海外ニュース(2015年1月号)[PDF形式](701KB)

海外ニュース
文 / 安藤 佳子
アメリカ
強力磁石のパズル玩具に連邦安全基準
基準の導入
強力磁石のパズル玩具は平均 200 個ほど
(最多で
Ando Yoshiko
【CPSC ホームページ】
http://www.cpsc.gov/en/Newsroom/NewsReleases/2014/CPSC-Approves-Strong-FederalSafety-Standard-for-High-Powered-Magnet-Sets-toProtect-Children-and-Teenagers/
http://www.cpsc.gov/Global/Newsroom/FOIA/
CommissionBriefingPackages/2014/
SafetyStandardforMagnetSets-FinalRule.pdf ほか
を承認した。
1,700 個以上)
の磁石でできており、複数個を飲み込
むと消化管を挟んでくっつき重大な傷害や死亡につ
検討を重ねてきた今回の基準は、より厳しい子ど
ながる可能性があることから、アメリカでは子ども
も向け玩具に適用される性能基準を準用するもので、
にとって非常に危険とされている*。この数年、業
具体的には、●個々の磁石部分の大きさが CPSC の
(3歳以下向け玩具の基準)
のテストシ
者による自主回収や CPSC(消費者製品安全委員会) 「小部品規則」
の度重なる警告、さらには回収や販売停止に応じな
リンダー
(内径 31.70㎜)
を通り抜けないこと ●個々
い業者への行政指導にもかかわらず被害が増加して
の磁石の磁力の強さが、玩具の磁力の国際基準であ
いるという。CPSC の調べでは、2009 ~ 2013 年末
2
る磁束指数 50
(kG)
・㎜2 以下であること
(従来の当
までに、明らかになっているだけで、生後19 カ月の
該玩具はこの基準の 37 倍の強さ)となっている。
女児の死亡例を含め、約 2,900 件
(そのうちの 65%
この新しい連邦安全基準は 2015 年4月1日より発
に当たる約 1,900 件は4~ 12 歳)
の救急搬送を要す
効するが、CU
(アメリカ消費者同盟)
等の消費者団体
る事故が発生している。
や小児科学会などはこれを歓迎している。
そこで、CPSC では 2014 年9月 24 日、この有害
* ウェブ版「国民生活」2012 年 11 月号「海外ニュース」参照
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201211_06.pdf
な強力磁石のパズル玩具に対して、新たな連邦安全
香 港
【HKCC ホームページ】
http://www.consumer.org.hk/website/ws_en/
news/press_releases/2014111101.html
【香港政府新築住宅物件販売管理局 ホームページ】
ほか
http://www.srpa.gov.hk/en/index.html
「新築住宅販売条例」
施行1年半
土地の少ない香港では、住宅といえば主に集合住
者の約 80%は条例を知っていたが、その内容をよ
宅
(マンション)であるが、新築分譲マンションの価
く理解している人の割合は約 10%と低く、その効
格はここ数年高騰を続けている。そのなかで、2013
果については
「平均的」
という回答が約半数
(52.8%)
年4月末には「新築住宅販売条例」
が施行された。こ
であった。主な問題点は ●全戸の販売価格リストが
れには、現地での即決を強く促し購買意欲をあおる
明示されておらず販売価格を小分けに提示している
ような販売方法に歯止めをかけ、過熱する住宅市場
現状では購入者が全戸の価格を比較できないので、
を抑制するというねらいがあった。条例では販売業
供給状況があいまいになっていると指摘 ●仮契約
者に対し、詳細なパンフレットの作成や価格表の明
から本契約までのクーリング・オフ期間が5営業日
示、完成した部屋の内覧、契約の記録、広告につい
では短く、
違約金
(販売価格の5%)
は高過ぎるとし、
ての規制、罰則の規定などを定めている。
クーリング・オフ期間は7~ 14日間、違約金額は販
HKCC(香港消費者委員会)では同条例について、
売価格の1~3%が最多の希望であった。さらに、コ
2014 年4~9月にかけてアンケート調査、グルー
ンピューター抽選による販売システムの不透明性に
プ討論、現地調査などを実施、消費者の意見や住宅市
も不満が多かった。その他、瑕疵担保責任期間の延
場の現状を検証し、160 ページ余のレポートを作成
長、規制遵 守 のチェック体制や広告規制強化など
し、8項目の提言を公表した。今回のアンケート回答
を提言している。
か し
じゅん しゅ
2015.1
国民生活
21
海外ニュース
文 / 岸 葉子
ドイツ
ほとんどの屋内遊園地に安全上の欠陥
Kishi Yoko
【商品テスト財団『テスト』2014 年 11 月号】
https://www.test.de/Hallenspielplaetze-Fastalle-haben-Sicherheitsmaengel-4766570-0/
【商品テスト財団『テスト』2006 年 10 月号】
https://www.test.de/HallenspielplaetzeRiskantes-Spiel-auf-elf-Anlagen-1423756-0/
ない」
という評価で統一した。
季節や天候を問わない屋内遊園地は、子どもの遊
び場として人気が高い。商品テスト財団が、2006
安全性を欠く遊具が見つかったのは、テストが許
年に子ども向け屋内遊園地 19 施設のテストを行っ
可された施設でも同様だった。3施設を除き、保護
たところ、過半数の施設から、著しく安全性を欠く
用のクッション材がすり減ったポール、子どもの頭
遊具等が見つかっている。そこで、今回もほぼ同じ
が挟まるおそれがある垣根、突き出たねじ、マット
内容(アトラクションの質・多様性、遊具の安全性、
が不十分なトランポリンなど、誰が見ても危ないと
サービスなど)のテストを行うことにした。
分かる遊具・機材が目立ったという。結局、サービ
ス面なども含めて総合的に
「良い」
と評価されたの
ところが、今回のテスト対象となった 18 施設の
は、2施設だけとなった*2。
うち、9施設*1 が同財団のテストを拒否したとい
う。それでも、同財団は子ども連れの一般客を装い、
なおドイツでは、いったん認可された屋内遊園地
9施設に内緒で調査を敢行した。この極秘調査によ
を行政機関が管理する義務はなく、安全性維持は施
ると、踊り場に手すりのない大型滑り台、監視人が
設経営者の責任とされる。同財団は、この点につい
いないクライミング設備など、安全性を欠く遊具が
ても疑問を投げかけている。
すべての施設で見つかったとしている。もっとも正
*1 そのうち6施設が前回もテスト対象。そのとき、
拒否した施設はなかった。
*2 日本では、商業施設内の屋内遊戯施設における子どもの事故について、
国民生活センターが注意喚起を行った。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20130606_1.html
式なテストではないため、点数は付けず、
「推奨し
フランス
生鮮ハーブはよく洗ってから調理を
【UFC『QUE CHOISIR』2014 年 10 月号】
http://test-comparatif.quechoisir.org/herbe-aromatique-167837/
【UFC『QUE CHOISIR』2008 年 5 月号】
http://test-comparatif.quechoisir.org/herbes-de-provence-1099/
バジル、パセリ、タイムなど、フランスの家庭料
薬と細菌の有無・程度を調べた。残留農薬のテスト
理に欠かせないハーブ。南仏料理では、
「プロバンス
では商品ごとに1検体、細菌のテストでは商品ごと
のハーブ」
(Herbes de Provence)と呼ばれるドラ
に3検体を分析した。その結果、農薬は 32 商品か
イハーブのブレンドも広く使われている。
ら検出されたが、大多数は
「痕跡」
程度の検出にとど
まった。
しかし、UFC
(フランス消費者同盟)
が 2008 年に
公表したテスト記事は、衝撃的なものだった。
「プ
一方、サルモネラ菌、リステリア菌、大腸菌、セ
ロバンスのハーブ」という名称で販売されている商
レウス菌など、細菌の検出テストでは、ハーブの形
品のうち、実際に南仏原産のものはごくわずかで、
態によって、結果に明らかな差が出た。洗浄や乾燥
ブレンドされるローズマリーはモロッコ・スペイン・
の工程を経るドライ品
(フリーズドライまたは通常
チュニジア産、オレガノはスペイン・チリ産、タイ
乾燥)
では、細菌がまったく検出されないか、ほとん
ムに至っては、陽光の少ないポーランド産が主流だ
ど検出されない商品ばかりだったのに対し、生鮮品
(切り売りまたは鉢植え)
には多少の汚染がみられた。
とする内容だった。
そこで UFC は、生鮮ハーブを調理に使う際は、あ
今回のテストでは
「プロバンスのハーブ」
は取り上
らかじめよく洗うよう助言している。
げず、単品のハーブ 45 商品
(バジル10、シブレット
11、ミント9、パセリ 15)を対象として、残留農
2015.1
国民生活
22