XV 財務情報の信頼性と内部統制監査

ⅩⅤ 財務情報の信頼性と内部統制監査
• 学習のポイント
– 内部統制の意味
– 内部統制の評価と報告
– 内部統制監査の意味
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内部統制の意味
• 内部統制とは?
– 次の4つの目的を達成するために組織の業務に
組み込まれ,取締役から現場の従業員まで,す
べての構成員によって遂行されるプロセス
① 経営活動の有効性と効率性の確保
② 財務報告の信頼性の確保
③ 経営活動に関わる法規の遵守
④ 資産の保全
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内部統制と企業の目的
業務の有効性及び効率性
事業活動の目的の達成のため,業務
の有効性及び効率性を高めること
財務報告の信頼性
財務諸表及び財務諸表に重要な影響
を及ぼす可能性のある情報の信頼性
を確保すること
事業活動に関わる法令等
事業活動に関わる法令その他の規範
の遵守を促進すること
の遵守
資産の取得,使用及び処分が正当な
資産の保全
手続及び承認の下に行われるよう資
産の保全を図ること
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内部統制の構造
• 内部統制は次の6つの基本的要素から構成される
① 統制環境
② リスクの評価と対応
③ 統制活動
④ 情報と伝達
⑤ モニタリング(監視活動)
⑥ IT(情報技術)への対応
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内部統制の基本的要素
統制環境
組織の気風を決定,他の基本的要素の基礎
リスク(組織目標の達成阻害要因)の識別,分
リスクの評価と対応
析,評価,対応のプロセス
経営者の命令・指示が適切に実行されるこ
統制活動
とを確保するために定められる方針・手続
必要な情報の識別,把握,処理と組織内
情報と伝達
外,関係者相互間の正確な伝達の確保
内部統制が有効に機能していることを継続
モニタリング
的に評価するプロセス
業務の実施における組織内外のITへの適
ITへの対応
切な対応
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なぜ内部統制が必要か?
• 企業不正・不祥事の発生
→自己統制(Self-Control)の必要性
– ルール・手続・手順などの明確化
→誤 ・不正・違法等の予防・発見・是正
• グローバルな競争の激化
– 経営の非効率是正,効果と効率の改善
– リスク(阻害要因)の把握とコントロール
→保有,軽減,転嫁,回避の選択と対応
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内部統制の不備
• ルール・手続・手順の無視
–誤
,不正,違法行為等の発生
• 不正・不祥事の発生
– 対外的信用の低下,喪失
• 業務の有効性の低下,非効率化
– 経営目的の達成に障害
→組織の存続能力への影響
→監査による不備の発見と是正
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内部統制の例(購買取引)
・新規仕入先選定のための基準を設ける
・仕入先登録に当たって適切な権限者の承認を得る
・発注はすべて購入依頼部署の発行した購買依頼書に基づくこととする
・納期が経過しているにもかかわらず納品されていないものについては,原
因調査を行い適切な措置をとる
・検収は定められた検収基準などに基づいて行う
・納品書や入庫伝票などによって,所定の仕入計上基準に基づいて仕入伝票
を起票する
・仕入帳には仕入伝票に基づいて仕入計上日をもって記帳する
・仕入帳,仕入先元帳,総勘定元帳の照合は毎月行う
・請求書は購買部署の担当者が納品書,発注書控,入庫伝票,検収報告書と
照合する
・経理部の担当者は買掛金元帳と総勘定元帳の残高を毎月照合する
出典:三重野研一『1冊で実務に役立つ内部統制整備ハンドブック』(ソシム,2008年)8
内部統制の適用事例
自部門における内部統制上の不備や有効性に対する点検報告を奨励する。部
門からの不備報告は内部監査においても有効な自己点検結果としてリスク評
価で活用する。
法規制,技術革新等の外部要因,ビジネスプロセスの複雑性,不正リスクの
影響を受けやすい重要な勘定科目を特定し,リスク評価を行う。
ベンチマーク技法を活用して,盗難による在庫の物理的損失を評価する。設
定した損失率目標に基づき,商品発送と受取のプロセスで統制活動を追加す
る。
内部統制と財務報告を支援する詳細なプロセスを職務記述書,フローチャー
ト,データ・フロー図,業務手続書として文書化する。社内のITチーム,
会計専門家・監査人等へ提供し,プロセスオーナーの確認や品質チェック等
に活用する。
優先度の高いリスクに関して統制の整備・運用状況の全体レビューを実施
し,文書化する。リスクと基準となる統制の有効性を理解し,効果的なモニ
タリング方法を選択する。
出典:新日本有限責任監査法人編『改訂COSOフレームワークを活用した内部統制「改善」の実践マニュアル(同文舘出版,2014年)
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内部統制の有効性評価
Plan
∼PDCAサイクル
<計画>
・目標設定
・達成方法の決定
Do
Action
<実施>
・決定通りに実施
・正しく実施
<対策>
・計画・実績差異分析
・課題の明確化
Check
<測定・評価>
・目標が達成されたか
どうかを評価
三重野研一『1冊で実務に役立つ内部統制整備ハンドブック』(ソシム,2008年)を参照
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内部統制報告制度
制度導入の背景
• アメリカにおける大規模不正会計事件
– エンロン,ワールド・コム事件
→財務情報の信頼性の喪失
監査に対する信頼の失墜
– サーベンス・オクスレー(SOX)法の制定
① 監査の充実
② 財務情報の信頼性に関する経営者の宣誓
③ 財務報告に係る内部統制の有効性の評価と監査11
内部統制報告制度
• 日本における虚偽情報公表事件
– 有価証券報告書虚偽記載事件:西武鉄道
– 不正会計事件:カネボウ,ライブドア
など
→財務情報の信頼性の喪失
– 内部統制報告制度(金商法第24条の4の4)
• 財務計算書類等の適正性の確保
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内部統制基準
• 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」
– 内部統制の定義と基本的要素
– 内部統制の限界
① 判断の誤り,不注意,共謀による無機能化
② 想定外の環境変化,非定型的取引への非対応
③ 費用・便益の比較衡量による整備・運用の制約
④ 経営者による無視・無効化
–
経営者による内部統制の有効性の評価・報告
–
監査人による評価結果(内部統制報告書)の監査
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内部統制の評価と監査
•
経営者の責任
–
財務報告に対する責任に対する認識を高める
–
内部統制の有効性の自己評価と市場への報告
→内部統制報告書の作成・開示
•
監査人の責任
–
経営者による自己評価の信頼性の検証と意見表明
–
内部統制報告書の監査
→内部統制監査報告書
→財務報告の信頼性の確保
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次回予告
• ディスクロージャーの適時性と
四半期レビュー
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