フィードバック制御入門 6 章演習問題【4】 1 6 章演習問題【4】 開ループ伝達関数 L(s) が以下のように与えられるとき, ベクトル軌跡の概形を描き, フィードバック制御 系が安定となるゲイン K の範囲を求めよ. ただし, Ti > 0, i = 1∼3, K > 0 とする. (a) K s(T1s+1)(T2 s+1) (b) K (T1s+1)(T2 s+1)(T3s+1) 【解答】 (a) ω が 0, ∞ のときの L(s) のゲインと位相を求め, ベクトル軌跡を描く. L(s) の周波数伝達関数は L(jω) = K K = jω(jωT1 + 1)(jωT2 + 1) −ω2 (T1 + T2 ) + jω(1 − ω2 T1 T2 ) (1) より, ゲインは K |L(jω)| = (ω2 (T1 + T2 ))2 + ω2 (1 − ω2 T1 T2 )2 (2) で与えられる. よって, ω が 0, ∞ のときの L(s) のゲインは |L(0)| = ∞ |L(∞)| = 0 (3) となる. また, 位相は ω ≈ 0, ω ≈ ∞ において L(jω) ≈ K jω (ω ≈ 0), L(jω) ≈ K T1 T2 (jω)3 (ω ≈ ∞), (4) と近似できることから, 位相はそれぞれ ∠L(0) = ∠ 1 = −90◦ j ∠L(∞) = ∠ 1 = −270◦ (j)3 (5) となる. よって, ベクトル軌跡の概形は 図 1 のようになる. 次にゲイン K の範囲を求める. ベクトル軌跡が実軸と交わる位相交差周波数 ωpc は Im[L(jω)] = 0 が 成立することから ω(1 − ω2 T1 T2 )K = 0 より ωpc = √ 1 T1 T2 (6) となる. このとき Re[L(jωpc )] は Re[L(jωpc )] = 2 − TT11+T T2 KT1 T2 K =− 1 T1 + T2 + j √T T (1 − 1) 1 (7) 2 となる. 安定となるためには, この点が (−1, 0) を越えなければよいので − KT1 T2 > −1 T1 + T2 つまり K< T1 + T2 T1 T2 (8) を満たせばよい. (b) (a) と同様に, ω が 0, ∞ のときの L(s) のゲインと位相を求め, ベクトル軌跡を描く. L(s) の周波数伝 達関数は K (jωT1 + 1)(jωT2 + 1)(jωT3 + 1) K = 1 − ω2 (T1 T2 + T2 T3 + T3 T1 ) + jω(T1 + T2 + T3 − ω2 T1 T2 T3 ) L(jω) = (9) (10) フィードバック制御入門 6 章演習問題【4】 2 より, ゲインは |L(jω)| = K (1 − ω2 (T1 T2 + T2 T3 + T3 T1 ))2 + (ω(T1 + T2 + T3 − ω2 T1 T2 T3 ))2 (11) で与えられる. よって, ω が 0, ∞ のときの L(s) のゲインは |L(0)| = K |L(∞)| = 0 (12) となる. また, 位相は ω ≈ 0, ∞ において L(jω) ≈ K (ω ≈ 0), L(jω) ≈ K T1 T2 T3 (jω)3 (ω ≈ ∞) (13) と近似できることから, それぞれ ∠L(0) = 0◦ ∠L(∞) = ∠ 1 = −270◦ (j)3 (14) となる. よって, ベクトル軌跡の概形は 図 2 のようになる. 次にゲイン K の範囲を求める. ベクトル軌跡が実軸と交わる位相交差周波数 ωpc は Im[L(jω)] = 0 が 成立することから 2 ω(T1 + T2 + T3 − ω T1 T2 T3 )K = 0 より ωpc = T1 + T2 + T3 T1 T2 T3 (15) となる. このとき Re[L(jωpc )] は Re[L(jωpc )] = K 1− T1 +T2 +T3 T1 T2 T3 (T1 T2 + T2 T3 + T3 T1 ) =− KT1 T2 T3 (16) (T1 + T2 + T3 )(T1 T2 + T2 T3 + T3 T1 ) − T1 T2 T3 となる. 安定となるためには, この点が (−1, 0) を越えなければよいので − KT1 T2 T3 > −1 (T1 + T2 + T3 )(T1 T2 + T2 T3 + T3 T1 ) − T1 T2 T3 (17) つまり, K< (T1 + T2 + T3 )(T1 T2 + T2 T3 + T3 T1 ) − T1 T2 T3 T1 T2 T3 (18) を満たせばよい. -K(T1+T2) -1 Im Im ω = ωpc ω=+ L ( jω ) Re ω = ωpc ω=+ ω=0 Re -1 L ( jω ) ω=0 図 1: ベクトル軌跡 図 2: ベクトル軌跡
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