第3回 - TOK2.com

公開講演会(講演と意見交換会)
講師
◇演題
子育てへの「切れ目ない支援」
~フィンランドのネウボラに学ぶ~
◇講師
高橋睦子さん
◇日時
11 月 9 日(日)13:00~15:00
◇場所
さんかく岡山
◇参加者
約 50 人(内:支部会員 18 名)
高橋睦子さん
会議室
ネウボラ(Neuv0La)とは、フィンランドで子
吉備国際大学保健医療福祉学部教授、
どもを持つすべての家庭を対象とする切れ目のな
大学院社会福祉学研究科長
い子育て支援制度です。妊娠に気づいた時から出
産、そして就学前まで、ひとつの窓口で同じ保健
<略歴>
京都市出身、大阪外国語大学(現大阪大
学外国語学部)デンマーク語学科卒
師が「かかりつけ専門職」として相談に乗り、必
要に応じてほかの職種の支援にもつないでいきま
す。
男女共同参画の先進国で女性のほとんどがフル
外務省(語学専門職員)勤務の後、1995
年フィンランド・タンベレ大学大学院で
博士号取得(社会政策学)、宮崎国際大学、
島根県立大学を経て現職。
タイムで働くフィンランド。最近では家族の形も
ひとり親、再婚、事実婚が増え、多様化し、高齢
化のスピードが比較的速い国でもあります。しか
し、出生率が低迷する日本とは対照的に、フィン
主な研究テーマ:
ランドの合計特殊出生率は約 1.8 の水準を保って
家族・子供福祉政策、
います。その理由は様々ですが、社会全体が子ど
暴力の複合要因分析
もの誕生を歓迎し、切れ目のない、包み込むよう
な子育て支援を行っている結果でもあります。
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研修会報告··································································································· 企画委員長
片岡雅子
11 月 9 日 雨の中、熱心な方々が(約 50 人)集まってくださいました。
前半は高橋先生の生活実感の伴ったわかりやすいお話で、内容を身近に感じることがで
きました。
先生のお話に大いに刺激を受け、後半はグループで今の日本の現状、縦割り行政、行政
への信頼度などをどのように克服していけばよいかについて意見交換しました。
年齢も立場も様々な方々が参加してくださったことで、いろんな気づきがありました。
子育て支援制度の充実は、子どもへの DV、少子化対策、女性の社会参画、ワークライ
フバランス、教育、保健・医療など様々な問題解決とリンクしていることがわかりました。
またネウボラは上から下という押しつけの制度ではなく、常に人々がフラットな思考を
持ち、実践されていることが成功の鍵であることも学びました。
当日配布された、高橋先生の資料にコメントを追加したものを同封します。
なお、当日の講演会の録音データあります。
ご希望の方は、総務:河口富美子までご連絡ください。
以下は、講師の高橋先生からのメッセージです。
く
だ
さ
っ
た
よ
う
に
感
じ
ッ
セ
ー
ジ
を
受
け
止
め
て
「
下
か
ら
上
」
と
い
う
メ
一
方
通
行
に
な
ら
ず
か
っ
た
と
思
い
ま
す
。
ー
ク
の
設
定
が
と
て
も
良
り て こ
後 ま の と 巡
半 す こ
回
の 。 と 皆 展
グ
と 様 も
ル
実 の 実
ー
感 お 現
プ
し 力 で
・
て あ き
ト
居 っ た
,
ま
し
た
。
参加所の皆さまからは、もっと学びたい、
そしてフィンランドに行ってみたいという声も出てきました。
さまざまな指標で、フィンランドは世界の上位に!
☆「お母さんに優しい国ランキング」世界第 1 位
☆「人的資本調査」世界第 2 位
☆「世界で最もリスクの低い国」
(フィンランド外務省・フィンランド大使館発行
フィンランドの男女平等 その選択と質 冊子より)
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ワールド・カフェの記録
~・~・参加者と一緒に話し合ったこと・~・
~
<高橋みどり>
私達のグループは 4 人で構成され、会員 2 人と外部か
らの参加者 2 人だった。会員の 1 人はフィンランドの隣
国スウェーデンに 3 年の滞在経験があり、外部の参加者
の1人は、一昨年、留学生として岡山に来られたフィン
ランドの高校生の Host Parents として様々な経験を
された方だったので(一昨年の日本語弁論大会にも出
場)現実的な意見が聞けて、とても有益だった。
まずフィンランドのネウボラで、例えば障害を持つ子
供の相談で、本音が言えるのかどうか、不安な面が残る。
次に日本発のネウボラが難しい点として、国が国民を大切にしているかどうか、ということであ
る。フィンランドの人口の 20 倍以上もいる日本では、政治は縦割りになっていて、特に最近は経
済優先になっている。小学生の 1 クラス人数を 35 人から 40 人に増やせば、経費が節約できる等と
いう話題を耳にすると、本当に悲しくなる。
今年の夏、フィンランドから来ていた留学生の女の子が、彼と一緒に岡山を再訪した際、自分の
飲食は必ず自分で支払うという徹底ぶりだったそうだ。母国では高校を卒業すると一人前として扱
われ、専門的な職業に就く人は大学に進むが、そうでない人の方が多く、また一度社会人になった
後で大学に進学する人も多いとか。
日本では政治に無関心な若者が多く、投票率も低いがスウェーデンやフィンランドでは 80%以上
の投票率だそうだ。政治家は自分たちで選び、自分たちの意思を反映させるという点も日本は見習
うべきである。
結論として、日本の縦割り社会では国を挙げて、ネウボラを作ることは難しいが、まず自治体で
やっていくことは可能ではないか、ということだった。
<鬼木のぞみ>
姫路市の方からは、姫路市では 3 ヶ月までに保健師の全戸訪問(注:岡山市にはない/鬼木)、
検診のときに保健師と面談している。支援が必要なこどもへの対応に重きを置かれがちになるが、
ネウボラは「普通」のこどもたちを「普通」に育てる子育て支援ではないか(「普通」とはいろん
な子どもたちがいるということですねという意見も)。
助産師の方がからは、日本の現状では、保健師だけでなく、他職種、他団体との協力、また育成
が必要ではないか。助産師は、産後ケアから思春期、そして女性の一生の支援をする仕事であり、
連携が大いにできる。
その他、保育園にこどもが通う家族より、家にいる家族へのサポートが必要。行政と行政以外に
ある岡山の社会資源(子育て支援団体、愛育委員など)も生かして、地域で拠り所となる場があっ
たらいい。マタニティ・パッケージはわかりやすくていい。切れ目のない子育て支援にむけては社
会意識のベースやお父さんお母さんのあり方変革も必要などの意見が出されました。
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<岡﨑優子>
<私たちができること>として、以下の意見がありました。
・キャップ岡山で活動。行政の子育て支援は縦割りで箱モ
ノが多いので、皆が声を上げてもらいたい。
・公務員。部下に対して、男性も女性も子供に関わるよう
に助言している。育休を取ることや参観日には積極的に
参加することなど。妊娠した時に、おめでとうというよ
うな環境を作らなくてはいけない。
・子ども劇場で活動。看護士。大人社会が余裕のない社会になってきているので、子育てが難
しい。強い稼ぐ男と弱く守ってやらねばならぬ女という現実とかけ離れた意識を変えていか
なければならない。
<松田喜代子>
私たちのグループにはフィリピンから来て日本人と結婚し、4 人のお子さんがいる方がいま
した。
その方の言葉が印象的でした。「島国日本」の中に根強く生き続けている、「家制度」を象
徴している言葉「男子厨房に入らず」を結婚してすぐ義父から言われたそうで、その精神が脈々
と鎖のように繋がって日本の中で生き続けていることを改めて感じました。ヨーロッパではそ
の点、男女平等の精神が浸透していて、真の合理性がその根底にあります。子どもを中心に考
えたら分かることを当たり前にやっているのが今回のネウボラの取り組みだと思います。
次に、日本にはワンストップではない「たらいまわし」という言葉があって、役所、病院、
警察、裁判所などなど、本当に困って早く何とかして欲しいのにあちこち「たらいまわし」に
されて、話したくないことを何度も言わなくてはいけない。これにもびっくりしていました。
人を中心に考えたら、答えはおのずと出てきます。原発事故にしても、危険性があるからやめ
る。これが当たり前のことなのに、日本は再稼働を検討しています。弱者の気持ちを逆なです
るような事をやる政治を変えるには、草の根の運動が必要です。
「声を出し、仲間をふやす」、
その為には「ワールド・カフェ」のようなおしゃべりの場が必要で、その輪を広げて行くこと
が大切だと話しました。
選挙について、日本人には「どうせ行ったって」みたいな「あきらめ」「我慢強さ」を美徳
と考える気質があります。投票率の低さには驚きです。悪いことには「NO」と言える力をつ
け、代表者選びもよく考えなければ、日本は変わりません。
育児休業についても制度はありますが、依然として取得率は伸びていません。これも日本の
悪しき慣習の鎖に縛られての結果なのでしょう。子育ては母親ひとりが抱え込むのではなく、
みんなの力で支える。その為に男女平等に取得できる制度を活用する「勇気」を持ち、悪しき
鎖を断ち切ることです
参加者それぞれ、立場が違っても、話し合う事で理解し合えます。今回もフィリピンの方と
お話できて、良かったです。
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<近藤みち子>
グループ 4 人のうち 2 人が子どもと関わっており、その 2 人から現状を聞いただけで時間が
なくなった。
・養護教育が専門だが、年一回集まりを開いているが、それでは足りない。申し送りのような
ものはないので、直前の施設にその子どものことを聞きに行っている。
・スウェーデンで幼児教育の施設に勤務していた。帰国後、現在まで 20 年間岡山市内で保育
園を経営している。現状は 18 人の子どものうち 8 人が要支援で、小学校に上がる時担当者
にそういった子どもの情報を伝えるが、うまくつながらない。
・保育園では、母親と「対話」するというやり方で、母子を支援している。行政も学校現場で
もそれぞれ子どもを支援しているが、うまくつながっていない。現状がそのような状態なの
で、保育園が他の団体とつながって就労支援へとつなげている。
・発達障害の診断を受けるために 7 か月待ちの状態であることを、一般市民が知る必要がある。
このままいくと、将来のことが心配である。
<岡本
良子>
私たちのグループは7人プラス2人の子どもたちという賑やかなグループでしたが、少し時
間がなく、以下のような意見が出たところでタイムオーバーとなりました。
・今の日本では定時で働いて一定の成果を上げるという働き方よりも残業をする働き方の方が
認められており、みんなで子育てするという社会的合意ができていない、今後どう変えるか
が課題であると思う(20 代男性)。
・妊娠期に男性も一緒に学べるシステムがあれば、夫に子育てについて知識を持ってもらえる
ことができ、子育てがしやすくなると思う。岡山でそのような場ができるといいと思う(20
代女性)。
・愛育委員が4カ月の子どもさんがおられる家庭に絵本を届けているがフィンランドのように
「切れ目のない支援」にはなっていない。今の体制では難しいが、病院との連携などこれか
ら考えていきたい(保健師)。
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講演会場の入り口に、講演会の前後 1 週間、「ネウボラ巡回展」の展示がなされました。
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