校長室だより 第97号 [PDFファイル/376KB]

校長室だより
第 97 号
平成 26 年 12 月 25 日
東洋大学図書館の協力による本校図書館での「特別貴重書展」
東洋大学附属牛久高等学校
大好評
校長
遠藤隆二
東洋大学附属図書館が本校の創立 50 周年を記念
して、12 月 18 日(木)と 19 日(金)の2日間、
本校図書館に出張して普段では目にすることのでき
ない貴重な資料を展示する「特別貴重書展」が開催
された。青木館長と古市部長も来校され、陣頭指揮
で自ら陳列展示されていた。授業中は比較的ゆった
り鑑賞できたようだが、昼休みは両日ともに生徒で
溢れかえるほどの盛況でした。展示品の説明をして
2014.12.18 「井上円了の東京帝国大学3年の時のノート」の一部
頂くとともに、東洋大学図書館製の「プラスティッ
クしおり」をサービスして頂くなど、東洋大学附属
図書館の皆様には 2 日間、様々な面で大変お世話に
なりました。誠に有難うございました。
今回の貴重書展では、「①井上円了と妖怪の世界」
「②古典に親しむ」「③日本と西洋のお伽話・絵本」
という3テーマに沿って陳列展示され、貴重資料 25
点はどれも興味をそそられるものでした。説明をし
て頂いた中で、私が特に興味をもったのは「ちりめ
2014.12.18
「井上円了の世界経路図」
ん本」「化物婚礼絵巻」「哲学ノート」でした。
「①井上円了と妖怪の世界」で一番興味をもった
のは、東京帝国大学3年生の時に作成したものと言
われる「哲学ノート」。ペラペラめくってみると、哲
学に関する洋書文献の抜き書きや講義に関する英文
の記述などが見られた。学生時代から文献整理に秀
でていた様子が窺がえ、私たち凡人とは随分違うノ
ートの取り方をしているなあと感心させられた。
所々に漢字もあったが、ほとんどは英語の筆記体で
書かれていた。今の英語教育では、筆記体はほとん
2014.12.18
「百人一首の絵巻物」
ど見られないが、私の中学・高校時代は筆記体が主
流で答案は筆記体で書くよう指導されていたため、
円了先生の筆記体を見てとても懐かしかった。円了
先生は明治 20 年に「私立哲学館」を立ち上げて学
生たちを指導したが、通学できない者のためにも勉
学の機会を与えようと、27 年間、全国を巡る講演会
を 5,291 回も行っている。(全国講演巡回図)また、
3度に渡って世界各地を旅行して見聞を広め、
「東洋
の日本」から「世界の日本」を志したことも、資料
から伝わってきて、円了先生は正に明治の世のグロ
2014.12.18
「美女と野獣」
ーバル人材そのものではなかったかと思った。
②の「古典に親しむ」では、古典の教科書に登場
する百人一首等の絵巻物、小倉百人一首:本金彩(光
琳かるた)や浮世絵などが陳列されていて、生徒た
ちにはとても馴染み易いものであったと思う。
③の「日本と西洋のお伽話・絵本」では、ちりめ
ん紙に印刷された日本お伽話本(ちりめん本)、西洋
のおとぎ話本やしかけ絵本、オズの魔法使い、グリ
ム童話集、ムーミンの作者トーヴェ・ヤンソンの直
筆サイン本なども展示されていた。
「ちりめん紙」には、日本のお伽話が西欧の子ど
2014.12.18
ちりめん紙に印刷された日本お伽話本(ちりめん本)
もたちも読めるようにと、易しい文章の英語、独語、
仏語、西語などに翻訳され、その昔話の内容がイメ
ージできるようにと彩色の絵がリアルに描かれてい
る挿絵が文章とのバランスがよく、とても親しみ易
いものになっている。日本のお伽話ちりめん本の英
語版は、英語を習い始めた小学生や中学生には「い
い教材になる」のではないかと思った。
江戸時代や明治時代の婚礼の様子が読みとれる
「化物婚礼」等の絵巻物にも興味をそそられた。そ
の絵巻物を見て、細々と風習として残っていた戦後
2014.12.18
「ちりめん本」
日本お伽話本(ちりめん本)
「ももたろう」
日本の昔話などを外国語に翻訳した文章と挿絵
を木版印刷し、平らな和紙を圧縮してちりめん状に加工して和本として
間もない子どもの頃に見た故郷の「祝言」
(婚礼)の
様子を思い出すことができた。
「故(ふる)きを温(たず)ねて、新しきを知れ
綴じた書物をいう。明治 18 年に長谷川武次郎によって最初に刊行され、
ば、もって師となすべし」は、論語の孔子の言葉で
以後、西欧の日本文化理解に大きな役割を果たした。題材は日本の昔話
あるが、通説では「古い物事を究めれば、そこに新
などに求められており宣教師や御雇外国人によって、英語、フランス語
しい知識や見解を見つけ出すことができ、将来も見
ドイツ語、スペイン語などの西欧の言語に翻訳され、西欧の出版社と提
通せるものである。」という意味。今回の貴重書展の
携して出版された。外国人の日本滞在の土産物として広く重宝された。
貴重書に出会って、孔子の「温故知新」の思いをも
ち、本校の将来の新しい展開を予感した。
2014.12.18 今から約 100 年前の飛び出し絵本「ミッキーマウス」