第 VI 章 ワークショップの開催とプロシーディングスの編纂 本調査事業では、様々な専門的分野について検討してきた。また、その中で新しい 知見や技術を蓄積してきた。こうした学術的知見や技術について、現地において広く 意見を聞くため、タマレ市近郊の開発研究大学(UDS)の国際会議場において、2013 年の 10 月 15 日から10 月 16 日の二日間にかけて、“Improvement of Soil Fertility with Use of Indigenous Resources in Rice Systems in Ghana”と題してワークショッ プを開催した。 ワークショップ初日には、学術的な討論がなされ、二日目には、参加者が UDS 内試 験圃場および農家圃場の視察に訪れた。本ワークショップには、日本及びガーナから 33 名が参加した。参加者は、ガーナから食料農業省(MoFA)、UDS、科学産業評議会 土壌研究所(CSIR-SRI)の担当者や学生が、日本からはJIRCAS の担当研究者に加え、 農林水産省(MAFF)、農研機構(NARO)、国際協力機構(JICA)から各担当者が参加 した。さらに、現地の TV クルーや新聞記者による取材も実施された。 ワークショップでは、1) ギニアサバンナ帯及び赤道森林帯における土壌肥沃度環 境の現状、2) 当該地域における有機資材の種類、施肥法、およびその肥効、3) リン 鉱石直接施用効果と残効、4) リン鉱石の可溶化技術、5) リン鉱石と有機物の複合施 用法、6)イネ収量改善のための少量化肥を用いた初期生育改善技術、を主題とした 発表がなされ、それぞれについて闊達な議論がなされた。 ガーナ北部における有用有機資源の適用可能性について、社会経済学的視点か らも報告がなされ、当該地域における在来有機資源の利用可能性を示した。 識者からは、本事業が、ガーナ稲作における安定的自給自足を目指す上で、時宜 を得ている。また、稲わら、籾殻、鶏糞、オガクズ等、のような地域に適した有機資材の 利用方法については、現地農家圃場の肥沃度向上に寄与出来る、とのコメントがなさ れた。さらに、本事業成果を基にした技術マニュアルについて、暫定版を回覧した結 果、現地農家にとって有用かつその利用が容易であるように、との要望がなされた。 また、JICA 担当者からは、本事業で得られた結果は、JICA の現地プロジェクトに導 入できる可能性があるとの意見が得られた。 二日目には、タマレ市近郊で実施している技術の実証ならびに展示圃場(Sanga 村、 Ziong 村)ならびに、UDS の試験圃場(Nyankpala 村)への視察が行なわれた。なお、 展示圃場の一つであるSanga 村は、JICA 天水稲作プロの試験サイトでもあり、研究協 働の一環として試験が実施されてきた。各圃場には技術の中身と試験のあらましを記 した看板が設けられ、また、試験や展示活動を一緒に進めてきた UDS の学生や実際 の農家による説明も行われた。 47 写真 VI-1 ワークショップ参加者の集合写真 (UDS 国際会議場にて、一日目) ワークショップ二日目(現地圃場視察) 写真 VI-2 現地農家圃場の様子(Ziong) 写真 VI-3 現地農家圃場の様子(Sanga) 48 写真 VI-4 UDS 内試験圃場の様子 写真 VI-5 ワークショップ参加者による集合写真 (試験圃場視察時、二日目) ワークショップのプロシーディングスの編纂 ワークショップでは講演要旨集を作成し、参加者に配布した。この要旨集には、ワ ークショップのプログラムの他、各講演者による 2 頁の要旨が掲載されている。各講演 者の要旨には、本事業における約 5 年間の成果が詳述されている。しかしながら、各 2 49 頁という制限下では、事業内で積み重ねられた知見や得られたガーナ稲作における 土壌肥沃度改善技術の詳細を述べるのが困難である。そこで現在、各題目 4 頁程度 の短報集を作成し、本ワークショップのプロシーディングとして編纂している。 この短報集では、配布済みの要旨集に比べて、より具体的な情報及び知見が示 される予定である。なお、当該短報集は紙媒体だけでなく、PDF 等の電子媒体でも公 表出来ると考えており、より多くの人に配布出来るものと考えている。 写真 VI-6 ワークショップで配布された要旨 50
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