帯筋寄与分 - 日本大学理工学部

平成 26 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集
0
J-15
PC,
PC,PC 部材のトラス機構の構成条件に関する実験的研究
その 3 帯筋寄与分と既存推定式の計算精度
Experimental Study on Truss Mechanism in Post-tensioned Precast Prestressed Concrete Members
Part3 Calculation accuracy of the estimation formula and strength of the stirrup
○山﨑 祐輝1, 福井 剛 2, 小松崎真彦 3 浜原正行 4
YUHKI Yamazaki1, FUKUI Tsuyoshi2,KOMATSUZAKI Masahiko3, HAMAHARA Masayuki4
Abstract: In this paper, comparisons were made between the test results and calculated results obtained from modified AIJ Standard
of PC and New RC Code, with respect to maximum shear due to truss mechanism and ultimate shear strength. Through the
comparison the followings were found. Using the New RC Code, calculated maximum shear due to truss mechanism overestimated
the test results and agreed well with the non-prestressed concrete test columns.
1.はじめに
はじめに
2)Figure2 より,NewRC 式は PCaPC 試験体の帯筋寄与
本報告では,前方(その 2)に引き続き,S9,S10 試験体
分を過大評価していることが分かる.これに対し
と PCaPC 試験体の帯筋寄与分の理論値の検討,平均付
て,S9,S10 試験体の帯筋寄与分を比較的精度よく評価し
着応力の比較,既存推定式の計算精度について考察
ている.この二体の試験体は PC 鋼材が帯筋の内側に配置
し,RC 部材とPCaPC 部材の帯筋寄与分の差異に影響を
されている.したがって,軸方向鋼材が帯筋より内側にあ
及ぼす要因を明らかにする.
っても,帯筋寄与分は RC 部材としての評価が可能であ
る.
100
∆Qw 理論値(kN)
2.帯筋
帯筋寄与分の理論値と実験値の比較
帯筋寄与分の理論値と実験値の比較
本項では,S1,S2,S3,S6試験体(PCaPC)とS9,S10試験
80
体を用い,修正PC規準式とNewRC式から求まる帯筋の
寄与分の理論値と実験値の比較検討を行う.
60
帯筋の寄与分の実験値は(1)
(1)式
(1)式で与えられる.帯筋の
寄与分の実験値に対応させるためには修正PC規準
40
PCaPC柱(緊張力レベル35%)
PCaPC 柱(緊張力レベル 35%)
RC 柱
式,NewRC式から帯筋の項を抜き出せばいい.これは
RC柱
(2)式
(3)式
(2)式,(3)
(3)式のように表される.
20
∆Qw = Qu ( p wo + ∆p w ) − Qu ( p wo ) --------------------------- (1)
∆Qw1 = (( pwo + ∆pw ) − pwo ) ⋅ σ wy ⋅ b ⋅ D( j p1 − tanθ ) --- (2)
∆Qw2 = (( pwo + ∆pw ) − pwo ) ⋅ σ wy ⋅ b ⋅ D
(
)
⋅ ( 2 ⋅ j p1 ⋅ cot φ − 1 + cot 2 θ tan θ ) / 2
∆Qw 実験値(kN)
0
0
20
40
60
80
100
Figure1 PC Code
--------- (3)
200
∆pw=帯筋比の増分
∆Qw 理論値(kN)
180
Figure1,2は縦軸に(2)
(2)式
(3)
(2)式,(3
(3)式による帯筋寄与分の理
160
論値,横軸に(1)
(1)式
(1)式による帯筋寄与分の実験値を取り,
140
この平面上に各試験体の結果を示したものである.こ
120
れらの図より以下のことが指摘できる.
100
1)Figure1より,修正PC規準式はPCaPC試験体(図中
80
)の帯筋寄与分を比較的精度よく評価していること
60
PCaPC柱(緊張力レベル35%)
PCaPC 柱(緊張力レベル 35%)
RC柱
RC 柱
40
が分かる.一方,S9,S10試験体(図中 )の帯筋寄与分は
20
実験値が計算値の2倍以上となっており,修正PC規準
∆Qw 実験値(kN)
0
式はRC試験体の帯筋寄与分を明らかに過小評価して
0
いることが分かる.
20
40
60
80
100
120
140
160
180
Figure2 New RC Code
1:日本大学 2:ピーエス三菱 3:国土交通省関東地方整備局 4:日本大学
597
200
平成 26 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集
4) 軸力比による比較(図中▲,△
△,○
○, )では,有意
3.緊張力レベルが平均付着応力に及ぼす影響
緊張力レベルが平均付着応力に及ぼす影響
τbを,横軸に緊張力レ
Figure3は,縦軸に平均付着応力¯
な差は認められない.このことから,PCaPC部材のせん
ベルPe/Tpyを取ったものである.なお,平均付着応力の比
断耐力に強く影響を与えるのは軸力よりもプレストレ
較にはS1,S2,S4試験体(PCaPC)とS9,S10試験体を用い
スであることが指摘できる.
た.この図から緊張力レベルがゼロから17.5%になると
1.4
平均付着応力は急激に減少していき,17.5%から35%に
1.3
かけては減少量が緩やかになることが指摘できる.
Pe/Tpy
N/bDFc
-1/15
-1/25
0
1/6
Qu/Qsu1
1.2
τ¯b(N/mm2)
4.5
0%
17.5%
35%
○
■
●
▲
1.1
4
1
pw=0.4%
pw=0.4%
3.5
pw=0.6%
pw=0.6%
0.9
3
pw(%)
0.8
2.5
0.0
0.2
0.4
2
1.4
5
10
15
20
25
30
1.0
Pe/Tpy
N/bDFc
-1/15
-1/25
0
1/6
Qu/Qsu2
1
0
0.8
1.2
1.4
Figure4 Qu/Qsu1 vs. pw
Pe/Tpy(%)
1.5
0.6
35
1.3
Figure3 average bond stress vs. prestressing force
1.2
4.修正
修正 PC 規準式の計算精度
1.1
Figure4は縦軸に実験値/修正PC規準式による計算
0%
17.5%
35%
○
■
●
▲
1
値,横軸に帯筋比pwを取り,ここに各試験体の結果を示
したものである.この図より以下のことが指摘できる.
0.9
1) PCaPC試験体の計算精度は,全般的に高く,帯筋比,
pw(%)
0.8
0.0
プレストレスレベルに依存せず安定している.このこ
とから,修正PC規準式は,PCaPC柱のせん断耐力を精度
0.2
6.まとめ
まとめ
よく評価することが分かる.
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
Figure5 Qu/Qsu2 vs. pw
1) 文献1)提案条件によるPC 規準式はPCaPC 試験体の
帯筋寄与分を比較的精度よく評価するが,RC 試験体のそ
2) RC試験体(図中■)については,帯筋比の増加に従
い実験値を小さめに評価している.
れを過小評価していた.
2) NewRC 式は,軸方向鋼材が帯筋の内側に配置された
5.NewRC 式の計算精度
S9,S10 試験体の帯筋寄与分を比較的精度よく評価してお
り,軸方向鋼材の位置による帯筋寄与分の影響は見られ
Figure5は縦軸に実験値/NewRC式による計算値,横
軸に帯筋比pwを取り,この平面上に各試験体の結果を
なかった.
3) 平均付着応力は,緊張力レベルの上昇に従い減少し
示したものである.この図より以下のことが指摘でき
る.
た.
1) 帯筋比を実験要因としたPCaPC柱試験体(図中
4) NewRC 式は緊張力レベル 1/2 の試験体を比較的精度
▲)は,帯筋比の増加に従い実験値/計算値が1.25から
よく評価しており,RCとPCaPCの付着伝達機構の違いに
0.85に減少している.
よる帯筋寄与分への影響は見られなかった. RC と PCaPC
2) pw=0.6%の試験体を緊張力レベル別に比較すると,
緊張力レベル35%で1.137(図中▲),17.5%で1.040(図中
の帯筋寄与分の差には PC 鋼材の張力が影響していると
考えられる.
●),0%で0.976(図中■)となっており,緊張力レベルが
以上の結果から,帯筋寄与分に大きく影響を与えるの
低くなるに従って計算精度が上昇している.
は,プレストレス導入による張力であると考えられる.
参考文献】
【参考文献
】
1) 内山雄太ほか 異形 PC 鋼棒を用いた PCaPC 柱の力
学的挙動に関する実験的研究 その1~その3 日本建築
学会学術講演会 2013
2) 建設省総合技術開発プロジェクト 鉄筋コンクリート造建物
の 超 軽 量 ・ 超 高 層 化 技 術 の 開 発 , 線 材 WG 報 告
書,V6-9,1993,5
3) 緊張力レベル17.5%の試験体は,他のPCaPC試験
体同様,PC鋼材をグラウト注入されたシース管内に配
置しているが,その計算精度は緊張力レベル35%の試
験体より良好である.このことから,RCとPCの帯筋寄
与分の差異にグラウトとシースは影響しないと考えら
れる.
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