品質評価 その2 - kamakuranet.ne.jp

2014/11/20
HEDONIC PRICING MODEL
農業経済論 講義スライド その20
品質評価
HEDONIC PRICING MODEL
青山学院大学 経済学部 松本茂
HEDONIC PRICING MODEL
ヘドニック価格分析

消費者が品質を評価して農産物を購入している様なら、
品質の良い農産物は市場では高い評価を受けている
はずである。
 品質が価格にどの様に反映されているかを調べること
で、消費者の品質に対する評価をリカバーしようとする
試み

食品属性
消費者の問題(効用最大化)

食品はn種類の属性で特徴づけられるとする。
,⋯, ,⋯,
 例えば、 は色、
Waugh (1927) は農産物市場に行き、アスパアガスの
属性(太さなど)が価格をどの様に決定づけているかを
検証した。
 Lancaster (1966) は、消費者は単に財を消費すること
から満足を得るわけではなく、財に含まれる属性を消費
することから満足を得るという考えを述べた。
 Rosen (1974) は、このLancaster の考えをきちんと定
式化することに成功した。
 Rosen により定式化されたヘドニックモデルは様々な分
野で利用されるようになっているが、農産物の属性評価
にもしばしば利用されている。
属性:
,⋯, ,⋯,
農産物の価格:
,⋯, ,⋯,
 所得:



は長さなど

: 他財への支出

効用:

消費者の効用最大化問題
,⋯, ,⋯,
,
Max
,⋯, ,⋯, ,
Subject to
,⋯, ,⋯,
 所与の所得制約の下で属性他の財へ支出額を調整し、効
用水準を最大化をさせる。


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環境経済学1 松本茂
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1
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付け値関数
販売者の問題(利潤最大化)
金額
,⋯, ,⋯,
, ,
属性:
,⋯, ,⋯,
農産物の価格:
,⋯, ,⋯,
 農産物の販売量:
 販売費用:
,⋯, ,⋯, ,

∗

zi



消費者の食品属性 zi に対する評価を示すために付け値関数θを考える。
この関数は効用水準を一定に維持した状態で、食品属性の増加に対し消
費者が支払っても良いと考える金額をプロットしたものである。
食品属性の消費量が増加するに連れ、属性の単位あたりの便益(限界便
益)は低下するので付け値関数は上図の様な形状となる。
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
販売者の利潤最大化問題


Max
,⋯, ,⋯,
·
,⋯, ,⋯, ,
属性と販売量を調整することで利潤を最大化をさせる。
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環境経済学1 松本茂
提供関数
2
市場均衡
金額
,⋯, ,⋯,
, ,
金額
∗
p
2
1
1
zi



zi
販売者の食品属性 zi に対する評価を示すために提供関数φを考える。
この関数は販売者の利潤を一定に維持した状態で、食品属性の増加に
対し食品生産者が要求する金額をプロットしたものである。
食品属性の販売量が増加するに連れ、属性の単位あたりの提供費用 (限
界費用)は増加するので提供関数は上図の様な形状となる。
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環境経済学1 松本茂
α

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環境経済学1 松本茂
推計に際しての問題
例えば、 種類の属性から特徴づけられる食品のヘド
ニック価格関数を以下の式で推計できる。


消費者と販売者の間で全ての食品属性に対する評価が一致した場合に
取引が成立する。もし評価が異なる様なら、どちらかが割に合わないと感じ
て取引は成立しないはずである。
市場取引は次の様に示すことができる。
取引が成立した点は青丸や赤丸の様に示される。これらを結びつけた関
数P がヘドニック価格関数とよばれ、データを集めてこの関数を推計する
こととなる。
9
ヘドニック関数の推計



理論上、ヘドニック関数はどの様な形状にもなりえる。
価格がマイナスになることは無いので、しばしば左辺に
価格の対数値を取ったSemi-log関数が推計される。

価格と属性がより複雑な形をとれるように、Box-Cox変
換という手法を用いる場合もある。
⋯
ここで、 は 番目の食品の価格、 は 番目の食品の
属性を示す変数である。
 パラメータ の値を調べることで、属性が市場でどの様
に評価されているかを調べることができる。


α
⋯
1

1

α
1/
1
0
1
⋯
2
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HEDONIC ANALYSIS OF WINE
2
推計結果の解釈
金額
主な評価項目 (Oczkowski, 2001)
1.
気象条件
p

2
Ashenfelter (2008)
Bordeaux wine.
2.
1

3.



属性を単純に価格に回帰させただけではヘドニック価格関数(p)の形状を知
ることができることができるだけで、消費者の属性に対する評価を知ることは出
来ない。
上の例では、ヘドニック価格推計では緑の長さを評価することとなるが、これは
消費者の属性への支払い意思額の青の長さとは異なる。
青の長さを知るためには、同じ消費者が価格が変化した時に購入量をどの様
に変化させるかを知る必要がある。或いは、効用関数の形状を特定化する必
要がある。
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技術か自然条件か
環境経済学1 松本茂
4.
2.
生産者の評判
専門家の評価
Shamel and Anderson (2003)
Australian and New Zealand wine.
観察できる品質
Oczkowski (1994)
葡萄の種類,生産地域,ヴィンテージ,生産
規模
Australian wine.
zi
1.
Landon and Smith (1997)
Bordeaux wine.
Gergaud and Ginsburg (2008)
Bordeaux wine.
1
代理指標
3.
Organic Wine
Alessandro and Strom (2o13)
Piedmont region.
知覚的属性
Combris et al. (1997, 2000)
味覚、飲み心地、香り
Bordeaux and Burgundy wine.
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CAGE-FREE VS. BATTERY-CAGE EGGS
AGING OF WINE
COSTANIGRO, JILL J. MCCLUSKEY
RON C. MITTELHAMMER (J. AGRICULTURAL AND
RESOURCE ECONOMICS 2007)
 消費者は全ての食品を同等に評価するわけでは
なく、属性に関する評価も食品のクラスによってこ
となるかもしれない。
 筆者らは、価格帯毎にワインをクラス分けした後
に、AGINGの影響を調べている。
 表2,図1 参照
Left Picture from
http://www.humaneso
ciety.org/
Right picture from
http://articles.mercola
.com/
 MARCO
AND
JAE BONG CHANG, JAYSON L. LUSK, AND F. BAILEY NORWOOD
(J. AGRICULTURAL AND RESOURCE ECONOMICS 2007)
POS data を使い、Animal Welfare に配慮して飼育
された、有機農法で卵が高い値段で販売されているか
を調べた。
 Cage Free Premium 57%
 Organic Premium 85%
 図1、表5 参照

食品属性評価にヘドニック価格法を利用する
際の留意事項

オリジナルのヘドニック分析 (例: 住宅)
人々は財を一つしか購入しない。
財の価格は唯一である。
 同じ財は販売されていない。



商品分析

人々は製品を何度も繰り返し購入する。

同じ製品が異なった価格で販売されている。

販売個数は製品によって異なる。



所得の限界効用は?
どの価格を使えば良いのか?
沢山販売されている製品と余り販売されていない製品を、どう取り扱
えば良いのか?
3