今日の目標 今日の目標 離散最適化基礎論 第 10 回 完全双対整数性:全域木 (2) 最小費用全域木問題の持つ完全双対整数性を理解する 岡本 吉央 [email protected] I 前回は準備 I 今回,証明 電気通信大学 2014 年 12 月 19 日 最終更新:2014 年 12 月 24 日 岡本 吉央 (電通大) 13:20 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 1 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 2 / 46 2014 年 12 月 19 日 4 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 目次 木 無向グラフ G = (V , E ) 1 木とは? 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 G が木であるとは,次の 2 つの条件を満たすこと 2 Kruskal のアルゴリズム 3 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 I G は連結である I G は閉路を部分グラフとして含まない e b a 4 f d c 今日のまとめ i j l k h g 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 3 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 離散最適化基礎論 (10) 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 グラフの全域木 最小費用全域木問題 無向グラフ G = (V , E ) 最小費用全域木問題とは? 全域木とは? I 入力:無向グラフ G = (V , E ),非負辺費用関数 c : E → R G の全域木とは,G の部分グラフで次を満たすもの I 出力:G の全域木で,費用が最小のもの I 木である I 頂点集合が V である 全張木,生成木とも呼ぶことがある 4 v1 e b a i j l k 2 2 v8 5 3 1 v7 事実 h g v6 1 v5 v3 d 4 v4 2 1 f c 岡本 吉央 (電通大) 3 5 I v2 2 最小費用全域木問題は効率よく解くことができる (Kruskal ’56, Prim ’57) 離散最適化基礎論 (10) G が非連結であるとき,G の全域木は存在しない 効率よく = |V | と |E | に関する多項式時間で 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 5 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 6 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 全域木の性質 用いる観察 木であるための必要十分条件 無向グラフ G = (V , E ) 無向グラフ G = (V , E ) に対して,次の 3 つは同値 観察 1 G は閉路を含まない,かつ,G は連結である (つまり,G は木である) 2 G は閉路を含まない,かつ,|E | = |V | − 1 である 3 G は連結である,かつ,|E | = |V | − 1 である I 定式化 1 は 1 に基づいている I 定式化 2 は 2 に基づいて行う I 定式化 3 は 3 に基づいて行う I 定式化 4 は 2 に基づいて行うが,1 つ観察を用いる (証明は演習問題) |E | ≥ |V | ⇒ G は閉路を含む 証明は『数理解析』又は『グラフとネットワーク』を参照 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 7 / 46 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 8 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 補題 補題:証明の続き 補題 補題 無向グラフ G = (V , E ) に対して,次の 2 つは同値 2 4 無向グラフ G = (V , E ) に対して,次の 2 つは同値 G は閉路を含まない,かつ,|E | = |V | − 1 である 2 |E (S)| ≤ |S| − 1 がすべての S ⊆ V (S 6= ∅, V ) に対して成り立つ, かつ,|E | = |V | − 1 である 4 G は閉路を含まない,かつ,|E | = |V | − 1 である |E (S)| ≤ |S| − 1 がすべての S ⊆ V (S 6= ∅, V ) に対して成り立つ, かつ,|E | = |V | − 1 である ただし,E (S) は S に両端点を持つ G の辺全体の集合 ただし,E (S) は S に両端点を持つ G の辺全体の集合 証明:G において,|E | = |V | − 1 が成り立つと仮定する 証明:G において,|E | = |V | − 1 が成り立つと仮定する I I I I I G が閉路を含むと仮定する (その閉路を C とする) C の頂点集合を S とすると,S 6= ∅ このとき,|E (S)| ≥ C の辺数 = |S| 一方,|E (V )| = |E | = |V | − 1 < |V | なので,S 6= V したがって,ある S ⊆ V (ただし,S 6= ∅, V ) に対して, |E (S)| > |S| − 1 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 I G が閉路を含まないと仮定する I このとき,G の部分グラフも閉路を含まない I したがって,任意の S ⊆ V (S 6= ∅, V ) に対して, 部分グラフ G [S] = (S, E (S)) を考えると,G [S] も閉路を含まない I ∴ |E (S)| ≤ |S| − 1 岡本 吉央 (電通大) 9 / 46 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 最小費用全域木問題:定式化 4 最小費用全域木問題:定式化 4 最小費用全域木問題:01 整数計画問題としての定式化 4 最小費用全域木問題:01 整数計画問題としての定式化 4 x ∈ RE は変数 x ∈ RE は変数 ∑ minimize ∑ minimize c(e)xe subject to xe ≤ |S| − 1 (∀ S ⊆ V , (S 6= ∅, V )), ∑ subject to xe ≤ |S| − 1 (∀ S ⊆ V , (S 6= ∅, V )), e∈E (S) e∈E (S) ∑ c(e)xe e∈E e∈E ∑ 10 / 46 ∑ xe = |V | − 1, xe = |V | − 1, e∈E e∈E xe ∈ {0, 1} xe ∈ {0, 1} (∀ e ∈ E ) これは正しい定式化 (∀ e ∈ E ) ここからの目標 定式化 4 の線形計画緩和が整数性を持つことの証明 I 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 道具:Kruskal のアルゴリズム 岡本 吉央 (電通大) 11 / 46 離散最適化基礎論 (10) Kruskal のアルゴリズム 2014 年 12 月 19 日 12 / 46 Kruskal のアルゴリズム 目次 Kruskal のアルゴリズム 最小費用全域木問題を効率よく解く方法 1 Kruskal のアルゴリズム 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 1 2 Kruskal のアルゴリズム 2 3 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 4 今日のまとめ G の辺を費用の小さい順に並べる (c(e1 ) ≤ c(e2 ) ≤ · · · ≤ c(em ) であると仮定する) T := ∅ 3 すべての i := 1, . . . , m に対して,以下を繰り返し { T ∪ {ei } (T ∪ {ei } が閉路を含まないとき) T := T (T ∪ {ei } が閉路を含むとき) 4 T を出力 これは正しいアルゴリズム (必ず最小費用全域木を出力する) I 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 13 / 46 証明は『アルゴリズム論第一』か『アルゴリズム論第二』を参照 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) Kruskal のアルゴリズム 14 / 46 Kruskal のアルゴリズム Kruskal のアルゴリズム:実行例 Kruskal のアルゴリズム:階層構造 (ラミナ) 10 14 9 6 8 10 12 5 6 8 12 13 3 X4 15 7 4 離散最適化基礎論 (10) X8 14 9 13 1 岡本 吉央 (電通大) 2014 年 12 月 19 日 X7 2014 年 12 月 19 日 15 / 46 15 X6 岡本 吉央 (電通大) 1 5 3 X2 X1 4 X3 離散最適化基礎論 (10) 7 X5 2014 年 12 月 19 日 16 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 目次 最小費用全域木問題:定式化 4 最小費用全域木問題:01 整数計画問題としての定式化 4 1 x ∈ RE は変数 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 (P) 2 ∑ minimize c(e)xe e∈E Kruskal のアルゴリズム ∑ subject to xe ≤ |S| − 1 (∀ S ⊆ V , (S 6= ∅, V )), e∈E (S) 3 ∑ 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 xe = |V | − 1, e∈E 4 xe ∈ {0, 1} 今日のまとめ (∀ e ∈ E ) ここからの目標 定式化 4 の線形計画緩和が整数性を持つことの証明 I 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 道具:Kruskal のアルゴリズム 岡本 吉央 (電通大) 17 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 最小費用全域木問題:定式化 4 — 線形計画緩和 最小費用全域木問題:定式化 4 — 線形計画緩和の双対問題 最小費用全域木問題:定式化 4 の線形計画緩和 最小費用全域木問題:定式化 4 の線形計画緩和の双対問題 x ∈ RE は変数 y ∈ R2 (LP) minimize ∑ c(e)xe V −{∅,V } (DLP) ,z ∈ R, w ∈ RE は変数 ∑ ∑ maximize − (|S| − 1)ys − (|V | − 1)z − we e∈E S∈2V −{∅,V } ∑ subject to xe ≤ |S| − 1 (∀ S ⊆ V , (S 6= ∅, V )), − subject to e∈E (S) ∑ 18 / 46 ∑ e∈E yS − z − we ≤ c(e) (∀ e ∈ E ), S:e⊆S(V xe = |V | − 1, e∈E 0 ≤ xe ≤ 1 (∀ e ∈ E ) yS ≥ 0 (∀ S ∈ 2V − {∅, V }), we ≥ 0 (∀ e ∈ E ) 復習:2V は V の冪集合 (べき集合) で,V の部分集合全体の集合のこと 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 19 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 最小費用全域木問題:定式化 4 — 完全双対整数性の証明の方針 完全双対整数性の証明:(LP) の許容解 行列 A ∈ Zm×n ,ベクトル b ∈ Zm ,凸多面体 P = {x ∈ Rn | Ax ≤ b} Kruskal のアルゴリズムを実行 I 選ばれた |V | − 1 個の辺を,選ばれた順に f1 , . . . , f|V |−1 とする 完全双対整数性とは? (再確認) I 不等式系 Ax ≤ b が完全双対整数性 (total dual integrality) を持つ, (あるいは,TDI (totally dual integral) である) とは, 任意の c ∈ Zn に対して,次の最適化問題が整数最適解を持つこと (DLP) A> y = c, y ≥ 0 subject to このとき,x ∗ ∈ RE を次で定義 { 0 (e 6∈ {f1 , . . . , f|V |−1 }), xe∗ = 1 (e ∈ {f1 , . . . , f|V |−1 }) I この x ∗ は (P) の許容解 (∵ Kruskal のアルゴリズムは全域木を出力する) I 「(P) の許容集合 ⊆ (LP) の許容集合」なので,x ∗ は (LP) の許容解 証明の方針:実際に,(DLP) の整数最適解を構成する 1 (LP) の許容解を,Kruskal のアルゴリズムによって構成する 2 (DLP) の整数許容解を,Kruskal のアルゴリズムから構成する 3 その 2 つの目的関数値が一致することを確認する 4 弱双対定理から,これらは最適解である 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 つまり,c(f1 ) ≤ · · · ≤ c(f|V |−1 ) I b> y minimize 岡本 吉央 (電通大) 岡本 吉央 (電通大) 21 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 完全双対整数性の証明:(DLP) の許容解 Kruskal のアルゴリズムを実行 I 選ばれた |V | − 1 個の辺を,選ばれた順に f1 , . . . , f|V |−1 とする y ∗ ∈ R2 I 2014 年 12 月 19 日 22 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:(DLP) の許容解 — 準備 I 20 / 46 V −{∅,V } つまり,c(f1 ) ≤ · · · ≤ c(f|V |−1 ) yS∗ Xk :(V , {f1 , . . . , fk }) の連結成分で fk を含むものの頂点集合 ,z ∗ ∈ R, w ∗ ∈ RE を次で定義 c(f`(k) ) − c(fk ) (ある k に対して, S = Xk のとき), = ただし, `(k) = min{i > k | fi ∈ δ(Xk )} 0 (それ以外のとき), z ∗ = −c(f|V |−1 ) 10 we∗ = 0 X8 14 9 6 8 (∀ e ∈ E ) 12 13 X4 X7 15 X6 10 5 4 8 12 3 13 X2 X1 X8 14 9 6 1 X3 X4 7 X7 X5 15 X6 1 5 3 X2 X1 4 X3 7 X5 注:c(e) がすべての e ∈ E に対して整数 ⇒ y ∗ , z ∗ , w ∗ も整数 (ベクトル) 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 23 / 46 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 24 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:(DLP) に対する許容性 (1) 完全双対整数性の証明:(DLP) に対する許容性 (2) yS∗ ≥ 0 が成り立つのはなぜか? I ある k に対して,S = Xk である場合のみ考える I このとき,y ∗ = c(f`(k) ) − c(fk ) で,`(k) = min{i > k | fi ∈ δ(Xk )} S I つまり,`(k) > k なので, Kruskal のアルゴリズムにおいて,f`(k) は fk よりも後に追加された I ∴ c(f`(k) ) ≥ c(fk ) I ∴ y ∗ = c(f`(k) ) − c(fk ) ≥ 0 S もう 1 つの不等式制約が成り立つのはなぜか? I X1 , . . . , X|V |−2 のどれが e ∈ E を含むか考える I e を含むものは「包含関係の鎖」を作る つまり,ある k1 < k2 < · · · < ki が存在して, e ⊆ Xk1 ⊆ Xk2 ⊆ · · · ⊆ Xki となり, 任意の k 6∈ {k1 , . . . , ki } に対して,e 6⊆ Xk 10 X8 14 9 6 10 8 X4 12 13 X4 X7 1 5 X7 3 X2 X1 15 X6 X3 4 12 13 9 6 8 X8 14 1 5 3 X2 X1 15 X6 4 X3 7 X5 7 X5 費用 9 の辺を e とすると,e ⊆ X6 ⊆ X7 ⊆ X8 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 25 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 完全双対整数性の証明:(DLP) に対する許容性 (2) 続き もう 1 つの不等式制約が成り立つのはなぜか? もう 1 つの不等式制約が成り立つのはなぜか? このとき, I yX∗k = c(fk2 ) − c(fk1 ) yX∗k 2 = c(fk3 ) − c(fk2 ) 1 I つまり, ∑ yS∗ = S:e⊆S(V = c(f|V |−1 ) − c(fi ) i ∑ つまり, ∑ − yS∗ − z ∗ − we∗ = −c(f|V |−1 ) + c(fk1 ) + c(f|V |−1 ) − 0 = c(fk1 ) S:e⊆S(V .. . yX∗k i 26 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:(DLP) に対する許容性 (2) 続き I 2014 年 12 月 19 日 I ここで,c(fk1 ) ≤ c(e) であることを導く I fk1 = e ならば c(fk1 ) = c(e) I よって,fk1 6= e と仮定する yX∗k = c(f|V |−1 ) − c(fk1 ) j j=1 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 27 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 28 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:(DLP) に対する許容性 (2) 続き 最小費用全域木問題:定式化 4 — 完全双対整数性の証明の方針 (確認) もう 1 つの不等式制約が成り立つのはなぜか? I まず,e ⊆ Xk であり,fk ⊆ Xk である 1 1 1 I Kruskal のアルゴリズムの動作から,部分グラフ (V , {f1 , . . . , fk −1 }) 1 において,fk1 の両端点は異なる連結成分に含まれる I Xk は e を含む最小の Xk だから,e の両端点もその部分グラフの 1 異なる連結成分に含まれなければならない I つまり,Xk−1 に e を追加しても Xk が得られていた I しかし,Kruskal のアルゴリズムは fk を選び,e を選ばなかった 1 I Kruskal のアルゴリズムの動作から,c(fk ) ≤ c(e) となる 1 行列 A ∈ Zm×n ,ベクトル b ∈ Zm ,凸多面体 P = {x ∈ Rn | Ax ≤ b} 完全双対整数性とは? (再確認) 不等式系 Ax ≤ b が完全双対整数性 (total dual integrality) を持つ, (あるいは,TDI (totally dual integral) である) とは, 任意の c ∈ Zn に対して,次の最適化問題が整数最適解を持つこと (DLP) minimize subject to b> y A> y = c, y ≥ 0 証明の方針:実際に,(DLP) の整数最適解を構成する f k1 1 (LP) の許容解を,Kruskal のアルゴリズムによって構成する 2 (DLP) の整数許容解を,Kruskal のアルゴリズムから構成する 3 その 2 つの目的関数値が一致することを確認する 4 弱双対定理から,これらは最適解である e X k1 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 29 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (2) まず,次を証明する 証明 (続き):任意の k ≥ 1 を考える I 補題 任意の k ∈ {1, . . . , |V | − 2} に対して ∑ (|S| − 1) · yS∗ = S⊆Xk ∑ 任意の k 0 ≤ k に対して次が正しいと仮定する ∑ ∑ c(e) − (|Xk 0 | − 1) · c(f`(k 0 ) ) − (|S| − 1) · yS∗ = S⊆Xk 0 c(e) − (|Xk | − 1) · c(f`(k) ) I e∈E (Xk )∩F ただし,F = {f1 , . . . , f|V |−1 } このとき,次を証明する ∑ − (|S| − 1) · yS∗ = S⊆Xk+1 証明:k に関する帰納法 I I I I I I k = 1 のときを考える |X1 | = 2 なので,|X1 | − 1 = 1 左辺 = −(c(f`(1) ) − c(f1 )) = c(f1 ) − c(f`(1) ) 右辺 = c(f1 ) − c(f`(1) ) したがって,左辺 = 右辺 岡本 吉央 (電通大) 30 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (1) − 2014 年 12 月 19 日 離散最適化基礎論 (10) 2 3 31 / 46 ∑ c(e) − (|Xk+1 | − 1) · c(f`(k+1) ) e∈E (Xk+1 )∩F 場合分け 1 2014 年 12 月 19 日 e∈E (Xk 0 )∩F fk+1 の両端点が (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点であるとき fk+1 の一方の端点のみが (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点であるとき fk+1 のどちらの端点も (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点でないとき 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 32 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (3) 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (4) 1 fk+1 の両端点が (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点であるとき 2 fk+1 の一方の端点のみが (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点であるとき I つまり,|Xk+1 | = 2 I I 左辺 = −(c(f`(k+1) ) − c(fk+1 )) = c(fk+1 ) − c(f`(k+1) ) つまり,ある頂点 v ∈ V と添え字 k 0 ≤ k が存在して, Xk+1 = Xk 0 ∪ {v },かつ,fk+1 = f`(k 0 ) I 右辺 = c(fk+1 ) − c(f`(k+1) ) I また,このとき,E (Xk+1 ) ∩ F = (E (Xk 0 ) ∩ F ) ∪ {fk+1 } I したがって,左辺 = 右辺 fℓ(k+1) fk+1 fk+1 Xk+1 fℓ(k+1) 岡本 吉央 (電通大) Xk ′ 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 33 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 Xk+1 v 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (5) 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (6) 2 fk+1 の一方の端点のみが (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点であるとき 3 I したがって,証明したいことの左辺 I つまり,ある 2 つの添え字 k 0 , k 00 ≤ k が存在して, Xk+1 = Xk 0 ∪ Xk 00 ,Xk 0 ∩ Xk 00 = ∅,かつ,fk+1 = f`(k 0 ) = f`(k 00 ) I また,このとき, E (Xk+1 ) ∩ F = (E (Xk 0 ) ∩ F ) ∪ (E (Xk 00 ) ∩ F ) ∪ {fk+1 } ∑ = − ∑ (|S| − 1)yS∗ S⊆Xk+1 = − (|S| − 1)yS∗ − (|Xk+1 | − 1)yX∗k+1 S⊆Xk 0 ∑ = fk+1 のどちらの端点も (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点でないとき c(e) − (|Xk 0 | − 1)c(f`(k 0 ) ) − (|Xk+1 | − 1)(c(f`(k+1) ) − c(fk+1 )) fℓ(k+1) fk+1 e∈E (Xk 0 )∩F ∑ = 34 / 46 c(e) − (|Xk+1 | − 2)c(fk+1 ) − (|Xk+1 | − 1)(c(f`(k+1) ) − c(fk+1 )) Xk ′ Xk ′′ Xk+1 e∈E (Xk 0 )∩F ∑ = c(e) + c(fk+1 ) − (|Xk+1 | − 1)c(f`(k+1) ) e∈E (Xk 0 )∩F ∑ = c(e) − (|Xk+1 | − 1)c(f`(k+1) ) e∈E (Xk+1 )∩F 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 35 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (7) 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題 (8) 3 fk+1 のどちらの端点も (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点でないとき 3 fk+1 のどちらの端点も (V , {f1 , . . . , fk }) の孤立点でないとき I したがって,証明したいことの左辺 I したがって,証明したいことの左辺 ∑ = − ∑ (|S| − 1)yS∗ S⊆Xk+1 = − (|S| − 1)yS∗ − S⊆Xk 0 = ∑ c(e) − (|Xk 0 | − 1)c(f`(k 0 ) )+ e∈E (Xk 0 )∩F ∑ (|S| − 1)yS∗ − (|Xk+1 | − 1)yX∗k+1 S⊆Xk 00 c(e)−(|Xk 00 |−1)c(f`(k 00 ) )−(|Xk+1 |−1)(c(f`(k+1) )−c(fk+1 )) e∈E (Xk 00 )∩F c(e) − (|Xk 0 | − 1)c(f`(k 0 ) )+ ∑ = e∈E (Xk 0 )∩F ∑ ∑ = ∑ 36 / 46 ∑ c(e) + e∈E (Xk 0 )∩F c(e) e∈E (Xk 00 )∩F −(|Xk 0 | − 1)c(fk+1 ) − (|Xk 00 | − 1)c(fk+1 ) −(|Xk 0 | + |Xk 00 | − 1)(c(f`(k+1) ) − c(fk+1 )) ∑ ∑ c(e)+ c(e)+c(fk+1 )−(|Xk 0 |+|Xk 00 |−1)c(f`(k+1) ) = c(e)−(|Xk 00 |−1)c(f`(k 00 ) )−(|Xk+1 |−1)(c(f`(k+1) )−c(fk+1 )) e∈E (Xk 00 )∩F e∈E (Xk 0 )∩F e∈E (Xk 00 )∩F ∑ = c(e) − (|Xk+1 | − 1)c(f`(k+1) ) e∈E (Xk+1 )∩F 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 岡本 吉央 (電通大) 37 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 f|V |−1 が Xk 0 と Xk 00 を結ぶとする I つまり,V = Xk 0 ∪ Xk 00 ,Xk 0 ∩ Xk 00 = ∅, f`(k 0 ) = f`(k 00 ) = f|V |−1 ,(E (Xk 0 ) ∩ F ) ∪ (E (Xk 00 ) ∩ F ) ∪ {f|V |−1 } = F I ∗ ∗ , w ∗ ) の目的関数値は このとき, ∑ (DLP) における許容解 (y , z ∑ − (|S| − 1)ys∗ − (|V | − 1)z ∗ − we∗ S∈2V −{∅,V } = − ∑ (|S| − 1)ys∗ − S⊆Xk 0 f|V |−1 X k ′′ = V ∑ e∈E (|S| − 1)yS∗ + (|V | − 1)c(f|V |−1 ) S⊆Xk 00 e∈E (Xk 0 )∩F ∑ = ∑ e∈E (Xk 0 )∩F I 離散最適化基礎論 (10) ∑ c(e) − (|Xk 0 | − 1)c(f`(k 0 ) )+ c(e) − (|Xk 00 | − 1)c(f`(k 00 ) ) + (|V | − 1)c(f|V |−1 ) e∈E (Xk 00 )∩F 岡本 吉央 (電通大) 38 / 46 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題の利用 (2) I X 2014 年 12 月 19 日 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 完全双対整数性の証明:目的関数値の一致 — 補題の利用 (1) k′ 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 39 / 46 c(e) + ∑ c(e) + c(f|V |−1 ) = e∈E (Xk 00 )∩F ∑ c(e) e∈F これは (LP) における許容解 x ∗ の目的関数値 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 40 / 46 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 今日のまとめ 結論 目次 分かったこと 定式化 4 (の線形計画緩和) の不等式系は完全双対整数性を持つ 1 最小費用全域木問題:第 4 の定式化 2 Kruskal のアルゴリズム 3 最小費用全域木問題と完全双対整数性:証明 4 今日のまとめ つまり,線形計画緩和の許容領域は凸多面体 もう 1 つ分かること Kruskal のアルゴリズムは正しく最小費用全域木を出力する つまり,Kruskal のアルゴリズムの正しさを証明するために 線形計画法と凸多面体を利用した 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 41 / 46 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 今日のまとめ 2014 年 12 月 19 日 42 / 46 今日のまとめ 今日の目標 この講義のねらい:流れ 今日の目標 solution 最小費用全域木問題の持つ完全双対整数性を理解する I 前回は準備 I 今回,証明 combinatorial optimization problem 3 3 5 4 6 8 6 4 2 8 1 3 2 7 integer program 1 x2 2 2 1 good linear program+ structure x1 −2x2 =−2 −2x1 −3x2 =−6 1 x2 2 2 1 x1 −2x2 =−2 −2x1 −3x2 =−6 x1 O formulation x1 O 3 3 relaxation ■ 組合せ最適化問題を整数計画問題として定式化 ■ 整数計画問題を線形計画問題として緩和 ■ 線形計画問題の「よい」構造を観察 ■ 線形計画問題を用いて組合せ最適化問題の解決 ←次回もココ 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 43 / 46 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 44 / 46
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