(5)富山県における循環型社会構築に関する研究(Ⅲ) ―食品廃棄物リサイクルについて― (概要) 神保有亮 1 島田博之 万尾和恵 はじめに 富山県において、持続可能な循環型社会の構 築に向け、食品廃棄物(生ごみ)や循環資源の 排出、再生利用等の実態を把握し、環境負荷が 少なく効果的かつ経済的なリサイクル推進方策 を検討していく必要がある。本県では、平成 15 年に「とやま廃棄物プラン」を策定(平成 24 年 3月改定)し、平成 20 年には全国初となる県内 全域で主要スーパーマーケット等におけるレジ 袋の無料配布の廃止に踏み切るなど、県民総ぐ るみの取組を推進している。また同プランでは 廃棄物における再生利用率の向上を掲げ、平成 27 年度までに 25%の再生利用率(平成 24 年度の 再生利用率は 22.4%)の達成を目標としている ことから、県内における食品廃棄物のリサイク ル・ループの構築は重要な位置づけにある。食 品廃棄物が有効利用されずに焼却処分されてい る現状から、県内の食品廃棄物の発生状況とリ サイクル製品の需要量を試算したうえで、各広 域圏の地域性に応じたリサイクル方法を検討し、 最適なリサイクルシステムが構築されることを 目指す。本稿では、県内における食品廃棄物の 発生量の把握と、リサイクル製品の利用先の検 討について報告する。 2 方法 2.1 食品廃棄物の発生量の把握 平成23年に天野ら 1) が報告した食品関連事業 者から発生する事業種別の食品廃棄物の発生量 原単位をもとに、県内における食品廃棄物の発 生量の把握を行った。また、食品廃棄物発生量 原単位の値の妥当性を調査するため、他の自治 体との比較を行った。比較には札幌市及び福岡 市の食品廃棄物の発生量原単位の値を用いた。 さらに、最新の国勢調査及び経済センサスの 町丁字単位の人口、労働者人口等を用いて県内 における食品廃棄物の発生量の試算を行った。 なお、食品廃棄物の発生量については、GI S(地理情報システム)ソフトであるQGIS を用いてマップ化を行った。 笹島武司 2.2 リサイクル製品の利用先の検討 食品廃棄物のリサイクルは、飼料化、堆肥化、 バイオガス化が行われることが多いが、県内農 業は水稲中心であることから、水田に施肥をす る堆肥化について検討を行った。 3 結果及び考察 3.1 食品廃棄物の発生量の把握 県内で得られた食品廃棄物の発生量原単位を 他の自治体と比較した結果、食品製造業から発 生する食品廃棄物量がやや大きいが、他の自治 体の発生量と同程度であることがわかった(図 1)。この原単位をもとに県内における食品廃 棄物の発生量を試算し、GISを用いてマップ 化を行った(図2)。その結果、食品製造業か ら10,270 t/年、食品小売業から22,915 t/年、 外食産業から14,574 t/年発生することがわかっ た。さらに、その発生量から食品廃棄物のリサ イクルにおける再生利用率(全国値)を踏まえ、 リサイクルされていない食品廃棄物量の試算を 行ったところ、およそ年間25,000 tもの食品廃 棄物がリサイクルされずに処分されていること が明らかとなった。 3.2 リサイクル製品の利用先の検討 食品廃棄物からの堆肥の利用先となる水田は 県内でおよそ55,000haあり、富山市を中心に県 西部に多く分布している。また、堆肥の原料と なる畜産廃棄物も同様に県西部を中心に多く発 生している(図3)ことから、県内における効 率的なリサイクルを行う場合、これらの地域特 性を考慮する必要がある。 4 成果の活用 効率的なリサイクルシステムが構築されるこ とにより、適正な処理・リサイクル及び廃棄物 の減量化を推進できるほか、環境負荷の低減が 推進される。 - 94 - 90 排出量(kg/月/従業員) 80 70 60 50 食品製造業 40 食品小売業 30 飲食店 20 10 0 富山県 札幌市 福岡市 図1 富山県における食品廃棄物発生量原単位の他地域との比較 (g/m2/日) 図2 単位面積あたりの食品廃棄物発生状況の一例 (家庭系食品廃棄物、富山市中心部) - 95- 図3 富山県における畜産系堆肥の生産状況(平成22年度) 参考文献 1) 天野ら:富山県における事業系食品廃棄物のリサイクルについて,第38回環境保全・公害防止研 究発表会 講演要旨集(2011) - 96-
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