マーケットの底 流 を読 む 株式会社ジャパンエコノミックパルス Japan Economic Pulse Co., Ltd. 遅れてきた「Jカーブ効果」が下支え [email protected] 日本株 1 月相場、短期「天井」示唆 12 月「十字足」 日経平均は 1 月 7 日に短期的な二番底を付けた可 能性があるが、すでに 12 月 29 日に一時 1 万 7914 円まで上昇した後に失速、ロウソク足が「包み線」、 12 月の月足「十字架」出現が短期「天井」を示唆、 新年 1 月相場の調整局面入りを暗示して久しい。日 足「一目均衡表」の「雲」上限にサポートされるも 10.31「ハロウィン緩和」1 万 6533 円「窓埋め」リ スクがくすぶる。 米金融大手 1 バレル 40 ドルの原油安予想 22 日の ECB(欧州中銀)理事会や 25 日のギリシャ 総選挙など外部環境の不透明感が払拭されるまで、 新年 1 月相場は依然として外部環境の悪化に足を掬 われそうだ。すでに日経平均の上値の重さは、日本 版「バフェット指標」 (東証 1 部時価総額を名目 GDP で割った比率)からも推察される。 昨年 12 月 8 日、日経平均が 1 万 8030 円へ一段高 を辿った局面で日本版「バフェット指標」は 1.1% の 2007 年の米住宅金融バブルのピークに肉薄、それ 以降上値の重い展開を強いられている。 確かに、連休明け 1 月 13 日は日足「一目均衡表」 先行スパン「雲」の中に片足を突っ込んだが、円相 場が 1 ドル=117 円台後半から 118 円台後半へと 1 円近く円安となって買い戻され、短期的には「雲」 上限に支えられた。 だが、12 月 29 日に一時 1 万 7914 円まで上昇した 日経平均はその直後に失速し、日足ロウソク足が「包 み線」となり、12 月の月足が「十字架」となって当 面の「天井」を示唆して久しい。 13 日には原油安を背景に前日の米ダウ平均が 3 日 続落、円高を嫌気したリスク回避の売りが優勢とな り、前日比 291 円安の 1 万 6795 円と大幅続落と「雲」 の中に入った。日銀 10.31「ハロウィン緩和」(10 月 31 日)1 万 6533 円「窓埋め」リスク、さらに ECB 理事会やギリシャユーロ離脱思惑など外部要因の悪 化に 26 週移動平均 1 万 6350 円、 「一目均衡表」基準 線 6280 円、9 ヶ月移動平均 1 万 6158 円への調整リ スクがくすぶる。 もっとも、ある米系証券幹部は「かかる調整局面 も 3-4 月に向けた次の上昇局面に向けた滑走期間と 理解すべき」と解説する。特に、日本株の下値を支 える要因として、引き続き原油安・円安・量的緩和 「新トリプルメリット」が指摘される。 むろん、ほぼ 100%輸入に依存する日本経済及び 日本株は原油安の恩恵を受けやすい。米金融大手ゴ ールドマンサックスは 12 日、NY 原油先物の 2015 年 予想を従来の 73.75 ドルから 47.15 ドルに、2016 年 2015/1/16 見通しを従来の 80 ドルから 65 ドルにそれぞれ下方 修正した。 さらに、ブレント原油先物 3 ヶ月後予想を従来の 80 ドルから 42 ドルに、NY 原油先物 3 ヶ月後の予想 を従来の 70 ドルから 41 ドルに下方修正、すでに原 油安は 1 バレル 40 ドルを織り込みつつある。 12 月 19 日開催の月例経済関係閣僚会議に提出さ れた内閣府の参考資料には、「原油価格が 30%低下 した場合、原油の輸入代金は年率 4 兆円(名目 GDP 比 0.8%)減少」とある。それだけでも、消費増税 の影響で 7-9 月期 GDP 成長率が 2 期連続マイナス成 長を強いられた日本経済にとって頗る強力なカンフ ル剤である。 さらに、日本は東日本大震災以降、原子力発電所 の稼働を全面ストップして火力発電にシフトし、輸 入が急増した液化天然ガス(LNG)にも市況低下の好 影響が及ぶ。火力発電燃料として 2013 年度の LNG 輸入額は、約 7.3 兆円と原油と合わせて日本の全輸 入額の 26.2%を占めるに至った。 「その LNG 価格が 原油とおなじ 30%下落となれば、輸入代金は約 2.2 兆円減る勘定だ」 (ある政府筋)。 つまり、原油と LNG の価格下落分だけで約 6.7 兆 円の逸失国富の奪還、臨時ボーナスを得たことにな る。むろん、これは消費税 3%減税分に相当するリ フレ効果が日本経済に及ぶことを意味する。 今年 4 月、消費税 8%への引き上げで、国民の懐 から政府に 7.5 兆円が吸い上げられたが、今回の原 油安など資源下落によって、消費税 5%への再減税 と同様効果をもたらすのだから、安倍政権にとって 「神風」であり日本経済にとって「暴風」追い風と いって過言ではない。 街角景気、11 月底入れ 12 月 5 ヶ月ぶり改善 一方、ある米系証券幹部は「1 ドル=120 円前後の 円安が定着すれば製造業の業績押し上げ効果が本格 化、14 年 10-12 月期の企業業績の上ぶれ期待に日本 株の 15 年度予想 PER(株価収益率)は 14 倍程度と 割安感が台頭、3 月末にも日経平均は 1 万 9000 円台 を回復する」と予想する。 すでに、2015 年は消費税延期による財政デフレが 払拭され、日本経済の前途に立ちはだかった霧が晴 れた。そして昨年 10 月から輸出が回復し、 「マサチ ューセッツ・アベニューモデル」が明示する円安 2 年を経て「遅れて来た J カーブ効果」を発揮しつつ ある。 さらに、円安定着を背景にパナソニックやキャノ ンなど大手家電メーカーの海外生産から国内生産シ フトが顕在化しつつあり、110 円方向へと大幅な円 高再燃がない限り輸出の本格回復が日本株を支援し よう。 事実、財務省が 13 日発表した 14 年 11 月国際収支 (速報)によれば、原油価格の下落により貿易収支 の赤字が減少する一方、円安が進み輸出が拡大し、 所得収支の黒字が増えた。14 年 11 月の貿易赤字は 6368 億円と赤字幅は前年同月に比べ 4679 億円 (42.4%)減った。 輸出は 6 兆 3221 億円と 6170 億円(10.8%)増え た。米国の景気持ち直しに電子部品を中心に輸出が 伸びた。円安が進み円建ての輸出価格が増えた面も ある。 一方、日経平均の底堅さを支援する材料に株価と 相関性が強い景気ウォッチャー調査の改善がある。 内閣府が 13 日発表した昨年 12 月景気ウォッチャー 調査(街角景気)によれば、年末商戦など消費の盛 り上がりを反映した景気実感を示す現状判断指数が 前月比+3.7pt 改善して 45.2 と 5 ヶ月ぶりに改善し た。さらに、2-3 カ月後の景気を占う先行き判断指 数は前月比 2.7 ポイント上昇の 46.7 と、7カ月ぶり に改善した。 「消費税増税の先送りにより、先行きの 不透明感が薄れ、消費は上向く」(近畿・スーパー) との見方や、 「総選挙後の経済対策や燃料価格の下落 などにより、景気の回復が期待される」 (九州・輸送 業)など、円安対策や個人消費のテコ入れ策を盛り 込んだ経済対策など政府の政策への期待を挙げる声 があった。 一方、内閣府は基調判断を「このところ回復に弱 さがみられる」と前の月から据え置いた。据え置き の理由については、円安進行が輸出企業にとってプ ラスに働く一方、輸入価格の上昇につながるなど「プ ラスとマイナスの要因が混在していること」などを 踏まえた。 先行きについては、 「物価上昇の懸念等が引き続き みられるものの、経済対策や燃料価格低下への期待 等がみられる」と政府の経済対策や原油安による燃 料価格下落への期待を新たに加えた。なお、すでに 景気ウォッチャー調査の企業動向関連は 7 月の 53.9 から 8 月 48.5、9 月 47.9 10 月 46.2 11 月 44.6 と低下傾向を強めている。家計動向は 7 月 49.4 8 月 45.8 9 月 46.7 10 月 42.3 11 月 39.5 に悪化し たが、家計と企業いずれも 11 月で底入れ、12 月か らの改善が期待される。 もちろん、こうしたファンダメンタルズの改善に 加え、日銀の ETF(上場投信)購入や GPIF(年金積立 金管理運用独立行政法人)株式買い増しが日本株の 下値を支えよう。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提 供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させる ことは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありませ ん。また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を 負いません。本レポートの内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的とし たものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
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