ナノ構造制御による高出力固体電解質 燃料電池の開発

水素エネルギーシステム Vo
1
.3
7,
N
o
.
2(
2
0
1
2
)
特集
ナノ構造制御による高出力固体電 解質
燃料電池の開発
石原達己 1 ・朱容完 1 ・ 洪 鍾 恩 1
九州大学大学院工学研究院応用化学部門
干8
19-0395 福岡県福岡市元岡 744
HighPowerS
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TatsumiIshihara,
1 YongWanJu2
,
Jong-EunHong3
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fEngineering,
KyushuU
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744Motooka,
N
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Fukuoka,
8190395
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Developmento
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.
Keywords:LaGa03,
Nanoc
o
n
eshape,Cathode,
DoubleColumnar,
MetalSupport
はじめに
ボトミングサイクルで、の複合発電も可能で、あり、また、
羽畷L
の有効利用も行し、やすく、化石エネルギーを総合的
現在、気候変動問題や化石エネルギー資源枯渇の問題
などから、エネルギーへの関心が非常に高まっている O
に利用する上で、非常に優れた特長がある [
1
叶
。
現在、 SOFC
は家庭用の電気-索引井産デノミイスとして
とくにエネルギーのほとんどを輸入に頼っている日本で
普及が始まっているが、解決しなくてはいけない課題も
は、エネルギー問題は深刻で、まじめに取り組む必要の
まだ、依然として多い。現在のSOFC
の最も大きな課題
ある課題である。水素はクリーンで、高効率なエネルギー
は価格の低減と発電機としての信頼性の向上と考えられ
媒体であり、現在、有効に利用されていない多くのエネ
る。このような観点から、 SOFC
の高出力化によるスタ
ルギーを水素という形で回収できると、新しいエネルギ
ック中のセル数の削減や、低温作動による安価な金属の
ーの利用形態を切り開くことが可能であり、再生可能エ
使用、長期的な安定性の向上による長寿命化などが重要
ネルギーの有効利用などの観点からも、水素エネルギー
な課題となりつつある O 科高では現在、筆者達が検討し
媒体への期待は大きい。燃料電池は水素の電気への変換
ている高酸素イオン伝導体のLaGa
0
3
系酸化物を電解質
デバイスして期待されるとともに、電気の水素への変換
としたSOFC
において、高出力化、低温作動化のための
デ、パイスとしても大きく期待される技術である。燃料電
La
Ga03
系電解質の薄膜化や電極のナノ構造制御による
池のなかでも固体酸化物燃料電池(
S
O
F
C
)はエネルギ一
高出力化の現状を紹介する。
変換効率が、とくに高く、高品位の封畷佐放出するので、
9
5 (7)
水素エネルギーシステム Vo1
.37,
NO.2(
2
0
1
2
)
2
.
特集
La~系電解質の湿式法による薄膜化
LSGM
l
O
Oト
La
Ga03系酸化物は1
9
9
4
年に開発された高酸素イオン
~
1
手
,
_
、
,
5
]。格子中
伝導を示すぺロブスカイト型酸化物である μ
LDC
9
0
,~
も
・4
・醐
~
をSrとMg
で、置換することで、酸素欠陥を導入し、大きな
副
8
0
匂
担
当
h
;
:
:
:
酸素イオン伝導の達成を行った固体割卒質で、あり、酸素
号
p
:
中から水素中まで、の広い酸素分圧下で安定に酸素イオン
7
0
6
0
の電解質とし
伝導を示す。一方、伝導度は現在、 SOFC
て一般に使用されている Y
2U
3安定化zr{hに比べると約
1
3
0
0
。
/
1
4
0
0
1桁ほど高く、低温作動型SOFCの電解質として非常に
優れた特長がある。そこで、現在、このLa
Ga03を電解
1
5
0
0
1
6
0
0
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図1.白山0.
4
U
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(
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C) と
L
a
o
.
9
B
r
u
.
1
G伽 訓goρ3ωG
M)
6
,
7
]。一方で、こ
質に用いたセルの開発が行われている [
のJ焼結体の相対密度の焼結温度依存性
のLa
Ga03は構成元素として価格の高いGaを含むことか
ら、価格の低減と高出力化という観点で、薄膜化が重要
図2
J乙は印Cへの添加物がLDCの焼結特性に及ぼす影
な課題となっている [
8
]
。本稿では主にレーザーアプレー
の焼結
響を示した。図に示すように添加物により、 LDC
(
p
印)法という手法で、の数 μ m
割支の薄膜の作成
特性を大きく向上できることが分かる。焼結助剤で一般
を紹介するが、本節では、より工業的なスクリーンプリ
的に使用される五仏やMgOなどを添加すると焼結はむ
ント法と呼ばれる湿式法によるLaGa
03系酸化物の薄膜
GM
ヤ
I
'
i
U
2
, CaO
などを
しろ阻害された。これに対し、lS
化について、紹介する倒。
添加すると低温での焼結性が大きく向上し、 1
2
5
0Cでも
ション
0
La
Ga03系酸化物は一般的な基板材料であり、アノー
十分な脳吉密度に達することが分かる。
ドとして使用されるNiOとの反応性があり、湿式法では
製膜後の高温焼結時に、基板との反応により、界面に
HW
LSGM.!JK
Ul2N
i
0
4としづ高抵抗相が析出するので、現在までに薄
膜化により高出力なセルの開発は行われていない。
G∞denough ら の グ ル ー プ は L a を 添 加 し た
C心 2
(
1
白山0.
4
U
2
,
LDC)~土LaGa03 と NiOのいずれとも反
応せず、良好な緩衝層になることを報告している [
1
0
]。
1
.
)
0
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"
"
"
窓側
部
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信
却
さ 70
帯
そこで、、湿式法で、のLa
Ga03
系酸化物薄膜の作成で、は一般
を界面に挿入後に、製膜を行うのが一般的であ
的にLDC
る。ところが、 LDC
は伝導度が十分高くなく、焼結性も
低いことからLa
Ga03
系電解質内へのNi
2t-の拡散を完全
創
認
(
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1
)
,
島
、
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1200
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H
J
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'fempcr
に抑制ができない。筆者達のグループでは印Cの低温焼
結とLaGaOs系酸化物の湿式法による薄膜化を目的に検
1300
χ
:
r
L
D
C
図2
. LDC
への納日物がLDC
の焼結特性に及ぼす影響
言すを千子っている。
図1.にはLDCと
L
a
o
.
9
B
n
n
G
a
o
.
sM
g
o
.
必3 ω G
M)の焼結体
そこで、官添力目.D
Cを緩衝層として導入して、膜厚
の相対密度の焼結温度依存性を示した。従来、凶GM
で
ω阿n程度の凶GM膜をスクリーンプリント法で作成し
は、協結に 1
則。Cが必要で、あったが、微立子の合成により、
た。図3
.にはSEl¥1写真を示した。図に示すように 1
3
5
0C
1
筑
泊
。Cでも焼結を行うことが可能である。一方、
LDCは
での最終焼結でありながら、十分徽密な凶GM
膜を得る
.に示すように 1
反泊℃で焼結を行
焼結を生じにくく、図 1
相も十分焼結を行うことができ
ことができており、 LDC
.
9
1と低い。そこで、 LDC
っても、到達できる相対密度は0
の焼結助剤として有
たことが分かる。そこで¥官はLDC
を低温で焼結できるようになると Niとの反応を抑制で
効である。凶GMの鵬享は約55~で、あり、ほぼ目的とし
き、良好な発電特性を示す凶GM
膜の作成が期待できる。
た目奥享のIβGM
膜を得ることができた。
0
96 (8)
水素エネルギーシステム Vo
1
.37,
No.
2(
2
0
1
2
)
特集
得られた凶 GM
電解質を用いて S
m
o
.
B
8
r
o
.
5
<
SSC
)
を
ω
'OS
製膜を行えるので、コストはかかるものの、極めて高出
空気極として焼きつけたセルを作成して、発電特性の測
力な SOFC
セルの開発が行えるとともに、析出する膜の
J
こは作成したセルのI
V
,
I
P
特性の温度
定を行った。図4
の電
形態を制御することが可能で、新しい概念の SOFC
依存性を示す。十分徽密で、電子伝導のない薄膜が湿式
極の作成が可能になる。現在、 SOFC
は比較的、大型の
法でも得られたことから、し 1ずれの温度においてもほぼ、
発電機を志向した開発が中心ではあるが、逆に SOFC
で
2
程度、 日泊。
C
理論起電力を示すとともに、 7∞℃で、 lW/cm
は燃料の制約を受けにくいので、直接炭化水素型で、低
でも 150mW/cm程度の出力を示すセルが得られること
温まで、十分大きな出力を示すセルが開発で、きると、マイ
が分かった。そこで、湿式法でも、十分、大きな出力を
クロ SOFCとして、パソコンやハンデ、イーカムなどの移
示す凶 GM
薄膜を用いたセルの開発が行えることが分か
動用デノくイスの電源として、優れた特長が期待できる。
る。内部抵抗の詳細な検討から、内部抵抗は依然として
加筑泊。
Cの温度範囲で作動できるマイクロ
そこで、 2
R損が主であるが、 R損はカソード側が大きいことから、
SOFCの開発も魅力的なテーマである。
2
の開発をレーザーアプ
低温で作動可能な高出力 SOFC
を低減することで、セルの出力の大きな向上が期待でき
レーション法を用いて検討した。まず、基板として金属
る
今後、カソード側のR損の低減やカソード電極の過電圧
基板の応用を検討した。 図 5.~ こは金属基板の作成方法を
示した。従来、金属基板にはステンレス鋼が一般的に使
用され、粉末焼結か、レーザー加工で多孔質化する。 し
かし、金属と電解質の剰彰張係数の違いや、ステンレス
αの相互拡散により、電極の失活を生じるのが
鋼からの
i
の還元速度が違うこ
課題である。一方、筆者達はFeとN
とを利用して、多孔質金属の作成を検討した。図5
J
こ示
で、
コートしたNiO
粒子を焼結して作った
すように、 Fぱ )4
の薄膜をレザーアプレーション法で
徽密基板上にIβGM
作成し、基板を還元して多孔質金属を作成することを行
図3
.T
i
添
み
日LDC
を緩衝層として導入して、スクリーン
った。この際に還元膨張により、基板の体積が変化する
膜の SE
l
V
I
写真
プリン ト法で作成した凶 GM
と、析出した薄膜電解質にクラックを生じることから、
還元時の基板のサイズ変動を抑制するために、 F8
3
U
4
を導
1
.
2
t
.
2
入した。図5
.に示すようにNiO
が先に還元され、還元時
にN
H
ま多孔質化する。この際にF
e
はまだ酸化状態で、あり、
1
.0
1
1
.
8ヤE
,、
,
".
G
.
(
, ζB
形成しているので、体積変化は7%砲支と抑制することが
事
でき、割卒質膜はクラックが発生することなく、金属基
司
0.
4 ~
。
r
:
o
.
0
.
2
7
7
3K
0
.
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1
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.
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2
.
5
3
.
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i
F
e
合金を形成するが、N
i
はすでに骨格を
くり還元し、 N
-
"
'
g
O
.
O
A
.
.
0.
0
基板のサイズの変化を抑制する。その後、酸イ印 e
がゆっ
J0
.
0
3.
5
板に担持した、
薄膜電解質SOFC
を得ることができる。
Jこは作成した金属基板と還元後のセルの破断面の
図6
‘
SE
l
V
I
写真を示す。金属基板として、気孔率加%程度の多
図4
. 作成したセノレのI
叩 p
特性の温度依存性
孔質基板が得られているが、細孔は大きさがほぼそろっ
正:
Url"('
Ul
'
d
l
'
nity(Al
'n
t
・
'
)
ており、細孔径も 5
仙 m 程度と非常に小さし、ことが分か
3
. 金属基板に担持された薄膜型S(F
C
る。一方、図 6
(
b
)には電解質も析出させた後に、還元し
た金属基板セルを示している。界面には反応の抑制を目
前節では湿式法による凶 GM
の薄膜化を紹介した。 一
的に4
仙 m のSDC
の薄膜を入れてあるが、とくに界面等
電解質を作成するには、レーザー
方、さらに部、凶 GM
は見ることができず、十分、徽密な凶 GM
薄膜(鵬享5
川
アプレーション法などの気相成長法が有効で、低温での
を得ることができている。
9
7 (9)
﹁
・
水素エネルギー システム Vo
1
.37
,
N
o
.
2(
20
12
)
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〆
7W4
一
説 ヤハ
ws
ω
e
F
向上出
叩析
をに
君 "以
焼結と電解
質膜の析出
特集
の析出が可能であり、図 8
.に示すようなナノサイズのコ
ーン状のS
S
C
薄膜を得ることができた[
1
1
]。 この薄膜は
電解質膜
突起状の形状に起因して、非常に大きな有効表面積を提
崎水素還元
供できるので、電極としては理想的と考えられる。
t
.
2
崎
NiOは還元され
るが、 FeOの還元は
遅い
2.
0
崎
1
.8
1
.
6匂
1.
4S
5
FeOも還元されて
NトFe多孔質金属
1.
2
アノードになる。
、
za3
0.
8
5
図5
. 選手応窒元法による金属基板の作成方法
0.
6 a
ω
』
叫
0
.
4
7
7
3K
0
.
0
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.
2
2
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S
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.
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Cu
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c
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s
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yIAcm.
FL
A 向 制
叫
凶膜附
2
n
u
s
d
4-VIE-v
. レーザーアプレーション法で作成したLSGM
図7
薄膜
劃
i
-E
を用いる S
O
F
C
単セルのI
V
,
I
P
曲線。図中2n
d
は鮪腫後
の発電特性
図6
. 作成した金属基板と還元後のセルの破断面のS
凹
写真
図7
.にはレーザーアプレーション法で作成したIβGM
薄膜を用いる S
OFC
単セルのI
V
,
I
P
曲線を示した。いずれ
の温度でもほぼ理論起電力が達成できており 、選択還元
法で作成したセルが、十分、徽密で、割卒質の漏れ等が
無いことが分かる。一方、出力密度については、1
男享が
薄いこともあり 、極めて高出力を得ることができた。図7
図8
.PLDで作成したナノサイズの コー ン状のS
S
C
カソ
2
に示すように 7
∞℃において、最大出力密度は1
.8W/cm
ード薄膜のSEM
イメ ージ
、 (
心表面、
(
b
)断面
としづ、比較的、大きな出力密度を示 し
、 反泊。
Cでの最
大出力は筑旧ImW/cm
者呈度で、
あった。内部抵抗は先の湿式
そこで、図9
.にはナノコーン状の S
S
Cをカソード界面
法で、
得たセルと同様にカソード側のR損が主であり、カ
に析出したセルのほ泊℃でのI
V
,
I
P
特性を示した。図中に
ソー ドと割手質の界面抵抗が大きいものと推定される。
は異なる駒享のS
S
C
薄膜を析出したセルの発電特性の膜
そこで、カソード界面の抵抗が低減できると、さらに高
厚依存性を示した。図に示すようにナノコーン状S
S
C
の
出力化が期待できる。そこで、カソード界面の精密構造
鵬享とともに、出力が向上し、 5
仙 m の鵬享になるよう
制御を試みた。
にナノコーン状S
S
Cを析出すると、最大出力は550mW/cm2
という大きな出力を示すことが分かった。そこで、カソ
4. レーザーアブレーション法によるナノ構造制御SCf
C
ードへの形態制御はS
OFCの高出力化においてきわめて
興味ある成果を与えることが分かる。
図7
.のセルではカソードはスクリーンプ リント法で作
さらにカソー ドの高出力化を目的に、カソードへのダ
成したので、焼き付け温度が低く、界面の機械的強度が
ブルカラムナー構造の界面層の導入を検討した。図1
0に
低いと推定された。そこで、カソード材料のS
S
Cもレー
はWangらが報告したダ、
ブルカラムナーのイメージを示
ザ、
ーアプレーション法で作成した。酸素分圧を低くして、
す。ダブルカラムナー状カソードは凶 C
/
S
D
Cを用いて得
析出温度を低温化するとカラムナーと呼ばれる樹脂状態
られることが、 Wangらにより提案されている [
1
2
]
。図1
.
98 (10)
水素エネルギーシステム Vo1
.37,NO.
2(
2
0
1
2
)
特集
にはWangらの結果を示したが、ダブルカラムナー構造
の導入を検討した。SDCとSSC
の酸化物コンポジッ トを
の導入に より、発電特性は向上すると報告されている。
ターゲ
、
ツ トに用いて、析出を行った。その結果、数 1
白田1
1
.に示すように報告されたセルの発電特性は
しかし、図 1
の樹脂状析出物から構成されるコンポジッ ト膜を得るこ
必ずしも大きくはなく 、調製法や組成の最適化が求めら
とができた。図1
2
.には作成 したダブルカラムナーをカソ
れている。
ー ド界面層とするセルの発電特性を示す。 図 9. ~ こ示すナ
ノコーン状界面層と 比べても 、出力密度は向上し、7
∞。
C
k
ート 明
1
.
0
.
2
W
/
c
m V¥う大きな出力を示すことが分かった。
│でこ、の2ような出力の向上は、カソー
ド過電圧の低減による
2~
i
t
h
o
u
tベ ト 司30
0
r
u
nーや-4(
)
(
)
m
n
.
.
.<
J一一寸、
0
.
に示すような構造で
ことがわかっている。そこで、図1
0
.
8
ε
は、活性点となる2
相界面が、3
次元的に拡張 し
、 反応場
,
匙
e 0
.
6
が拡張するので、濃度過電圧を生じにくく 、拡散が律速
~
過程になりやすい高温で出力が大きく向上したと 推定さ
0.
4
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図9
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膜をカソード界面に
作動を実現するには、さらに高活性な謝亙触媒の開発が
析出したセルの反泊。
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特性
2
必要である。しかし、現状のセルでも、 4OOCで"
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加反則℃とし 、
して以泊℃以上が考えられてきた SOFC
う温度域でも運転を行える可能性が見えてきたと考えて
いる。
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. Wangらが報告したダブルカラムナーを有するセ
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. おわりに
材高では筆者達の研究成果を中心にSOFC
の低温作動、
は現在、日本、米国な
高出力の現状を紹介した。SOFC
どで、普及が始まっているが、本格的な普及を行うため
そこで、筆者達も SD
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SSCを用いてダ、ブルカラムナー
には、価格が重要な因子になるので、高出力化によるモ
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水素エネノレギーシステム Vo
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特集
ジュール内のセル数の削減はコストの低減や故障に対す
る信頼性の向上などに有効であり、今後、さらに材料的
な開発が望まれるとともに、性能を向上させる上で、電
極触媒のナノレベルで、の形態制御も重要になると考えら
が普及すると
れる。ナノテクノロジーを応用した SOFC
期待している。
セルはあまり
また、日本では金属基板を用いたSOFC
検討されていないが、セラミック固有の脆弱性という課
題を克服し、より信頼性の高いセルを開発する上で、金
属基板は重要であり、今後、移動用のセル開発などに研
究が展開すると、活発に研究が行われるようになると考
えている。分散発電は、スマートエネルギー利用社会を
実現し、再生可能エネルギーを普及させる上で、も重要な
は
ので、小型でありながら高効率発電を実現する SOFC
今後、重要な僻リを担い、大きく普及すると期待してい
る
。
参考文献
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