渡邉修論ポスター

400mHの競技発達の段階の違いによるレースパターン
1)
渡邉 諒
1)筑波大学大学院 人間総合科学研究科
緒 言
ユース・ジュニアでは世界トップレベルにある男子400mH走の選手が,シニアではあまり活躍できていない.
日本トップ・世界トップレベルの400mH選手の
レース分析は数多くされている
トップ選手の現象は明らかだが,高校生は不明
いかに,トップレベルの400mH選手になるのかが最も重要
高校生の400mH走のレースパターンを明らかにする
日本トップ・世界トップと比較することでトレーニング法を再考する
目的
日本男子400mH選手の発達段階の違いを明らかにすることで,高校生トップレベルの選手が,
シニア期で記録を向上させるために有用な資料を提示すること.
方 法
分析対象者
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2013年の競技会における男子400mH走に出場した
各世代の日本一流競技者53名(高校生,大学生,社会人).
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1997ー2011年の世界レベルの競技会における
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男子400mH走に出場し48秒台までを記録した19名. 計72名
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算出項目
競技会での撮影設定とデータ処理
!  区間データ(タイム,歩数,平均疾走速度,相対疾走速度
相対疾走速度=[400mH平均疾走速度/区間平均疾走速度*]100)
! 疾走速度変化率([1-(後の区間速度/前の区間速度)]*100)
!  デジタルビデオカメラ2台を用いて撮影 (撮影スピード:毎秒60コマ)
!  区間タイムの算出⇒ビデオタイマーを用いて区間のコマ数をカウント 統計処理
各群間の比較:一元配置分散分析,有意水準は5%未満
結 果・考 察
100%
【疾走速度の変化】
10.0 8.5 8.0 7.5 110 世界トップ
社会人
大学生
高校生
105 100 95 7.0 90 6.5 85 T.K.18歳 50.62 15歩
46% 71% 78%
T.K.22歳①48.90 13歩
9.0
T.K.22歳②48.41 13歩
13歩
50%
14歩
15歩
8.5
25%
46%
8.0
0%
7.5
7.0
群間の変化
高校生:疾走速度および相対的速度が他の群に比べるとレース前半で有意に遅く,
より後半型のレースをしていることが示唆された.
75%
T.K.19歳 49.86 13歩
9.5
区間平均疾走速度(m/s)
115 相対速度(%)
9.0 82%
8%
高
校
生
大
学
生
29% 22%
社
会
人
世
界
吟
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各世代のS-H5に用いる歩数
個人内の変化
"  記録向上過程でレース前半の疾走速度の上昇が認められた.
"  レース前半に用いる歩数を減少させることにより疾走速度を高めていることが示された. 【レースパターンのタイプの変化】ゴールタイムにおける前半の占める割合(%S-H5)を縦軸,第5ー8ハードルでの疾走速度低下率を横軸
46.5
イーブンペース型
46.0
高校生:イーブンペース型
大学生・社会人:ハイペース低下型
世界トップ:中間型
大学生
45.5
社会人
45.0
ハイペース低下型
44.0
49.86
13歩
45.0
50.62
15歩
ハイペース維持型
42.5
-2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
H5-8低下率(%)
群間の変化
T.K.22歳②48.41
"  記録向上過程で.レースパターンの
型が変化していた.
44.5
"  群間の変化と同じくイーブンペース型
からハイペース低下型に変化し,
その後速度低下率を抑えていた.
48.41
13歩
43.5
レースパターンを変容させて
記録向上させていた.
T.K.22歳①48.90
T.K.23歳 49.08
44.0
43.0
T.K.18歳 50.62
T.K.19歳 49.86
45.5
%S-H5
世界トップレベル
44.5
イーブンペース型
高校生
46.0
%S-H5
区間平均疾走速度(m/s)
9.5 10.0
120 世界トップ
社会人
大学生
高校生
18%
43.5
13歩
ハイペース維持型
48.90
13歩
ハイペース低下型
43.0
0.0
2.0
4.0
6.0
H5-8低下率(%)
8.0
個人内の変化
結 論
高校生は,レース前半を絶対的にも相対的にも遅く疾走してレース後半に巻き返すという後半型のレース展開をしており,日本トップレベルや
世界トップレベルの400mH選手に対して最大疾走速度が遅いことが示された.
高校生の段階で活躍するためのトレーニングとしては,よりレース後半の速度低下を抑えるトレーニングをすることが重要であり,その後のカテゴリーで
記録をさらに向上させるためには,レース前半の疾走速度を高めるトレーニングをすることが課題であると示唆された.