急性心筋梗塞 日本大学 客員教授 上松瀬 勝男 急性心筋梗塞の診療エビデンス集 −EBM より作成したガイドライン− (平成 11 年度厚生科学研究費補助金{医療技術評価総合事業} 急性心筋梗塞およびその他の虚血性心疾患の診断情報の整理に関する研究) (H・11−医療−017) 主任研究者: 上松瀬勝男 日本大学第二内科教授 (駿河台日大病院病院長) 分担研究者: 石川欽司 児玉和久 小柳 仁 住吉徹哉 竹下 彰 延吉正清 平盛勝彦 藤原久義 古瀬 彰 山口 徹 山口 洋 山崎 力 近畿大学第一内科 大阪警察病院 副院長 東京女子医科大学循環器外科教授 榊原記念病尾院副院長 九州大学循環器内科教授 小倉記念病院副院長 岩手医科大学第二内科教授 岐阜大学第二内科教授 JR 東京総合病院院長 東邦大学第三内科教授 順天堂大学循環器内科名誉教授、順天堂 浦安病院長 東京大学大学院医学系研究科薬剤疫学講 座助教授 虚血性心疾患、特に心筋梗塞の診断・治療の質の向上と万人に公平な医療を 提供するためにはガイドラインの作成は必要不可欠である。今回は欧米の既存 するガイドラインを参考に我が国の地域性や医療システムを加味し、評価され た EBM を基に我が国独自の診断・治療の指針を作成した。そのため、日本人の ための日本人による文献に注目したが、EBM の評価の段階で日本人のエビデン スが非常に少ないことが確認された。そこで、例えば AHCPR( Agency for Health Care Policy and Research) の基準では評価が低くとも日本人にとって 必要であると判断した文献は積極的に取り入れ作成した。文献検索の手技とし ては、急性心筋梗塞症の診断・治療に関する過去 10 年間の欧米の無作為比較試 験を中心に JMEDICINE、MEDLINE、日本医学中央雑誌の各医学文献ガイド より検索した。検索された全 3.472 件のうち、以下の文献評価により今回の目 的に役立つと考えられた 386 件を採用した。文献評価は AHCPR の基準を用い た。 証拠の水準と科学的証拠の種類 Ia : Ib : Ⅱa: Ⅲ : 無作為比較試験のメタアナリシスによる 少なくとも一つの無作為比較試験による 少なくとも一つの良くデサインされた非無作為比較試験による 比較試験、相関研究、症例比較研究など良くデザインされた非実験 的記述的研究による Ⅳ:専門家委員会の報告や意見、あるいは権威者の臨床経験 本研究版での診断・治療指針のクラス分けの定義 クラスⅠ: 手技・治療が有益・有効・有用であることに関して複数の施 設無作為介入臨床試験で証明されている。 クラスⅡ: 手技・治療が有益・有効・有用であることに関して一部デー ター・見解が一致していない場合があるものが多い。 クラスⅡa: 多施設無作為介入臨床試験の結果が有益・有効・有能を示す もの。 クラスⅡa’: 無作為介入試験の結果はないが、複数の研究の結果、主義・ 治療が有益・有効・有用であることが十分に想定でき得るも の。 クラスⅡb: 多施設無作為介入試験の結果が必ずしも有益・有効・有用を 示すと確認できないもの。 クラスⅢ: 手技・治療が有益・有効・有用でなく、ときに有害となる可 能性が証明されているか、あるいは有害との見解が広く一致 している。 以上のクラス分けにより診断・治療の指針を次の目次のごとくに分け表示 した。 目 次 Ⅰ.発症早期の心筋梗塞診断 Ⅱ.入院までの初期治療 Ⅲ.冠動脈造影 Ⅳ.血栓溶解療法の指針 Ⅴ.Primary PTCA/ST ENT Ⅵ.緊急の外科的処置(CABG) Ⅶ.抗不整脈、不整脈対策 Ⅷ.急性期の薬物療法 Ⅸ.IABP,, PCPS なお、本研究班は日本循環器学会、日本冠疾患学会、日本心臓病学会、 日本冠インターベンション学会、日本心臓血管外科学会、日本胸部外科学 会の各学会代表により構成された。 また、診断・治療の日々の進歩を考慮し一定期間の観察期を設定し、 修正・改訂していくことが重要である。
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