不動産のお役立ち情報

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LED 照明導入の基礎知識
~第 4 回
2014 年 11 月 25 日
導入のメリット~
エネルギーコストの上昇や環境配慮から省エネに関心が高まっている中、普及が進む LED 照明だが、
選び方や使い方を間違えて「こんなはずではなかった」とならないよう、特徴や用語など、LED の導入
の際に、参考にしていただきたいポイントをご紹介する本シリーズ。最終回となる本稿では、実際に導
入を決めた「A 物販店」の検討内容をご紹介する。初期投資額が大きい LED 導入だが、どのようなメリ
ットが得られるのか、具体的に見ていこう。
工事費の回収は 2 年、以降は年 140 万円の電気代削減の見込み
A 物販店は、店舗面積が 800 ㎡あり、営業時間は 10:00~22:00 で、開店準備や閉店後作業、清掃時
間などを加えると 1 日 13 時間以上も照明を使用している。150 台の蛍光灯器具に FLR110W と同 40W のラ
ンプ(3 波長)が 240 本使われ、床面照度は約 1,300 lx である。
数年前に比べ電気代が 3 割近く上昇し、ランプの交換代も毎年 15 万円前後かかっている。また、数
年前より安定器が劣化で故障しはじめ、その交換費用も築 14 年を迎えた昨年は 30 万円かかり、管理会
社からは、来年度 200 万円程度の安定器一斉交換予算を検討してほしいとの要請があった。
解決策を XB 社に相談したところ、器具は既存を利用し、ランプと電源装置を新設する LED 化工事を
勧められた。また、Xymax 社の不動産のお役立ち情報「LED 照明導入の基礎知識」第 1 回から 3 回(第 1
回「色温度」と「演色性」*1、第 2 回「照度」と「寿命」*2、第 3 回「器具交換」と「ランプ交換」*3)
を渡され、LED 化のチェックポイントの説明を受けた。LED のカタログに出てくる「色温度」や「演色
性」などの用語の意味を理解し、光の広がり方が従来の蛍光灯と異なり、ランプの選定でお客様のイメ
ージが変わり、商品の購買意欲に直結することが認識できた。
XB 社は、ランプから出る光の量(ルーメン)や床面の照度(ルクス)
、演色性、ランプの配光角など、
店側の要望をヒアリングしたうえで、いくつかの案をセレクトし、照度分布図などを作成するとともに、
サンプルランプを店に取り付け、実際の見え方も試してみた。
最終的に、床面の初期照度が 1,000 lx 程度(時間の経過とともに劣化し始め、5 年後 900 lx 程度)、
色温度は 5,000K、Ra85 以上のランプを選定し、費用の見積りと収支のシミュレーションをしてみた。
物販店舗 (築 15 年、店舗面積 約 800 ㎡、営業時間:10:00~22:00 )
既存照明設備
FLR110W+40W 240 本(照明器具 150 台)
LED化
工事費:約 288 万円
工事費は、ランプ 240 本と電源装置 150 台、他諸経費を入れて 288 万円の見積りだった。年間 210 万
円もかかっていた電気代が、LED 改修後は 67 万円となり、削減額は 143 万円になる。初期費用 288 万円
を、わずか 2 年(288 万円÷143 万円)で回収できる計算だ。2.5 年に 1 回は交換が必要なランプ代金(46
※当リリース記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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万円)がなくなることを考慮すると、回収は 1.8 年に縮まる。また、蛍光灯のままだと必要な安定器交
換の費用約 200 万円を相殺すると、1 年を切ってしまう。初期投資回収後は年間 160 万円ものコスト削
減が得られ、電気代単価が今後上昇してくることを考え合わせると、そのメリットは極めて大きいこと
が分かった。
ここ数年は LED の省エネ性能が急上昇し、価格は逆に低下してきたが、ここにきてほぼ安定してきて
おり、A 物販店ではちょうど良いタイミングだと考え、XB 社に工事を発注することに決めた。
A 物販店 LED 導入検討シート
≪工事概要≫
工事内容
既設照明器具
LED ランプ+電源装置交換
FLR110W 2 灯用器具
75
台
FLR110W 1 灯用器具
60
台
FLR40W 2 灯用器具
15
台
交換対象
110W 型 LED
210
本
ランプ本数
40W 型 LED
30
本
≪費用対効果一覧表≫
導入費用(税別)
年間削減金額(千円/年)
(千円/年)
基本料金
従量料金
2,880
▲272
▲1,149
ランプ交換費
合計
投資回収年
▲1,421
2.0 年
▲1,599
1.8 年
(千円/年)
▲178
≪コストシュミレーション≫
既存蛍光灯
(ランプ交換含む)
5 年間のコスト累計差額
515 万円
LED
1.8 年で回収
初期費用
288 万円
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■LED の発光効率の急上昇が背景に
LED を導入してどれだけ省エネになるのかを見る
には、ランプや器具の「発光効率」で比較する。発
【図表 1】発光効率(ランプ)の推移
光効率は一定の電力でどれだけの明るさが出るかを
表す指標であり、ルーメン・パー・ワット(lm/W)
で表す。今回 A 物販店で導入した LED ランプの効率
※
(初期のランプ光束ベース)は 145 lm/W で、1 割劣
化を見込んでも 129 lm/W と極めて高効率だ。
【図表 1】のように、数年前まで LED は、FLR タイ
プの蛍光灯よりは省エネになるが、高効率の Hf 蛍光
灯と同等かそれ以下という製品が中心だった。しか
し、2012 年頃から急激な勢いで発光効率は向上
し、Hf 蛍光灯を上回る製品が揃い始め、価格も
(出所)遠藤照明、三菱電機商品カタログより
㈱ザイマックスビルマネジメント作成
※FLR、Hf は、オフィスなどで一般的に用いられているタイプのランプ
Hf は 1990 年頃から普及し始め、高効率でチラツキが少ないなどのメ
リットがある。
下がってきた。
A 物販店の大幅削減は、照度を少し抑えたこともあるが、劣化を考慮した蛍光灯の発光効率 57 lm/W
(初期効率に対し 70%劣化)が、LED 交換によって 129lm/W となり大幅に向上した結果である。最近の
直管形 LED ランプの主力は 130~150 lm/W で、Hf 蛍光灯を大幅に上回る効率となっている。
■空調を配慮すると更なるメリット
一般的に物販店舗でかかる電気の使用量は【図
【図表 2】LED 化による電力量の削減イメージ
表 2】のような割合となっている。LED を導入す
る前の建物全体の電力量を 100 とすると、照明は
100
80
60
28
40
20
32
24
40
0
LED化「前」
40%を占める。LED 導入で照明部分が半減すると、
20%以上 down
32
その他
蛍光灯の熱(蛍光灯で消費される電気は光と熱を
空調
発生させる)も半減する。
照明
結果として冷房の負荷も減少し、年間の電力使
20
用量は 20%以上低減する。前掲のコスト削減額
LED化「後」
は照明のみの試算だったが、この空調分を加える
(出所)㈱ザイマックスビルマネジメント作成
と更なるコスト削減メリットが期待できる。
優遇される税制と導入補助金
LED を導入することによるメリットは、まだまだある。それは国や自治体からの税金の優遇や、導入
の補助金などだ。
■税金
蛍光灯を直管形 LED に取り換える場合、ランプと電源装置の交換であれば金額の大小にかかわらず、
損金(経費)となる。節電効果や 10 年間交換不要など機能の向上が見られるので、資産計上しなけれ
ばならないと考える人もいるだろうが、建物付属設備そのものの価値が高まったわけではないので、経
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費として処理することが相当との解釈が、国税庁によって示されている。
(国税庁 HP より http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/12.htm)
器具交換による LED 化など資産計上する場合は、生産性向上設備投資促進税制や東京都の中小企業向
け省エネ促進税制などの優遇措置があるので、上手に利用したい。対象器具などの指定があるので適応
要件を確認しよう。税理士に相談してみるといいだろう。
●生産性向上設備投資促進税制:建物全体の省エネ性能に大きく影響する LED 照明や断熱窓などの
先端的な省エネ設備についての特例措置。即時償却または税額控除を可能とする。青色申告してい
る法人、個人が対象。
(対象期間:平成 28 年 3 月末まで)
●中小企業向け省エネ促進税制(東京都):中小企業者の設備取得を税制面から支援したもの。法
人事業税・個人事業税の減免措置である。対象は LED 以外にも省エネに貢献する設備(空調・ボイ
ラー・太陽光発電等)になり、取得金額(2000 万円上限)の 1/2 が税額から減免される。(対象期
間(法人)
:平成 27 年 3 月末までに終了の事業年度)
■補助金
経産省や自治体など、毎年、多くの補助金が公募されている。自治体の HP 等でスケジュールなどの
情報を確認しよう。なお、補助金は申請する時期が決まっている。申請を待たずに交換した方が、補助
金より電気代の削減額が上回る場合があるので、申請を含めたコストシュミレーションを実施して欲し
い。
■その他普及促進として
テナントビルの専用部分の LED 化を考えた場合、いわゆるオーナー・テナント問題(照明器具の工事
費はオーナー負担で、電気代削減メリットはテナント)が発生し、LED 化が進みにくい。解決方法とし
て、削減できた電気代の一部をオーナーに還元して、LED 化メリットをシェアするグリーンリースや、
工事費の一部をテナントが負担する方法などの事例も見られるようになってきた。
また、LED のリースやレンタルの提案をする業者もいるので、状況にあわせて検討してみたい。
経済メリットも大きく、社会貢献につながる LED
特徴や用語やメリットなど、LED の導入の際に、参考にしていただきたいポイントを 4 回にわたって
ご紹介してきた本シリーズ。注意点は多いものの、多くのメリットが得られることをご理解いただけれ
ば幸いだ。
また近年は、企業の社会的責任(CSR)が求められ、特に環境への配慮は欠かせない。地球温暖化防
止につながる二酸化炭素排出量の削減は、全ての企業に求められる取り組みだろう。建物で消費される
エネルギーのうち、照明の占める割合は大きく、LED 化による消費量削減は極めて効果的だ。
今回取り上げた A 物販店の場合でも、年間に削減できる CO2 の排出量は 39,867kg(温対法に基づくデ
フォルト値により計算:0.555kg-Co2/kWh)になる。1kg あたりの体積は 20℃の時 546 リットルなので、
これを 25m プール(約 400 ㎥)に換算すると、54 個分もの排出量が削減できたことになる。またこの量
を森林が吸収するには、8ha(1ha=10,000 ㎡)もの面積が必要だ(20 年生天然林広葉樹 1.4t-C/ha・年
※当リリース記載の内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではありません。
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独立行政法人森林総合研究所)
。
価格の安定に加え性能も向上し、投資効果が大きくなった今、温暖化防止対策の一環として社会貢献
もできる LED の導入の検討を始めてはいかがだろうか。
以上
*1:LED 照明導入の基礎知識
~第 1 回
色温度と演色性~
http://www.xymax.co.jp/knowhow/pdf/140910.pdf
*2:LED 照明導入の基礎知識
~第 2 回
照度と寿命~
http://www.xymax.co.jp/knowhow/pdf/141001.pdf
*3:LED 照明導入の基礎知識
~第 3 回
器具交換とランプ交換~
http://www.xymax.co.jp/knowhow/pdf/141015.pdf
本件に関するお問い合わせ先
㈱ザイマックス不動産総合研究所
TEL:03-3596-1477
[email protected]
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