産業ニュース TPP交渉大詰めで、農林水産業への注目度高まる

マーケットウィークリー・810号
産業ニュース
2015.1.1
TPP交渉大詰めで、農林水産業への注目度高まる
作成者:兵藤三郎
TPP大詰め、一
次産業の対外競争
力の強化課題
15年1月15日、日豪経済協定(EPA)が発行する。オーストラリア産牛肉の関
税が現行の38.5%から、冷凍牛肉は発行から18年目に19.5%へ、冷蔵牛肉は15年
目に23.5%へ引き下げられる。今回、日本は聖域と位置づける5品目の高関税は維
持したが、現在交渉の大詰め段階に差し掛かっているTPPは関税撤廃が基本で
あり、ある程度の譲歩が求められよう。様々な政策で擁護されてきた国内の一次
産業は、攻めてくる輸入品への対抗や、海外などで需要が高まっている高付加価
値農産物などの輸出促進が必要となろう。
地方活性化にも、
地域の農林水産業
振興は不可欠
安倍政権が取り組もうとしている課題の一つに、地方の活性化がある。これは
農林水産業強化なしには達成は不可能であろう。同業界は政策面での支援なども
期待でき、中期的な成長が見込めよう。新春特大号では産業テーマとして、我が
国の農林水産業に注目し、関連銘柄などを調査した。6次産業と言う言葉が示すよ
うに、単に農産物等を生産するだけでなく、いかに加工・販売等も工夫し付加価
値を付けられるかが需要なポイントとなろう。
生産性と付加価値
の向上が鍵、農機、
種子関連に注目
コメの生産で顕著だが、日本の農業は国土も狭く、小規模な兼業農家がほとん
どという特徴を持ち、生産性では対外競争力が低い。農作業の効率化・省力化や
品種改良による病気抵抗力や付加価値の向上、農地改良等による生産性向上など
が鍵となろう。農地改良ではクボタ(6326)、井関農(6310)、やまびこ(6250)
など農機メーカーが、品種改良ではサカタのタネ(1377)など種子メーカーが関
連銘柄として挙げられよう。
海外での養殖、畜
産ビジネスも活況
水産業では、鯨や黒マグロなど日本で人気の高い水産物の漁獲量が世界的に制
限される方向にある。さらに、水産資源そのものも乱獲等で減少傾向にある。近
年改めて養殖が注目されてきた。豊通商(8015)は近畿大学と提携しマグロの完
全養殖に取り組んだ。その他極洋(1301)も関連会社で17年からの出荷を目指す。
日水(1332)はチリでトラウトサーモンの養殖が収益貢献している。ハムの国内
最大手、日本ハム(2282)は食肉生産でも国内最大手、豪州で手掛けてきた牛の
畜産が今期米国向け輸出で大きく利益貢献している。国産牛の輸出に注力してい
るSFoods(2292)にも注目できよう。
◇主な農林水産業テーマの関連銘柄
関連テーマ
技術等
関連銘柄等
農業機械
生産性向上、省力化
(農機)クボタ、井関農など (林業関連)やまびこ等
農薬、種子
生産性向上、商品力向上
(農薬)住友化、日本農薬、石原産等 (種子)サカタ、カネコ等
畜産、水産
養殖、6次産業化
(畜産)日ハム、伊藤ハム (養殖)日水 (6次産業)神戸物産
◇主な農林水産業関連企業の株価とコメント
銘柄
コード
株価
PER
(単位:円、倍)
コメント
日水
1332
383
10.1
水産トップ、チリでのサーモン養殖が利益貢献
日ハム
2282
2,610
20.5
食肉国内トップ、豪州で畜産事業が米国向け輸出増で利益貢献
神戸物産
3038
9,730
32.3
生産・加工・販売の6次産業化を標榜、「業務用スーパー」を展開
日農薬
4997
1,442
17.1
農薬国内大手、M&A等で海外での成長を図る方針
クボタ
6326
1,761.0
16.9
国内農機トップメーカー、東南アジア等へも進出
(出所)各種資料に基づきCAM作成 (注)株価は12月19日終値、PERは今期予想