ドイツ語圏文化学科 卒業論文執筆要領 (2014 年版) 目次 1. 提出 ......................................................................................................................... 2 1. 1. 正本 (教務課提出用) .................................................................................... 2 1. 2. 副本 (ドイツ語圏文化学科事務室用) .......................................................... 2 2. 書式 ......................................................................................................................... 3 2. 1. タイトルページ ................................................................................................... 3 2. 2. 目次 ..................................................................................................................... 3 2. 3. 本文 ..................................................................................................................... 3 2. 3. 1. 分量と書式 ...................................................................................................... 3 2. 3. 2. ドイツ語執筆時の注意点 ................................................................................ 4 2. 4. レジュメ .............................................................................................................. 4 2. 5. 章・小節の題(見出し) .................................................................................... 4 2. 6. 引用文 .................................................................................................................. 5 2. 6. 1. 書式.................................................................................................................. 5 2. 6. 2. 引用時の注意点 ............................................................................................... 5 2. 6. 3. 「引用」と「参照」の違い ............................................................................. 5 2. 7. 脚注 ..................................................................................................................... 5 2. 8. 参考文献 .............................................................................................................. 6 2. 8. 1. 参考文献の表記方法 ........................................................................................ 6 2. 8. 2. 参考文献一覧表の作り方 ................................................................................ 8 3. 執筆上の注意 .......................................................................................................... 9 【参考資料 1】様式 A サンプル ............................................................................. 11 【参考資料 2】様式 B サンプル ............................................................................. 16 【参考資料 3】インターネットからの情報を参考文献にする場合の載せ方 ........... 19 1 1. 提出 ― 提出期限:2014 年 12 月 22 日(月)13 時まで → これは、事務手続き上の最終期限です! もっと早く提出するように 心がけて ください。 → 「正本」の教務課への提出期限は 2014 年 12 月 22 日(月)16 時ですが、提出 物に間違いがないか事前にチェックする必要がありますので、 正本、副本ともに必 ず 22 日 13 時までに学科事務室に持ってきてください。 ― 提出場所:教務課(正本)およびドイツ語圏文化学科事務室 (副本) → 「正本」は、学科事務室でチェックをうけた上で 、教務課に提出。 1. 1. 正本 (教務課提出用) ― 以下の順番で、ファイル(コクヨ フ-550)にとじて提出。 → 言語学関係は青色のファイル、それ以外のテーマは赤色のファイルにすること。 → このファイルの表紙にも、後述するタイトルページと同じ内容の情報を印刷し て貼ってください。 ・日本語で書く場合: 1) ドイツ語レジュメだけをホッチキスでとめたもの 2) ドイツ語レジュメ 3) 日本語レジュメ 4) 論文(タイトルページ、目次、本文、参考文献一覧(+その他の資料)) ・ドイツ語で書く場合: 1) 論文(タイトルページ、目次、本文、参考文献一覧(+その他の資料))だけを クリップでとめたもの 2) 日本語レジュメ 3) 論文(タイトルページ、目次、本文、参考文献一覧(+その他の資料)) 1. 2. 副本 (ドイツ語圏文化学科事務室用) ― 以下の順番で、学科事務室で配布する ファイルにとじて提出。 → このファイルの表紙にも、後述するタイトルページと同じ内容の情報を印刷し て貼ってください。 2 ・日本語で書く場合: 1) ドイツ語レジュメ 2) 日本語レジュメ 3) 論文(タイトルページ、目次、本文、参考文献一覧(+その他の資料)) ・ドイツ語で書く場合: 1) 日本語レジュメ 2) 論文(タイトルページ、目次、本文、参考文献一覧(+その他の資料)) 2. 書式 ― 書式については、 「見本」を別途用意してありますので、そちらも参考にしてく ださい。 2. 1. タイトルページ ― タイトルページには、 以下の情報を記載します。 → ドイツ語で執筆する場合、日本語のタイトルは必要ありません。 「平成○○年度 卒業論文」(中央寄せ、14 ポイント) 「日本語タイトル」(中央寄せ、 20 ポイント) 「日本語副題」(中央寄せ、 14 ポイント) 「ドイツ語タイトル」(中央寄せ、 20 ポイント) 「ドイツ語副題」(中央寄せ、 14 ポイント) 「学籍番号」(右寄せ、 16 ポイント) 「氏名」(右寄せ、16 ポイント) 2. 2. 目次 ― 「本文」中の各章・小節の題とその章・小節が始まるページを、日本語なら「M Sゴシック」、ドイツ語なら「 Arial」で、いずれも 12 ポイントで書きます。 2. 3. 本文 2. 3. 1. 分量と書式 ― 執筆枚数 3 ・日本語で書く場合:2万字以上、あるいは A4(37 字×36 行)で 15 枚以上 ・ドイツ語で書く場合: A4(半角 58 字×30 行)で 18 枚以上 ― 余白:上下左右に 30 ㎜ずつ ― 書式:日本語なら「MS明朝」、ドイツ語なら「 Times New Roman」で、いずれ も 10.5 ポイント ― ページ下部中央に、ページ番号を算用数字でつけます。 ― 句読点 ・和文:全角の「、」と「。」 ・欧文:半角の「,」と「.」 ― カッコ ・和文:全角の各種カッコ ・欧文:半角の各種カッコ → 和文中であっても、欧文を引用したりドイツ語による文献名を挙げる場合 には、 半角のドイツ語入力の引用符 ( „ “ )を使ってください。 2. 3. 2. ドイツ語執筆時の注意点 ― ドイツ語で書く場合、それぞれの単語のあいだだけでなく、ピリオドやコンマ、 カッコ(閉)のあとにも半角スペースを入れ忘れない ようにしてください! 良い例)Das 1. Buch Mose (Genesis) fängt mit der Schöpfung des Lebens im Garten Eden an. 悪い例)Das 1.Buch Mose (Genesis)fängt mit der Schöpfung des Lebens im Garten Eden an. 2. 4. レジュメ ― 執筆枚数:日本語、ドイツ語、ともに2~3枚 程度 ― レジュメの書式は上述の「本文」にあわせてください。 ― レジュメには論文のタイトルと氏名を記載し、また、本文とは別に レジュメだ けでページ番号をつけます 。 ― レジュメは、左上をホッチキスでとめてから、ファイルにとじます。 2. 5. 章・小節の題(見出し) ― 各 章 ・ 小 節 の 題 は、 日 本 語 な ら 「 M S ゴシ ッ ク 」、 ド イ ツ 語 な ら「 Arial」 で 、 4 いずれも 12 ポイントで書きます。 ― 章・小節の題と本文とは、10.5 ポイントで1行分空けます。 2. 6. 引用文 2. 6. 1. 書式 ― 複数行にわたる長い文章を引用する際は 、9 ポイント、日本語なら「MS明朝」、 ドイツ語なら「Times New Roman」を使い、左側を2文字分下げ、 上下を 10.5 ポイ ントで1行分ずつ空けます。 → このとき、引用元の 文献情報(著者名、出版年、該当ページ)を忘れないよう に、また、仮名遣いや句読点など 引用元と一字一句違わないように気をつけてくだ さい! ― 引用するのが数単語から1行程度の場合は、カッコでくくって本文に入れ、引 用元の情報を明記するか(以下の例を参照)、カッコのあとに脚注を入れ ます。 例)この作品もまた、「知識人による創作」(阿部 1990:408)である。 2. 6. 2. 引用時の注意点 ― ドイツ語の文章を引用する場合には、その原典を本文中に引用し、直後に日本 語訳をつけます。 → その際、筆者=引用者の訳であるのか、既存の訳を用いたのかを明記すること! 2. 6. 3. 「引用」と「参照」の違い ― 「引用文」と間違いやすいのですが、情報源として参考にしただけで 文章を文 字通り引用していないばあいには、「引用文」にはせず、「本文」に情報源となった 文献について脚注を入れます。 例1)中世の遍歴職人については、阿部( 1978:24)を参照した。 例2)近年のドイツ語教授法について、詳しくは Spiekermann (2005: 152)を参照の こと。 2. 7. 脚注 ― 脚 注は 、 注 が特 定の 語 句 にか か る 場合 はそ の 語 句 1 の すぐ あ と、 注 が 文全 体 に かかる場合は句読点のまえにつけます 2 。 5 ― 脚注内の文は、9 ポイント、日本語なら「MS明朝」、ドイツ語なら「 Times New Roman」で書きます。 2. 8. 参考文献 2. 8. 1. 参考文献の表記方法 ― 参考文献を挙げる場合、 必ず以下の情報を入れるようにします。 → 参考文献の挙げ方について は、以下の様式 A か B にしたがってください。 様式 A.出版年が出版社の後 a) 単行本 ・日本語文献 著者『書名』(編集者・訳者)出版社、出版年。 例)ゲーテ、ヨハン・ヴォルフガング『原形ファウスト』 (新妻篤訳)同学社、2011 年。 ・ドイツ語文献の場合 著者: 書名[イタリック体で] . 出版地: 出版社, 出版年. 例)Wolf, Christa: Sommerstück. Berlin u. Weimar: Aufbau, 1989. b) 論文集に掲載されている文献 ・日本語文献 著者「論文名」編集者名『掲載元の書名』出版社、出版年、掲載ページ。 例)脇阪豊「テクストからメディアへ―『くりかえし』機能を中心に―」杉谷眞佐 子他編著『ドイツ語が織りなす社会と文化』関西大学出版部、2005 年、71~89 ペー ジ。 ・ドイツ語文献 著者: 論文名. In: 編集者名 (Hrsg.): 掲載元の書名[イタリック体で] . 出版地: 出 版社, 出版年, S. ○. 例)Meyer, Reinhart: Das Nationaltheater in Deutschland als höfisches Institut. Versuch einer Begriffs- und Funktionsbestimmung. In: Roger Bauer u. Jürgen Wertheimer (Hrsg.): Das Ende des Stegreifspiels – Die Geburt des Nationaltheaters. München: Fink, 1983, S. 124-152. c) 雑誌・新聞などに掲載されている文献 ・日本語文献 著者「論文名」『掲載元の書名』第○号、出版年、掲載ページ。 6 例)松下亮「ハイネとベルネ―伝記的にみた両者の交渉前史 」九州大学独文学研究 会『独仏文学研究』第 24 号、1974 年、69~86 ページ。 ・ドイツ語文献 著者: 論文名. In: 掲載元の書名[イタリック体で]. Bd. ○, 出版年, S. ○. 例 ) Bähr, Jürgen: Tag der 6 Milliarden Menschen. Zur jüngeren Entwicklung der Weltbevölkerung. In: Geographische Rundschau. Bd. 51, 1999, S. 570-573. 様式 B.出版年が著者名の後 a) 単行本 ・日本語文献 著者(出版年)『書名』(編集者・訳者)出版社。 例)ゲーテ、ヨハン・ヴォルフガング(2011)『原形ファウスト』(新妻篤訳)同学 社。 ・ドイツ語文献の場合 著者 (出版年): 書名[イタリック体で]. 出版地: 出版社. 例)Wolf, Christa (1989): Sommerstück. Berlin u. Weimar: Aufbau. b) 論文集に掲載されている文献 ・日本語文献 著者(出版年)「論文名」編集者名『掲載元の書名』出版社、掲載ページ。 例)脇阪豊(2005) 「テクストからメディアへ―『くりかえし』機能を中心に―」杉 谷眞佐子他編著『ドイツ語が織りなす社会と文化』関西大学出版部、71~89 ページ。 ・ドイツ語文献 著者 (出版年): 論文名. In: 編集者名 (Hrsg.): 掲載元の書名[イタリック体で]. 出 版地: 出版社, S. ○. 例)Meyer, Reinhart (1983): Das Nationaltheater in Deutschland als höfisches Institut. Versuch einer Begriffs- und Funktionsbestimmung. In: Roger Bauer u. Jürgen Wertheimer (Hrsg.): Das Ende des Stegreifspiels – Die Geburt des Nationaltheaters. München: Fink, S. 124-152. c) 雑誌・新聞などに掲載されている文献 ・日本語文献 著者(出版年)「論文名」『掲載元の書名』第○号、掲載ページ。 例)松下亮(1974) 「ハイネとベルネ―伝記的にみた両者の交渉前史 」九州大学独文 学研究会『独仏文学研究』第 24 号、69~86 ページ。 7 ・ドイツ語文献 著者 (出版年): 論文名. In: 掲載元の書名[イタリック体で]. Bd. ○, S. ○. 例)Bähr, Jürgen (1999): Tag der 6 Milliarden Menschen. Zur jüngeren Entwicklung der Weltbevölkerung. In: Geographische Rundschau. Bd. 51, S. 570-573. ― 脚注における引用元の挙げ方 については、以下の各様式サンプルを参照。 様式 A ・日本語文献の場合 著者の姓、発行年、該当頁。 例1)阿部、1978 年、24 ページ。 例2)阿部、1978 年、24~25 ページ。 ・ドイツ語文献の場合 著者の姓 発行年: 該当頁. 例1)Borst 1983, S. 132. 例2)Borst 1983, S. 132-133. 様式 B ・日本語文献の場合 著者の姓(発行年:該当頁)。 例1)阿部(1978:24)。 例2)阿部(1978:24~25)。 ・ドイツ語文献の場合 著者の姓 発行年: 該当頁. 例1)Borst (1983: 132). ― 例2)Borst (1983: 132-133). 参照元をあらわす場合、日本語で書く場合は引用と同様の表記のあと に「参照」 とつけ、ドイツ語で書く場合は引用と同様の表記のまえに「 Vgl. 」とつけます。 例1)阿部(1978:24)参照。 例2)阿部『中世』24~25 ページ参照。 例3)Vgl. Abe (1978: 24). ― 例4)Vgl. Borst „Alltagsleben“, S. 132-133. インターネットからの情報を参照し、参考文献として挙げる場合は、 別紙資料 「インターネットからの情報を参考文献にする場合の載せ方」 をよく読み、その通 りにすること。わからない場合は指導教授に質問すること。 2. 8. 2. 参考文献一覧表の作り方 ― 論文執筆に際して利用した文献をまとめて一覧表を作成し、本文の後に掲載し ます。これを、 「参考文献一覧表」と呼びます。この一覧表には文献にかんする情報 8 だけを載せ、自分が引用または参照したページについては記載しません。 ― 参考文献一覧表は、和文は 10.5 ポイントの「MS 明朝」、欧文は 10.5 ポイント の「Times New Roman」で表記します。 a) 参考文献一覧表の見出し ― 見出しは、和文なら「参考文献」、欧文なら „Literaturverzeichnis“とします。 ・フォントは、和文は 12 ポイントの「MS ゴシック」、欧文は 12 ポイントの「Arial」 を使用する。 ・見出しのあいだには 1 行スペースを入れる。 ・場合によっては、 「一次文献」または„Primärliteratur“(文学作品など、研究対象と した文献)と「二次文献」または „Sekundärliteratur“(研究に際して参照した文献) を 分 け て 、 そ れ ぞ れ の 一 覧 表 を 作 る 。 そ の 場 合 、 そ れ ぞ れ の 見 出 し は 、 和 文 は 12 ポイントの「MS ゴシック」、欧文は 12 ポイントの「Arial」で表記し、一覧と一覧 の間に一行スペースを空ける。 ・参考にしたサイトだけで一覧表を作成する場合には、見出しは、和文なら「参考 サイト」、欧文なら„Website“とし、章題と同じ書式で書きます。 b) 参考文献の記載順 ― 参考文献一覧表に挙げる文献は、著者(場合によっては 訳者・編集者)の姓の 順に並べます。 ・和書と洋書を分けて和書をアイウエオ順に洋書を ABC 順に並べる方法や、和書 と洋書を分けずにすべて ABC 順に並べる方法がある。 ・同一著者の文献を複数 挙げる場合には、出版年の順に並べる。 ・著者名が不明の場合には、書名・サイト名の順に挙げる。 3. 執筆上の注意 ― 扱うテクストは、ドイツ語原典があるものについては、ドイツ語で読んでくだ さい。 → 参考文献としてすくなくとも2点以上ドイツ語の関連文献(ページ数の目安は、 合計 30 ページ以上)を読んでください。 ― 執筆にあたっては、執筆者自身の考察部分であるのか、先行研究に依拠した「引 用」の部分であるかをつねに区別してください (上記の「2.6.引用文」を参照 のこと)。 → 本文中、脚注中を問わず、引用する場合には、出典とページ数を明記する。 9 → 参考文献(インターネットによる情報も含む)に書かれた言葉を、出典を明記 しないで書くことは「無断引用」といい、これは盗作にあたります。無断引用が明 らかになった場合、その論文は不合格となります。 ― いったん提出した論文は、あとになって別のものと差し替えることはできませ ん。内容上の問題だけでなく、誤字脱字もふくめて、 何度もよくチェックした上で 提出してください。 → 誤字脱字などをチェックするために、指導教授の先生だけでなく、書いたもの をクラスメートや他の人にも読んでもらうことをオススメします。 10 様式 A 【参考資料 1】様式 A サンプル 平成 26 年度 卒業論文 オイレンシュピーゲル巡礼 ―初期近世から現代まで― Pilgerreise mit Till Eulenspiegel -Von der frühen Neuzeit bis heute- 01-2345-6789 目白 花子 様式 A 目次 0. 序論 2 1. 民衆本『オイレンシュピーゲル』の誕生と変遷 2 1. 1. 民衆本の執筆者 3 1. 2. 執筆者が想定した読者層 4 1. 3. 後世の二次創作 5 2. 初期近世におけるオイレンシュピーゲル巡礼 6 2. 1. 年代記における記述 6 2. 2. 捏造された巡礼地 7 3.19 世紀におけるオイレンシュピーゲル巡礼 9 3. 1. ナショナリズムの高揚と民衆本の再発見 9 3. 2. Lappenberg( 1854) と そ の影 響 10 4. 現代におけるオイレンシュピーゲル巡礼 14 4. 1. 観光資源としてのオイレンシュピーゲル 14 4. 2. オイレンシュピーゲル関連の催し 16 5. 結論 18 参考文献一覧 19 12 様式 A 0. 序論 ドイツでは、聖地を巡る宗教的巡礼と同様に、ヘルマン・ボーテ( Hermann Bote、 1463 年頃~1520 年頃 1 )によって書かれた民衆本『ティル・オイレンシュピーゲル の愉快ないたずら』(Ein kurtzweilig lesen von Dyl Ulenspiegel geborē uß dem land zů Brunßwick. Wie er sein leben volbracht hatt. xcvi. seiner geschichten 、1510/11 年初版、 以下『オイレンシュピーゲル』と表記)の主人公に縁のある場所をめぐる 旅行が行 われている。本論では、こうした旅行を便宜的に「オイレンシュピーゲル巡礼」と 呼ぶことにし、初期 近世以降、現代にまで続くこの 「巡礼」を通して、1つの文学 作品と観光との関連を考察していく。 1. 民衆本『オイレンシュピーゲル』の誕生と変遷 初期近世における宗教的な巡礼も、すでに観光としての機能をもっていた 2 。しか し、オイレンシュピーゲル巡礼 のための観光情報を提供したのは聖人による奇跡譚 ではなく、民衆本『オイレンシュピーゲル』である。 この民衆本が巡礼を誘発した 一因として、「知識人による創作」(阿部 1990:408)にすぎない主人公 オイレンシ ュピーゲルが、作中では、あたかも 14 世紀に実在した人物であるかのように描か れていることが挙げられる。 たとえば、前書きにおいて、作者は以下のように書い ている。 [...] bin ich, N., durch etlich Personen gebetten worden, daz ich dise Historien und Geschichten ihn zulieb sol zesamenbringen und beschreiben, wie vorzeiten [...] eins Buren Sun – waz er getriben und gethon hat [...] – waz geborn im brunschwigischen Hertzogthum, genant Dil Ulenspiegel. (Lindow (Hrsg.) 2003: 7) 私N[中略]はその昔ブラウンシュヴァイク公国に農民の子として生まれ、ティル・オイ レンシュピーゲルと呼ばれていた[中略]若者が[中略]しでかしたことを集めて書き下 す よ う に 二 、 三 人 の 人 に 依 頼 さ れ ま し た 。( 阿 部 訳 1990: 7 ) 執筆当時においては、この作品は 痛烈な時代批判の書であり、その作者 ボ ー テ の 生 没 年 に つ い て は 、 阿 部 、 1990 年 、 418~ 419 ペ ー ジ を 参 照 し た 。 Feußner( 1999)は 、中 世 か ら 近 世 に か け て の 巡 礼 の 動 機 を 12 ほ ど 挙 げ て い る が 、そ の う ち の 4つは、 「 山 登 り な ど の ス ポ ー ツ 活 動 」や「 芸 術 鑑 賞・好 奇 心 」な ど 観 光 旅 行 と 同 じ 動 機 で あ る 。 Vgl. Feußner 1999, S. 125-126. 1 2 13 様式 A 参考文献一覧 阿部謹也『中世を旅する人びと 』平凡社、1978 年。 阿部謹也「解説」阿部謹也訳『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 』 岩波文庫、1990 年、403~450 ページ。 阿部謹也『中世の窓から』朝日新聞社、1993 年。 阿部謹也訳『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 』岩波文庫、1990 年。 伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド 』NTT 出版、2005 年。 斎藤純「箕面動物園の桃太郎の宮 」日本昔話学会『昔話』第 32 号、2004 年、77~ 92 ページ。 藤代幸一訳『ドイツ民衆本の世界 Ⅰ』国書刊行会、1987 年。 法橋量「旅の目的としてのハイジ 」日本昔話学会『昔話 』第 32 号、2004 年、199~ 214 ページ。 ボルスト、オットー『中世ヨーロッパ生活誌』第1巻(永野藤夫他訳)、白水社、1985 年。 Aichmayr, Michael Josef: Der Symbolgehalt der Eulenspiegel-Figur im Kontext der europäischen Narren- und Schelmenliteratur. Göppingen: Kümmerle, 1991. Borst, Arno: Lebensformen im Mittelalter. Hamburg: Nikol, 2004. Eulenspiegel Museum Mölln. http://www.moellner-museum.de/eulenspiegel-museum.html (24. 12. 2012). Feußner, Christof: Mainzer Wallfahrten in Geschichte und Gegenwart. In: Michael Matheus (Hrsg.): Pilger und Wallfahrtstätten in Mittelalter und Neuzeit . Stuttgart: Franz Steiner, 1999, S. 101-132. Honegger, Peter: Ulenspiegel. Neumünster: Wachholtz, 1973. Lappenberg, Johann Martin: Dr. Thomas Murners Ulenspiegel. Leipzig: Weigel, 1854. Lindow, Wolfgang (Hrsg.): Ein kurtzweilig Lesen von Dil Ulenspiegel. Stuttgart: Reclam, 2003. Moslar, Bettina: Till Eulenspiegel. Essen: Thales, 1991. Uther, Hans-Jörg: Sagenschatz. München: Droemer Knaur, 2002. Virmond, Wolfgang (Hrsg.): Eulenspiegel und seine Interpreten. Hannover: Hahnsche Buchhandlung, 1981 14 様式 B 【参考資料 2】様式 B サンプル 平成 26 年度 卒業論文 オイレンシュピーゲル巡礼 ―初期近世から現代まで― Pilgerreise mit Till Eulenspiegel -Von der frühen Neuzeit bis heute- 01-2345-6789 目白 花子 様式 B 目次 0. 序論 2 1. 民衆本『オイレンシュピーゲル』の誕生と変遷 2 1. 1. 民衆本の執筆者 3 1. 2. 執筆者が想定した読者層 4 1. 3. 後世の二次創作 5 2. 初期近世におけるオイレンシュピーゲル巡礼 6 2. 1. 年代記における記述 6 2. 2. 捏造された巡礼地 7 3.19 世紀におけるオイレンシュピーゲル巡礼 9 3. 1. ナショナリズムの高揚と民衆本の再発見 9 3. 2. Lappenberg( 1854) と そ の影 響 10 4. 現代におけるオイレンシュピーゲル巡礼 14 4. 1. 観光資源としてのオイレンシュピーゲル 14 4. 2. オイレンシュピーゲル関連の催し 16 5. 結論 18 参考文献一覧 19 16 様式 B 0. 序論 ドイツでは、聖地を巡る宗教的巡礼と同様に、ヘルマン・ボーテ( Hermann Bote、 1463 年頃~1520 年頃 3 )によって書かれた民衆本『ティル・オイレンシュピーゲル の愉快ないたずら』(Ein kurtzweilig lesen von Dyl Ulenspiegel geborē uß dem land zů Brunßwick. Wie er sein leben volbracht hatt. xcvi. seiner geschichten 、1510/11 年初版、 以下『オイレンシュピーゲル』と表記)の主人公に縁のある場所をめぐる 旅行が行 われている。本論では、こうした旅行を便宜的に「オイレンシュピーゲル巡礼」と 呼ぶことにし、初期 近世以降、現代にまで続くこの 「巡礼」を通して、1つの文学 作品と観光との関連を考察していく。 1. 民衆本『オイレンシュピーゲル』の誕生と変遷 初期近世における宗教的な巡礼も、すでに観光としての機能をもっていた 4 。しか し、オイレンシュピーゲル巡礼 のための観光情報を提供したのは聖人による奇跡譚 ではなく、民衆本『オイレンシュピーゲル』である。 この民衆本が巡礼を誘発した 一因として、「知識人による創作」(阿部 1990:408)にすぎない主人公 オイレンシ ュピーゲルが、作中では、あたかも 14 世紀に実在した人物であるかのように描か れていることが挙げられる。 たとえば、前書きにおいて、作者は以下のように書い ている。 [...] bin ich, N., durch etlich Personen gebetten worden, daz ich dise Historien und Geschichten ihn zulieb sol zesamenbringen und beschreiben, wie vorzeiten [...] eins Buren Sun – waz er getriben und gethon hat [...] – waz geborn im brunschwigischen Hertzogthum, genant Dil Ulenspiegel. (Lindow (Hrsg.) 2003: 7) 私N[中略]はその昔ブラウンシュヴァイク公国に農民の子として生まれ、ティル・オイ レンシュピーゲルと呼ばれていた[中略]若者が[中略]しでかしたことを集めて書き下 す よ う に 二 、 三 人 の 人 に 依 頼 さ れ ま し た 。( 阿 部 訳 1990: 7 ) 執筆当時においては、この作品は 痛烈な時代批判の書であり、その作者 ボ ー テ の 生 没 年 に つ い て は 、 阿 部 ( 1990: 418~ 419) を 参 照 し た 。 Feußner( 1999)は 、中 世 か ら 近 世 に か け て の 巡 礼 の 動 機 を 12 ほ ど 挙 げ て い る が 、そ の う ち の 4つは、 「 山 登 り な ど の ス ポ ー ツ 活 動 」や「 芸 術 鑑 賞・好 奇 心 」な ど 観 光 旅 行 と 同 じ 動 機 で あ る 。 Vgl. Feußner (1999: 125-126). 3 4 17 様式 B 参考文献一覧 阿部謹也(1978) 『中世を旅する人びと』平凡社。 阿部謹也(1990)「解説」阿部謹也訳『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』 岩波文庫、403~450 ページ。 阿部謹也(1993) 『中世の窓から』朝日新聞社。 阿部謹也訳(1990) 『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』岩波文庫。 伊藤剛(2005) 『テヅカ・イズ・デッド』NTT 出版。 斎藤純(2004) 「箕面動物園の桃太郎の宮」日本昔話学会『昔話』第 32 号、77~92 ページ。 藤代幸一訳(1987) 『ドイツ民衆本の世界Ⅰ』国書刊行会。 法橋量(2004) 「旅の目的としてのハイジ」日本昔話学会『昔話』第 32 号、199~214 ペー ジ。 ボルスト、オットー(1985) 『中世ヨーロッパ生活誌』第1巻(永野藤夫他訳)、白水社。 Aichmayr, Michael Josef (1991): Der Symbolgehalt der Eulenspiegel-Figur im Kontext der europäischen Narren- und Schelmenliteratur. Göppingen: Kümmerle. Borst, Arno (2004): Lebensformen im Mittelalter. Hamburg: Nikol. Eulenspiegel Museum Mölln. http://www.moellner-museum.de/eulenspiegel-museum.html (24. 12. 2012). Feußner, Christof (1999): Mainzer Wallfahrten in Geschichte und Gegenwart. In: Michael Matheus (Hrsg.): Pilger und Wallfahrtstätten in Mittelalter und Neuzeit. Stuttgart: Franz Steiner, S. 101-132. Honegger, Peter (1973): Ulenspiegel. Neumünster: Wachholtz. Lappenberg, Johann Martin (1854): Dr. Thomas Murners Ulenspiegel. Leipzig: Weigel. Lindow, Wolfgang (Hrsg.)(2003): Ein kurtzweilig Lesen von Dil Ulenspiegel. Stuttgart: Reclam. Moslar, Bettina (1991): Till Eulenspiegel. Essen: Thales. Uther, Hans-Jörg (2002): Sagenschatz. München: Droemer Knaur. Virmond, Wolfgang (Hrsg.)(1981): Eulenspiegel und seine Interpreten. Hannover: Hahnsche Buchhandlung. 18 【参考資料 3】インターネットからの情報を参考文献にする場合の載せ方 文責:岡本 順治(2014 年 6 月 17 日) インターネットからの情報には、信頼性が不明なものが多く存在します。ブログや日本語 の Wikipedia は、その良い例です。他方、非常に貴重な情報や最新の情報も含まれている のも事実です。引用する際には、慎重に見極めてから以下の基本情報を確認して下さい。 基本情報が分からないものは引用しない方がよい、と考えて下さい。 ケース 1:ネットでの参照先が通常の HTML で書かれたページだった場合。 (注:URL の最後が .html で終わるページの場合) 基本情報として、URL の他に:1. サイト名、2. 参照ページのタイトル、3. サイト管理者・ 団体の名称、4. そのページの更新日(あるいは、作成日)、5. 参照日(そのページを見た 人の参照日時)を載せます。もし、可能なら、6. 該当ページの著者名も載せて下さい。 例 (1) http://www.moellner-museum.de/eulenspiegel-museum.html 1. サイト名: Möllner Museum 2. 参照ページのタイトル: Eulenspiegel Museum 3. サイトの管理者・団体の名称:Freundeskreis Möllner Museum e. V. 4. そのページの更新年月日:2014 年 5. 参照日:2014 年 5 月 15 日 6. 該当ページの著者名:不明 サイト名は、http://www.moellner-museum.de/ にアクセスすると、ブラウザの上のバーに表 示されます。上記のサイトにアクセスした場合、Möllner Museum | Home が表示されます が、この左側がサイトの名前、右側がサイト内の今アクセスしているページ(名)です。 ここでは、Home となっていますので、このサイトのホームの場所にいる、という意味で す。参照ページのタイトルは、この右側の情報です(ここでは、Home です)。サイトの管 理者を見つけるのは Impressum( 「奥付」 )というページを見つけて下さい。 http://www.moellner-museum.de/impressum.html には、サイトの管理者名と更新年月日が書 いてあります。上記のページ Eulenspiegel Museum には著者名は書いてありません。参照し た人が見た日付が 2014 年 5 月 15 日なら、以下のような文献の挙げ方になります。 URL: http://www.moellner-museum.de/eulenspiegel-museum.html、サイト名: Möllner Museum, 参照ページ名: Eulenspiegel Museum, 管理者:Freundeskreis Möllner Museum e. V. 、発行年 (2014)、 参照日: 2014 年 5 月 15 日 19 ケース 2: ネットでの参照先が、PDF ファイルだった場合。 基本情報として、URL の他に:1. サイト名、2. 参照ページのタイトル、3. サイト管理者・ 団体の名称、4. そのページの更新日(あるいは、作成日)、5. 参照日:そのページを見た 人の参照日時、6. 該当ページの著者名、7. 総ページ数を載せます。 例 (2) https://www.bifie.at/system/files/dl/bist_d_sek1_eulenspiegel_2010-09-10.pdf 1. サイト名: Bundesinstitut BIFIE 2. 参照ページのタイトル: Till Eulenspiegel: Materialien für den Deutschunterricht. 3. サイトの管理者・団体の名称:Bundesinstitut BIFIE,Wien 4. そのページの更新年月日:2010 年 09 月 14 日 12:59:57 5. 参照日:2014 年 5 月 15 日 6. 該当ページの著者名:Reinhold Embacher 7. 総ページ数:16 ページ。 サイト名は、https://www.bifie.at/ にアクセスすると、ブラウザの上のバーに表示されます。 上記のサイトにアクセスした場合、Bundesinstitut BIFIE が表示されますが、これサイトの 名 前 で す 。 例 (2) の URL に ア ク セ ス す る と 、 Till Eulenspiegel – bist_d_sek1_eulenspiegel_2010-09-10.pdf と 上 の バ ー に 表 示 さ れ ま す が 、 左 側 の Till Eulenspiegel が文書名、右側が PDF ファイル名です。 PDF ファイルは、多くの場合、Acrobat Reader がブラウザの中で表示されますので、最初 のページには、PDF 文書のタイトルや著者名、作成日なども分かります。ここで開いた文 書は、bist_d_sek1_eulenspiegel_2010-09-10.pdf というファイルですが、ここにタイトルと 著者名が書いてありました。また、第 2 ページには、©BIFIE Wien, September 2010 と書 いてあり、この文書の著作権が BIFIE Wien にあり、作成年が 2010 年であることがわかり ます(ちなみに、ファイル名にも 2010-09-10 とありますので、おそらく 2010 年 9 月 10 日に作成したものと思われます) 。参照日が 2014 年 5 月 15 日なら、以下のように書きま す。 URL: https://www.bifie.at/system/files/dl/bist_d_sek1_eulenspiegel_2010-09-10.pdf サイ ト名:Bundesinstitut BIFIE, 参照ページ名: Till Eulenspiegel: Materialien für den Deutschunterricht. 管理者:Bundesinstitut BIFIE, Wien、発行年 (2010) 参照日:2014 年 5 月 15 日, 著者:Reinhold Embacher, 16 ページ。 20 ケース 3: 参照先が、リポジトリの PDF ファイルだった場合。 基本情報として、元となる雑誌の情報の他に URI(Uniform Resource Identifier)を載せます。 URI とは、 「統一資源識別子」と訳されていますが、 「一定の書式によってリソースを指し 示すための標識」です。 例 (3) http://glim-re.glim.gakushuin.ac.jp/handle/10959/1869 ・http://glim-re.glim.gakushuin.ac.jp/ は、 「学習院学術成果リポジトリ」(GLIM IR Institution Repository) というサイトです。このサイトは、「学習院」のサイトの一部であることは、 後 ろ の gakushuin.ac.jp の 所 を 見 て も 分 か る は ず で す 。 さ ら に 、 大 学 図 書 館 は 、 http://www.gakushuin.ac.jp/univ/glim/ ですので、glim は、図書館サービスのことを指すと考 えられます。 ・ 「学習院学術成果リポジトリ」のサイトで、 「オイレンシュピーゲル」を検索語にして見 つかったページの1つが上記の (4) の URL です。 ・このページには、doitsubungaku=10_41_62.pdf というファイルへのリンクがありますが、 よく見ると 「 こ の ア イ テ ム の 引 用 に は 次 の 識 別 子 を 使 用 し て く だ さ い : http://hdl.handle.net/10959/1869」 と書いてあります。この部分が識別子で URI です。 ここで示された文献は、書式Aに従うと次のように書きます。 細川裕史(2006) : 「民衆本『オイレンシュピーゲル』にみる「声の文化」」 学 習院大学ドイツ文学会『学習院大学ドイツ文学会研究論集』第 10 号、41 ~62 ページ。URI: http://hdl.handle.net/10959/1869 最後に:インターネット上の情報には、いろいろな種類があります。ここでは紹介しきれ なかった種類もありますので、引用の仕方が分からない場合には、指導教授の先生に相談 して下さい。基本的に、 「誰が、いつ、どのようなタイトルで、何をどのサイトで発表して いるのか」を明示し、参照年月日を載せれば良いのですが、これが意外に難しいことがあ ります。素性が分からないサイトの情報は、使わないのが原則です。 以上 21
© Copyright 2024 ExpyDoc