一般化Realized Stochastic Volatility モデルの推定と応用

一般化 Realized Stochastic Volatility モデルの推定と応用
石原庸博 ∗
一橋大学経済学研究科
多変量の株式等の危険資産収益率の日次時系列データのボラティリティの時間を通じた変動
はを予測することは,金融のリスク管理の応用上,重要な問題となっている.その統計モデル
として確率的ボラティリティ変動モデル (SV モデル) と GARCH モデルが広く用いられていた.
近年の日中の高頻度取引データの整備されていることから連続時間確率過程に基づいたボ
ラティリティモデルに依存しない実現ボラティリティ(realized volatility, RV) と呼ばれる日次
のボラティリティの推定量推定量が数々提案されており,その性質が明らかになってきている.
また,RV を用いて真のボラティリティを予測する研究も行われており,RV の性質を表現
する統計モデルが提案されてきた.(ボラティリティモデル, RV の応用に関しては,Bauwens,
Hafner, and Laurent (2012) やその参考文献などが詳しい)
Takahashi, Omori, and Watanabe (2008) は, t 日の収益率を rt , 対数 RV を xt とし,SV モ
デルに RV を加えた Realized SV (RSV) モデル
rt = exp(ht /2)εt ,
xt = ξ + ht + ut ,
ht+1 = µ + ϕ(ht − µ) + ηt ,
を提案した.このモデルは,SV モデルのボラティリティ推定に RV の情報を加えるだけでなく,
夜間取引がないことに起因する RV のバイアスを ξ により修正するという利点を持っている.
モデルは Koopman and Scharth (2013) で複数の RV の導入やボラティリティの superposition
によりモデル化できるように拡張した.
本研究では,このモデルをさらに一般化する.特に性質の異なる数種類の実現ボラティリ
ティ推定量を潜在変数の因子構造を用いて導入できるようにする.さらに実現ボラティリティ
の誤差と収益率の相関を考え,暦効果等の実証研究への応用も考えて水準のパラメータに回帰
の構造を導入し,
rt = exp(ht /2)εt ,
ht =
p
∑
ψri αit ,
i=1
xjt =
′
βxj
zxjt
+
p
∑
ψji αit + υjt
i=1
′
′
αi,t+1 = βαi
zαi,t+1 + ϕi (αit − βαi
zαit ) + ηit
i = 1, . . . , p, j = 1, . . . , q, のように定式化する.ψyi , ψji はボラティリティの因子と観測値とを
結ぶ因子付加であり,適当な制約をかけることで収益率に影響を与えない,RV 特有の変動を
表す因子等をモデル化できる.このモデルに対しベイズ推定法を提案し,実データへの応用を
行った.講演では,ボラティリティの暦効果などへの実証分析の結果についても紹介する.
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