欧州における日本車販売と 自動車輸出の関係

欧州における日本車販売と
自動車輸出の関係
2015年1月
経済解析室
<目的>
「米国における日本車販売と自動車輸出の関係の希薄化」(平成26年7~9
月期 産業活動分析)では、自動車各社の生産拠点の海外移転等を背景に、
米国における日本車(乗用車)販売台数が回復しても、日本からの乗用車出
荷が連動しなくなっていることがわかった。2011年7月以降は現地販売額、す
なわち現地生産が米国における日本車(乗用車)販売台数の主たる説明要因
になっている。
同様のことが欧州でも言えるのか、検証してみたい。
<留意事項>
• 「欧州」に含まれる国の数が、それぞれの統計で大きく異なっている。
• 欧州現地法人(輸送機械)の現地販売額は、自国向け売上高(ドルベース)をユーロに
換算したうえで、ユーロ圏CPIで実質化し、X-12-ARIMAのX-11デフォルトにより独自に季
節調整している。
2
欧州における日本車(乗用車)販売台数の推移
• 欧州における日本車(乗用車)販売台数(季節調整済)は、リーマンショック前後に大きく
低下し、以降、伸び悩んでいる。
(万台、季節調整済)
26
24
22
20
震災発生
リーマンショック発生
18
16
14
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2006
2007
2008
2009
2010
(注)X-12-ARIMAのX-11デフォルトにより独自に季節調整している。
資料:MARKLINESから作成。
2011
2012
2013
2014
(月/年)
3
参考:欧州における日本車(乗用車)販売台数
•
•
MARKLINESにより、欧州で日本車(乗用車)販売台数の月次データが入手可能な国を採用(2014年
は計28か国)。
年によって国の数が異なることに留意する必要がある。
2006
オーストリア
ベルギー
フランス
ドイツ
イタリア
オランダ
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
英国
クロアチア
チェコ
ポーランド
ルーマニア
ロシア
2007
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
2008
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
2009
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
2010
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
2011
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
クロアチア
チェコ
ポーランド
ルーマニア
ロシア
クロアチア
チェコ
ポーランド
ルーマニア
ロシア
クロアチア
チェコ
ポーランド
ルーマニア
ロシア
クロアチア
チェコ
トルコ
トルコ
トルコ
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
ブルガリア
クロアチア
チェコ
ハンガリー
ポーランド
ルーマニア
ロシア
スロバキア
スロベニア
トルコ
ウクライナ
ポーランド
ルーマニア
ロシア
トルコ
2012
オーストリア
ベルギー
デンマーク
フィンランド
フランス
ドイツ
ギリシャ
アイルランド
イタリア
オランダ
ノルウェー
ポルトガル
スペイン
スウェーデン
スイス
英国
ブルガリア
クロアチア
チェコ
ハンガリー
ポーランド
ルーマニア
ロシア
スロバキア
スロベニア
トルコ
ウクライナ
2013
2014(年)
オーストリア
オーストリア
ベルギー
ベルギー
デンマーク
デンマーク
フィンランド
フィンランド
フランス
フランス
ドイツ
ドイツ
ギリシャ
ギリシャ
アイルランド
アイルランド
イタリア
イタリア
ルクセンブルク ルクセンブルク
オランダ
オランダ
ノルウェー
ノルウェー
ポルトガル
ポルトガル
スペイン
スペイン
スウェーデン
スウェーデン
スイス
スイス
英国
英国
ブルガリア
ブルガリア
クロアチア
クロアチア
チェコ
チェコ
ハンガリー
ハンガリー
ポーランド
ポーランド
ルーマニア
ルーマニア
ロシア
ロシア
スロバキア
スロバキア
スロベニア
スロベニア
トルコ
トルコ
ウクライナ
ウクライナ
4
日本からの欧州向け乗用車出荷の推移
• 日本からの欧州向け乗用車出荷(2010年=100、季節調整済)は、リーマンショック前後
に大きく低下した後、回復傾向で推移していたが、2011年の震災時に再び大きく低下し
た。その後、回復傾向で推移したが、2011年11月以降は低下傾向となっている。
(2010年=100、季節調整済)
200
180
160
140
120
リーマンショック発生
100
80
60
震災発生
40
20
0
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(月/年)
資料:経済産業省「鉱工業出荷内訳表」(試算値)
5
参考:日本からの欧州向け乗用車出荷
•
•
鉱工業出荷内訳表の欧州に含まれる国は以下のとおり(計45か国)。
黄色表示は、MARKLINESの日本車(乗用車)販売台数でも数字を取っている国(計28か国)。
アイスランド
ノルウェー
スウェーデン
デンマーク
英国
アイルランド
オランダ
ベルギー
ルクセンブルク
フランス
モナコ
アンドラ
ドイツ
スイス
アゾレス(葡)
ポルトガル
スペイン
ジブラルタル(英)
イタリア
マルタ
フィンランド
ポーランド
ロシア
オーストリア
ハンガリー
セルビア
アルバニア
ギリシャ
ルーマニア
ブルガリア
キプロス
トルコ
エストニア
ラトビア
リトアニア
ウクライナ
ベラルーシ
モルドバ
クロアチア
スロベニア
ボスニア・ヘルツェゴビナ
マケドニア旧ユーゴスラビア共和国
チェコ
スロバキア
モンテネグロ
6
欧州現地法人(輸送機械)の現地販売額の推移
• 欧州現地法人(輸送機械)の現地販売額(実質ベース、季節調整済)は、リーマンショッ
ク前後に大きく低下した後、緩やかな回復傾向で推移している。
(億ユーロ、実質ベース、季節調整済)
150
130
110
90
リーマンショック発生
70
50
30
ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡ
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(期/年)
(注)欧州現地法人(輸送機械)の現地販売額は、自国向け売上高(ドルベース)をユーロに換算したうえで、
ユーロ圏CPIで実質化し、X-12-ARIMAのX-11デフォルトにより独自に季節調整している。
資料:経済産業省「海外現地法人四半期調査」、ECB、Eurostatから作成。
7
参考:欧州現地法人(輸送機械)の現地販売額
•
•
•
海外現地法人四半期調査の欧州に含まれる国はオレンジ、茶色で表示(計26か国)。
オレンジ表示は、MARKLINES と鉱工業出荷内訳表の欧州にも入っている国。
茶色表示は、MARKLINES に入っていないが、海外現地法人四半期調査と鉱工業出荷内訳表の欧
州に入っている国。
アイスランド
ノルウェー
スウェーデン
デンマーク
英国
アイルランド
オランダ
ベルギー
ルクセンブルク
フランス
モナコ
アンドラ
ドイツ
スイス
アゾレス(葡)
ポルトガル
スペイン
ジブラルタル(英)
イタリア
マルタ
フィンランド
ポーランド
ロシア
オーストリア
ハンガリー
セルビア
アルバニア
ギリシャ
ルーマニア
ブルガリア
キプロス
トルコ
エストニア
ラトビア
リトアニア
ウクライナ
ベラルーシ
モルドバ
クロアチア
スロベニア
ボスニア・ヘルツェゴビナ
マケドニア旧ユーゴスラビア共和国
チェコ
スロバキア
モンテネグロ
8
欧州における日本車(乗用車)販売台数と欧州向け乗用車出荷の関係につい
ての構造変化の推計
• 欧州における日本車(乗用車)販売台数と日本からの欧州向け乗用車出荷の関
係にどの時点で変化が生じたのかをチャウ検定により検証してみると、リーマン
ショック後の2008年10月に最もF値が高くなっている。
欧州における日本車(乗用車)販売台数と欧州向け乗用車出荷の関係に係るチャウ検定
(F値)
40
35
30
25
20
15
構造変化があったと考えられる
10
5%有意水準
5
0
構造変化が無かったと考えられる
3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(月/年)
(注)1.チャウ検定は構造変化の有無を調べるためのテストであり、推定を行う期間を二つに分けて回帰分析を行い、それぞれの期間について得られ
た係数に違いがないかを検定するものである。ここでは、被説明変数を欧州における日本車(乗用車)販売台数、説明変数を欧州向け乗用車出
荷として、推定期間を区切るタイミングを1か月ずつ後方にずらしていきながら回帰分析を行い、それぞれの時点で検定を実施している。
2.2006年1月〜2014年9月までの季節調整済データをもとに検証している。
3.欧州における日本車(乗用車)販売台数は、X-12-ARIMAのX-11デフォルトにより独自に季節調整している。
9
資料:MARKLINES、経済産業省「鉱工業出荷内訳表」(試算値)から作成。
欧州における日本車(乗用車)販売台数と欧州向け乗用車出荷の関係
• 2006年1月以降の欧州における日本車(乗用車)販売台数と日本からの欧州向け乗用車
出荷の関係について、構造変化が生じたと考えられる時期を境に前後2つの期間(前:
2006年1月~2008年10月、後:2008年11月~2014年6月)に分けて見てみると、後半の
2008年11月以降は、両者の関係が無相関となっている。
欧州における日本車(乗用車)販売台数と欧州向け乗用車出荷の関係
40
35
相関係数 = 0.702**
30
25
相関が無く
なっている
20
15
10
100 120 140 160 180 200
欧州向け乗用車出荷(2010年=100)
欧州 日本車 乗(用車 販)売台数(
万 台)
欧州 日本車 乗(用車 販)売台数(
万台)
2006年1月〜2008年10月
2008年11月〜2014年6月
40
相関係数 = -0.192
35
30
25
20
15
10
0
50
100
150
200
欧州向け乗用車出荷(2010年=100)
(注)1.相関係数の「**」は有意水準1%で有意であることを示す。
2.データは全て季節調整済。
3.欧州における日本車(乗用車)販売台数は、X-12-ARIMAのX-11デフォルトにより独自に季節調整している。
資料:MARKLINES、経済産業省「鉱工業出荷内訳表」(試算値)から作成。
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