一方向凝固シミュレーションにおける引け巣予測に及ぼす熱伝達係数の影響 Estimation of the heat transfer phenomenon by casting simulation IHI Corporation Materials Department, Research Laboratory, Yuriko Saito 株式会社 IHI 技術開発本部 基盤技術研究所 材料研究部 齋藤 侑里子 Abstract / アブストラクト 一方向凝固鋳造における鋳造シミュレーションでは炉体によるふく射伝熱及び、鋳物-鋳 型間の熱伝達係数が引け巣欠陥予測の指標となる鋳物温度に大きく影響を与える重要 なパラメータである。そこで本研究では鋳物温度予測精度に及ぼす炉体モデルならびに 熱伝達係数の影響を検討した。 鋳型温度を正確に予測するためには、厳密な炉体モデルを用いた解析が有効である が、解析に長時間を要する。そのため、本研究では加熱部・中間部・冷却部のみで構成さ れる炉体モデルを使用し、計算効率を向上させた。さらに、鋳型表面温度の予測において も誤差 5%以内となる、高い予測精度を達成する解析手法を確立した。 しかしながら、鋳型表面温度が正確に予測可能となっても、引け巣予測において発生 位置の予測精度が低い場合があった。これは熱伝達係数が実際と異なることで、鋳物温 度が乖離していることが原因と考えられる。 一方向凝固では、加熱部にある鋳物は液相を維持し続けるが、その圧力が熱伝達係数に 及ぼす影響を考慮していなかった。液相が凝固部に加える圧力を推定した結果、非常に 大きな 30MPa 程度となることが明らかとなった。この高い圧力により、鋳物と鋳型の密着 度は向上し、それに伴い、熱伝達係数も高まると予想された。そこで、従来よりも熱伝達係 数を大きく設定した際の引け巣発生予測と実際の引け巣発生状況との相関を調査した。 その結果、従来の約 5 倍の熱伝達係数とした場合に引け巣予測精度が向上することが確 認された。以上より、引け巣予測精度の向上にはヘッド圧を考慮した解析条件が必要であ ることが示された。
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