設自体の管理区分として表す場合は、代表部材の管理区分とする。
部材
井戸
取水設備
制御設備
散水設備
路線機能分類
(A)~(C)
(D)~(E)
-
-
-
管理区分
Ⅰ
Ⅱ
Ⅳ
Ⅳ
Ⅳ
代表部材
○
消融雪施設に要しているコスト規模は大きく、限られた予算の中で効率的な管理を実行す
るために、路線・区間の特性に応じた目標を設定することにより、メリハリのある管理を実
施する。
新潟県では施設の管理手法を5つに分類しており、消融雪施設はこのうち、部材を基本単
位として、井戸に関しては路線機能分類に応じて管理区分ⅠまたはⅡを設定し、設備系であ
るその他部材に関しては、損傷を確認した後の修繕を基本とする管理区分Ⅳに設定した。
各管理区分に応じて、どのように管理するかという目標と対策必要性の目安となる水準を
踏まえて管理を実施していく。
表 3
管理区分・維持管理手法・管理目標・水準
管理
区分
維持管理
手法
Ⅰ
予防維持
Ⅱ
事後維持
Ⅲ
事後維持
発生した損傷を事後的に補修しながら限界水準を下回る前の段
階で対策を実施し施設の機能を維持することを基本とする。限界
水準を下回った後の対応を許容する。
対策区分 C
または
対策区分 E
Ⅳ
観察維持
最低限の維持管理によって道路利用に対する支障を回避する。
対策区分 E
Ⅴ
時間維持
施設の状態や機能の状況によらず、一定時間の経過で更新また
は交換することで、施設の安全性を確保や道路利用による支障を
回避する。
管理目標
損傷が軽微な段階で対策を実施することで、施設の長寿命化や
高い安全性を確保する。
発生した損傷を事後的に補修しながら限界水準を下回る前の段
階で対策を実施し、施設の機能を維持する。
6
水準
対策区分 B
対策区分 C
―
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
2.1 管理区分の設定単位
消融雪施設の管理区分は、井戸・取水施設・制御施設・散水施設の4部材に対して設定す
る。
計画的な補修事業とするため、管理区分の最小単位としては定期点検に合わせて設定する。
なお、短期計画を作成する際には、工事の効率性を考慮し施設単位で補修することを検討す
る。
7
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
2.2 管理区分に応じた管理目標
路面の雪氷を融解することによって冬期間の車両や歩行者の走行性の向上を図るため管理区
分に応じた目標を設定する。
対象
管理
区分
管理目標
施設管理への適用
Ⅰ
損傷が軽微な段階で対策を実施す
ることで、施設の長寿命化や高い
安全性を確保する。
路線機能分類が高い路線への適用を考慮
定期点検において損傷状態を客観的・定量的
に把握
Ⅱ
発生した損傷を事後的に補修しな
がら限界水準を下回る前の段階で
対策を実施し、施設の機能を維持
する。
事後対応となるが、当面の予算確保などの観
点で一部施設に対する適用を考慮
井戸
井戸
以外
Ⅳ
最低限の維持管理によって道路利
用に対する支障を回避する。
定期点検において損傷状態を客観的・定量的
に把握
部材の機能を喪失した段階での対応となり、
計画的な対策実施の効果が小さい場合に適用
を考慮
ただし、井戸の点検に合わせて、定期点検に
よる状態把握を基本とする
今後、将来にわたって施設の機能を継続的に発揮することが施設設置の目的であり、それ
を可能とするために状態把握・維持修繕対策などの管理を行うことが必要となる。
消融雪施設の基本的な機能を踏まえた管理目標は以下のとおりとする。
路面の雪氷を融解することにより、冬期間の車両や歩行者の走行性の向上を図る
8
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
2.3 管理区分に応じた水準
対策の実施を意思決定するため管理区分に応じて水準を設定する。水準を下回った場合には
適切に対応する。
対象
部材
管理
区分
Ⅰ
井戸
Ⅱ
井戸
以外
Ⅳ
管理目標
A
対策を判断する水準
(対策区分)
B
C
E
損傷が軽微な段階で対策を実施する
ことで、施設の長寿命化や高い安全
性を確保する。
発生した損傷を事後的に補修しなが
ら限界水準を下回る前の段階で対策
を実施し、施設の機能を維持する。
最低限の維持管理によって道路利用
に対する支障を回避する。
管理区分に応じた水準とは、対策実施を意思決定する際の判断基準であり、対策区分(4.
対策区分の判定を参照)を全施設共通の指標として設定する。管理水準が高い施設ほど早期
の段階で対策を実施する。
9
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
2.4 管理区分の設定指標
消融雪施設の管理区分は、「路線機能分類」により設定する。
管理区分は、「ネットワーク機能等」と「損傷に対するリスク」に関わる指標のうち、施
設や部材の特性を表す指標を選定の上で設定する。
道路横断施設においては、施設特性を踏まえた適用性や現状のデータ保有状況を考慮し、
「路線機能分類」「優先路線」「除雪路線」を設定指標として選定した。
この中で、「優先路線」は維持管理手法を左右するほどの指標ではないと考え、管理区分
の設定には適用しなかった。ただし、対策実施の優先性には影響すると考え、優先度評価指
標(6.2 優先度評価参照)として抽出した。また、「除雪路線」に関しては、現状では指標と
して考慮していないが、今後の財政状況によっては除雪対応への代替も想定されるため、検
討実施の余地があるという観点で選定している。
表 4
分類
特性
地域
特性
指標
降雪量・積雪量
適用性
△:気象状況を踏まえた制御設計
になっており、単純に差別化でき
ない
△:同上
氷点下となるような気温を伴う場
合、施設の必要性が高くなる
路線機能分類
高いネットワーク性を求められる路
線ほど重要性が高い
◎:ネットワーク性の高い施設ほ
ど重要性も高い
利用者が多いほど施設の必要性が高
い
施設機能確保を特に求められる重要
路線に位置付けられる
(国)(主)(県)の順に、一般に
路線規格(施設重要性)が高い
△:路線機能分類により評価
施設の機能確保によりネットワーク
遮断の可能性を防ぐことが出来る
除雪路線であれば、除雪への代替を
想定することも出来る(施設撤去へ
の一案)
○:ネットワーク確保の観点で、
重要性が高い
○:代替性が確保されていること
から、水準を下げることも想定で
きる
規模が大きいほど工事規模も大きく
なる(重要性が高い)
通学する学生(歩行者)の安全性確
保が求められる
△:現状では十分なデータが揃っ
ていない
△:現状では十分なデータが揃っ
ていない(各施設の位置関係が明
確ではない)
△:現状では住民からの要望(苦
情)はほとんど受けていない
ネットワーク機能等
緊急輸送道路
道路種別
優先路線(幅員 5m 以
下・1 車線)
除雪路線
施設規模
施設
特性
指標設定の視点
降雪・積雪の状況により、施設の必
要性が異なる
気温
交通量
路線
特性
管理区分設定指標
通学路指定
住民からの要望に応える必要がある
損傷に対する
リスク
ユーザー
ニーズ
走行性に関する苦情
塩害
海岸からの距離
利用
状況
大型車交通量
海岸から近いほど、地下水や河川水
に塩分が含まれるため、井戸内の鋼
材腐食が速く進行する
散水設備は輪荷重の影響を直接受け
るため、大型車交通量の多少による
劣化傾向が異なる
10
△:路線機能分類で評価
△:路線機能分類で評価
△:現状では十分なデータが揃っ
ていない(隠し施設の位置関係が
明確ではない)
△:現状では十分なデータが揃っ
ていない(道路交通センサスデー
タとの関連付けが必要
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
3. 状態把握
定期点検は施設単位で実施するものとし、従来の点検手法を踏襲して毎年降雪期前・降雪期
間・降雪期後の 3 回にわたって実施する。
対象部材
井戸
井戸以外
管理区分
点検種類
点検者
点検頻度
標準点検
(降雪期前・降雪期間・降雪期後)
専門技術者
1年
Ⅰ
Ⅱ
Ⅳ
新潟県における道路施設の状態把握は、従来はパトロールにより行っていた。しかしなが
ら、パトロールの対象となる施設や判断・記録方法がさまざまであったが、計画的・効率的
な維持管理を行ううえでも、状態把握を確実に実施する。
道路施設の状態把握は、主に定期点検により行い、日常的なパトロールでは安全確認の補
完を行う。また、必要に応じて緊急点検や詳細点検、現況調査を活用する。
※詳細については『定期点検要領』を参照
11
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
3.1 消融雪施設の定期点検の方法
消融雪施設における定期点検は、標準点検を実施することを基本とする。
消融雪施設は冬期期間において全ての施設が十分に機能を発揮することが望まれる。これ
までに降雪期前・降雪期中・降雪期後の3度にわたる点検を毎年実施している実績も踏まえ、
今後も同レベルの点検を標準点検として継続的に実施する。
12
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
3.2 定期点検の実施頻度
消融雪施設の定期点検は、1年に1回(毎年)の頻度で行う。
消融雪施設に対する点検方法や頻度は、1年に一度の標準点検の実施を基本とする。毎年、
降雪前、降雪中、降雪後の3度にわたる点検を実施する。
13
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
3.3 損傷程度の評価
消融雪施設の点検では、各部材に対する異常の有無を評価する。
消融雪施設の定期点検では、それぞれの施設の各部材に対して、発生が想定される異常に
対して、その有無(2段階評価)を確認する。
(1)対象とする部材
井戸、取水設備、制御設備、散水設備を対象とする。
(2)対象とする損傷
消融雪施設を構成する各部材に発生する損傷を対象に損傷程度を評価する。
表 5
部位・部材
井戸
取水設備
制御設備
散水設備
損傷程度評価の対象となる損傷
主な損傷
「水色・揚砂など外観の異常、管の埋没や腐食(目視)」
「水位・揚水量・水質・水温などの異常(計測)」 など
「管やケーブルなどの外観の異常」 など
「表示板の異常」「機器類の動作異常」 など
「管の腐食・砂詰まりなど外観の異常(目視)」
「取水可能量・水量などの異常(計測)」 など
(3)損傷程度の評価
定期点検では、損傷の程度を定量的もしくは損傷の区分を段階的に評価する。消雪パイプ
における損傷程度の評価は、各部材の点検項目(確認事項)に対して、水位や揚水量の計測
値、管の腐食や破断等の異常の有無を確認する。
14
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
4. 対策区分の判定
発生している損傷の程度、その損傷要因、進展性、劣化環境等により施設に及ぼす影響等か
ら、対策区分(A,B,C,E)を判定する。なお、特定の施設の健全性を説明する表現方法として
は、施設の代表部材に対する対策区分を適用する。
定期点検で確認した各種異常に対して対策区分を判定する。対策区分は、損傷の内容と程
度のみならず、損傷を受けている部位・部材や施設環境、施設に求められる性能を踏まえて
評価する。
表 6
要求性能の概説
要求性能
確保すべき性能
損傷
安全性
施設の損傷に起因した第三者への災
害等を回避することに関する性能
井戸の機能障害や散水管の破裂・破断な
ど、施設構造として致命傷となる異常
など
耐久性
施設の破壊や安定を保つことに関す
る性能
快適性
施設の利用者や周辺の人が快適に使
用するための性能、施設の汚れや劣
化による周辺環境との調査などに関
する性能
15
鋼部材の腐食や防食機能の劣化など、経
年的に劣化進行を示す異常
など
局部的な散水パイプの目詰まりなど、走
行性・歩行性などに影響する損傷
など
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
4.1 損傷程度と対策区分
各道路施設の対策必要性は「A,B,C,E」の4つの対策区分で表し、施設の特性に応じて細分
化させる。
○損傷程度:損傷の度合いを客観的事実として評価し、部材及び損傷種類ごとに評価する。
○対策判定:異常の発生要因、発生範囲の大きさ等から対策区分を評価する。
表 7
損傷
程度
損傷の程度
異常
なし
計測結果や外観に対し
て、異常または損傷が
認められない
異常
あり
計測結果や外観に対し
て、異常または損傷が
発生している
損傷程度と対策区分の関係
要求
性能
対策
区分
判定の内容
A
損傷が認められないか、あっても軽微で補修等
を行う必要がない
B
軽微な損傷はあっても当面は補修を要さない
が、状況に応じて補修等を行う必要がある
C
損傷があり、計画的に補修等を行う必要性があ
る
E
損傷が大きい、または第三者への影響を及ぼす
可能性があり補修等を行う必要がある
4.2 施設単位の健全性の表現について
対策区分は各部材に発生する損傷に対して評価している。このため、各施設においては複
数の対策区分を有することになる。
そこで、特定の施設の健全性を説明する表現方法として、施設の代表部材に対する対策区
分を適用することとする。消融雪施設については井戸が対象となる。
16
新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
5. 中長期管理計画の作成
中長期管理計画は、将来の費用及び対策区分の推移を把握するために行う。
中長期の費用及び対策区分の推計は、定期点検の結果及び補修工事の実施によって対策区分
の回復を果たした最新の点検結果を使用する。
なお、中期費用推計の結果は、他の道路施設の中長期推計と合わせた上で、統合マネジメント
における管理戦略検討の基本情報とする。
最新の点検及び補修履歴データを反映し、劣化予測(対策時期=サイクル)を踏まえ今後
50 年間の費用及び対策区分の遷移を算出する。中長期管理計画は、おおむね5年に1回見直
すものとし、本庁が実施する。
1)中長期推計の実施
2)劣化予測
3)事業見直し、統合マネジメント
・施設の事業見通し(費用、状態、
平準化検討)
・統合マネジメント
図 6 中長期推計から統合マネジメントの流れ
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新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
5.1 中長期推計の実施
(1)推計方法
各施設・部材の点検結果に対して劣化予測式を適用し、経過年数から将来の対策区分を予
測し、中長期期間において発生する必要費用を算出する。
(2)推計シナリオの作成
推計シナリオは、対策区分ごとの到達年数及び適用する対策工法、対策のサイクルを整理
する。設定した管理区分を継続した場合の推計(メリハリ案)とともに、「予防維持案」、
「事後維持案」で対応した場合の3ケースの試算を実施する。
表 8
部材
井戸
取水設備
制御設備
散水設備
推計シナリオ(案)
対策工法
管理区分
初回
二回目以降
Ⅰ
洗浄(15 年)
洗浄を繰返し(20 年)
Ⅱ・Ⅲ
洗浄(30 年)
洗浄→組合せ※(30 年)
Ⅳ
組合せ(40 年)
組合せ(40 年)
Ⅰ
ポンプ交換(10 年)
ポンプ交換(10 年)
Ⅱ・Ⅲ
ポンプ交換(20 年)
ポンプ交換(20 年)
Ⅳ
ポンプ交換(30 年)
ポンプ交換(30 年)
Ⅰ
制御盤取替(15 年)
制御盤取替(15 年)
Ⅱ・Ⅲ
制御盤取替(30 年)
制御盤取替(30 年)
Ⅳ
制御盤取替(40 年)
制御盤取替(40 年)
Ⅰ
打換(10 年)
打換(10 年)
Ⅱ・Ⅲ
打換(20 年)
打換(20 年)
Ⅳ
打換(30 年)
打換(30 年)
※「組合せ」は、実績を考慮して洗浄、二重ケーシング、堀替を組み合わせて実施した工法
※( )内は対策周期
(3)中長期費用及び対策区分の推移
各施設の維持管理手法別の中長期推計及び必要予算及び対策区分分布を作成し、これまで
の予算割り当ての効果と今後の見通しを図る。中長期シミュレーションは、予算制約を設け
ることにより事業の平準化を図ると同時に、事業先送りによる対策区分分布の変化から対策
が必要な事業の割合が増加しないように注意することが必要である。
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新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
5.2 劣化予測
消融雪施設に関しては、補修履歴データを活用して劣化予測分析を実施した。データは、
これまでに紙媒体で管理していた施設台帳に記載のあった、過去約 40 年間の履歴を活用した。
表 9
劣化予測分析結果
部材
各対策区分に至る年数
B 判定
C 判定
E 判定
井戸
15 年
30 年
40 年
取水設備
10 年
20 年
30 年
制御設備
15 年
30 年
40 年
散水設備
10 年
20 年
30 年
(1)劣化予測の対象
補修履歴データを活用した分析を実施しており、井戸、取水設備、制御設備、散水設備を
対象に劣化予測(対策実施時期の予測)を行った。
(2)劣化予測分析手法
消融雪施設の劣化予測は、これまでに蓄積している補修履歴データを活用した。補修実施
回数に対する頻度分布分析を実施し、管内施設の平均的な補修実施時期を算出した。
5.3 事業見通し・統合マネジメント
(1)補修事業の将来見通し
消融雪施設の補修事業について、発生費用の推計グラフと対策区分の推移グラフを作成す
る。また、推計以外の維持管理費目(維持費、固定費など)を計上した上で、全道路施設を
積み上げ、費用ピークの把握、現状予算規模での実現性を検討する。
(2)統合マネジメント
施設の中長期推計結果を基に、地域ごとの事業量バランスや実施すべき管理戦略に基づく
全施設を統合した中長期シミュレーションを実施し、消融雪施設の各部材の管理区分を検討
する。
ここで、新潟県の道路においては、施設が位置する箇所における交通特性や構成部材の特
性などによって施設が保有すべき性能(重要性)が異なるため、予算制約の中では、全ての
消融雪施設を同等の水準とするのではなく、予防的・事後的・観察的な管理といったメリハ
リをつけることを考える。
消融雪施設の中でも消雪パイプは施設量が多く、毎年のシーズン中における機能確保のた
めに高水準の管理を行っており、必要予算も膨大となっている。施設としての重要性を考え
た際、消融雪施設においては路線機能分類の高低の影響が大きいと考え、管理区分の初期設
定としては、路線機能分類が(A)~(C)に該当する施設を予防維持型となる管理区分Ⅰとし、そ
れ以外の施設を管理区分Ⅱに設定した。
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新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
6. 短期事業計画の作成
短期事業計画は、定期点検結果により対策工法検討を行い、以下の手順を踏まえ作成する。
1)対策内容の検討(ライフサイクルコスト分析)
2)優先度評価
3)エンジニアリングジャッジ
短期事業計画は、各施設・部材に設定している管理区分と定期点検結果から本庁と地域機
関で相互に確認しながら作り上げていくものであり、翌年度以降およそ 10 年間の事業計画を
策定する。なお、予算制約の中では単年度で全ての対策箇所が解消されないため、引き続き
計画を遂行していくが、通常パトロールなどにより新たに対策が必要な箇所が発生すること
があるため、短期事業計画は毎年度見直す。
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新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
6.1 対策内容の検討
(1)対策内容の設定
各施設・部材ごとに評価した対策区分を基に、要補修対象となった部材に対策工法を設定
する必要がある。
点検報告書における点検写真や点検者の考察などを参考に対策内容の妥当性を確認し、対
策工法・対策範囲を設定する。また、従来対策工法や新工法の適用など複数案が考えられる
場合には、ライフサイクルコスト分析により検討することが効果的な場合がある。中長期的
な視点で最適な対策工法を選定し、対策計画に反映する。
また、限られた予算の中での計画策定を行う際には、施設の重要性や対策の緊急性の観点
で優先度評価を実施し、設定する年度予算の範囲内で順位の高い施設から対策を計画する。
消融雪施設は施設量が多く管理費も膨大であることから、地域住民への説明と理解は要する
が、除雪作業への代替による施設撤去の実施も視野に入れる必要がある。
(2)ライフサイクルコスト分析
道路施設の維持管理においては、中長期的な視点から最適な工法を決定するため、初期の
補修費用だけでなく、将来的な補修費用を含めたライフサイクルコストを分析することで、
計画的・効率的な維持管理計画を策定する。
ライフサイクルコスト分析では、将来のいつの時点でどのような状態に対し、どのような
対策を行うかを設定することが必要である。このためには前述の管理区分に応じた目標及び
水準、劣化予測を考慮し分析を行う。
消融雪施設
~井戸に対する対策工法の LCC 分析例~
費用
シナリオ①:堀替の繰返し
シナリオ②:洗浄の繰返し
経年
≪シナリオ①≫
当面の予算確保が困難な場合、対
策を先送りできる
図 7
≪シナリオ②≫
中長期的な視点で最も経済的であ
る(LCC 最小)
ライフサイクルコスト分析イメージ
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新潟県 道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
6.2 優先度評価
最新の点検結果から対策が必要と判定された部材に対して、施設ごとに、県全体の優先順
位を明確にするものである。
優先度評価は、まずは本庁がマネジメント支援システムを用いて行い、各地域機関に翌年
度の事業対象候補箇所として提供する。
(1)優先度評価指標の設定
補修が必要な区間に対し、予算制約を考慮する必要がある場合には、統合マネジメント
(予算配分検討)の結果を受け、優先度の高い区間から対策を行うよう計画する。
表 10
採用する優先度評価指標
評価の視点
評価指標
採用
路線の機能
・道路ネットワークを踏まえた路線機能分類「(A)~(E)」
・代替性の有無
リスクの大きさ
・状態の悪さ、劣化進行速度、劣化環境
対策の重要性
・効果の大きさ(交通量)
路線機能分類
優先路線
など
-
など
-
(2)優先度評価手法
優先度評価は、まずは消融雪施設全体の共通の考え方として、第一に「管理区分」と「対
策区分」から評価する。
表 11
優先度評価方法
対策区分
管理区分
E
C
B
Ⅰ
1
4
6
Ⅱ
2
5
Ⅳ
3
管理区分と対策区分で同順位になった場合に、第二の方法として指標間の優先性に基づき、
下表の順に評価する。
表 12
同順位の際に適用する優先度評価指標
優先度指標
優先性
①
優先路線
優先路線>その他
②
路線機能分類
(A)>(B)>(C)>(D)>(E)
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【消融雪施設編】
6.3 エンジニアリングジャッジ
短期事業計画では、機械的に算定された優先順位により施設ごとに事業の実施順序を示し
たリストが作成される。しかしながら、予算制約がある場合には年度の予算を超えた時点で
自動的に次の年に先送りされ、大規模な施設の更新や補修工事は単年度で終わらず複数年に
分割する必要がある。また、対策の必要性が高くても、その前に調査・設計あるいは他機関
との協議などが必要な場合もある。
したがって、優先順位や対策年度の決定においては、本庁や地域機関の担当職員によるエ
ンジニアリングジャッジが必要となる。
<エンジニアリングジャッジにより判断・調整することの例>
・ 地域機関において施設ごとの予算及び対象事業を確認し、必要に応じて事業実施時期
を調整する。
・ 事業規模や、周辺条件などにより複数年にまたがる事業や他機関協議の状況により翌
年度の実施が困難な場合などに実施時期を見直す。
・ 全県優先順位では上位に出てこないが、地域からの強い要望などの事情がある場合に、
翌年度事業として計画する。
新潟県道路施設維持管理計画ガイドライン
【消融雪施設編】
平成 26 年8月版
新潟県 土木部 道路管理課
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