熔融盛による鋼材の酸化脆炭に關する研究(第3報) 高 速度 鋼 - J

第1,a號
熔 融 蟹 に よ る鋼 材 の酸化 脱撰:に關す る研 究(第3報)
23
熔融 盛に よる鋼材 の酸化脆炭 に關す る研究(第3報)
高 速度
鋼 の 酸 化 並 に 脱 炭
(昭 棚18年zo月
本 會 第14同廣
島 大會 に一 部發 表)
東 京工 業 大學 河 上 研究 峯
1.緒
小
川
喜
代
一
の如き 著 しき高温 〓 浴 に 於 け る攣 質量 は800。 の場 合 に比
言.
し激 倍 主な る.BaCI2の變
質反應 に就 いて は 第1報に
高 速 度 鋼 の熱処 理 に は〓 浴爐 が多 く用 ひ られ る が1200
-1300゜ の如 き高 温 を必要 とす る故 酸 化並 に脆 炭 は著 し く
せ る如 く〓
又燃 焼組 織 等 を生 じ易 い.高 速 度爐 用〓 浴 と して は〓 化 バ
リウム を主 成 分 とし,こ れ に硼 砂 又 は 弗 化 物の 添 加 等が 從
に依 り變質 劣化 せ られ,こ れ に依 つ て生 じたBaO,C12,
示
等 が老 へ られ結 局大 氣 中の 酸素 及 び 水fi
HC1或
は水 酸化 物 が 浸 漬鋸 材 に 酸化 並 に脱 炭 の倭 蝕 作 用
を惹 起 せ しむ る主 因 とな る.從 來 〓浴 に よる鋼 材 の浸 蝕作
來 推 賞 せ られ て 居 る.硼 砂 は金屬 の酸 化 物 を良 く溶 解 し金
屬の表 面 を 美 し く虚 理 し得 るた め多 く實用 され て 居 るが
用 は溶 解 酸 素 が鋼 材 中の炭 素 と作用 しCO・:又はCO2と
この物 は 決 して鋼 材 の酸 化又 は脆 炭 を 防 止 す る もの で は
つ て暁 炭 きれ る と し,酸素 の み の影響 の如 くに稱 され だ が
な い.又
本 實 験 の結 果 に よる と酸 素 の 外 に空気 串の 或 は溶剤 中 の
一 面 に於 て浴 槽 を著 し く損 傷 せ しめ る鋏點 が あ
る.又 弗化 物 は浴 の流 動性 を頗 る害 レ容 器 を も著 し く侵 蝕
水 分 の影響 の著 しい こ とを確認
な
得た.
して 壽 命 を短 縮 せ しむ る.從 つ て現 在 高速 度鋸 熱処 理 用 と
,Ⅳ.精
して の〓 浴 は多 くの場 合 〓化 バ リウムの み を用 ひて ゐる.
本 報 は〓 浴処 理 に よる高 速 度 鋼 の 酸 化 並 に脆 炭現 象 を究
實 験Ⅲ
明せ る もの で あ る.
製 純 〓 浴 に於 け る鋼 材 の 酸
化及び 腕炭
に於 ける各状態 の〓 浴中 に 前記2種
類 の 高速
度 鋼 試 料 を1時 聞浸 漬 せ しめ鋼 材 の酸化 量及 び 脆 炭 量 を
Ⅱ
.實
験
方
法
測 定 した.こ れ等 の
槽 に は 中性 附 火物 な るrA土 質 製 の環堝 を用 ひ,〓 仁
バ リウ ムは充 分 に乾燥 の後 熔 融 せ しめ1250。 に保 つた.本
實 験 結 果 よ り試 料
No.1邸
ち高速 度 鋼
研 究 の方法 は夫軆 前 實験 の場 合 と同様 に行 つ た.試 料 の 高
第2種
速 度鋼 材 は 規格 に よる第2種
高速 度鋸 の2種
の浸 蝕結 果 のみ を第;
。
1圖(b)及
類用 ひ浸 漬 時 間 は1時間
貫
及 び第3種
と しだ ・.
に 蘭す る鋼 材
圏 示 した.
び(c)に
曲線A
Ⅲ.高 温 に於 け る塵 浴 の 劣 化
は 乾 燥 室 氣 又曲 線
本 實 験 に 於て は浴 温 が著 し く高 い故 に 攣 質 劣化 も亦 熾
Bは 常態 室 氣 中に於
で あ る こ とが豫 想 せ られ る.こ の歌 況 を観 察 せ んが 爲 に〓
け る浸 漬鋼 材 の酸化
化 バ リウ ム浴 を12500に
保 ち,浴 面 上の 大 氣 を種々 に變 へ
て生 成〓 基 量 の湖 定 を行つ だ.そ の結 果 は第1圏(a)に
並 に脆 炭値 を示す.
示 す如 くで ある.〓 基 量 は その基 準 を蘭 章諸 實 験 と同様 に
蒸 氣 を通 じて〓浴 を
し統 一 せ ん が爲 に當 量的關 係 に よ りNa20の
量 で 表 はす
水蒸i氣に よ りて飽 和
浴 面 に 乾燥 室 氣 を通 じた
せる 時 の酸 化 量 及 び
場 合 で 大 氣 中の 酸 素 の み に依 ろて〓 浴 は 劣 化 せ られて 〓
脱炭 量 を示す.同 圖
こ とゝ しだ.圖 に於 て 曲線Aは
基 性 に變 質 せる もので あ る.曲 線Bは
室 氣 中 に於 け る普
通 状 態 の 實験 結 果 で あ る.部 ち巳 に第1報 に 明 らか に世 ら
れ た如 く, 醜線Bの
示 す縫 質 量 は室 氣 中の 酸 素 の影 響
細線Cは
第1翻
各 種 壁 浴 に依 る〓 基 量,
酸化 量 並 に脱 二炭
量;浴 温 1250。
鋼 材試 料HS2の
比較
過熱 水
(a)に 記 述 せ る如 ぐ
浴 を水 蒸 氣 に て飽和
せる 時 は〓墓 分 の生
並 に室 氣 中の水 分 の影 響 及 び ζの 水 分 に依 り酸 素 の反應
成 量 は 頗 る大 で あ りそれ に 伴 ひ 大 な る酸 化 並に 脆 炭 量 を
が 活 性 化 され る こ と等 に依 つ て 生 成 され だ變 質 の 綜 合結
示 す.期 様 に侮 れ の 場 合 に於 て も〓 浴 の 〓 基 に依 る變 質
集 で あ る ・曲線cは
劣 化 とこの浴 に浸 漬 す る鋼 材 の 侵 蝕作用 とは 一貫 せ渦増
〓 浴 の上 面 髄
熱 水 蒸氣を通 じ浴を
して水 蒸 氣 に て飽 和 せ しめだ場 舎 の攣 質 量 を示 す。1250。
減 傾 向 を示 す こ とは從 前 と同様で あ る,
〓
ⅵ
24
研
究 要旨
第9巻
Ⅶ
.硫 酸根に よる〓 浴 の 劣 化 と
Ⅴ.工 業 用 熔劑 に就 いて の實 験
前 記實 験 に 於 て は特 に精 製ぜ るBaC12を
鋼材の侵蝕作用
使 用 しだ が,
こ ゝでは 市 販 の 高純 度品 を 用 ひ て實 験 を行 って 見 だ.こ
れ を160。 に数 時 間 乾 燥 し吸濕 水 分 を除 外 せ る もの と工 業
的 に使粥 す る多 くの場 合 の如く,特 に乾 燥 す る こ とな くそ
の儘 の もの とを用 ひ中性 耐 火 均堝 申 に熔 融 し1250゜ に 保
BaCI,95%にBaSO5%を
添 加 せ る混 合液 を1250。
に熔 融 せ しめ〓 浴 の 〓 基 生 成 量 並 に これ に浸 潰 せ る鋼 材
の侵 蝕歌況 を観 察 した.こ の 場合 の〓 基 分 の生 成 は 前述 の
麺 く大 氣 中の 酸素 及 び 水 分 に も依 るが又Ba504も
次式 の
如 く高 淵 に於 て分 解 す る こ と も原 因 で あ る.
持して實験 を行 つ た。この結 果 に依 れ ば 乾燥 虚 理 の有 無 に
よ り:BaC12の 劣 化 に差 異 を生 じ乾 燥 せ ざ る〓浴 の〓 基 生
蔵 量 は これ を乾燥 せ る もの に 比 し 大 な る こ と湊 明 らか と
なつ た.欝 この〓 浴 中 に浸 潰 せ る鋼材 の脱 炭 値 の 比較 を
檢討 す る に浴 の變 質變 化 量印 ち〓 基 量 の變 化 と同程 度 の
差 異 を認 め る こ とが 出來 る.以 上 は何れ も鍋 材 を1時
間
浸 漬 せ しめた る場 合 の脱 炭値 で あ るが,多 くの場 合に 於 て
高速 度 鋼 第2種 嫁第3種
よ りも脆 炭値 が 大 き い こ とを知
前報 に記述 せ る と同様 に120.の
包 含する混合〓 浴 は 初
高温 に於 て も硫 酸 根 を
新 浴 の 際 著 しき點 蝕作 用 臆
起
し重 量變 化 な顯 著に 生成 せ しめ高温 〓 浴 に 於 て は 一層 そ
の影 響 は 熾 烈 で ある.高 速 度 鋼 の脆 炭 は點 蝕 作 用 と直接 關
係 な ぐ〓浴 の〓 基 生 成 量 に殆 ど一 致 せ る傾 向 を示 す.但 し
鋼 材表面 の點蝕 作 用 は 熔 融 當初 に著 しいが 比 較的 短 時間
に消失し15時間
聞前御 蓮熔
融に依つ て殆 ど消失する ・
つ だ.
Ⅷ
.工 業 的〓 浴処 哩に よ る實 験
.濕 潤 〓 浴 に依 る鋼 材 の侵蝕
この實 瞼 の 鼠的 は熱処 理 工 場 に 於 て実際 に使 用 せ る大
作用
高 速 度 鋼 の熱処 理 浴 は著 し く高温 な る爲 に 水 分 に 依 る
容 量 の〓 槽爐 に て〓 浴 並に浸 漬鋼 材 の状 況 を知 らん とす
る もので あ る.〓 槽爐 には400×450×450mmの
大 きさ
變質 劣 化 の傾 向は 特 に顯 著 で あ る.精 製:BaC12を 熔 融 し'
を有 す る もの を使 用 した.熔 轍 には普 通 工 業 用 と稱す る市
1200。1250。,1300゜
販 品 を用 ひ,これ ぞ特 に乾 燥 せ しむ る こ とな くそ の儘 熔 融
の
各 温 度 に 保 持せ しめ,
せ しめた.熔 剤 の組 成 はBaC12の
そ の 浴 面 に過 熱 水 蒸 氣
を通 じ て 浴 に 水 蒸 氣 を
記2種 類 の 高速 度 鋼 を用 ひだ.該 〓 槽 熔 は豊 夜 作 業 に で
毎日1同 熔劑 の補 給 を行つ 勉.斯 く して蓮續 熔 融浬轉 を
飽 和 せ し め だ.こ
の 〓
なす.熱処理理灘 度 は1270。 に 保 痔 せ しめ て 前實 験 と同 方
浴 は 熔 融 時間 の 経過 に
法 で行 つ た.以 上 の 工 業用 〓 槽 櫨 に よる實験 結 果 に 於 て
み に して鋼 材 試 料 は 前
從 ひ 水 酸 化 され 或 は 酸
も鞭 浴 の變 質 劣化 に よる〓 基 生 成 蜜 向 とその 〓 浴 に浸 漬
化 せ られ て變 質 劣 化 し
す る鋼 材 の侵蝕 作 用 との周 に は一 致 せ る關 係を認 め得 ゐ.
浸 漬 鋼 材 を侵 蝕 す る.
そ の 傾 向 は1200。
Ⅸ
.総
及 び
1250。 に 於 て は殆 ど同
(1)高 速度鋼 の熱処理 に於て浸漬鋼材 に対す る高雌
一 で あ るが13G9。 に 於
て は 増 大 す る.斯
浴 の反應 に就 き前報 と岡様 に 實験 な行 つ た.邸 ち〓 浴 が乾
燥 室 氣,常 態 室 氣或 は水蒸 氣 に接 す る場 合 に 於 け る〓浴 の
くの 、
如 く水 分 を飽和 せ る〓
。變 質 劣 化 に よつ て蛾 さ輪 〓 基 量 と鋼 材 の優 蝕 作用 と
の間 に は類 似 の増 減 傾 向 を認 め得 た.前 報 に 於 け る浴 温
浴 に前 記2種 類 の高速
800.9場
度 鍋 を浸 漬 して 脱 炭 量
を観 測 した.こ の結 果
工200゜ 及 び
1250。 に 於 て は 略}同
とな る.尚
様 で ある。
第2圖
〓 硲 の礎 質劣 化 に よる
〓
基度 と鋼 材 の脱炭 との關 係
一 で あ る が1300。
何 れ も〓 浴 の 劣 化
過と共 に 大 とな る.斯様
合 に比 し本研 究 は12・ 。.の 高 温 〓浴に よるも の
敬 侵 鱒 量 は何れ も熾 烈 で ある が〓 基 量 との關 係 は 全 く同
に依 れ ば鋼 材 試 料 の脆
炭値 は
括
の 場 合 は稍
(2)〓
大
と傾 向 を同 じ く し時 間 の 経
に 著 し き'高溜 に 於 け る 漁 潤 〓 浴中
に 於 ける 脆 炭 傾 向 は〓 浴 の變 質 に 俵 る〓 基 量 とそ の 増 減
嘩
を共 に し両者 の間 に比綱 的 な 關係 を保 つ.
化 バ リウ ム 中に不 鋤
として硫 酸〓 を包 含輪
もの に 於ては ・800.浴 に 比 しそ め〓基 量 ,脱 炭 量,麺
の
難 作用 等 鰍 も顯 著 で ある .黒蝕は 新浴 に 於 て 著 し く酸
化 量 と親 炭 量 との間 には 直接 の關 係 は 認 め得な い、
(3)工
業厭
容量 の〓 鱒
に焔
實験 に 於 て 胴に
〓浴 の變質量 と鋼 材 の侵 蝕作 用 は一 致 せ る關 係 を 示 す .
第1,2號
(4)以
熔融 〓 に よる鋼材 の 酸化 脱炭 ご關す る研 究(第4報)
上 多 くの 實験 に よつ て 第2圖 に示 す 如 く鋼 材 の
本 研究 に 麹 し絡 始 御指 導 を賜づ だ河 上先 生 に繋 し謹 ん
で 感 謝 の 意 を表 す.
侵 蝕 と浴 の 生成 〓 基 との 爾作 用間 には 大軆 直線 的 な關 係
を確認 し得 た.
25
'
正昭 掬19年7超
12a受
理}