UDやまぐち発 ~新学期からすぐできる!!『考える音読』の授業づくり

UDやまぐち発 ~新学期からすぐできる!!『考える音読』の授業づくり~
鬼松 康弘@山口県周南市立岐山小学校
「考える音読」の会では、「全員が楽しく分かる、できる」ということをコンセプトとして、日々の授業に
使えるアイデアづくりに励んでいます。本稿では、「考える音読」の代名詞といっても過言ではない、「ぼ
く読み」について紹介したいと思います。「ぼく読み」とは、登場人物を「ぼく」や「わたし」に置き換える
音読です。「ぼく読み」するだけでも、国語の授業がきっと変わります!!ぜひとも試してみてださい。
①
場面の様子イメージしたり、人物の心情を想像したりする~文学「ごんぎつね」(光村図書 4 年)~
ご
んは、二人の話を聞こうと思って、ついていきました。
本 文
兵十のかげぼうしをふみふみ行きました。
ぼ
くは、二人の話を聞こうと思って、ついていきました。
しかけ
兵十のかげぼうしをふみふみ行きました。
ご んをぼ くに変えて音読するだけで、子どもたちから「ばれちゃうよ」「あぶないなぁ」とつぶや
きが出てきます。子どもたちが物語の中に入り込み、その様子をイメージしているからです。さらになぜ
それほどまでに兵十に近づいたのか考えるようになります。このように、「ぼく読み」をすることにより、
場面の様子をイメージしたり、登場人物の心情を想像したりすることができるのです。
②
視点人物を見分ける ~文学「たぬきの糸車」
(光村図書 1 年)~
「ぼく読み」は、ただ単にイメージを膨らませるだけではありません。子どもたちに着目させたい部分
を見える化して論理的に読み解く際の手立てにもなります。
「たぬきの糸車」を例に考えてみます。物語は特定の人物の目と心から語られていることが多く、これ
を「視点人物」と言います。題名が「たぬきの糸車」なので、「たぬきが視点人物」と考える子どももいる
ことでしょう。そこで「たぬき」を「ぼく」に置き換えて音読してみます。
おかみさんが
本 文
いつもの
こわごわ
いって
たぬきが、 わなに
おかみさんが
こわごわ
いつもの
くが、 わなに
みると、
かかって
いって
いました。
みると、
しかけ
「いつものぼ
く(笑)が わなに
ぼ
かかって
いました。
かかっていました???」思わず笑いがおきます。次に、おかみさん
をわたし」にして音読すると「これならいいね」「この作品はおかみさんの目から(目を通して)書かれて
いるんだね」と納得して読むことができます。
このように「考える音読」を用いると、全員で楽しみながら論理を見える化していくことができます。
③
説明内容を主体的に読む ~説明文「どうぶつの赤ちゃん」(光村図書1年)~
説明文でも「ぼく読み」を使うと、読むことが苦手な子どもにもイメージを膨らませ楽しく読むことが
できるようになります。
本 文
あライオンの赤ちゃん は 生まれた時は、子ねこぐらいの 大きさです。
しかけ
あぼ
くあ
は 生まれた時は、子ねこぐらいの 大きさです。
これまでに何度も音読をしていても、ライオンの赤ちゃんを あぼ く
に変えて読むと、子どもたち
から、「小さ~い」という声や笑いが起こります。これは、文学と同様に子どもたちがこの説明文の世界に
入り込み、その時の様子をイメージして読んでいるからです。
④
説明文の視点に気付く ~説明文「イルカのねむりかた」(光村図書3年)~
本 文
イ ル カたちは いつも およいでいて、
ほとんど じっとしていることは ありませんでした。
しかけ
ぼ
く たちは いつも およいでいて、
ほとんど じっとしていることは ありませんでした。
「これではおかしい」と子どもたちが言います。なぜならこの説明文は、筆者の視点から書かれている
しかけ
あぼ
くあ は 生まれた時は、子ねこぐらい
からです。そこで、次に「イルカ」を「あなた」にして音読すると、「これならいい!!」「この作品は筆者
の目から書かれているんだね」と納得して読むことができます。
の 大きさです。
⑤
筆者の意図を読む
本
「ぼくは
~説明文「すがたをかえる大豆」(光村図書3年)~
文
大
豆は
ダイズという植物の たねです。
しかけ
ぼ
くは
ぼ くという植物の たねです。
ぼく?」思わず笑いがおきます。そこで、「これではダメなのか?」と切り返すと、子どもた
ちはなぜおかしいのか理由を説明したくなります。ちなみに、おかしいのは筆者が漢字の大豆(種)とカタ
カナのダイズ(全体)を書き分けているからです。子どもたちに話し合わせたあとに、もう一度音読をして
確認をしていきます。
私自身も教材研究の際に一度「ぼく読み」をしてみることにしています。そうすることで、イメージを
ふくらませたり、論理に気づいたりすることができるからです。ぜひとも試してみてください。
「考える音読」には、ほかにもたくさんのアイデアがあります。
詳しくは、「考える音読」の会
(授業のユニバーサルデザイン研究会・山口支部)公式HP
http://www.geocities.jp/kingof_nabe をご覧ください。