都内半数の特別養護老人ホームで介護人材不足 報酬減額により8割

平成27年1月5日
各
位
社会福祉法人 東京都社会福祉協議会
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都内半数の特別養護老人ホームで介護人材不足
報酬減額により8割以上の施設が人材不足への影響を懸念
《「 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム に お け る 介 護 職 員 充 足 状 況 に 関 す る 緊 急 調 査 」 を 実 施 》
東京都高齢者福祉施設協議会では、深刻な介護職員不足の中、東京都内の特別養護老人ホ
ームにおける介護職員の充足状況を把握する目的により「特別養護老人ホームにおける介護
職員充足状況に関する緊急調査」を実施いたしました。
この度、その結果がまとまりましたのでお知らせいたしますとともに、都市部の特別養護
老人ホームの状況についてご理解いただくようお願いいたします。
1
ポイント
【調査結果の要旨】
○約半数の特別養護老人ホームで職員不足が生じている。
○ 介護報酬の減算対象となる指定基準を満たしていない施設が9施設あった。
○ 不 足 人 数 は 、「 1 ~ 3 人 」 が も っ と も 多 い 。 9 施 設 が 7 ~ 9 人 不 足 し て い る 。
○不足への対策として、
・「 施 設内行事の中止、制限等」が28施設あった。
・「特養入所の抑制」が9施設、「ユニットの閉鎖」が3施設あった。
・「 ショートステイの閉鎖」が2施設、「受け入れ抑制」が7施設あった。
○6カ月以上不足が続く施設がもっとも多く82施設あった。
○約6割の施設で、来年度の新規採用が確保できていない。
○ 職 員 充 足 に は 「 給 与 処 遇 改 善 」「 介 護 報 酬 地 域 加 算 の 割 合 の 引 き 上 げ 」 が 必 要 。
○ 8 割 以 上 の 施 設 が 、介 護 報 酬 の 減 額 は 介 護 人 材 不 足 に た い へ ん 悪 い 影 響 を 与 え る と
考えている。
【コメント】
都 内 の 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム で は 、介 護 職 員 の 確 保 に 向 け て 職 員 の 処 遇 改 善 に 取 り 組
ん で い る も の の 、依 然 と し て 深 刻 な 人 材 不 足 が 続 い て い ま す 。そ の 結 果 、シ ョ ー ト ス
テ イ の 閉 鎖・受 け 入 れ 抑 制 、特 養 入 所 の 抑 制 な ど 在 宅 介 護 の 負 担 の 増 加 に 直 結 す る サ
ー ビ ス 低 下 が 生 じ か ね ま せ ん 。介 護 報 酬 は 、2 0 0 3 年 に マ イ ナ ス 2 .3 % 、2 0 0
6 年 に マ イ ナ ス 0 .5 % 削 減 さ れ た 影 響 に よ り 、そ の 後 社 会 問 題 と な っ た「 介 護 の 人
材 が 逃 げ て い く 」と い う 現 象 が す で に 始 ま っ て い ま す 。そ の 上 、来 年 度 に 3 % 以 上 の
報 酬 削 減 が 実 施 さ れ た 場 合 、そ の 影 響 は 図 り し れ ま せ ん 。い わ ゆ る リ ー マ ン シ ョ ッ ク
後 の 雇 用 状 況 と は 異 な り 、現 在 は 他 の 分 野 に お い て も 深 刻 な 人 手 不 足 の 状 況 だ か ら で
す 。そ の 上 、要 介 護 人 口 も 増 加 し て い ま す 。こ の ま ま で は 、都 内 は 介 護 崩 壊 で す 。そ
の 結 果 、老 人 漂 流 社 会 が 到 来 し ま す 。都 内 は 介 護・退 院 難 民 で あ ふ れ 、在 宅 介 護 の 悲
劇 が 続 く こ と が 危 惧 さ れ ま す 。こ う し た 事 態 を 回 避 す る た め 、介 護 報 酬 が 減 額 さ れ る
ことに強く反対します。
【介護報酬の地域格差-都内における運営が厳しい大きな原因】
都内における運営が厳しい大きな原因が、介護報酬の地域格差です。介護報酬は全
国一律ですが、人件費の地域差を反映させるための地域区分が設定され、上乗せ加算
がされています。例えば特別区では18%の上乗せ割合が設定されています。
しかしながら、この割増分は人件費だけに対するものであり、特別養護老人ホーム
の場合、国によって人件費割合が一律に45%と設定されています。そのため、特別
区 で は 、 1 8 % ×4 5 % = 8 .1 % が 実 質 的 な 割 増 分 に す ぎ ま せ ん 。
本 会 調 査 iに よ れ ば 、 都 内 の 人 件 費 割 合 は 平 均 6 4 .8 % で あ り 、 実 態 と 大 き く か い
離しています。早期の是正が望まれます。加えて、物価や地代など地域の実態に応じ
た上乗せが必要だと考えます。
2 調査結果(概要)
( 1 ) 約 半 数 の 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム で 「 職 員 不 足 」。
回 答 の あ っ た 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム の う ち 4 7 .2 % の 施 設 で は 、 計 画 上 定 め る 配
置 基 準 も し く は 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム の 指 定 基 準 ii を 満 た し て い な い 現 状 と い う 回
答がありました。
( 2 ) 不 足 人 数 は 、「 1 ~ 3 人 」 が も っ と も 多 い 。
不 足 人 数 に つ い て 、「 1 ~ 3 人 」 が も っ と も 多 く ( 6 0 .0 % )、 つ い で 「 4 ~ 6
人 」( 3 0 .3 % )「 7 ~ 9 人 」( 6 .2 % ) の 結 果 に な り ま し た 。
( 3 ) 不 足 へ の 対 策 は 「 派 遣 職 員 」「 求 職 者 面 接 会 」「 施 設 内 行 事 の 中 止 等 」。
職 員 不 足 へ の 対 応 は 、 回 答 が 多 い 順 に 「 派 遣 職 員 の 雇 用 」( 6 8 .3 % )、「 求 職
者 面 接 会 の 開 催 、 参 加 」( 5 5 .9 % )、「 施 設 内 行 事 の 中 止 、 制 限 等 」( 1 9 .3 % )
が 上 位 だ っ た 。 特 筆 す べ き は 、 ショートステイの閉鎖が2施設、入居抑制が7施設
ありました。
(4)職員不足の期間が「6カ月以上」と言う施設がもっとも多い。
職員不足が続く期間として、
「6カ月以上」
( 4 4 .8 % )と 回 答 す る 施 設 が も っ
と も 多 い 結 果 で し た 。 こ の う ち 、「 6 カ 月 以 上 1 2 カ 月 未 満 」 の 施 設 は 3 0 .8 %
( 2 0 施 設 )、
「 1 2 カ 月 以 上 2 4 カ 月 未 満 」の 施 設 は 2 4 .6 %( 1 6 施 設 )、
「2
4 カ 月 以 上 」 と 言 う 施 設 も 9 .3 % ( 6 施 設 ) あ り ま し た 。
(5)約6割の施設で、来年度の新規採用が確保できていない。
5 9 .7 % の 施 設 で 、来 年 度 必 要 な 介 護 職 員 の 新 規 採 用 が 確 保 で き て い な い 状 況
で す 。 一 方 、 採 用 で き た 施 設 は 2 3 .6 % に と ど ま っ て い ま す 。
( 6 ) 職員充足には「給与処遇改善」「介護報酬地域加算の割合の引き上げ」が必要。
介護職員を充足させるために必要な施策として、回答が多い順に「給与などの
処遇改善」
( 8 4 .3 % )「
、介護報酬地域加算の上乗せ割合の引き上げ」
( 7 6 .1 % )、
「 キ ャ リ ア ア ッ プ 制 度 構 築 」( 4 5 .6 % ) と い う 結 果 で し た 。
(7)8割以上の施設が、介護報酬の減額は介護人材不足に悪影響と考えている。
次 期 介 護 報 酬 の 減 額 改 定 が 報 じ ら れ る 中 、そ れ が 実 施 さ れ た 場 合 に は 8 3 .6 %
の施設が介護人材不足の現状に「たいへん悪い影響を与える」と回答しています。
3
調査方法について
( 1 ) 調 査 対 象 : 本 会 特 養 分 科 会 に 加 入 す る 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム ( 4 4 5 か 所 )。
( 2 ) 回 収 率 : 6 8 . 5 % ( 3 0 5 件 )。
(3)調査期間:平成26年12月12日~22日
(4)調査方法:ファックスによる調査票配布並びに回収による。
4
東京都社会福祉協議会 東京都高齢者福祉施設協議会について
社 会 福 祉 法 人 東 京 都 社 会 福 祉 協 議 会 の 業 種 別 部 会 の 一 つ と し て 、東 京 都 内 の 特 別 養 護
老 人 ホ ー ム 、 養 護 老 人 ホ ー ム 、 軽 費 老 人 ホ ー ム ( ケ ア ハ ウ ス 含 む )、 デ イ サ ー ビ ス セ ン
タ ー 、 在 宅 介 護 支 援 セ ン タ ー 、 地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー 約 1 ,2 0 0 施 設 ・ 事 業 所 を 会 員
と す る 組 織 で す 。利 用 者 主 体 の 高 齢 者 福 祉 を 目 指 し 、研 修 や 調 査 研 究 、提 言 活 動( ソ ー
シャルアクション)に取り組んでいます。
i
ii
第14回特別養護老人ホーム経営実態調査および介護職員賃金実態調査(平成26年5月・本会実施)。
たとえば、入所者に対する看護職員又は介護職員の割合として、常勤換算で3:1以上の比率で職員配置することが定められている。