第 98 号 2014 年 12 ⽉ IFRS Developments IASB の開⽰イニシアティブに 進展 重要ポイント • 2014 年 12 ⽉、IASB は財務諸表でどのような情報を開⽰し、また財務諸表をどの ような構造とすべきかを決定する上で、企業のさらなる専⾨的判断を促すように、 IAS 第 1 号の改訂を公表した。 • 本改訂を即時適⽤することも可能であるが、2016 年 1 ⽉ 1 ⽇以降開始する事業年 度から適⽤となる。 • また、IASB は投資家からの企業の財務活動及び当該活動に係る現⾦及び現⾦同等 物の残⾼に関する開⽰の改善の要求に応えるために、IAS 第 7 号の改訂を提案する 公開草案を公表した。 • 公開草案のコメント募集期限は 2015 年 4 ⽉ 17 ⽇である。 概要 IASB は、財務諸表にお ける表⽰及び開⽰を改 善する⽅法を引き続き 検討していく 2014 年 12 ⽉、国際会計基準審議会(以下、IASB ⼜は審議会)は開⽰イニシアテ ィブの⼀環として、IAS 第 1 号「財務諸表の表⽰」の改訂、及び IAS 第 7 号「キャ ッシュ・フロー計算書」の改訂を提案する公開草案を公表した。 IASB の開⽰イニシアティブは、重要性に関するプロジェクト、IAS 第 1 号、IAS 第 7 号及び IAS 第 8 号「会計⽅針、会計上の⾒積りの変更及び誤謬」の 根本的な⾒直 しや既存の基準における開⽰規定の全般的な⾒直しをはじめとする、数多くの適⽤ 上及び調査プロジェクトから構成される。 IAS 第 1 号の改訂 IAS 第 1 号の改訂には、以下の 5 つの分野における限られた範囲での改善が含まれ ている。 • 重要性 • 分解及び⼩計 • 注記の構成 • 会計⽅針の開⽰ • 持分法で会計処理する投資から⽣じるその他の包括利益(以下、OCI)項⽬の表⽰ 重要性 本改訂により、企業は重要性のある情報とない情報を曖昧にすることで、あるいは異 なる性質や機能を有する重要な項⽬を集約することで、財務諸表の理解可能性を低下 させてはならないことが明確になる。 本改訂は、ある基準で具体的な開⽰が要求される場合、それが重要であるかどうか、 その結果として、情報の表⽰⼜は開⽰が必要になるかどうかを判断するために情報を 評価しなければならないことを改めて強調している。 分解及び⼩計 本改訂により、純損益及びその他の包括利計算書及び財政状態計算書の特定の表⽰項 ⽬について、分解できることが明確になる。 審議会は、IFRS ですでに要求されている⼩計以外にも、追加の⼩計を純損益及びその 他の包括利益計算書、及び財政状態計算書に表⽰する場合、どのように表⽰すべきか を定める規定を取り⼊れている。特に⼩計は以下を満たすものでなければならない。 • IFRS に従って認識及び測定される⾦額から構成される表⽰科⽬で成り⽴っていること • ⼩計を表す表⽰科⽬が明確かつ理解可能になる⽅法で表⽰され、⾒出しが付けら れていること • 各期間を通じて⼀貫性があること • 財政状態計算書⼜は純損益及びその他の包括利益計算書に関し、IFRS で現在要求 される⼩計及び合計よりも⽬⽴った⽅法での表⽰はなされないこと また、純損益及びその他の包括利益計算書に表⽰される追加の⼩計に関して、企業は それらの計算書に関し現在 IFRS により要求される⼩計⼜は合計と、追加の⼩計とを調 整する項⽬を表⽰しなければならない。 注記の構成 本改訂により、企業は財務諸表の注記を表⽰する順序を柔軟に決められることが明確 にされる。⼀⽅、その順序を決める際、理解可能性及び⽐較可能性を考慮すべきこと が強調されている。 注記の体系的な順序付けやグループ分けの例としては、 2 • 特定の営業活動についての情報をまとめて 1 つのグループとして表⽰するなど、 財務業績及び財政状態を理解するのに最も⽬的適合的であると企業が考える活動 分野を⽬⽴たせること • 公正価値で測定される資産など、同じように測定される項⽬に関する情報をまと めてグループ化すること • 純損益及びその他の包括利益計算書及び財政状態計算書における表⽰項⽬の順序に 従うこと。これは、現在の IAS 第 1 号第 114 項に⽰される順序と同じようになる IASB の開⽰イニシアティブに進展 会計⽅針の開⽰ 本改訂は、現在の IAS 第 1 号第 120 項の重要な会計⽅針の例、すなわち法⼈所得税及 び外国為替に関する会計⽅針を、重要な会計⽅針とはどのようなものであるべきかを 説明する上で、効果的でないと考えられることから削除している。 持分法で会計処理する投資から⽣じる OCI 項⽬の表⽰ また、本改訂により持分法で会計処理する関連会社及びジョイント・ベンチャーの OCI に関する持分は、事後的に純損益に組替調整(リサイクリング)される項⽬と組替調 整されない項⽬を区別し、それぞれを合算して単⼀の表⽰科⽬とした上で表⽰しなけ ればならないことが明確になる。 発効⽇及び経過措置 当該改訂は、2016 年 1 ⽉ 1 ⽇以降開始する事業年度から適⽤され、早期適⽤も認め られる。 当該改訂により、企業の会計⽅針や会計上の⾒積りに直接影響を及ぼすことのない、 IAS 第 1 号の既存の規定が明確になる。したがって、企業はこれらの改訂が早期適⽤ あるいは、強制適⽤されるかに関係なく、会計⽅針の変更に関し IAS 第 8 号で要求さ れる情報を開⽰する必要はない。 弊社のコメント IAS 第 1 号の改訂は総じて、同基準の現在の規定の⼀般的な理解に沿うものである ように思われるものの、我々はこうした限られた範囲での改善により、現⾏の実務 において⾒られる問題点のいくつかが解消されると考えている。 その意味では、このような取組みは表⽰及び開⽰規定の改善に向けた意義ある最初 の⼀歩である。我々は、IASB により開⽰イニシアティブの次のステップが公表され ることを期待している。 IAS 第 7 号の改訂案 また、IASB は IAS 第 1 号の改訂と同時に、IAS 第 7 号の改訂を提案する公開草案(以 下、ED)を公表した。本 ED は、⼀連の開⽰イニシアティブの中の⼀つのプロジェク トとなる。 IASB は、企業が当該キャッシュ・フローをキャッシュ・フロー計算書における財務活 動として分類される、あるいは分類されるであろう項⽬ごとに、財政状態計算書の期 ⾸及び期末残⾼の増減を⽰す調整表を開⽰すべきであるとの提案を⾏っている。ただ し資本項⽬はその限りではない。この提案は、当報告期間中の企業の債務の増減に関 する開⽰が、投資者に提供されることを意味する。 さらに、IASB は、IAS 第 7 号で要求される企業の流動性についての開⽰を拡充するこ とも提案している。海外から送⾦される現⾦及び現⾦同等物の残⾼に⽣じる税⾦負債 をはじめ、現⾦及び現⾦同等物を使⽤する企業の決定に課せられる制限に関する開⽰ を⾏うことが、提案されている。本提案は、財務諸表の利⽤者が、現⾦及び現⾦同等 物の利⽤可能性についてより効果的な評価が⾏えるようにすることを意図している。 改訂案は IAS 第 8 号に従って遡及適⽤されることになるが、早期適⽤も認められる。 IASB の開⽰イニシアティブに進展 3 EY|Assurance| Tax |Transactions |Advisory 次のステップ 公開草案のコメント募集期限は 2015 年 4 ⽉ 17 ⽇である。 弊社のコメント 我々は、当該論点が明確な根拠のもと IASB による堅牢な議論に役⽴つように、 利害関係者の意⾒がコメント・レターによって IASB に提出されることを望んで いる。 EYについて EYは、アシュアランス、税務、トランザ クションおよびアドバイザリーなどの分 野における世界的なリーダーです。私た ちの深い洞察と⾼品質なサービスは、世 界中の資本市場や経済活動に信頼をもた らします。私たちはさまざまなステーク ホルダーの期待に応えるチームを率いる リーダーを⽣み出していきます。そうす ることで、構成員、クライアント、そし て地域社会のために、より良い社会の構 築に貢献します。 EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グロ ーバル・リミテッドのグローバル・ネットワ ークであり、単体、もしくは複数のメンバー ファームを指し、各メンバーファームは法的 に独⽴した組織です。アーンスト・アンド・ ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の 保証有限責任会社であり、顧客サービスは提 供していません。詳しくは、ey.comをご覧く ださい。 新⽇本有限責任監査法⼈について 新⽇本有限責任監査法⼈は、EYメンバー ファームです。全国に拠点を持つ⽇本最 ⼤級の監査法⼈業界のリーダーです。監 査および保証業務をはじめ、各種財務ア ドバイザリーの分野で⾼品質なサービス を提供しています。EYグローバル・ネッ トワークを通じ、⽇本を取り巻く経済活 動の基盤に信頼をもたらし、より良い社 会の構築に貢献します。詳しくは、 www.shinnihon.or.jp をご覧ください。 EYのIFRS(国際財務報告基準) グループについて 国際財務報告基準(IFRS)への移⾏は、 財務報告における唯⼀最も重要な取り組 みであり、その影響は会計をはるかに超 え、財務報告の⽅法だけでなく、企業が 下すすべての重要な判断にも及びます。 私たちは、クライアントによりよいサー ビスを提供するため、世界的なリソース であるEYの構成員とナレッジの精錬に尽 ⼒しています。さらに、さまざまな業種 別セクターでの経験、関連する主題に精 通したナレッジ、そして世界中で培った 最先端の知⾒から得られる利点を提供す るよう努めています。EYはこのようにし てプラスの変化をもたらすよう⽀援しま す。 © 2015 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 本書は⼀般的な参考情報の提供のみを⽬的に 作成されており、会計、税務及びその他の専 ⾨的なアドバイスを⾏うものではありません。 新⽇本有限責任監査法⼈及び他のEYメンバー ファームは、皆様が本書を利⽤したことによ り被ったいかなる損害についても、⼀切の責 任を負いません。具体的なアドバイスが必要 な場合は、個別に専⾨家にご相談ください。 本資料はEYG no.AU2836の翻訳版です。 4 両審議会がリースの定義に関する再審議を完了
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