9) 分⼦子間⼒力力と物質の状態 ⽬目標: ü ルイス式から分⼦子の⽴立立体構造が予測できる。 ü 分⼦子の⽴立立体構造から極性の有無が予測できる。 9-1. 分⼦子間⼒力力 原⼦子価殻が完全に詰まった原⼦子や分⼦子でも、互いに引⼒力力を及ぼすことができる。原⼦子直径の数倍程度度の距 離離まで引き合うし、押し付ければ反発する。これらの⼒力力は、共有結合のような化学結合の⼒力力に⽐比べれば格段 に弱いが、この弱い⼒力力によって気体から液体への凝縮や分⼦子性固体の性質を説明することができる。⽣生物学 的な巨⼤大分⼦子が構造組織をもつのも分⼦子間⼒力力に起因する。 (1) ファンデルワールス⼒力力 配向⼒力力(双極⼦子―双極⼦子):双極⼦子モーメントをもつ極性分⼦子間で働く⼒力力 + − + − 誘起⼒力力(双極⼦子―誘起双極⼦子):分⼦子が双極⼦子をもつと(=極性分⼦子)、この双極⼦子モーメントにより他の 分⼦子が分極を受け、誘起双極⼦子ができる。この誘起双極⼦子モーメントと双極⼦子モーメントとの相互作⽤用を誘 起⼒力力という。 induce + − + − + − 分散⼒力力 (London ⼒力力):電⼦子の運動が瞬間瞬間に電⼦子分布の偏りを⽣生じているので、双極⼦子モーメントが瞬 間的におこり、これが他の分⼦子に働いて誘起双極⼦子モーメントを誘起させ、これら⼆二分⼦子間に相互作⽤用が⽣生 まれる。(希ガス,アルカン)(電⼦子雲の歪みやすさ、すなわち分極率率率に関係する) 以上は共有結合に⽐比べると格段に弱いことに注意が必要である。 (2) ⽔水素結合 極性の強い XH 結合 (FH, OH, NH) と電気陰性度度の⼤大きい Y の間の相互作⽤用 (XH...Y) である (静電的な ⼒力力)。双極⼦子―双極⼦子相互作⽤用に属するが、分⼦子間の引⼒力力が特に⼤大きいので、⽔水素結合として区別する。 OH OH O H O NO 2 CH3 H 3C O H O NO 2 平成 26 年年度度化学(9) 2014/06/16-1 (3) 電荷移動⼒力力 分⼦子内の電⼦子の⼀一部が他の分⼦子へ⾮非局在化することにより⽣生ずる⼒力力。 9-2. 相平衡 (1) 相 物質の集まりを外界と区別して考察するとき、物質系または系という。系のなかで、どの部分をとっても 性質が⼀一様なものを均⼀一系といい、そうではないものを不不均⼀一系という。 系において、ほかの部分と明確な境界(=界⾯面)によって区別される均⼀一な部分を相という。 気体 → 気相 液体 → 液相 固体 → 固相 気体: 密度度が⼩小さく、圧縮されやすい。 流流動性を⽰示す。 拡散しやすい。 液体: 密度度は⼤大きく(固体とほぼ等しい)、圧縮されにくい。 流流動性を⽰示し、明確な界⾯面をもつ。 拡散は遅い。 固体: 密度度は⼤大きく、圧縮されにくい。 外圧により変形しにくい。 拡散は液体よりもさらに遅い。 (マクマリー ⼀一般化学(上)p208 東京化学同⼈人) (2) 蒸発 液体を閉じた容器に⼊入れて空間を残しておくと、⼤大きなエネルギーを得た分⼦子は液体の表⾯面から⾶飛び出す (蒸発)。 (マクマリー ⼀一般化学(上)p219 東京化学同⼈人) 平成 26 年年度度化学(9) 2014/06/16-2 蒸気の分⼦子の⼀一部は液体表⾯面に⾶飛んできて再度度液体に戻る(凝縮)。 (3) 蒸発熱 液体 1mol が蒸発するのに必要なエネルギーをモル蒸発熱あるいは蒸発熱といい、液体が気体に変化する ときのエンタルピーの増加に等しい。 ΔHvap = H(g) – H(l) 蒸発熱は液体中の引⼒力力の強さの⽬目安になる。 (Brady, General Chemistry 5 th ed., Wiley) (4) 液体の蒸気圧 はじめは蒸発速度度の⽅方が凝縮速度度よりも⼤大きいが、やがて蒸発速度度と凝縮速度度は等しくなり、⾒見見かけ上変 化は停⽌止する。 (ブラディ ⼀一般化学 東京化学同⼈人) ⼀一定の温度度で液体がその蒸気と平衡にあるとき、蒸気圧の呈する圧⼒力力を液体の飽和蒸気圧または(平衡) 蒸気圧という。 平成 26 年年度度化学(9) 2014/06/16-3 液体の蒸気圧は、温度度の上昇とともに増⼤大する。⼀一定圧⼒力力の下で液体を熱すると、その蒸気圧が外圧に等 しくなる温度度(沸点)で液体の内部に気泡ができて激しく蒸気を発⽣生する(沸騰)。液体が全部蒸気になるま で温度度は⼀一定に保たれる。沸点は外圧により変化し、外圧が⾼高くなるほど⾼高くなる。特に 1atm における沸 点を標準沸点という。 th (Brady, General Chemistry 5 ed., Wiley) 沸点は,液体の分⼦子間⼒力力がどれほど強いかということを⾒見見積もるよい⽬目安となる。 th (Brady, General Chemistry 5 ed., Wiley) (5) 固体の融解(液体の凝固) 固体が液体に変化する現象を融解、その逆を凝固という。 ⼀一定の圧⼒力力下で固体と液体が平衡にある温度度は⼀一定であり、固体の融点または液体の凝固点とよばれる。 (単に融点という際は 1atm における融点を指すことが多い。) 固体が融解するとき吸収される熱を融解熱という。 融解熱は液体と固体における分⼦子間⼒力力の差の⽬目安になるが、蒸発熱に⽐比べてはるかに⼩小さい。 (ポテンシャ ルエネルギーの変化が⼩小さい) 平成 26 年年度度化学(9) 2014/06/16-4 (6) 固体の転移 同じ物質で結晶構造を異異にするものがあるとき、それらは多形であるという。 (例例えば、硫硫⻩黄には斜⽅方晶系 に属する斜⽅方硫硫⻩黄と単斜晶系に属する単斜硫硫⻩黄がある。)ある構造から異異なる構造へ変化する現象を固体の転 移、⼀一定の圧⼒力力下で⼆二つの固相が平衡にある温度度を転移点という。 (7) ⼀一成分系の状態図 2 つ以上の相の間の平衡関係を表す図を状態図または相図という。⼀一成分(純物質)の相平衡は、温度度と 圧⼒力力を座標軸にとった平⾯面図により表される。 ・ G は気相、L は液相、S は固相のみ存在 ・ OA は液相と気相が共存(平衡状態) ・ OB は固相と気相が共存 ・ OC は固相と液相が共存 ・ O 点は気相、液相、固相 3 つの相が共存する点 で、温度度、圧⼒力力は⼀一定(三重点)。 (⽔水の場合、273.16K, 4.58mmHg) ・ 圧⼒力力 1atm の所で⽔水平線を引き、曲線 OC, OA と 交わる点をそれぞれ D, E とする。D 点は 1atm にお ける氷の融点、E 点は 1atm における⽔水の沸点である。 練習問題 (1) 分⼦子間⼒力力に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。 a 極性分⼦子、無極性分⼦子ともに、固有の永久双極⼦子モーメントを有する。 b 無極性分⼦子間に働く分散⼒力力は、分⼦子内電⼦子雲のゆらぎにより⽣生じる。 c ファンデルワールス⼒力力のポテンシャルエネルギーは、分⼦子間距離離 r に反⽐比例例する。 d イオン間の静電ポテンシャルエネルギーは、イオン間距離離 r に反⽐比例例する。 1(a、 b) 2(a、 c) 3(a、 d) 4(b、 c) 5(b、 d) 6(c、 d) (2) ファンデルワールス⼒力力の⼀一つである分散⼒力力について説明せよ。 平成 26 年年度度化学(9) 2014/06/16-5
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